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解説記事2012年06月11日 【税制改正解説】 平成23年12月・24年度国際課税関係の改正について(2012年6月11日号・№454)

税制改正解説
平成23年12月・24年度国際課税関係の改正について
 山田尚功

はじめに

 国際課税については、近年の税制改正に引き続き、我が国の適切な課税権の確保と我が国経済の活性化のバランスを保ちつつ、国際課税を取り巻く環境の変化に対応するための改正が行われている。
 以下では、平成23年12月及び平成24年度における国際課税関係の改正について概説する。

平成23年12月改正

Ⅰ.外国税額控除の適正化

 外国税額控除制度については、外国法人税のうち、我が国の法人実効税率を超える高率な部分や外国で非課税とされた国外所得については、本来、国際的二重課税が発生していないにもかかわらず控除限度額の余裕額を利用して外国税額控除が可能になること(いわゆる「彼此流用」の問題)や、日本に本社がある法人であるにもかかわらず、ほとんど日本で税を負担しないこととなるといった特定の法人のみが恩典を受けている特例など制度上の歪みがあり、こうした問題に対処するため、今般の法人実効税率の引下げを契機として、次のような適正化のための改正を行うこととされた。

1.外国税額控除の対象から除外される「高率」な外国法人税の水準の引下げ  外国税額控除の対象から除外される「高率」な外国法人税の水準を35%(改正前:50%)に引き下げることとされた(法令142の2①、155の27①)。

2.控除限度額の計算の基礎となる国外所得から除外される非課税国外所得の見直し  非課税国外所得の全額(改正前:3分の2)を控除限度額の計算の基礎となる国外所得から除外することとされた(法令142③、155の28③)。
 なお、激変緩和の観点から、2年間(平成24年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度)については、非課税国外所得の6分の5を除外することとする経過措置が設けられている(平成23年12月改正法令附則9②、17②)。

3.国外所得割合の90%制限に対する特例の廃止  外国税額控除の控除限度額の計算における国外所得割合の90%制限に対する特例として許容されていた、①国外使用人割合が高率な場合の国外所得割合の90%制限に対する特例及び②外国における税負担が高率な場合の国外所得割合の90%制限に対する特例は、廃止することとされた(旧法令142③二、142の2、155の28③二、155の29)。

Ⅱ.納税環境整備

1.更正の請求期間の延長等
 今般の国税通則法の改正(通法23①、70①③、72①)を踏まえ、移転価格税制についても、以下のとおり同趣旨の措置が講じられた。
(1)更正の請求期間の特例の創設  法人がその法人に係る国外関連者との間で行った取引につき移転価格税制の適用があった場合において、その適用に関し更正の請求事由が生じたときにおける更正の請求期間を6年(改正前:1年)に延長することとされた(措法66の4⑯、68の88⑰)。
(2)更正決定等の期間制限の特例の改正  移転価格税制に係る更正期間の終了間際になされた更正の請求に係る更正について、税務当局は、その更正の請求があった日から6月を経過する日まで更正することができることとされた(措法66の4⑰、68の88⑱)。
(3)国税の徴収権の消滅時効の特例の改正  移転価格税制に係る更正期間の終了間際になされた更正の請求に係る増額更正についての国税の徴収権の消滅時効の起算点は、その更正があった日とすることとされた(措法66の4⑳、68の88 )。

2.更正の請求範囲の拡大  今般の「当初申告要件が設けられている措置」及び「控除額の制限がある措置」についての横断的な見直しの一環として、外国子会社配当益金不算入制度及び外国税額控除制度についても、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に適用金額を記載した書類の添付がある場合等に限り適用を受けることができることとされ、適用金額は、その書類に記載された金額を限度とすることとされた(法法23の2③、69⑩⑪、81の15⑨⑩、所法95⑤⑥)。

3.税務調査手続の見直し  今般の国税通則法の改正(通法74の2、74の7等)を踏まえ、国際課税関係の制度についても、以下のとおり同趣旨の見直しが行われた。
(1)移転価格税制の整備  税務職員が、法人の国外関連取引に係る事業と同種の事業を営む者(以下「比較対象企業」という。)に対し、帳簿書類の「提示」「提出」を求めることができることが法令上明確化され(措法66の4⑧、68の88⑧)、併せて処罰規定(30万円以下の罰金)を設けることとされた(措法66の4⑫二、68の88⑫二)。
 また、比較対象企業に対する移転価格調査における「帳簿書類の留置き」について法令上明確化された(措法66の4⑨、68の88⑨、措令39の12⑬、39の112⑫)。
(2)租税条約等の規定に基づく情報交換制度の整備  租税条約等の規定に基づく情報交換制度においても、移転価格税制と同様に、税務職員の質問検査権の整備及び情報交換のための調査において提出された「物件の留置き」について法令上明確化することとされた(実特法9①②、13①二、実特規16)。

Ⅲ.外国法人の国内源泉所得に対する課税に関する改正

1.法人税率の引下げ
 外国法人の各事業年度の所得に対する法人税の税率について、内国法人と同様に、下記の表のような引下げが行われた(法法143①②)。

2.外国法人の国内源泉所得に対する課税
(1)貸倒引当金制度の適用対象法人の見直し
 外国法人の国内源泉所得に係る所得の金額の計算においては、保険業法第2条第7項に規定する外国保険会社等及び同法第219条第1項に規定する引受社員(同法第223条第1項に規定する免許特定法人の社員に限る。)は、同法第2条第2項に規定する保険会社に準ずるものとして、貸倒引当金繰入額の損金算入ができる法人とすることとされた(法法142、法令188⑧)。
(2)欠損金の繰越控除制度等の見直し  外国法人の国内源泉所得に係る所得の金額の計算においては、保険業法第2条第10項に規定する外国相互会社は、青色欠損金及び災害損失金の控除限度額の80%制限の対象外とされる中小法人の範囲に含まれないこととされた(法法142、法令188①十六)。


平成24年度改正

Ⅰ.徴収共助・送達共助に関する租税条約等実施特例法等の整備

 租税に関する相互行政支援に関する条約(以下「税務行政執行共助条約」という。)や二国間条約の国内担保法を整備する観点から、今般の改正において、徴収共助と送達共助に関する租税条約等実施特例法等の整備がされた。

1.徴収共助に関する租税条約等実施特例法等の整備
(1)外国租税の徴収共助
 ① 制度の概要
 租税条約等の規定に基づきその租税条約等の相手国等から共助対象外国租税の徴収の共助又はその徴収のための財産の保全の共助の要請があったときは、所轄国税局長等は、次のいずれかの除外事由に該当する場合を除き、共助実施決定をすることとされた(実特法11①)。
イ 共助対象者が共助対象外国租税の存在又は額について、租税条約等の相手国等で争う機会が与えられていないと認められるとき。
ロ 共助を行うことが我が国の利益を害することとなるおそれがあると認められるとき。
ハ 租税条約等の相手国等の執行当局が共助対象外国租税を徴収するために通常用いるべき手段を用いなかったと認められるとき。
ニ 破産手続、再生手続又は更生手続により共助対象者が共助対象外国租税の全額について責任を免れているとき。
ホ 租税条約等の相手国等からの要請が保全共助の要請である場合には、共助対象外国租税について、我が国の国税徴収法等で差押えができないような場合であること。
 ② 共助実施決定  上記の共助実施決定は、所轄国税局長等が、所定の事項を記載した共助実施決定通知書を共助対象者に対し送達して行うこととされた(実特法11②、実特規17①②、別紙書式)。
 ③ 共助対象外国租税の徴収及び徴収のための財産の保全  所轄国税局長等は、共助実施決定をしたときは共助対象外国租税を徴収し、又は、その徴収のための財産の保全をするものとされ(実特法11③)、その具体的な手続等については、租税条約等の定めるところによるほか、税務行政執行共助条約やOECDモデル租税条約の規定などを踏まえ、①要請国の租税債権を被要請国である我が国は自国の租税と同様に徴収すること、②要請国の租税債権には被要請国である我が国では租税としての優先権が与えられないこと及び③要請国の租税債権の納税義務の成立及び消滅等はその要請国の法令により規律されること、といった基本的な考え方に則って国税通則法及び国税徴収法の必要な規定を準用することとされた(実特法11④)。
 ④ 共助対象外国租税の滞納処分が強制執行等又は倒産処理手続と競合した場合の手続の調整等  共助対象外国租税の滞納処分が強制執行等や倒産処理手続と競合した場合において共助対象外国租税が優先的に徴収されてしまう結果とならないよう、手続を調整する措置等が講じられた(実特法11⑤、改正法附則72~78)。
 ⑤ 共助の中断  共助対象外国租税について共助の中断事由が発生した旨の通知が租税条約等の相手国等からあった場合には、所轄国税局長等は、共助の中断の決定をすることとされた(実特法11⑧前段)。この場合、所轄国税局長等は、保全共助実施決定をしたときを除き、新たな滞納処分(交付要求を含む。)をすることができなくなり、既に行われた差押え又は交付要求は、保全共助実施決定に係る共助対象外国租税について行った差押え又は交付要求とみなされる(実特法11⑧後段)。
 なお、所轄国税局長等は、共助の中断の決定をしたときはその旨を共助対象者等に通知しなければならないこととされている(実特法11⑩)。
 ⑥ 共助の中断の取消し  共助の中断の決定がされた後に、共助の中断事由が消滅した旨の通知が租税条約等の相手国等からあった場合には、所轄国税局長等は、共助の中断の決定を取り消すこととされた(実特法11⑨)。
 なお、所轄国税局長等は、共助の中断の決定を取り消したときはその旨を共助対象者に通知しなければならないこととされている(実特法11⑩)。
 ⑦ 共助の終了  次のいずれかに該当する場合には、所轄国税局長等は、共助の終了を決定することとされた(実特法11⑪)。
イ 共助対象外国租税の全額を徴収したとき。
ロ 租税条約等の相手国等から共助の解除の要請があったとき。
ハ 共助対象者につき、滞納処分の停止の要件(徴法153①各号)のいずれかに該当する事実があると認められるとき。
ニ 共助の除外事由(上記①イ~ホ)のいずれかに該当する事実が生じた又は生じていたと認められるとき。
ホ 租税条約等の規定により我が国が共助の実施を継続する必要がないと認められるとき(共助の中断事由に該当する場合を除く。)。
へ 共助対象者が死亡したとき。
 なお、所轄国税局長等は、共助の終了の決定をしたときはその旨を共助対象者に通知しなければならないこととされている(実特法11⑫)。
 ⑧ 不服申立て、訴訟  共助対象者は、共助対象外国租税の滞納処分について不服申立てや取消訴訟を行うことができるが、その際、共助対象外国租税の存在又は額が租税条約等の相手国等の法令に従っているかどうかについては主張することはできないこととされている(実特法11⑬)。
 ⑨ 罰則  イ 滞納処分免脱犯
 共助対象者又はその財産を占有する第三者が共助対象外国租税の滞納処分の執行を免れる目的でその財産の隠蔽等をしたときは、これらの者等は、2年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金が科され、又はこれが併科される(実特法13①②⑤)。また、これらの者の相手方となった者等は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金が科され、又はこれが併科される(実特法13③⑤)。
 ロ 質問検査拒否犯
 共助対象外国租税の滞納処分のために行う徴収職員の質問に対し答弁をせず、又は偽りの陳述をした者や、その検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はその検査に関し偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類を提示した者等は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される(実特法13④三、四、⑤)。
(2)国税の徴収共助
 ① 国税の徴収権の消滅時効の中断等
 我が国が租税条約等の規定に基づきその租税条約等の相手国等に共助対象国税の徴収の共助又はその徴収のための財産の保全の共助を要請した場合において、その租税条約等の相手国等が行った一定の行為によりその租税条約等の規定に基づき国税の徴収権の時効が中断又は停止することとなるときは、その共助対象国税に係る国税の徴収権の時効は国税通則法第73条の規定により中断又は停止したものとみなされる(実特法11の2①)。
 ② 租税条約等の相手国等による徴収の効果  我が国が租税条約等の相手国等に徴収の共助を要請した共助対象国税をその相手国等が徴収した場合には、その徴収の時に、その徴収した金額に相当する共助対象国税を滞納者から徴収したものとみなされる(実特法11の2②)。
 この場合、共助対象国税のうちに本税と附帯税が含まれているときは、まず本税から徴収されたものとみなされる(実特法11の2③)。
 ③ 消費税のみの徴収の共助を要請した場合の特例  消費税と地方消費税とを一体処理することとしている地方税法の規定について所要の措置が講じられた(実特法11の2④)。

2.送達共助に関する租税条約等実施特例法の整備
(1)租税条約等の相手国等から送達共助の要請があった場合の租税条約等実施特例法の整備
 税務署長は、租税条約等の規定に基づきその租税条約等の相手国等から租税に関する文書の送達の共助の要請があった場合には、国税通則法第12条及び第14条の規定に準じて送達することとされた(実特法11の3①)。
(2)租税条約等の相手国等への要請による送達をする場合の租税条約等実施特例法の整備  税務署長その他の行政機関の長は、国税に関する法律の規定に基づいて税務署長その他の行政機関の長又はその職員が発する書類の送達を受けるべき者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む。)が租税条約等の相手国等にある場合には、国税通則法に定めるほか、その租税条約等の規定に従って、その租税条約等の相手国等の権限ある当局に嘱託して送達を行うことができることとされた(実特法11の3②)。

Ⅱ.関連者等に係る純支払利子等の課税の特例(過大支払利子税制)の創設
 関連者間において所得金額に比して過大な利子を支払うことを通じた租税回避を防止し、我が国の課税ベースの侵食を防止するため、以下の措置が講じられた。

1.関連者等に係る支払利子等の損金不算入
(1)措置の概要
 法人の平成25年4月1日以後に開始する各事業年度に関連者支払利子等の額がある場合において、その事業年度の関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%に相当する金額を超えるときは、その事業年度の関連者支払利子等の額の合計額のうちその超える部分の金額に相当する金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされた(措法66の5の2①)。
(2)関連者純支払利子等の額  関連者純支払利子等の額とは、関連者支払利子等の額の合計額から控除対象受取利子等合計額を控除した残額をいう(措法66の5の2①)。
 ① 関連者等の範囲  関連者等とは、直接・間接の持株割合50%以上の親法人・子法人又は実質支配・被支配関係にあるような関連者、及びこれらの関連者による債務保証を受けて資金を供与したと認められる一定の第三者等をいう(措法66の5の2②一・二、措令39の13の2⑧~⑭)。
 ② 関連者支払利子等の額  関連者支払利子等の額とは、法人の関連者等に対する支払利子等の額で、その関連者等の課税対象所得に含まれないもののうち、特定債券現先取引等(いわゆるレポ取引)に係る利子の額以外の金額をいう(措法66の5の2②、措令39の13の2②~⑦)。
 ③ 控除対象受取利子等合計額  控除対象受取利子等合計額とは、その事業年度の受取利子等の額の合計額をその事業年度の関連者支払利子等の額の合計額のその事業年度の支払利子等の額(特定債券現先取引等に係る利子の額を除く。)の合計額に対する割合で按分した金額をいう(措法66の5の2③、措令39の13の2⑮⑯)。なお、適用対象法人が国内関連者等から受ける受取利子等については、その受取利子等の額と、その国内関連者等が非国内関連者等から受けた受取利子等の額とのうちいずれか少ない金額を控除対象受取利子等合計額の計算の対象となる受取利子等とする制限措置が設けられている(措令39の13の2⑯)。
(3)調整所得金額  調整所得金額とは、租税特別措置法及び法人税法の所定の規定を適用せず、かつ、その事業年度において支出した寄附金の全額を損金の額に算入して計算した場合のその事業年度の所得の金額に、関連者純支払利子等の額、減価償却費の額及び貸倒損失等の特別の損失の額を加算した金額から、下記3(1)の調整措置の対象となる特定外国子会社等又は特定外国法人に係る課税対象金額又は部分課税対象金額を控除した金額をいう(措法66の5の2①、措令39の13の2①)。
(4)適用除外  法人が次のいずれかに該当する場合には、本制度の適用はないこととされている(措法66の5の2④)。
① 法人の事業年度の関連者純支払利子等の額が1,000万円以下である場合
② 法人の事業年度の関連者支払利子等の額の合計額がその事業年度の支払利子等の額の合計額の50%以下である場合
 なお、この適用除外は、確定申告書(中間申告書を含む。)に適用除外に該当する旨を記載した書面及びその計算明細の添付があり、かつ、その計算に関する書類を保存している場合に限り、適用される(措法66の5の2⑤)。
(5)国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例(過少資本税制)との調整  法人のその事業年度に係る過大支払利子税制により計算された金額が、その事業年度に係る過少資本税制により計算された金額以下となる場合には、過大支払利子税制の規定は、適用されない(措法66の5の2⑦、措令39の13の2⑰ )。
(6)外国法人に係る適用関係  外国法人に係る上記(1)から(4)までの適用については、関連者支払利子等の額、控除対象受取利子等合計額、関連者純支払利子等の額及び支払利子等の額はその外国法人の国内において行う事業に係るものに、調整所得金額はその外国法人の国内源泉所得に係る所得の金額に係るものに、それぞれ限るものとされている(措法66の5の2⑨)。

2.超過利子額(損金不算入額の繰越額)の損金算入
(1)措置の概要
 法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において本制度により損金の額に算入されなかった金額(下記3(1)①の適用がある場合にはその調整後の金額をいい、この措置及び下記3(1)②によりその各事業年度前の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたものを除く。以下「超過利子額」という。)がある場合には、その超過利子額(下記3(1)②によりその各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものを除く。)に相当する金額は、その法人のその各事業年度の調整所得金額の50%に相当する金額から関連者純支払利子等の額を控除した残額に相当する金額を限度として、その法人のその各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされた(措法66の5の3①)。
(2)適用要件  この措置は、超過利子額に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書にその超過利子額に関する明細書の添付があり、かつ、この措置の適用を受けようとする事業年度の確定申告書(中間申告書を含む。)に、適用を受ける金額の申告の記載及びその計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用される。この場合において、この措置の適用を受ける金額は、その申告に係るその適用を受けるべき金額に限られる(措法66の5の3⑧)。
(3)適格合併等に係る被合併法人等の超過利子額の引継ぎ  適格合併等が行われた場合において、被合併法人等の引継対象超過利子額があるときは、合併法人等の事業年度において生じた超過利子額とみなされる(措法66の5の3③、措令39の13の3④)。
(4)連結超過利子個別帰属額の単体納税における超過利子額へのみなし規定  法人が、連結納税の承認を取り消された場合等において、その最終の連結事業年度終了の日の翌日を含む事業年度開始の日前7年以内に開始した各連結事業年度において生じたその法人の連結超過利子個別帰属額があるときは、その連結超過利子個別帰属額は、その連結超過利子個別帰属額が生じた連結事業年度開始の日を含むその法人の事業年度において生じた超過利子額とみなされる(措法66の5の3④)。
(5)ないものとされる超過利子額  連結法人が最初連結事業年度終了の日後に連結納税の承認を取り消された場合等の最終の連結事業年度後の各事業年度においては、その連結事業年度前の各事業年度において生じた超過利子額は、ないものとされる(措法66の5の3⑦)。
(6)外国法人に係る適用関係  外国法人に係る上記(1)の適用については、調整所得金額はその外国法人の国内源泉所得に係る所得の金額に係るものに、関連者純支払利子等の額はその外国法人の国内において行う事業に係るものに、それぞれ限るものとされる(措法66の5の3⑩)。

3.他の制度との調整
(1) 内国法人の特定外国子会社等に係る課税の特例(外国子会社合算税制)等との調整
 ① 同一事業年度における本制度と外国子会社合算税制等との適用調整
 法人の事業年度における本制度により損金不算入とされる金額のうちに調整対象金額がある場合において、その事業年度(以下「調整事業年度」という。)に特定外国子会社等又は特定外国法人に係る一定の課税対象金額又は部分課税対象金額があるときは、調整事業年度において本制度により損金不算入とされる金額のうち、その調整対象金額と、その特定外国子会社等又は特定外国法人に係る一定の課税対象金額又は部分課税対象金額のうちいずれか少ない金額を、調整事業年度において本制度により損金不算入とされる金額から減算する調整を行うこととされている(措法66の5の2⑧、措令39の13の2⑱~ )。
 ② 本制度に係る超過利子額と外国子会社合算税制等との適用調整  法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた超過利子額のうちに調整対象超過利子額がある場合において、その法人のその各事業年度に特定外国子会社等又は特定外国法人に係る一定の課税対象金額又は部分課税対象金額があるときは、その調整対象超過利子額と、調整事業年度における特定外国子会社等又は特定外国法人に係る一定の課税対象金額又は部分課税対象金額のうちいずれか少ない金額を、その法人のその各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされている(措法66の5の3②、措令39の13の3①~③)。
 なお、この措置は、超過利子額に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書にその超過利子額に関する明細書の添付があり、かつ、この措置の適用を受けようとする事業年度の確定申告書(中間申告書を含む。)に、適用を受ける金額の申告の記載及びその計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用される。この場合において、この措置の適用を受ける金額は、その申告に係るその適用を受けるべき金額に限られる(措法66の5の3⑧)。

4.連結納税  連結納税においても、上記の単体納税における過大支払利子税制と同様の制度が措置されている(措法68の89の2、68の89の3、措令39の113の2、39の113の3、措規22の75の3)。この連結納税における過大支払利子税制は、連結グループ全体の関連者純支払利子等の額と連結グループ全体の連結調整所得金額を比較して、過大支払利子の判定及び損金不算入額の計算を行うこととされており、連結グループを一体とした制度となっている。

Ⅲ.振替国債等の利子の課税の特例等の改正
 非居住者又は外国法人が信託(受益者等課税信託のうち受託者が特定口座管理機関であるものに限り、外国年金信託を除く。以下同じ。)の信託財産に属する振替国債、振替地方債又は特定振替社債等(その非居住者又は外国法人が特定振替機関から振替記載等を受けるものに限る。以下「振替国債等」という。)の利子等につき非課税の適用を受けようとする場合には、原則として、その非居住者又は外国法人が非課税適用申告書及び所有期間明細書を提出するほか、その信託の受託者が組合等届出書及び信託契約書の写し並びに組合等所有期間明細書を提出しなければならないこととされている。
 一方、その振替国債等の振替記載等に係る特定振替機関(日本銀行・証券保管振替機構)は、非課税適用申告書等が提出される際にその非居住者又は外国法人の本人確認を行うほか、非課税適用申告書等の税務署への提出や振替帳簿の作成・保存など、非課税適用に関する様々な事務を行わなければならないこととされていた。
 しかしながら、特定振替機関がこれらの非課税適用に関する事務を行うことは実務的に困難であることを踏まえると、特定振替機関よりはむしろ、受益者たる非居住者又は外国法人に関する情報を把握しうる立場にある信託の受託者が行う方が適当であると考えられた。
 そこで、今般の改正において、この特定振替機関が行うこととされていた信託の信託財産に属する振替国債等の利子等に係る非課税適用に関する事務については、特定振替機関に代わって、その信託の受託者である特定口座管理機関が行わなければならないこととされたほか、その信託の受託者が非課税適用に関する事務を行うこととされたことに伴う所要の措置が講じられた(措法5の2 、5の3⑤、措令3 、3の2⑮⑱、措規3の18 、3の19⑥⑩~⑫)。

Ⅳ.民間国外債等の利子の課税の特例の改正
 民間国外債を大規模に起債する場合における実務慣行を踏まえ、特定民間国外債の販売制限要件の対象となる特殊関係者の範囲から、民間国外債の発行者の特殊関係者である非居住者又は外国法人であってその民間国外債の発行者が締結する引受契約等を締結する者が、その引受契約等を締結する他の者がその引受契約等に基づく募集又は売出しその他これらに準ずるものに際してその引受契約等に係るその民間国外債の全部を取得させ、又は売り付けることができなかった場合におけるその残部(売れ残り)を、その引受契約等を締結する他の者から取得し、又は買い付ける場合におけるその引受契約等を締結する者を除外することとされた(措法6⑩一)。

Ⅴ.国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例(過少資本税制)の改正
 法人のその事業年度に係る過少資本税制により計算された金額が、その事業年度に係る過大支払利子税制により計算された金額を下回る場合には、過少資本税制の規定は適用されないこととされた(措法66の5④⑩、措令39の13⑪ )。
 なお、連結納税制度の場合についても、同様の調整規定が設けられている(措法68の89④、措令39の113⑪)。

Ⅵ.特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の改正
 外国子会社合算税制の対象となる内国法人が間接持分を有する外国法人(いわゆる外国孫会社)から内国法人が外国子会社を経由して間接的に剰余金の配当等の額を受ける場合には、二重課税調整措置が設けられているが(措法66の8⑩)、例えば、内国法人の事業年度終了時までに外国子会社が解散した場合には、その内国法人の事業年度終了時においてその外国子会社に対する持株割合を有しないため、間接配当等が算出されず、二重課税調整が行われなかった。
 そこで、間接配当等の計算について、直近配当基準日(配当事業年度において内国法人が外国子会社から受けた剰余金の配当等の額のうちその配当事業年度の終了の日に最も近い日に受けたものの支払に係る基準日をいう。)において内国法人が有する外国法人の持株割合を用いることとされた(措令39の19⑧)。
 なお、居住者及び連結法人に係る外国子会社合算税制についても、同主旨の改正が行われている(措令25の23④、39の119⑧)。

Ⅶ.特定地方公共団体との間に完全支配関係がある法人の発行する振替社債等に関する特例の創設
 東日本大震災の被災地における民間資金を活用した復興支援等の観点から、東日本大震災復興特別区域法第4条第1項に規定する特定地方公共団体との間にその特定地方公共団体による完全支配関係がある内国法人が発行する振替社債等のうち利益連動債(その振替社債等に係る債務について地方公共団体が保証契約を締結していないものに限る。)については、特定振替社債等に該当するものとして、その利子等及び償還差益並びにその償還により生ずる損失の額につき、租税特別措置法の振替社債等の利子等の課税の特例(措法5の3、41の13②④⑤、67の17②⑨⑩)を適用することとされた(震災税特法10)。

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