解説記事2012年08月27日 【税制改正解説】 平成23・24年度における間接諸税関係の改正について(1)(2012年8月27日号・№464)
税制改正解説
平成23・24年度における間接諸税関係の改正について(1)
吉場英雄
平成23年12月改正について
経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律(平成23年法律第114号)により以下の改正が行われている。
Ⅰ.消費税関係の改正 1 前課税期間の消費税額等の更正等に伴う更正の請求の特例について、国税通則法の一部改正により更正の期間と更正の請求の期間とを一致させることに伴い、所要の整備を行うこととされた(消法56)。
2 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧消法62、63)。
Ⅱ.酒税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧酒法53)。
Ⅲ.たばこ税関係の改正 1 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧た法27)。
2 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定の集約化に伴い、たばこ特別税の調査に関する当該職員の質問検査権等に関する事項について所要の改正を行うこととされた(一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律19)。
Ⅳ.揮発油税及び地方揮発油税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧揮法26、旧地方揮法14の2)。
Ⅴ.石油ガス税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧石ガス税法26)。
Ⅵ.石油石炭税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧石石税法23)。
Ⅶ.航空機燃料税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧航燃税法19)。
Ⅷ.電源開発促進税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧電促税法12)。
Ⅸ.自動車重量税関係の改正 自動車重量税の過誤納金の還付に係る証明書の交付請求期間を5年(現行1年)に延長することとされた(自重税法16)。
Ⅹ.印紙税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧印法21)。
平成24年改正について
はじめに
平成24年度税制改正においては、平成22年度・平成23年度税制改正から税制抜本改革へと通じる、税制全体及び各税目についての基本的な考え方に立脚しつつ、特に喫緊の対応を要する新成長戦略実現に向けた税制措置や平成23年度税制改正における積残し事項への対応等を中心に改正を行うこととされ、その内容を織り込んだ「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」は、平成24年1月27日に国会に提出された。その後、同法案は同年3月8日に衆議院を通過し、同月30日に参議院本会議において可決・成立し、同月31日に公布された。
以下において、この改正による間接税関係の改正の内容について説明する。
Ⅰ.消費税関係の改正
〈1〉障害者自立支援法等の改正に伴う所要の規定の整備
1.療養、医療等の範囲に関する改正
(1)制度の概要 消費税は、国内における消費一般に対して広く公平に負担を求める税であり、原則としてすべての財貨・サービスの国内における販売、提供などをその課税対象としているが、社会政策的な配慮から健康保険法等の規定に基づく医療等は非課税とされている(消法6①、消法別表第1六、消令14)。
(2)改正の内容 障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律(平成22年法律第71号。以下「障害者地域支援整備法」という。)において、障害児支援の強化を図るため、児童福祉法(昭和26年法律第45号)の一部が改正され、障害種別の類型で定められていた知的障害児施設、肢体不自由児施設及び重症心身障害児施設につき、障害児入所医療費に係る医療を提供する障害児入所施設及び肢体不自由児通所医療費に係る医療を提供する児童発達支援センターという入所サービス、通所サービスの類型に再編された。
これに伴い、非課税とされる療養、医療の範囲に係る規定中、障害児施設医療費が肢体不自由児通所医療費及び障害児入所医療費に改正された(消令14八)。
この改正は、平成24年4月1日から適用されている(改正消令附則)。
2.社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に類するものの範囲に関する改正 障害者地域支援整備法において、障害児支援の強化を図るため、障害種別に分かれていた施設体系を、通所、入所の利用形態別に区分することとされたことに伴い、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)に規定されていた「児童デイサービス」が廃止され、児童福祉法に規定される「障害児通所支援」に集約されることになった。
この改正に伴い、非課税となる社会福祉事業に類する事業の範囲に係る規定中、「児童デイサービス」を削除する改正が行われた(消令14の3六)。
この改正は、平成24年4月1日から適用されている(改正消令附則)。
〈2〉介護保険法の改正に伴う所要の規定の整備
1.制度の概要 消費税は、国内における消費一般に対して広く公平に負担を求める税であり、原則としてすべての財貨・サービスの国内における販売、提供などをその課税対象としているが、社会政策的な配慮から介護保険法の規定に基づく居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス、施設介護サービス費の支給に係る施設サービスその他これらに類するものは非課税とされている(消法6①、消法別表第1七イ、消令14の2)。
2.改正の内容 先般、高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、定期巡回・随時対応型訪問介護看護等の新たなサービス類型の創設等を講ずることとする「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第72号。以下「介護保険法等一部改正法」という。)が成立し、平成23年6月22日に公布された。
(1)介護保険法等の一部改正法により新たに創設された定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び複合型サービスは、従来の居宅サービスに類似のサービスであることから、消費税が非課税とされる居宅サービスの範囲等に追加することとされた(消令14の2③二)。
(2)介護保険法等一部改正法において、市町村の判断により地域支援事業を活用した軽度者向け予防・生活支援のための総合的なサービスを実施できる事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が創設された。当該サービスは、従前より消費税が非課税とされていた介護予防事業及び介護予防ケアマネジメント事業に、新たに介護予防サービス等事業、日常生活支援実施事業及び要支援者介護予防ケアマネジメント事業を追加し、介護予防・日常生活支援総合事業として整理されたものである。
このため、消費税においても、既存の関係告示を整理するとともに、消費税が非課税とされる居宅サービスの範囲等に介護予防・日常生活支援総合事業を追加することとされた(消令14の2③十二、平成24年厚労省告示第307号、平成18年厚労省告示第311号)。
(3)介護療養型医療施設については、本来、介護老人保健施設等の介護施設に入所すべき者が多く入院し、いわゆる「社会的入院」につながっているとの指摘があったことから、健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)により平成24年3月末までに廃止し、介護老人保健施設等に転換することとされていたが、最近の調査によりその転換が進んでいない実態が把握されたため、その廃止期限が平成30年4月1日まで延期されることとなった。
このため、介護保険法等一部改正法により、健康保険法等の一部を改正する法律の附則に経過措置規定を設けることにより、平成24年4月1日時点で指定を受けている介護療養型医療施設については、同法による改正前の介護保険法の規定は平成30年3月31日までの間はなおその効力を有することとされた。
これにより、当該経過措置に基づき引き続き存在することとなる介護療養型医療施設は、消法別表第1七に規定する「施設サービス」に該当しなくなるものの、介護サービスに類するものとして非課税とすることが適当であることから、消費税が非課税とされる居宅サービスの範囲等に当該施設の行うサービスを新たに追加することとされた(消令14の2③四、十三)。
上記改正は、平成24年4月1日から適用されている(改正消令附則、平成24年厚労省告示第308号)。
〈3〉その他の改正
1.身体障害者用物品の指定
(1)制度の概要 消費税においては、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の身体障害者用物品の譲渡、貸付け等が非課税とされている(消法別表第一第十号)。
非課税となる身体障害者用物品とは、具体的には義肢、盲人安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車椅子その他の物品で身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する物品として厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するものをいい、48品目が厚生労働省の告示により指定されている(消令14の4、平成3年厚生省告示第130号)。
(2)改正の内容 今回の改正では、新たに次の2品目が非課税物品に追加されたほか、既に非課税物品に指定されている物品で同告示の別表に個別製品名が掲げられているものについて、バージョンアップ等に伴う所要の改正が行われている。
○ 視覚障害者用音声方位磁石 視力に障害を有する者の方角に関する情報の入手を容易にすることのみを目的とする製品であって、点字、凸線等により操作ボタンが知覚でき、かつ、触覚や音声信号により情報を確認できる機能を有するものに限る。
○ 視覚障害者用音声色彩識別装置 視力に障害を有する者の色に関する情報の入手を容易にすることのみを目的とする製品であって、点字、凸線等により操作ボタンが知覚でき、かつ、触覚や音声信号により情報を確認できる機能を有するものに限る。
この改正は、平成24年4月1日から適用されている(平成24年厚労省告示第276号)。
2.旧身体障害者福祉法等に規定されていた授産施設に係る経過措置の期限到来に伴う所要の規定の整備 消費税が非課税とされる社会福祉事業のうち、課税対象とされる授産施設等において生産活動としての作業に基づき行われる資産の譲渡等に関する規定につき、障害者自立支援法制定時において、平成24年3月31日までの間はなお従前の例により運営することができることとされていた同法による改正前の身体障害者福祉法等に規定されていた授産施設(身体障害者授産施設、知的障害者授産施設、精神障害者授産施設、精神障害者福祉工場)に関する経過措置の期限到来に伴い、削除する改正が行われた(消令14の2④)。
Ⅱ.酒税関係の改正
1.入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例の適用期限の延長 本特例は、ウイスキー等に係る関税が無税とされたことに伴い、通関時における納税手続の簡素化を図る観点から講じられた措置であるが、ウイスキー等に係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成25年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成25年3月31日まで1年延長することとされた(措法87の5)。
2.沖縄県産酒類に対する酒税の軽減措置の改正
(1)改正前の制度の概要 沖縄県の区域内にある酒類の製造場のうち沖縄の酒税法の規定による免許を受けて復帰前から引き続き酒類を製造していたものとして所轄税務署長の指定を受けた製造場において製造された酒類で、平成24年5月14日までに、沖縄県の区域内にある酒類の製造場から移出されるもの(本土へ移出する目的で酒類の製造場から移出されるものは除く。)に係る酒税の税額は、泡盛等の単式蒸留しょうちゅうにあっては本土の税額の100分の65、その他の酒類にあっては本土の税額の100分の80とされていた(旧沖特法80①一、旧沖特令72)。
(2)改正の内容 本特例は、沖縄の復帰に伴い、本土税制の沖縄県における円滑な実施を図るための経過的な措置として講じられたものであり、沖縄県の産業振興、県民生活の安定向上に大きく寄与してきたところである。
本特例の適用期限の到来に際しては、沖縄県の社会経済情勢等を考慮して、その適用期限を平成29年5月14日まで5年延長することとされた(沖特法80①一、沖特令72)。
これにより、酒類製造者の経営の安定化を図ることを通じて、沖縄県産酒類の県外・海外市場への販売拡大、県産果実等の地域資源を活用した商品開発、関連産業の創出等の新たな事業展開による産業振興や地域雇用の確保を図ることとされている。
Ⅲ.たばこ税関係の改正
入国者が輸入する紙巻たばこに係るたばこ税の税率の特例措置の適用期限の延長
本特例は、紙巻たばこに係る関税が無税とされたことに伴い、通関時における納税手続の簡素化を図る観点から講じられた措置であるが、紙巻たばこに係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成25年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成25年3月31日まで1年延長することとされた(措法88の2)。
Ⅳ.租税特別措置法(石油石炭税関係)の改正
〈1〉地球温暖化対策のための課税の特例の創設
1.制度創設の背景及び制度の概要
(1)創設の背景 地球温暖化防止のための温室効果ガスの削減は、我が国のみならず地球規模の重要かつ喫緊の課題である。欧州諸国を中心とした諸外国では、1990年代以降、燃料などのCO2排出源に対する課税を強化し、価格メカニズムを通じたCO2排出の抑制や企業による省エネ設備導入の支援などを行う施策が進められている。
我が国では、温室効果ガスの約9割をエネルギー起源CO2が占めており、今後、省エネルギー対策、再生可能エネルギー普及、化石燃料のクリーン化などのエネルギー起源CO2の排出抑制対策を強化することは不可欠である。
こうした状況に鑑み、我が国においても税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、平成23年度税制改正では、上記の考え方に基づき、「地球温暖化対策のための税」を盛り込んだところであるが、国会における審議の結果、この改正事項については見送られることとされた。この改正事項については、地球規模の重要かつ喫緊の課題である地球温暖化対策を進める観点から、平成24年度税制改正大綱に盛り込まれ、24年度税制改正として実現することとされた。
(2)「地球温暖化対策のための税」の概要 地球温暖化対策のための税は、広範な分野にわたりエネルギー起源CO2排出抑制を図るため、全化石燃料を課税ベースとする現行の石油石炭税にCO2排出量に応じた税率を上乗せする「地球温暖化対策のための課税の特例」を設けることとされた。
この特例により上乗せする税率は、原油及び石油製品については1kl当たり760円、ガス状炭化水素は1t当たり780円、石炭は1t当たり670円とされている。
このように「広く薄く」負担を求めることで、特定の分野や産業に過重な負担となることを避け、課税の公平性が確保されている。また、導入に当たっては、急激な負担増とならないよう、税率を段階的に引き上げるとともに、一定の分野については、所要の免税・還付措置を設けることとされている。併せて、燃料の生産・流通コストの削減や供給の安定化、物流・交通の省エネ化のための方策や、過疎・寒冷地に配慮した支援策についても実施することとされている。
2.制度の内容
(1)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例 地球温暖化対策を推進する観点から、平成24年10月1日以後に原油、ガス状炭化水素若しくは石炭の採取場から移出される原油、ガス状炭化水素若しくは石炭又は保税地域から引き取られる原油若しくは石油製品、ガス状炭化水素若しくは石炭に係る石油石炭税の税額は、石油石炭税法第9条の規定にかかわらず、原油及び石油製品については1klにつき2,800円(760円の上乗せ)、ガス状炭化水素については1tにつき1,860円(780円の上乗せ)、石炭については1tにつき1,370円(670円の上乗せ)の税率により計算した金額とすることとされた(措法90の3の2)。ただし、導入に当たって、急激な負担増とならないよう、税率引上げは段階的に実施されることとなっており、具体的な適用税率は以下のようになる(改正法附則43②・③)。
なお、原油・石油製品、ガス状炭化水素(LNG等)、石炭に対し、二酸化炭素(CO2)1t当たり289円(炭素(C)1t当たりに換算すると1,060円)の税率の上乗せを行うこととされ、原油及び石油製品については1kl当たり760円、ガス状炭化水素は1t当たり780円、石炭は1t当たり670円の税率の上乗せを行うこととされた。
(参考1)CO2・1t当たり:289円
C・1t当たり:1,060円(289円×44/12〔CO2=12+16×2〕)
(参考2)原油及び石油製品:1kl当たり760円(289円×2.62㎏-CO2/l)
ガス状炭化水素:1t当たり780円(289円×2.70㎏-CO2/l)
石炭:1t当たり670円(289円×2.33㎏-CO2/l)
(2)地球温暖化対策のための税率の特例に係る免税・還付措置
① 特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置 特定用途石炭(苛性ソーダの製造業を営む者が自ら発電(苛性ソーダの製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供する石炭、塩製造業者が自ら発電(電流を流すことにより海水を濃縮する方法として一定の方法による塩の製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供する石炭をいう。)を、保税地域から引き取ろうとする場合において、平成24年10月1日から平成26年3月31日までの間に、その引き取ろうとする者がその保税地域の所在地の所轄税関長の承認を受けてその特定用途石炭を引き取るときは、その引取りに係る石油石炭税の税額は、上記(1)にかかわらず、石油石炭税法第9条第3号に定める税率により計算した金額とすることとされ(措法90の3の3①)、地球温暖化対策のための税に係る部分は免税とすることとされた。
この軽減措置は、苛性ソーダの製造及び塩の製造については、エネルギー集約度が極めて高いこと、地域雇用に重大な影響を与える可能性等に配慮して創設されている。
なお、軽減の申請は、その引き取ろうとする特定用途石炭が、苛性ソーダの製造業を営む者が自ら発電の用に供する石炭に該当するものである旨の経済産業大臣の証明書又は塩製造業者が自ら発電の用に供する石炭に該当するものである旨の財務大臣の証明書を添えて行うこととされている(措令48の6①)。
② 特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付措置 次頁の表に掲げる者が、石油石炭税課税済みの原油又は粗油から国内において製造された特定用途石油製品(次の表に掲げる石油製品をいう。)を、次頁の表に掲げる用途に供した場合には、これらの用途に供した特定用途石油製品につき、上記(1)の原油及び石油製品の税率により計算した石油石炭税額と石油石炭税法第9条第1号に定める税率により計算した石油石炭税額との差額に相当する金額をその特定用途石油製品の製造者又はその特定用途石油製品を保税地域から引き取った者(国税庁長官の承認を受けた者に限る。以下「承認輸入者」という。)に還付することとされた(措法90の3の4①)。
この還付措置のうち、特定の運送の用に供した場合(次頁の表1から4)については、環境負荷の少ない大量輸送機関としての活用(モーダルシフト)、公共交通機関としての国民生活上の重要性等に配慮し、農林漁業の用に供した場合(次の表5)については、生産過程においてCO2を蓄積・固定する効果、農林漁業経営の安定の確保等に配慮して、創設されている。
なお、還付の申請は、特定用途石油製品の製造者又は承認輸入者が、その特定用途石油製品が上の表の用途に供された日後1年以内(農林漁業の用に供された場合にあっては、2年以内)に、次頁の表の1から4までの用途に供された特定用途石油製品に該当する旨の国土交通大臣の証明書又は次頁の表の5の用途に供された特定用途石油製品に該当する旨の農林水産大臣の証明書を添えて行うこととされている(措令48の7①)。
③ 従前の石油石炭税の免税・還付措置 平成24年度改正前の石油石炭税に係る免税・還付措置が設けられている輸入・国産石油化学製品製造用揮発油等、輸入特定石炭、輸入沖縄発電用特定石炭等、輸入・国産農林漁業用A重油、国産石油アスファルト等については、「地球温暖化対策のための課税の特例」により上乗せされている税率についても、免税・還付措置が適用される。
3.適用関係 上記2(1)及び(2)の改正は、平成24年10月1日から実施されることになるが、「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」については、上述したように、3段階に分けて実施されることになる(改正法附則43②・③)。また、それに伴い、「特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置」及び「特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付措置」について、所要の措置が置かれている(改正法附則44①、45①)。
〈2〉特定の輸入石油製品等に係る石油石炭税の免税措置の延長
「特定の輸入石油製品等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、このうち、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」については、政策税制措置による安定的な設備投資の支援や我が国産業の国際競争力の確保という観点等も踏まえ、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた。
また、「輸入農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税措置」については、その適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、2年延長することとされ、平成26年3月31日までとされた(措法90の4)。
〈3〉輸入特定石炭に係る石油石炭税の免税措置の適用期限の延長
「輸入特定石炭に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限は、平成25年3月31日までとされていたが、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限の定めのない措置とすることとされたこと等を踏まえ、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた(措法90の4の2)。
〈4〉輸入沖縄発電用特定石炭に係る石油石炭税の免税措置の適用期限の延長等
1.改正の背景及び内容 沖縄県における電気供給業は、電力供給における構造的な課題を抱える中、エネルギーセキュリティや経済性の観点から、石炭火力発電所の導入を中心に進められてきたが、環境問題への適応、エネルギー供給源の多様化によるエネルギーセキュリティの向上等の観点から、石油や石炭に比べ燃焼時のCO2排出量が少ないLNGを燃料とした火力発電により、エネルギーセキュリティの向上及び電源の低炭素化を図ることを予定しているため、沖縄県の特殊事情にも鑑み、沖縄における電気の安定的かつ適正な供給を図るために、沖縄発電用特定LNGについて石油石炭税の免税措置の対象にすることとされた(措法90の4の3)。
また、「輸入沖縄発電用特定石炭に係る石油石炭税の免税措置」については、その適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、本税制措置については、事業者における経営効率化等の努力と相まって効果をもたらすことに留意することに鑑み、今後、電気料金の引き下げ効果等に係る検証を行っていくため、3年延長することとされ、平成27年3月31日までとされた(措法90の4の3)。
2.適用関係 沖縄発電用特定LNGについては、平成24年4月1日から保税地域より引き取られる沖縄発電用特定LNGについて適用される(改正法附則1)。
〈5〉特定の国産石油製品に係る石油石炭税の還付措置の適用期限の延長
1.改正の内容 「特定の国産石油製品に係る石油石炭税の還付措置」の適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、このうち、「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」については、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限の定めのない措置とすることとされたことと併せて、これとのバランス等を考慮して、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた(措法90の5)。
「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」については、その適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、2年延長することとされ、平成26年3月31日までとされた(措法90の6)。
また、「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」及び「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」は、上記〈1〉の「地球温暖化対策のための課税の特例」が創設され、平成24年10月1日より石油石炭税の税率が引上げられることに伴い、それぞれの還付の計算の基礎となる税率が1kl当たり2,800円とすることとされた(措法90の6)。
2.適用関係 「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」及び「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」における還付の計算の基礎となる税率の改正については、平成24年10月1日から適用される。また、当該税率について、「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」については、平成24年10月1日から平成26年3月31日までは1kl当たり2,290円、平成26年4月1日から平成28年3月31日までは1kl当たり2,540円とする経過措置が置かれており(改正法附則47)、「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」については、平成24年10月1日から平成26年3月31日までは1kl当たり2,290円とする経過措置が置かれている(改正法附則48)。
〈6〉国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置の適用期限の延長
1.改正の内容 「国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置」の適用期限は、平成25年3月31日までとされていたが、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限の定めのない措置とすることとされたことと併せて、輸入品と国産品の税負担のバランスを図るといった観点も踏まえ、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた。
また、上記〈1〉の「地球温暖化対策のための課税の特例」が創設され、平成24年10月1日より石油石炭税の税率が引上げられることに伴い、国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置における還付の計算の基礎となる税率が1kl当たり2,800円とすることとされた(措法90の6の2)。
2.適用関係 国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置における還付の計算の基礎となる税率の改正については、平成24年10月1日から適用される。また、当該税率について、平成24年10月1日から平成26年3月31日までは1kl当たり2,290円、平成26年4月1日から平成28年3月31日までは1kl当たり2,540円とする経過措置が置かれている(改正措令附則29)。
Ⅴ.租税特別措置法(自動車重量税関係)の改正
〈1〉自動車重量税の税率の特例
1.改正前の制度の概要等 自動車重量税は、自動車の走行が、道路混雑、交通安全、道路事故等に関連して多くの社会的費用をもたらしていることや社会資本の充実の要請が強いことを考慮して、広く自動車の使用者に負担を求めるために創設されたものであり、自動車が車検を受け又は届出を行うことによって走行可能になるという法的地位あるいは利益を受けることに着目して課税される一種の権利創設税である。その税率については、自家用の自動車に係るものは昭和49年度から、営業用の自動車に係るものは昭和51年度から、租税特別措置法に規定する特例税率が適用されており、平成20年度改正において平成30年4月末までの10年間の措置として延長されるまで、累次その適用期限が延長されてきた(旧措法90の11)。
また、その税収については、創設時から、国税の税収の約8割が道路特定財源とされていたが、残りの国分の税収の約2割を道路整備以外の一般財源に充ててきていたが、平成14年度以降、道路整備費以外への使途拡大を進め、平成21年度予算において、道路特定財源制度は廃止することとされた。
そして、平成22年度税制改正においては、車体の環境負荷に応じた複数税率を設定することにより、温室効果ガスの排出削減を促すこととされ、次世代自動車(電気自動車、一定のハイブリッド自動車等)について、自動車重量税法で定める本則税率を適用することとされ、自動車重量税の税率の特例の対象外とされた。また、温室効果ガスの削減効果を発揮する観点から、負担軽減を図る自動車について、優先順位を付けることが必要であり、すべての車両の種類について、平均使用年数(約18年)を超えるところまでを税負担の軽減対象とし、新車新規登録から18年を経過した環境負荷の大きい自動車については、平成22年度改正以前の税率維持することとされた(旧措法90の11、90の11の2)。
2.改正の内容 自動車重量税の税率については、車検証の交付等の時点で燃費等の環境性能に関する一定の基準を満たしている自動車には、本則税率を適用するとともに、それ以外の自動車に適用される「当分の間税率」について、13年超の自動車を除き、引き下げを行うこととされた。具体的には以下のとおりとなる。
(1)本則税率が適用される自動車 ① 電気自動車
② 天然ガス自動車のうち、平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの
③ プラグインハイブリッド自動車
④ ①から③までに掲げる検査自動車以外の検査自動車で次に掲げるもの
イ 乗用車(乗車定員10人以下の乗用自動車をいう。以下同じ。)及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(ガソリン自動車に限る。)
ロ 車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制(ディーゼル自動車にあっては平成21年排出ガス規制)に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上(ディーゼル自動車にあっては平成21年排出ガス基準値より10%以上)窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの
ハ 車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車(ガソリン自動車にあっては平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車)のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの
ニ 車両総重量が3.5tを超えるディーゼル自動車のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの
ホ 車両総重量が3.5tを超えるディーゼル自動車のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの
ヘ クリーンディーゼル乗用車(平成21年排出ガス規制に適合したディーゼル自動車であって乗用車に限る。)
(2)適用される税率 上記①~④以外の自動車に適用される当分の間税率は、次の表のとおりである。
3.適用関係 自動車重量税の税率の特例についての改正は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付等を受ける自動車について適用される(措法90の11①、90の11の2①、90の11の3①)。
〈2〉自動車重量税の免税等の特例(「エコカー減税」)の延長等
1.改正前の制度の概要 平成20年当時、厳しいわが国経済情勢の下で、自動車の販売台数が減少し、裾野の広い関連産業に影響を及ぼすことが懸念されたことから、自動車の買換・購入需要を促進し、自動車市場の後退に歯止めをかけるとともに、あわせて今後わが国が目指すべき低炭素社会の実現につながる措置を講ずる観点から、自動車重量税について、平成21年度改正において、環境性能に優れた自動車に係る負担を時限的に免除・軽減する措置(以下「エコカー減税」という。)が創設された。
具体的には、一定の環境性能を有する自動車につき平成21年4月1日から平成24年4月30日までの間に最初に受ける車検の際に納付すべき自動車重量税について、
(1)電気自動車や一定の要件を満たした天然ガス自動車・ハイブリッド自動車等の「次世代自動車」については免税とし、
(2)その他一定の排ガス性能・燃費性能を備えた低公害・低燃費車については、その性能に応じて75%若しくは50%軽減することとされていた。
また、平成22年度改正において、エコカー減税の対象に、新たに、車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラック等(ディーゼル・ガソリン車)を追加することとされた(旧措法90の12)。
2.改正の内容 エコカー減税については、地球温暖化対策の推進、自動車産業の技術的優位性の確保・向上等の観点を踏まえ、燃費基準等の切り替えを行うとともに、特に環境性能に優れた自動車に対する軽減措置を拡充した上で、平成27年4月まで3年延長することとされた(措法90の12)。
(1)排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい検査自動車のうち、平成24年5月1日から平成27年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるものについて、その納付すべき自動車重量税を免税、75%軽減又は50%軽減することとされた。
具体的な免税、75%軽減又は50%軽減となる対象車は、以下のとおりである。
① 免税対象車 イ 電気自動車(措法90の12①一)
ロ 天然ガス自動車のうち、平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの(措法90の12①二、措規40の2①・②・③)
ハ プラグインハイブリッド自動車(措法90の12①三、措規40の2④⑤)
ニ ガソリン自動車のうち以下のもの(措法90の12①四)
(イ)乗用車及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの(措法90の12①四イ、措規40の2⑥・⑦・⑧)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12①四ロ、措規40の2⑨)
ホ ディーゼル自動車のうち以下のもの(措法90の12①五)
(イ)クリーンディーゼル乗用車(平成21年排出ガス規制に適合したディーゼル自動車であって乗用車に限る。)(措法90の12①五イ、措規40の2⑩)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12①五ロ、措規40の2⑪)
(ハ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12五ハ、措規40の2⑫・⑬)
② 75%軽減対象車 イ ガソリン自動車のうち以下のもの(措法90の12②一)
(イ)乗用車及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一イ、措規40の2⑭)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一ロ、措規40の2⑮)
(ハ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一ハ、措規40の2⑯)
ロ ディーゼル自動車のうち以下のもの(措法90の12②二)
(イ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二イ、措規40の2⑰)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二ロ、措規40の2⑱)
(ハ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二ハ、措規40の2⑲)
(ニ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二ニ、措規40の2⑳)
③ 50%軽減対象車 イ ガソリン自動車のうち以下のもの(措法90の12③一)
(イ)乗用車及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③一イ、措規40の2 )
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③一ロ、措規40の2 )
(ハ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一ハ、措規40の2 )
ロ ディーゼル自動車のうち以下のもの(措法90の12③二)
(イ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③二イ、措規40の2 )
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12③二ロ、措規40の2 )
(ハ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③二ハ、措規40の2 )
(ニ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12③二ニ、措規40の2 )
(2)上記(1)により免税とされた上記(1)①の自動車については、新車に係る新規検査時に交付を受けた自動車検査証の有効期間が満了する日から起算して15日を経過する日までに受ける最初の自動車検査証の交付等(2回目の車検)に係る自動車重量税について、その納付すべき自動車重量税を50%軽減することとされた(措法90の12④)。ただし、新車に係る新規検査の際に確認された環境性能に影響を及ぼすような一定の改造が行われた場合には除かれる(措法90の12④かっこ書、措規40の2 )。
(3)上記(1)①イからホまでに掲げる自動車に該当する自動車(上記(1)及び(2)の適用があるものを除く。)については、平成24年5月1日から平成27年4月30日までの間に受ける最初の自動車検査証の交付等に係る自動車重量税について、その納付すべき自動車重量税を50%軽減することとされた(措法90の12⑤)。なお、この措置は、上記(2)の措置とのバランスを考慮して措置することとされたものである。
(注)上記(1)から(3)までにおいて、免税、75%軽減又は50%軽減の基礎となる自動車重量税の税率は、自動車重量税法第7条に規定する本則税率となる(措法90の10①、90の11の2①かっこ書、90の11の3①)。
(4)平成27年度燃費基準における試験方法(以下「JC08モード」という。)については、新型車は平成23年4月より、継続生産車は平成25年3月より、それぞれその測定及び燃費値の表示が義務付けられていることから、これを踏まえた自動車業界の自主的な取組みにより、新エコカー減税の対象となるJC08モードによる燃費値を有する自動車も既に多数存在しているところであるが、使用過程車や継続生産車の一部については、JC08モードによる燃費値を有しない自動車が一部存在している。
そのため、新エコカー減税の適用対象車と同程度の燃費性能を有しているJC08モードによる燃費値を有しない自動車については、新エコカー減税の適用対象車と同様に特例措置の減免対象とするため、所要の措置を講ずることとされた(措法90の12⑥、措規40の2 ~ )。
3.適用関係 本特例措置の改正は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付等を受ける自動車について適用される(改正法附則1一)
〈3〉乗合自動車等に係る自動車重量税率の特例の創設
1.制度の内容 平成24年5月1日から平成27年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける以下の自動車について、その納付すべき自動車重量税が免除することとされた。
(1)ノンステップバス(自動車検査証にその自動車がノンステップバスであることが記載されている自動車に限る。)(措法90の13一、措規40の3①一・②一)
(2)リフト付きバス(自動車検査証にその自動車がリフト付きバスであることが記載されている自動車に限る。)(措法90の13一、措規40の3①二・②二)
(3)ユニバーサルデザインタクシー(自動車検査証にその自動車がユニバーサルデザインタクシーであることが記載されている自動車に限る。)(措法90の13二、措規40の3③・④)
2.適用関係 本特例措置は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付を受ける自動車について適用される(改正法附則1一)。
〈4〉貨物自動車に係る自動車重量税率の特例の創設
1.制度の内容 平成24年5月1日から平成27年4月30日(下の(1)の自動車のうち車両総重量が22tを超えるもの及び(2)の自動車については、平成26年10月31日)までの間に新車に係る新規検査を受ける以下の自動車について、その納付すべき自動車重量税が50%軽減することとされた。
(1)車両総重量が8tを超える貨物自動車(一定の牽引自動車及び被牽引自動車を除く。)であって、衝突被害軽減ブレーキを搭載したもの(措法90の14①一、措規40の4)
(2)車両総重量が13tを超える貨物自動車(一定の牽引自動車に限る。)であって、衝突被害軽減ブレーキを搭載したもの(措法90の14①二、措規40の4)
2.適用関係 本特例措置は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付を受ける自動車について適用される(改正法附則1一)。
なお、本特例措置の対象となる貨物自動車が、上記〈2〉の自動車重量税の免税等の特例(エコカー減税)の適用を受ける場合には、その措置による減免措置が優先して適用され、本特例措置は適用されないこととされている(措法90の14①かっこ書)。
〈5〉自動車重量税印紙の交換制度の創設
平成22年度税制改正及び平成24年度税制改正においては、税率の改正が行われたことに伴い、改正前の同額印紙を既に大量に保有している一部の車検工場等において、その印紙を死蔵させることなく納税が行えるよう、自動車重量税印紙の交換制度を設けることとされた(改正法附則71)。
本制度は、平成26年10月1日までの間において政令で定める日から適用される(改正法附則1八)。
Ⅵ.航空機燃料税関係の改正
沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長等
本土-沖縄本島間を航行する航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の対象に、本土-宮古島、石垣島又は久米島間の航路(那覇経由便を除く。)を追加することとされた(措法90の8の2)。
また、「沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置」については、その適用期限は2年延長することとされ、平成26年3月31日までとされた(措法90条の8の2)。
Ⅶ.揮発油税及び地方揮発油税関係の改正
沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に規定されている揮発油税及び地方揮発油税の適用期限の延長
本軽減措置は、その適用期限を3年延長することとされ、平成27年5月14日までとされた(沖特法80、沖特令74)。
平成23・24年度における間接諸税関係の改正について(1)
吉場英雄
平成23年12月改正について
経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律(平成23年法律第114号)により以下の改正が行われている。
Ⅰ.消費税関係の改正 1 前課税期間の消費税額等の更正等に伴う更正の請求の特例について、国税通則法の一部改正により更正の期間と更正の請求の期間とを一致させることに伴い、所要の整備を行うこととされた(消法56)。
2 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧消法62、63)。
Ⅱ.酒税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧酒法53)。
Ⅲ.たばこ税関係の改正 1 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧た法27)。
2 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定の集約化に伴い、たばこ特別税の調査に関する当該職員の質問検査権等に関する事項について所要の改正を行うこととされた(一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律19)。
Ⅳ.揮発油税及び地方揮発油税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧揮法26、旧地方揮法14の2)。
Ⅴ.石油ガス税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧石ガス税法26)。
Ⅵ.石油石炭税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧石石税法23)。
Ⅶ.航空機燃料税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧航燃税法19)。
Ⅷ.電源開発促進税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧電促税法12)。
Ⅸ.自動車重量税関係の改正 自動車重量税の過誤納金の還付に係る証明書の交付請求期間を5年(現行1年)に延長することとされた(自重税法16)。
Ⅹ.印紙税関係の改正 国税通則法に税務職員の質問検査権に関する規定を集約化することとされた(旧印法21)。
平成24年改正について
はじめに
平成24年度税制改正においては、平成22年度・平成23年度税制改正から税制抜本改革へと通じる、税制全体及び各税目についての基本的な考え方に立脚しつつ、特に喫緊の対応を要する新成長戦略実現に向けた税制措置や平成23年度税制改正における積残し事項への対応等を中心に改正を行うこととされ、その内容を織り込んだ「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」は、平成24年1月27日に国会に提出された。その後、同法案は同年3月8日に衆議院を通過し、同月30日に参議院本会議において可決・成立し、同月31日に公布された。
以下において、この改正による間接税関係の改正の内容について説明する。
Ⅰ.消費税関係の改正
〈1〉障害者自立支援法等の改正に伴う所要の規定の整備
1.療養、医療等の範囲に関する改正
(1)制度の概要 消費税は、国内における消費一般に対して広く公平に負担を求める税であり、原則としてすべての財貨・サービスの国内における販売、提供などをその課税対象としているが、社会政策的な配慮から健康保険法等の規定に基づく医療等は非課税とされている(消法6①、消法別表第1六、消令14)。
(2)改正の内容 障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律(平成22年法律第71号。以下「障害者地域支援整備法」という。)において、障害児支援の強化を図るため、児童福祉法(昭和26年法律第45号)の一部が改正され、障害種別の類型で定められていた知的障害児施設、肢体不自由児施設及び重症心身障害児施設につき、障害児入所医療費に係る医療を提供する障害児入所施設及び肢体不自由児通所医療費に係る医療を提供する児童発達支援センターという入所サービス、通所サービスの類型に再編された。
これに伴い、非課税とされる療養、医療の範囲に係る規定中、障害児施設医療費が肢体不自由児通所医療費及び障害児入所医療費に改正された(消令14八)。
この改正は、平成24年4月1日から適用されている(改正消令附則)。
2.社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に類するものの範囲に関する改正 障害者地域支援整備法において、障害児支援の強化を図るため、障害種別に分かれていた施設体系を、通所、入所の利用形態別に区分することとされたことに伴い、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)に規定されていた「児童デイサービス」が廃止され、児童福祉法に規定される「障害児通所支援」に集約されることになった。
この改正に伴い、非課税となる社会福祉事業に類する事業の範囲に係る規定中、「児童デイサービス」を削除する改正が行われた(消令14の3六)。
この改正は、平成24年4月1日から適用されている(改正消令附則)。
〈2〉介護保険法の改正に伴う所要の規定の整備
1.制度の概要 消費税は、国内における消費一般に対して広く公平に負担を求める税であり、原則としてすべての財貨・サービスの国内における販売、提供などをその課税対象としているが、社会政策的な配慮から介護保険法の規定に基づく居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス、施設介護サービス費の支給に係る施設サービスその他これらに類するものは非課税とされている(消法6①、消法別表第1七イ、消令14の2)。
2.改正の内容 先般、高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、定期巡回・随時対応型訪問介護看護等の新たなサービス類型の創設等を講ずることとする「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第72号。以下「介護保険法等一部改正法」という。)が成立し、平成23年6月22日に公布された。
(1)介護保険法等の一部改正法により新たに創設された定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び複合型サービスは、従来の居宅サービスに類似のサービスであることから、消費税が非課税とされる居宅サービスの範囲等に追加することとされた(消令14の2③二)。
(2)介護保険法等一部改正法において、市町村の判断により地域支援事業を活用した軽度者向け予防・生活支援のための総合的なサービスを実施できる事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が創設された。当該サービスは、従前より消費税が非課税とされていた介護予防事業及び介護予防ケアマネジメント事業に、新たに介護予防サービス等事業、日常生活支援実施事業及び要支援者介護予防ケアマネジメント事業を追加し、介護予防・日常生活支援総合事業として整理されたものである。
このため、消費税においても、既存の関係告示を整理するとともに、消費税が非課税とされる居宅サービスの範囲等に介護予防・日常生活支援総合事業を追加することとされた(消令14の2③十二、平成24年厚労省告示第307号、平成18年厚労省告示第311号)。
(3)介護療養型医療施設については、本来、介護老人保健施設等の介護施設に入所すべき者が多く入院し、いわゆる「社会的入院」につながっているとの指摘があったことから、健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)により平成24年3月末までに廃止し、介護老人保健施設等に転換することとされていたが、最近の調査によりその転換が進んでいない実態が把握されたため、その廃止期限が平成30年4月1日まで延期されることとなった。
このため、介護保険法等一部改正法により、健康保険法等の一部を改正する法律の附則に経過措置規定を設けることにより、平成24年4月1日時点で指定を受けている介護療養型医療施設については、同法による改正前の介護保険法の規定は平成30年3月31日までの間はなおその効力を有することとされた。
これにより、当該経過措置に基づき引き続き存在することとなる介護療養型医療施設は、消法別表第1七に規定する「施設サービス」に該当しなくなるものの、介護サービスに類するものとして非課税とすることが適当であることから、消費税が非課税とされる居宅サービスの範囲等に当該施設の行うサービスを新たに追加することとされた(消令14の2③四、十三)。
上記改正は、平成24年4月1日から適用されている(改正消令附則、平成24年厚労省告示第308号)。
〈3〉その他の改正
1.身体障害者用物品の指定
(1)制度の概要 消費税においては、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の身体障害者用物品の譲渡、貸付け等が非課税とされている(消法別表第一第十号)。
非課税となる身体障害者用物品とは、具体的には義肢、盲人安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車椅子その他の物品で身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する物品として厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するものをいい、48品目が厚生労働省の告示により指定されている(消令14の4、平成3年厚生省告示第130号)。
(2)改正の内容 今回の改正では、新たに次の2品目が非課税物品に追加されたほか、既に非課税物品に指定されている物品で同告示の別表に個別製品名が掲げられているものについて、バージョンアップ等に伴う所要の改正が行われている。
○ 視覚障害者用音声方位磁石 視力に障害を有する者の方角に関する情報の入手を容易にすることのみを目的とする製品であって、点字、凸線等により操作ボタンが知覚でき、かつ、触覚や音声信号により情報を確認できる機能を有するものに限る。
○ 視覚障害者用音声色彩識別装置 視力に障害を有する者の色に関する情報の入手を容易にすることのみを目的とする製品であって、点字、凸線等により操作ボタンが知覚でき、かつ、触覚や音声信号により情報を確認できる機能を有するものに限る。
この改正は、平成24年4月1日から適用されている(平成24年厚労省告示第276号)。
2.旧身体障害者福祉法等に規定されていた授産施設に係る経過措置の期限到来に伴う所要の規定の整備 消費税が非課税とされる社会福祉事業のうち、課税対象とされる授産施設等において生産活動としての作業に基づき行われる資産の譲渡等に関する規定につき、障害者自立支援法制定時において、平成24年3月31日までの間はなお従前の例により運営することができることとされていた同法による改正前の身体障害者福祉法等に規定されていた授産施設(身体障害者授産施設、知的障害者授産施設、精神障害者授産施設、精神障害者福祉工場)に関する経過措置の期限到来に伴い、削除する改正が行われた(消令14の2④)。
Ⅱ.酒税関係の改正
1.入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例の適用期限の延長 本特例は、ウイスキー等に係る関税が無税とされたことに伴い、通関時における納税手続の簡素化を図る観点から講じられた措置であるが、ウイスキー等に係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成25年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成25年3月31日まで1年延長することとされた(措法87の5)。
2.沖縄県産酒類に対する酒税の軽減措置の改正
(1)改正前の制度の概要 沖縄県の区域内にある酒類の製造場のうち沖縄の酒税法の規定による免許を受けて復帰前から引き続き酒類を製造していたものとして所轄税務署長の指定を受けた製造場において製造された酒類で、平成24年5月14日までに、沖縄県の区域内にある酒類の製造場から移出されるもの(本土へ移出する目的で酒類の製造場から移出されるものは除く。)に係る酒税の税額は、泡盛等の単式蒸留しょうちゅうにあっては本土の税額の100分の65、その他の酒類にあっては本土の税額の100分の80とされていた(旧沖特法80①一、旧沖特令72)。
(2)改正の内容 本特例は、沖縄の復帰に伴い、本土税制の沖縄県における円滑な実施を図るための経過的な措置として講じられたものであり、沖縄県の産業振興、県民生活の安定向上に大きく寄与してきたところである。
本特例の適用期限の到来に際しては、沖縄県の社会経済情勢等を考慮して、その適用期限を平成29年5月14日まで5年延長することとされた(沖特法80①一、沖特令72)。
これにより、酒類製造者の経営の安定化を図ることを通じて、沖縄県産酒類の県外・海外市場への販売拡大、県産果実等の地域資源を活用した商品開発、関連産業の創出等の新たな事業展開による産業振興や地域雇用の確保を図ることとされている。
Ⅲ.たばこ税関係の改正
入国者が輸入する紙巻たばこに係るたばこ税の税率の特例措置の適用期限の延長
本特例は、紙巻たばこに係る関税が無税とされたことに伴い、通関時における納税手続の簡素化を図る観点から講じられた措置であるが、紙巻たばこに係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成25年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成25年3月31日まで1年延長することとされた(措法88の2)。
Ⅳ.租税特別措置法(石油石炭税関係)の改正
〈1〉地球温暖化対策のための課税の特例の創設
1.制度創設の背景及び制度の概要
(1)創設の背景 地球温暖化防止のための温室効果ガスの削減は、我が国のみならず地球規模の重要かつ喫緊の課題である。欧州諸国を中心とした諸外国では、1990年代以降、燃料などのCO2排出源に対する課税を強化し、価格メカニズムを通じたCO2排出の抑制や企業による省エネ設備導入の支援などを行う施策が進められている。
我が国では、温室効果ガスの約9割をエネルギー起源CO2が占めており、今後、省エネルギー対策、再生可能エネルギー普及、化石燃料のクリーン化などのエネルギー起源CO2の排出抑制対策を強化することは不可欠である。
こうした状況に鑑み、我が国においても税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、平成23年度税制改正では、上記の考え方に基づき、「地球温暖化対策のための税」を盛り込んだところであるが、国会における審議の結果、この改正事項については見送られることとされた。この改正事項については、地球規模の重要かつ喫緊の課題である地球温暖化対策を進める観点から、平成24年度税制改正大綱に盛り込まれ、24年度税制改正として実現することとされた。
(2)「地球温暖化対策のための税」の概要 地球温暖化対策のための税は、広範な分野にわたりエネルギー起源CO2排出抑制を図るため、全化石燃料を課税ベースとする現行の石油石炭税にCO2排出量に応じた税率を上乗せする「地球温暖化対策のための課税の特例」を設けることとされた。
この特例により上乗せする税率は、原油及び石油製品については1kl当たり760円、ガス状炭化水素は1t当たり780円、石炭は1t当たり670円とされている。
このように「広く薄く」負担を求めることで、特定の分野や産業に過重な負担となることを避け、課税の公平性が確保されている。また、導入に当たっては、急激な負担増とならないよう、税率を段階的に引き上げるとともに、一定の分野については、所要の免税・還付措置を設けることとされている。併せて、燃料の生産・流通コストの削減や供給の安定化、物流・交通の省エネ化のための方策や、過疎・寒冷地に配慮した支援策についても実施することとされている。
2.制度の内容
(1)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例 地球温暖化対策を推進する観点から、平成24年10月1日以後に原油、ガス状炭化水素若しくは石炭の採取場から移出される原油、ガス状炭化水素若しくは石炭又は保税地域から引き取られる原油若しくは石油製品、ガス状炭化水素若しくは石炭に係る石油石炭税の税額は、石油石炭税法第9条の規定にかかわらず、原油及び石油製品については1klにつき2,800円(760円の上乗せ)、ガス状炭化水素については1tにつき1,860円(780円の上乗せ)、石炭については1tにつき1,370円(670円の上乗せ)の税率により計算した金額とすることとされた(措法90の3の2)。ただし、導入に当たって、急激な負担増とならないよう、税率引上げは段階的に実施されることとなっており、具体的な適用税率は以下のようになる(改正法附則43②・③)。
なお、原油・石油製品、ガス状炭化水素(LNG等)、石炭に対し、二酸化炭素(CO2)1t当たり289円(炭素(C)1t当たりに換算すると1,060円)の税率の上乗せを行うこととされ、原油及び石油製品については1kl当たり760円、ガス状炭化水素は1t当たり780円、石炭は1t当たり670円の税率の上乗せを行うこととされた。
(参考1)CO2・1t当たり:289円
C・1t当たり:1,060円(289円×44/12〔CO2=12+16×2〕)
(参考2)原油及び石油製品:1kl当たり760円(289円×2.62㎏-CO2/l)
ガス状炭化水素:1t当たり780円(289円×2.70㎏-CO2/l)
石炭:1t当たり670円(289円×2.33㎏-CO2/l)
(2)地球温暖化対策のための税率の特例に係る免税・還付措置
① 特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置 特定用途石炭(苛性ソーダの製造業を営む者が自ら発電(苛性ソーダの製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供する石炭、塩製造業者が自ら発電(電流を流すことにより海水を濃縮する方法として一定の方法による塩の製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供する石炭をいう。)を、保税地域から引き取ろうとする場合において、平成24年10月1日から平成26年3月31日までの間に、その引き取ろうとする者がその保税地域の所在地の所轄税関長の承認を受けてその特定用途石炭を引き取るときは、その引取りに係る石油石炭税の税額は、上記(1)にかかわらず、石油石炭税法第9条第3号に定める税率により計算した金額とすることとされ(措法90の3の3①)、地球温暖化対策のための税に係る部分は免税とすることとされた。
この軽減措置は、苛性ソーダの製造及び塩の製造については、エネルギー集約度が極めて高いこと、地域雇用に重大な影響を与える可能性等に配慮して創設されている。
なお、軽減の申請は、その引き取ろうとする特定用途石炭が、苛性ソーダの製造業を営む者が自ら発電の用に供する石炭に該当するものである旨の経済産業大臣の証明書又は塩製造業者が自ら発電の用に供する石炭に該当するものである旨の財務大臣の証明書を添えて行うこととされている(措令48の6①)。
② 特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付措置 次頁の表に掲げる者が、石油石炭税課税済みの原油又は粗油から国内において製造された特定用途石油製品(次の表に掲げる石油製品をいう。)を、次頁の表に掲げる用途に供した場合には、これらの用途に供した特定用途石油製品につき、上記(1)の原油及び石油製品の税率により計算した石油石炭税額と石油石炭税法第9条第1号に定める税率により計算した石油石炭税額との差額に相当する金額をその特定用途石油製品の製造者又はその特定用途石油製品を保税地域から引き取った者(国税庁長官の承認を受けた者に限る。以下「承認輸入者」という。)に還付することとされた(措法90の3の4①)。
この還付措置のうち、特定の運送の用に供した場合(次頁の表1から4)については、環境負荷の少ない大量輸送機関としての活用(モーダルシフト)、公共交通機関としての国民生活上の重要性等に配慮し、農林漁業の用に供した場合(次の表5)については、生産過程においてCO2を蓄積・固定する効果、農林漁業経営の安定の確保等に配慮して、創設されている。
なお、還付の申請は、特定用途石油製品の製造者又は承認輸入者が、その特定用途石油製品が上の表の用途に供された日後1年以内(農林漁業の用に供された場合にあっては、2年以内)に、次頁の表の1から4までの用途に供された特定用途石油製品に該当する旨の国土交通大臣の証明書又は次頁の表の5の用途に供された特定用途石油製品に該当する旨の農林水産大臣の証明書を添えて行うこととされている(措令48の7①)。
③ 従前の石油石炭税の免税・還付措置 平成24年度改正前の石油石炭税に係る免税・還付措置が設けられている輸入・国産石油化学製品製造用揮発油等、輸入特定石炭、輸入沖縄発電用特定石炭等、輸入・国産農林漁業用A重油、国産石油アスファルト等については、「地球温暖化対策のための課税の特例」により上乗せされている税率についても、免税・還付措置が適用される。
3.適用関係 上記2(1)及び(2)の改正は、平成24年10月1日から実施されることになるが、「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」については、上述したように、3段階に分けて実施されることになる(改正法附則43②・③)。また、それに伴い、「特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置」及び「特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付措置」について、所要の措置が置かれている(改正法附則44①、45①)。
〈2〉特定の輸入石油製品等に係る石油石炭税の免税措置の延長
「特定の輸入石油製品等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、このうち、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」については、政策税制措置による安定的な設備投資の支援や我が国産業の国際競争力の確保という観点等も踏まえ、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた。
また、「輸入農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税措置」については、その適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、2年延長することとされ、平成26年3月31日までとされた(措法90の4)。
〈3〉輸入特定石炭に係る石油石炭税の免税措置の適用期限の延長
「輸入特定石炭に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限は、平成25年3月31日までとされていたが、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限の定めのない措置とすることとされたこと等を踏まえ、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた(措法90の4の2)。
〈4〉輸入沖縄発電用特定石炭に係る石油石炭税の免税措置の適用期限の延長等
1.改正の背景及び内容 沖縄県における電気供給業は、電力供給における構造的な課題を抱える中、エネルギーセキュリティや経済性の観点から、石炭火力発電所の導入を中心に進められてきたが、環境問題への適応、エネルギー供給源の多様化によるエネルギーセキュリティの向上等の観点から、石油や石炭に比べ燃焼時のCO2排出量が少ないLNGを燃料とした火力発電により、エネルギーセキュリティの向上及び電源の低炭素化を図ることを予定しているため、沖縄県の特殊事情にも鑑み、沖縄における電気の安定的かつ適正な供給を図るために、沖縄発電用特定LNGについて石油石炭税の免税措置の対象にすることとされた(措法90の4の3)。
また、「輸入沖縄発電用特定石炭に係る石油石炭税の免税措置」については、その適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、本税制措置については、事業者における経営効率化等の努力と相まって効果をもたらすことに留意することに鑑み、今後、電気料金の引き下げ効果等に係る検証を行っていくため、3年延長することとされ、平成27年3月31日までとされた(措法90の4の3)。
2.適用関係 沖縄発電用特定LNGについては、平成24年4月1日から保税地域より引き取られる沖縄発電用特定LNGについて適用される(改正法附則1)。
〈5〉特定の国産石油製品に係る石油石炭税の還付措置の適用期限の延長
1.改正の内容 「特定の国産石油製品に係る石油石炭税の還付措置」の適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、このうち、「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」については、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限の定めのない措置とすることとされたことと併せて、これとのバランス等を考慮して、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた(措法90の5)。
「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」については、その適用期限は、平成24年3月31日までとされていたが、2年延長することとされ、平成26年3月31日までとされた(措法90の6)。
また、「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」及び「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」は、上記〈1〉の「地球温暖化対策のための課税の特例」が創設され、平成24年10月1日より石油石炭税の税率が引上げられることに伴い、それぞれの還付の計算の基礎となる税率が1kl当たり2,800円とすることとされた(措法90の6)。
2.適用関係 「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」及び「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」における還付の計算の基礎となる税率の改正については、平成24年10月1日から適用される。また、当該税率について、「国産石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の還付措置」については、平成24年10月1日から平成26年3月31日までは1kl当たり2,290円、平成26年4月1日から平成28年3月31日までは1kl当たり2,540円とする経過措置が置かれており(改正法附則47)、「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置」については、平成24年10月1日から平成26年3月31日までは1kl当たり2,290円とする経過措置が置かれている(改正法附則48)。
〈6〉国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置の適用期限の延長
1.改正の内容 「国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置」の適用期限は、平成25年3月31日までとされていたが、「輸入石油化学製品製造用ナフサ等に係る石油石炭税の免税措置」の適用期限の定めのない措置とすることとされたことと併せて、輸入品と国産品の税負担のバランスを図るといった観点も踏まえ、その適用期限を当分の間延長し、適用期限の定めのない措置とすることとされた。
また、上記〈1〉の「地球温暖化対策のための課税の特例」が創設され、平成24年10月1日より石油石炭税の税率が引上げられることに伴い、国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置における還付の計算の基礎となる税率が1kl当たり2,800円とすることとされた(措法90の6の2)。
2.適用関係 国産石油アスファルト等に係る石油石炭税の還付措置における還付の計算の基礎となる税率の改正については、平成24年10月1日から適用される。また、当該税率について、平成24年10月1日から平成26年3月31日までは1kl当たり2,290円、平成26年4月1日から平成28年3月31日までは1kl当たり2,540円とする経過措置が置かれている(改正措令附則29)。
Ⅴ.租税特別措置法(自動車重量税関係)の改正
〈1〉自動車重量税の税率の特例
1.改正前の制度の概要等 自動車重量税は、自動車の走行が、道路混雑、交通安全、道路事故等に関連して多くの社会的費用をもたらしていることや社会資本の充実の要請が強いことを考慮して、広く自動車の使用者に負担を求めるために創設されたものであり、自動車が車検を受け又は届出を行うことによって走行可能になるという法的地位あるいは利益を受けることに着目して課税される一種の権利創設税である。その税率については、自家用の自動車に係るものは昭和49年度から、営業用の自動車に係るものは昭和51年度から、租税特別措置法に規定する特例税率が適用されており、平成20年度改正において平成30年4月末までの10年間の措置として延長されるまで、累次その適用期限が延長されてきた(旧措法90の11)。
また、その税収については、創設時から、国税の税収の約8割が道路特定財源とされていたが、残りの国分の税収の約2割を道路整備以外の一般財源に充ててきていたが、平成14年度以降、道路整備費以外への使途拡大を進め、平成21年度予算において、道路特定財源制度は廃止することとされた。
そして、平成22年度税制改正においては、車体の環境負荷に応じた複数税率を設定することにより、温室効果ガスの排出削減を促すこととされ、次世代自動車(電気自動車、一定のハイブリッド自動車等)について、自動車重量税法で定める本則税率を適用することとされ、自動車重量税の税率の特例の対象外とされた。また、温室効果ガスの削減効果を発揮する観点から、負担軽減を図る自動車について、優先順位を付けることが必要であり、すべての車両の種類について、平均使用年数(約18年)を超えるところまでを税負担の軽減対象とし、新車新規登録から18年を経過した環境負荷の大きい自動車については、平成22年度改正以前の税率維持することとされた(旧措法90の11、90の11の2)。
2.改正の内容 自動車重量税の税率については、車検証の交付等の時点で燃費等の環境性能に関する一定の基準を満たしている自動車には、本則税率を適用するとともに、それ以外の自動車に適用される「当分の間税率」について、13年超の自動車を除き、引き下げを行うこととされた。具体的には以下のとおりとなる。
(1)本則税率が適用される自動車 ① 電気自動車
② 天然ガス自動車のうち、平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの
③ プラグインハイブリッド自動車
④ ①から③までに掲げる検査自動車以外の検査自動車で次に掲げるもの
イ 乗用車(乗車定員10人以下の乗用自動車をいう。以下同じ。)及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(ガソリン自動車に限る。)
ロ 車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制(ディーゼル自動車にあっては平成21年排出ガス規制)に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上(ディーゼル自動車にあっては平成21年排出ガス基準値より10%以上)窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの
ハ 車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車(ガソリン自動車にあっては平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車)のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの
ニ 車両総重量が3.5tを超えるディーゼル自動車のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの
ホ 車両総重量が3.5tを超えるディーゼル自動車のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの
ヘ クリーンディーゼル乗用車(平成21年排出ガス規制に適合したディーゼル自動車であって乗用車に限る。)
(2)適用される税率 上記①~④以外の自動車に適用される当分の間税率は、次の表のとおりである。
3.適用関係 自動車重量税の税率の特例についての改正は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付等を受ける自動車について適用される(措法90の11①、90の11の2①、90の11の3①)。
〈2〉自動車重量税の免税等の特例(「エコカー減税」)の延長等
1.改正前の制度の概要 平成20年当時、厳しいわが国経済情勢の下で、自動車の販売台数が減少し、裾野の広い関連産業に影響を及ぼすことが懸念されたことから、自動車の買換・購入需要を促進し、自動車市場の後退に歯止めをかけるとともに、あわせて今後わが国が目指すべき低炭素社会の実現につながる措置を講ずる観点から、自動車重量税について、平成21年度改正において、環境性能に優れた自動車に係る負担を時限的に免除・軽減する措置(以下「エコカー減税」という。)が創設された。
具体的には、一定の環境性能を有する自動車につき平成21年4月1日から平成24年4月30日までの間に最初に受ける車検の際に納付すべき自動車重量税について、
(1)電気自動車や一定の要件を満たした天然ガス自動車・ハイブリッド自動車等の「次世代自動車」については免税とし、
(2)その他一定の排ガス性能・燃費性能を備えた低公害・低燃費車については、その性能に応じて75%若しくは50%軽減することとされていた。
また、平成22年度改正において、エコカー減税の対象に、新たに、車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラック等(ディーゼル・ガソリン車)を追加することとされた(旧措法90の12)。
2.改正の内容 エコカー減税については、地球温暖化対策の推進、自動車産業の技術的優位性の確保・向上等の観点を踏まえ、燃費基準等の切り替えを行うとともに、特に環境性能に優れた自動車に対する軽減措置を拡充した上で、平成27年4月まで3年延長することとされた(措法90の12)。
(1)排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい検査自動車のうち、平成24年5月1日から平成27年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるものについて、その納付すべき自動車重量税を免税、75%軽減又は50%軽減することとされた。
具体的な免税、75%軽減又は50%軽減となる対象車は、以下のとおりである。
① 免税対象車 イ 電気自動車(措法90の12①一)
ロ 天然ガス自動車のうち、平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの(措法90の12①二、措規40の2①・②・③)
ハ プラグインハイブリッド自動車(措法90の12①三、措規40の2④⑤)
ニ ガソリン自動車のうち以下のもの(措法90の12①四)
(イ)乗用車及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの(措法90の12①四イ、措規40の2⑥・⑦・⑧)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12①四ロ、措規40の2⑨)
ホ ディーゼル自動車のうち以下のもの(措法90の12①五)
(イ)クリーンディーゼル乗用車(平成21年排出ガス規制に適合したディーゼル自動車であって乗用車に限る。)(措法90の12①五イ、措規40の2⑩)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12①五ロ、措規40の2⑪)
(ハ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12五ハ、措規40の2⑫・⑬)
② 75%軽減対象車 イ ガソリン自動車のうち以下のもの(措法90の12②一)
(イ)乗用車及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一イ、措規40の2⑭)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一ロ、措規40の2⑮)
(ハ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一ハ、措規40の2⑯)
ロ ディーゼル自動車のうち以下のもの(措法90の12②二)
(イ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二イ、措規40の2⑰)
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二ロ、措規40の2⑱)
(ハ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二ハ、措規40の2⑲)
(ニ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②二ニ、措規40の2⑳)
③ 50%軽減対象車 イ ガソリン自動車のうち以下のもの(措法90の12③一)
(イ)乗用車及び車両総重量が2.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③一イ、措規40の2 )
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③一ロ、措規40の2 )
(ハ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12②一ハ、措規40の2 )
ロ ディーゼル自動車のうち以下のもの(措法90の12③二)
(イ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③二イ、措規40の2 )
(ロ)車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12③二ロ、措規40の2 )
(ハ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの(措法90の12③二ハ、措規40の2 )
(ニ)車両総重量が3.5tを超えるバス・トラックで平成21年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの(措法90の12③二ニ、措規40の2 )
(2)上記(1)により免税とされた上記(1)①の自動車については、新車に係る新規検査時に交付を受けた自動車検査証の有効期間が満了する日から起算して15日を経過する日までに受ける最初の自動車検査証の交付等(2回目の車検)に係る自動車重量税について、その納付すべき自動車重量税を50%軽減することとされた(措法90の12④)。ただし、新車に係る新規検査の際に確認された環境性能に影響を及ぼすような一定の改造が行われた場合には除かれる(措法90の12④かっこ書、措規40の2 )。
(3)上記(1)①イからホまでに掲げる自動車に該当する自動車(上記(1)及び(2)の適用があるものを除く。)については、平成24年5月1日から平成27年4月30日までの間に受ける最初の自動車検査証の交付等に係る自動車重量税について、その納付すべき自動車重量税を50%軽減することとされた(措法90の12⑤)。なお、この措置は、上記(2)の措置とのバランスを考慮して措置することとされたものである。
(注)上記(1)から(3)までにおいて、免税、75%軽減又は50%軽減の基礎となる自動車重量税の税率は、自動車重量税法第7条に規定する本則税率となる(措法90の10①、90の11の2①かっこ書、90の11の3①)。
(4)平成27年度燃費基準における試験方法(以下「JC08モード」という。)については、新型車は平成23年4月より、継続生産車は平成25年3月より、それぞれその測定及び燃費値の表示が義務付けられていることから、これを踏まえた自動車業界の自主的な取組みにより、新エコカー減税の対象となるJC08モードによる燃費値を有する自動車も既に多数存在しているところであるが、使用過程車や継続生産車の一部については、JC08モードによる燃費値を有しない自動車が一部存在している。
そのため、新エコカー減税の適用対象車と同程度の燃費性能を有しているJC08モードによる燃費値を有しない自動車については、新エコカー減税の適用対象車と同様に特例措置の減免対象とするため、所要の措置を講ずることとされた(措法90の12⑥、措規40の2 ~ )。
3.適用関係 本特例措置の改正は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付等を受ける自動車について適用される(改正法附則1一)
〈3〉乗合自動車等に係る自動車重量税率の特例の創設
1.制度の内容 平成24年5月1日から平成27年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける以下の自動車について、その納付すべき自動車重量税が免除することとされた。
(1)ノンステップバス(自動車検査証にその自動車がノンステップバスであることが記載されている自動車に限る。)(措法90の13一、措規40の3①一・②一)
(2)リフト付きバス(自動車検査証にその自動車がリフト付きバスであることが記載されている自動車に限る。)(措法90の13一、措規40の3①二・②二)
(3)ユニバーサルデザインタクシー(自動車検査証にその自動車がユニバーサルデザインタクシーであることが記載されている自動車に限る。)(措法90の13二、措規40の3③・④)
2.適用関係 本特例措置は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付を受ける自動車について適用される(改正法附則1一)。
〈4〉貨物自動車に係る自動車重量税率の特例の創設
1.制度の内容 平成24年5月1日から平成27年4月30日(下の(1)の自動車のうち車両総重量が22tを超えるもの及び(2)の自動車については、平成26年10月31日)までの間に新車に係る新規検査を受ける以下の自動車について、その納付すべき自動車重量税が50%軽減することとされた。
(1)車両総重量が8tを超える貨物自動車(一定の牽引自動車及び被牽引自動車を除く。)であって、衝突被害軽減ブレーキを搭載したもの(措法90の14①一、措規40の4)
(2)車両総重量が13tを超える貨物自動車(一定の牽引自動車に限る。)であって、衝突被害軽減ブレーキを搭載したもの(措法90の14①二、措規40の4)
2.適用関係 本特例措置は、平成24年5月1日以後に自動車検査証の交付を受ける自動車について適用される(改正法附則1一)。
なお、本特例措置の対象となる貨物自動車が、上記〈2〉の自動車重量税の免税等の特例(エコカー減税)の適用を受ける場合には、その措置による減免措置が優先して適用され、本特例措置は適用されないこととされている(措法90の14①かっこ書)。
〈5〉自動車重量税印紙の交換制度の創設
平成22年度税制改正及び平成24年度税制改正においては、税率の改正が行われたことに伴い、改正前の同額印紙を既に大量に保有している一部の車検工場等において、その印紙を死蔵させることなく納税が行えるよう、自動車重量税印紙の交換制度を設けることとされた(改正法附則71)。
本制度は、平成26年10月1日までの間において政令で定める日から適用される(改正法附則1八)。
Ⅵ.航空機燃料税関係の改正
沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長等
本土-沖縄本島間を航行する航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の対象に、本土-宮古島、石垣島又は久米島間の航路(那覇経由便を除く。)を追加することとされた(措法90の8の2)。
また、「沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置」については、その適用期限は2年延長することとされ、平成26年3月31日までとされた(措法90条の8の2)。
Ⅶ.揮発油税及び地方揮発油税関係の改正
沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に規定されている揮発油税及び地方揮発油税の適用期限の延長
本軽減措置は、その適用期限を3年延長することとされ、平成27年5月14日までとされた(沖特法80、沖特令74)。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.