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解説記事2012年04月30日 【新会計基準解説】 実務対応報告第29号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い」について(2012年4月30日号・№449)

新会計基準解説
実務対応報告第29号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い」について
 企業会計基準委員会 専門研究員 前田 啓

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成24年3月16日に実務対応報告第29号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表している(脚注1)。本稿では、本実務対応報告の概要を紹介する。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 公表の経緯
 平成23年12月2日に、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号。以下「改正法人税法」という。)及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号。以下「復興財源確保法」という。また、改正法人税法と復興財源確保法を合わせて、以下「改正法人税法等」という。)が公布された。この改正法人税法により平成24年4月1日以後に開始する事業年度については法人税率が30%から25.5%に引き下げられ、また、復興財源確保法により平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度については基準法人税額の10%が復興特別法人税として課税されることとなった。両法令により法定実効税率の推移は図表1のようになる。

 これを受けて、ASBJはまず、改正法人税法等の公布日を含む事業年度に係る四半期会計期間を適用対象として、実務対応報告第28号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴う税率変更等に係る四半期財務諸表における税金費用の実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第28号」という。)を平成24年1月20日に公表した。さらに、改正法人税法等の公布日を含む事業年度の翌事業年度以降における税金費用の取扱いについて、ASBJは引き続き検討することとしていたが、この改正法人税法等により、税効果会計の計算に適用される税率が複数存在する状況が一定の期間にわたり続くことに鑑み、本実務対応報告では必要と考えられる実務上の取扱いを明らかにすることとされた。
 なお、本実務対応報告は、平成24年2月3日に公開草案として公表され、広くコメント募集を行った後、公開草案に対して寄せられたコメントを検討し、公開草案の修正を行った上で公表するに至ったものである。

Ⅲ 本実務対応報告の概要

1 年度決算と同様の方法により税金費用を計算している場合の取扱い(本実務対応報告のQ1)
 四半期財務諸表の作成において年度決算と同様の方法により税金費用を計算している場合には、次のように実務対応報告第28号と同様に取り扱われることが示されている。
・繰延税金資産及び繰延税金負債は、原則的な考え方により、回収又は支払が行われると見込まれる期に対応した改正後の税率により計算する。復興特別法人税額が上乗せされる期間に回収又は支払が行われると見込まれる繰延税金資産及び繰延税金負債については、復興特別法人税額を上乗せした税率で計算する。
・スケジューリングが不能な一時差異については、一律に復興特別法人税額を含まない税率で繰延税金資産及び繰延税金負債を計算する。

2 四半期特有の会計処理により税金費用を計算している場合の取扱い(本実務対応報告のQ2)
(1)基本的な取扱いについて
 四半期財務諸表の作成において四半期特有の会計処理による場合、四半期会計期間を含む事業年度の税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて税金費用を計算する。また、四半期累計期間中の改正法人税法等の公布により税効果会計の計算に適用される税率が変更された場合には、繰延税金資産及び繰延税金負債の修正により事業年度の法人税等調整額に影響が生じるため、当該影響額を合理的に見積り、見積実効税率を調整する(企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「四半期適用指針」という。)第19項及び日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」(以下「中間税効果実務指針」という。)第10項)。
 改正法人税法等により、復興特別法人税の課税期間中は、税効果会計の計算に適用される税率が単一ではなく、複数の税率が存在することになるが、当該期間中に発生した一時差異等の一部を、復興特別法人税額を含まない法定実効税率で繰延税金資産及び繰延税金負債を計算する結果、税率の変更年度と同様に、事業年度の法人税等調整額及び税効果適用後の実効税率に影響が生じる場合がある。
 このため、改正法人税法等の公布に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降の四半期会計期間においても、税率の変更年度と同様に、中間税効果実務指針第10項に準じて見積実効税率を算定することとしている(下記[計算式1])。

 上記の取扱いによる場合、当期末に予想される一時差異等を見積る必要があるが、当年度の期首の一時差異等については、四半期適用指針第16項の取扱いを勘案し、一定の状況にある場合(脚注2)には、前年度末における繰延税金資産の回収可能性の検討において使用した将来の業績予測、タックス・プランニング、一時差異等のスケジューリングを利用することができるとしている。一定の状況にない場合には、四半期適用指針第17項の取扱いを勘案し、前年度末の検討において使用したものに、経営環境の著しい変化又は一時差異等の大幅な変動による影響を加味したものを使用することができるとしている。
 見積実効税率の算定において、一時差異等の見積りは、四半期適用指針第19項により、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、重要な項目に限定する方法によることができる。また、税務上の繰越欠損金についても、重要な影響が見込まれる場合には見積実効税率の算定上、考慮するとしている。
 見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合で、法定実効税率を使用する方法(中間税効果実務指針第11項)によるときには、中間税効果実務指針第12項に準じて処理することとしている。
(2)複数税率の影響が重要ではない場合の取扱いについて  税率の変更年度では、繰延税金資産及び繰延税金負債のすべてを新たな税率に基づき再計算するが、変更年度の翌事業年度以降において、復興特別法人税額を含まない法定実効税率で新たに計算が必要となる繰延税金資産及び繰延税金負債は、復興特別法人税の課税期間中に発生した一時差異等のうち復興特別法人税が課税されない期間に解消が見込まれる分やスケジューリングが不能な分などである。したがって、税効果会計の計算に適用される税率が複数であることにより、事業年度の法人税等調整額及び税効果適用後の実効税率に与える影響は、税率の変更年度と比べて重要ではない場合も少なくないと考えられる。
 このため、当事業年度に発生が見込まれる一時差異等のうち復興特別法人税が課税されない期間に解消が見込まれる額が重要ではない場合など、税効果会計の計算に適用される税率が複数であることによる影響が重要ではないと見込まれる場合には、中間税効果実務指針第9項に準じた見積実効税率(脚注3)により税金費用を計算することができるものとしている(次頁[計算式2])。
 具体的な計算方法については、本実務対応報告に含まれている設例も参照されたい。なお、設例は、本実務対応報告で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容や重要性の判断は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なる点に留意する必要がある。

3 適用時期等  本実務対応報告は、改正法人税法等の公布日(平成23年12月2日)を含む事業年度の翌事業年度に係る第1四半期会計期間から適用されるとしている。例えば、12月決算会社の場合には、平成24年3月に四半期会計期間の末日が到来する第1四半期会計期間からの適用となる。
 本実務対応報告の適用については会計方針の変更として取り扱わないとしている。
 なお、参考までに、本実務対応報告と実務対応報告第28号との比較を示す(図表2参照)。


脚注
1 本実務対応報告の全文については、ASBJウェブサイト(https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/shihanki-tax2_2011/)を参照のこと。
2 重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境に著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合である。
3 見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合は、中間税効果実務指針第11項に準じた法定実効税率。

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