コラム2012年07月16日 【SCOPE】 内部統制報告制度の見直し後の重要な不備は?(2012年7月16日号・№459)
制度スタートから4年目は10社と昨年並みに
内部統制報告制度の見直し後の重要な不備は?
3月決算法人にとっては、4度目の内部統制報告書の提出となるが、平成24年3月期からは、これまでの「重要な欠陥」という名称から「重要な不備」へと変更が行われている。3月決算法人のうち、この「重要な不備」がある旨を開示した企業は10社とほぼ昨年の8社と同様の結果となった。内部統制報告制度が企業の間でかなり浸透していることが伺われるものといえよう。なお、ホッコクについては、重要な評価手続が実施できなかったとして、昨年に引き続き、内部統制の評価結果を表明できないと判断している。
ほとんどの企業が「不適切な会計処理」が原因 平成24年3月決算法人で内部統制報告書において、「重要な不備」がある旨を記載した企業は10社であることが明らかとなった(表参照、ホッコクは評価結果を表明できず)。そのほとんどの企業は、不適な会計処理によることが原因となっている。
たとえば、パスコでは、資産計上したソフトウェアが実際にはソフトウェアの不正利用の和解金であったと開示。大都魚類では退職給付会計で数理計算上の差異の誤りにより退職給付引当金が不足していたことを明らかにしている。
また、タダノ、大都魚類、プリンシバル・コーポレーション、加賀電子、サンコーテクノ、SJIでは、連結子会社などに関する会計処理の誤りや不正が原因となっている。
ただ、重要な不備を開示した企業は1年目56社、2年目22社、3年目は8社となっており、ほぼ昨年と同様の結果となっている。内部統制報告制度が企業に定着していることが伺われる。
「重要な不備」に名称が変更 平成24年3月期からは、企業会計審議会が平成23年3月30日に公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る評価及び監査に関する実施基準の改定に関する意見書」により、これまでの「重要な欠陥」という名称から、内容自体は変わらないものの「重要な不備」に変更が行われている。「重要な欠陥」という名称については、企業全体に欠陥があるとの誤解を招くおそれがあるとの指摘があったことにより、見直しが行われたものだ。
また、内部統制報告制度の見直しも行われている。たとえば、「重要な不備」の判断基準の明確化では、金額的重要性については、連結総資産・連結売上高・連結税引前利益などに対する比率で判断することになるが、これらの連結総資産等については、評価年度の実績値だけでなく、過去の一定期間の平均値等の使用や特殊要因の除外等が可能であることが明示されている。
内部統制報告制度の見直し後の重要な不備は?
3月決算法人にとっては、4度目の内部統制報告書の提出となるが、平成24年3月期からは、これまでの「重要な欠陥」という名称から「重要な不備」へと変更が行われている。3月決算法人のうち、この「重要な不備」がある旨を開示した企業は10社とほぼ昨年の8社と同様の結果となった。内部統制報告制度が企業の間でかなり浸透していることが伺われるものといえよう。なお、ホッコクについては、重要な評価手続が実施できなかったとして、昨年に引き続き、内部統制の評価結果を表明できないと判断している。
ほとんどの企業が「不適切な会計処理」が原因 平成24年3月決算法人で内部統制報告書において、「重要な不備」がある旨を記載した企業は10社であることが明らかとなった(表参照、ホッコクは評価結果を表明できず)。そのほとんどの企業は、不適な会計処理によることが原因となっている。
たとえば、パスコでは、資産計上したソフトウェアが実際にはソフトウェアの不正利用の和解金であったと開示。大都魚類では退職給付会計で数理計算上の差異の誤りにより退職給付引当金が不足していたことを明らかにしている。
また、タダノ、大都魚類、プリンシバル・コーポレーション、加賀電子、サンコーテクノ、SJIでは、連結子会社などに関する会計処理の誤りや不正が原因となっている。
ただ、重要な不備を開示した企業は1年目56社、2年目22社、3年目は8社となっており、ほぼ昨年と同様の結果となっている。内部統制報告制度が企業に定着していることが伺われる。
「重要な不備」に名称が変更 平成24年3月期からは、企業会計審議会が平成23年3月30日に公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る評価及び監査に関する実施基準の改定に関する意見書」により、これまでの「重要な欠陥」という名称から、内容自体は変わらないものの「重要な不備」に変更が行われている。「重要な欠陥」という名称については、企業全体に欠陥があるとの誤解を招くおそれがあるとの指摘があったことにより、見直しが行われたものだ。
また、内部統制報告制度の見直しも行われている。たとえば、「重要な不備」の判断基準の明確化では、金額的重要性については、連結総資産・連結売上高・連結税引前利益などに対する比率で判断することになるが、これらの連結総資産等については、評価年度の実績値だけでなく、過去の一定期間の平均値等の使用や特殊要因の除外等が可能であることが明示されている。
【表】平成24年3月期における重要な不備等の記載状況 |
社名 (上場区分) | 評価結果に関する主な事項 | 監査人 |
パスコ (東証1部) | ソフトウェア購入先の一つである外国法人に支払ったソフトウェア関連支出を資産計上したことに係る会計処理について、不適切な会計処理が行われていた可能性が高いことが判明。調査の結果、ソフトウェア関連支出は、過去の当社による相手方ソフトウェアの不正利用に関する損害賠償を内容とする和解金の支払いであり、ソフトウェアとしての資産性は無く特別損失に計上すべきものであった。 | 有限責任あずさ監査法人 |
タダノ (東証1部) | 連結子会社であるタダノ・アメリカの取締役副社長が、私的流用を目的に同社の資金を横領するという不正行為が平成24年5月に判明。社内調査委員会を設置したが、当連結会計年度末日後に判明したため、当該開示すべき重要な不備を当連結会計年度末日までに是正することができなかった。 | 有限責任監査法人トーマツ |
大都魚類 (東証2部) | 過年度の退職給付に関する子会社の吸収合併時の会計処理等の誤り及び数理計算上の差異の把握の誤りにより未認識退職給付債務の金額とその償却金額に適切な金額との差異が生じたため、退職給付引当金が不足している状態にあるとの認識に至った。 | 有限責任あずさ監査法人 |
プリンシバル・コーポレーション (JASDAQスタンダード) | 連結子会社における前事業年度の営業権を譲り受けた取引等に基づく事案に起因して、適正ではないと考えられる会計処理が見受けられたため、前事業年度の有価証券報告書及び当事業年度の四半期報告書の訂正報告書の提出を行ったが、その際に設置した社外調査委員会から、営業権譲受における出金処理について適正な証憑に基づき適正な承認手続をとっていなかったこと等が上場会社としての内部統制上重大な問題であるとの指摘がなされた。 | 阪神公認会計士共同事務所 |
加賀電子 (東証1部) | 連結子会社において、営業担当者による一部の得意先に対する不適切な取引及び会計処理が行なわれていた事実が発覚。調査委員会の調査により、会社未承認の値引の申し入れ・放置ならびに、商品の不適切な処分・放置が識別され、売上高の過大計上(売上値引の過少計上)と売掛金の過大計上が判明した。 | あらた監査法人 |
サンコーテクノ (JASDAQスタンダード) | 当社グループのセンサーセグメントに関して、平成23年3月期に内部取引が発生。平成23年3月期第4四半期においてアルコール測定器の駆け込み特需があり、期末に売上高が一時的に増加したため期ずれ調整を行い、当社のセンサーセグメントの仕入高に対応する連結子会社の売上高を計上し、相殺消去を行った。しかし、その際、連結子会社の売上原価並びに当該取引に関する税効果の仕訳をしていなかった。 | 新日本有限責任監査法人 |
SJI (JASDAQスタンダード) | 連結子会社の会計処理について、監査人より重要な誤謬を指摘。これに伴い、平成24年3月期第2四半期の四半期報告書の訂正報告書を提出した。 | 新日本有限責任監査法人 |
オリンパス (東証1部) | 過年度に行った有価証券投資等の損失計上の先送り及びその解消スキームに係る不適切な会計処理に関連して、過去の有価証券報告書及び平成24年3月期第1四半期報告書について訂正報告書を提出。本件は、経営者の業務執行を監督ないし監査すべき取締役会と監査役会が有効に機能していなかったこと、企業風土やコンプライアンス意識の欠如及び内部通報制度の不備が原因である。 | 新日本有限責任監査法人 |
大王製紙 (東証1部) | 過年度の会計処理の誤りが判明し、平成24年5月に過年度決算の訂正を行った。また、当連結会計年度における有価証券報告書の作成過程等において、監査法人から決算・財務報告プロセスの不備を原因とする複数の誤謬を指摘された。 | 有限責任監査法人トーマツ |
徳倉建設 (名証2部) | 決算・財務報告プロセスにおいて、決算処理手続における処理内容及び会計基準適用の検討とその承認手続の整備・運用が不十分であったため、監査人より連結財務諸表及び財務諸表の作成において複数項目の指摘。 | 栄監査法人 |
ホッコク (JASDAQスタンダード) | 外部調査委員会の調査により、過年度における不適切な会計処理が判明。平成21年9月第2四半期から平成23年9月第2四半期までの範囲について連結財務諸表等の決算訂正を行い、有価証券報告書の訂正報告書及び四半期報告書の訂正報告書として公表した。※内部統制の評価結果を表明できず | 北摂監査法人 |
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