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解説記事2012年09月10日 【解説】 日本のランドオペレーターが海外旅行会社にパック旅行を販売した場合の消費税の輸出免税(2012年9月10日号・№466)

解説
日本のランドオペレーターが海外旅行会社にパック旅行を販売した場合の消費税の輸出免税
 立正大学法学部教授 山下 学

序  論

 日本の国策として日本への観光客の誘致を進めようと、国土交通省に観光庁が設置され、海外からの観光客の誘致を積極的に進めている。その折りに3・11東日本大震災が発生し、特に福島の原子力発電所のメルトダウンを嫌って、海外からの日本への観光客が大減少していた現実は知られていることだろう。今年になって、日本政府観光局(JNTO)は外国からの訪問者の大幅増加、669,061人と前年比87.0%増の暫定値を発表したが(脚注1)、これは大震災前の訪日者数に戻りつつあるだけで、原子力発電所、外交・領土問題等悪イメージに加えて、円高、物価高は外国人の訪日を積極的にはさせないようである。その日本に対する悪イメージを払拭させ、外国人観光客の誘致を図らなければならないところ、日本の消費税制はそれを拒んでいるようである。本論では、包括型旅行商品(いわゆるパック旅行)について、消費税の輸出免税の考え方について考えてみたい。


タイのバンコクで見た「海外旅行の宣伝看板」  韓国と上海が28,900バーツ、日本は56,300 バーツ(1バーツ=約2.52円)。つまり、日本へは日本円で14万円以上。タイの非農業の平均月収が平均月収10,534バーツであることを考えると、日本旅行の敷居の高さが分かるであろう。

Ⅰ.包括旅行のインバウンド商品は旅行者個人に販売するものではない
 課税当局の外国人パック旅行の消費税の課税関係に対する見解は、日本側ランドオペレーター(以下、「インバウンド業者」という。)が各種サービス提供機関から役務の提供を受け海外旅行社を経由して非居住者である旅行者に提供したものと考えているようである。しかし、インバウンド業者は日本国内役務の提供を海外旅行業者に「包括的」に販売しているだけであって、役務の提供の対価を支払っているのは海外旅行会社の旅行に応募した外国人旅行者が、間接的に支払っているだけである。インバウンド業者は海外旅行会社の顧客である旅行者に対して、日本国内で本件役務提供を行っているわけではない。しかし、現在、このような見解での消費税の輸出免税にかかる調査が続出しており、論者としても看過する訳にはいかない。
 論者は、同様事案の「鑑定意見書」(脚注2)で、要旨、
(1)企画旅行業の役務の提供について ① 本件は、包括型企画旅行を海外に対して役務の提供をする旅行会社の事案である。
② A社の事業は、海外の旅行会社に、A社が企画する外国人の「日本観光旅行」を企画し、日本国内旅行部分のみを包括的に受注して販売する、いわゆるインバウンドの業者である。
③ 海外から日本への航空料金は、包括型旅行商品の仕入れ先の収入となり、A社の利益の基盤となるのは、日本観光旅行の企画商品料のみである。
④ 日本観光旅行の受注に際しては、移動に係る費用(バスのチャーター料代等)、宿泊の費用、観光施設の入場料、通訳に支払う通訳料、ガイド料等を積算し、包括的に利益が上がるようにして、料金設定をしている。
⑤ 日本観光旅行の役務の提供は日本国内で行われ、上記④の支払は消費税の課税対象となるが、この支払は海外の旅行会社を通じて支払われた包括型企画旅行の対価の中から支払われている。
⑥ しかしながら、A社が役務の提供をしているのは、「包括型企画旅行」商品そのものであり、事業として対価を得て行われる役務の提供は、上記③のとおり、「日本観光旅行の企画商品」であって、これを海外の旅行会社に譲渡している。
(2)消費税の課税 ① 消費税法第2条第8号では「資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。」とし、役務の提供が「資産の譲渡等」に含まれることとしている。そして、同法第4条では「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」としながら、同法同条第3項第2号では、「役務の提供である場合 当該役務の提供が行われた場所」が国内か否かを判断材料としている。
② 消費税法施行令第17条第2項第7号では「法第7条第1項第3号、前項第3号及び第1号から第5号までに掲げるもののほか、非居住者に対して行われる役務の提供で次に掲げるもの以外のもの 
 イ 国内に所在する資産に係る運送又は保管
 ロ 国内における飲食又は宿泊
 ハ イ及びロに掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの」と規定している。
③ ①及び②から判断すると、海外旅行会社に対する「包括型企画旅行」は、非居住者に対して行われる役務の提供で、消費税法施行令第17条第2項7号のイ、ロ、ハのどれにも該当しない。非居住者である海外旅行会社に一括して譲渡される役務の提供である。
④ したがって、本事例の包括型企画旅行商品の海外旅行会社への役務の提供は、全てが一つのパッケージとして、消費税法第7条第1項第5号に定める「輸出免税等」に該当する。
(3)課税庁の見解と反論 ① 国内のインバウンド業者が、日本旅行の企画を立てて、海外の旅行社に販売した場合、日本国内の宿泊、飲食、交通等の手配料に関しては課税取引(課税仕入れ)である。
② 海外旅行社に販売した商品は、非居住者が日本国内で便益を受けた宿泊、飲食、交通費に関しては、課税取引(課税売上)である。
③ 海外旅行社に販売した商品売り上げの内、非居住者が日本国内で便益を受けた宿泊、飲食、交通費等の原価以外の部分は、輸出免税である。
との見解を課税庁では提示した。
④ しかしながら、日本観光旅行の受注に際しては、移動に係る費用(バスのチャーター料代等)、宿泊の費用、観光施設の入場料、通訳に支払う通訳料、ガイド料等を積算し、包括的に利益が上がるようにして料金設定をしているものであり、それぞれ個別対応しているとはいえない。
⑤ A社が取引を行っているのは、外国法人への「包括旅行商品」であって、個別の日本国内の宿泊、飲食、交通等の手配料ではない。
⑥ A社は、「包括旅行商品」を海外の旅行社に直接、譲渡している。旅行申込者(旅行者)に対して直接、役務の提供を行っているのではない。
と意見書を提出した。

Ⅱ.平成23年6月14日裁決の位置づけ
 国税不服審判所はインバウンド業者の包括旅行商品の消費税の輸出免税について、平成23年6月14日に棄却の裁決(脚注3)を出した。
 本事例は、本件は、旅行業を営む審査請求人が、日本国内旅行をパッケージ商品として外国法人に販売した取引は、消費税法第7条《輸出免税等》第1項各号に規定する消費税が免除される課税資産の譲渡等(以下「輸出免税取引」という。)に該当するとして、その売上げを消費税の課税標準に含めないで消費税及び地方消費税の確定申告をしたのに対し、原処分庁が、当該売上げのうち日本国内における飲食、宿泊、輸送等のサービスの提供に係るものは、請求人の非居住者に対する日本国内における役務提供の対価であり輸出免税取引には該当しないとして消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をしたところ、請求人が、これらの処分の全部の取消しを求めた事案である。争点は、当該取引のうち飲食、宿泊、輸送等の役務の提供は、消費税法第7条第1項第5号及び消費税法施行令第17条第2項第7号に規定する輸出免税取引に当たるか否かについて争われた。
 この課税処分に対し、国税不服審判所は要旨、下記の裁決を示した(抜粋)。「消費税法施行令17条2項7号は、非居住者に対して行われる役務の提供については原則として輸出免税取引としているが、同号イないしハにおいて、国内に所在する資産に係る運送又は保管、国内における飲食又は宿泊及びこれらに掲げるものに準ずるもので、非居住者が国内において直接便益を享受するものは輸出免税取引の対象にならないことを規定しており、この規定は、非居住者に対して行われる役務提供の内容(便益の享受つまり消費が国内で完結する性質)に着目した規定であると解される。」としたうえで、「外国法人に販売した本件国内パッケージツアーの対価に含まれる飲食、宿泊、輸送等の役務の提供は輸出免税取引に該当しない」とした。
 小職の消費税法施行令同条文の解釈とは全く異なっており、それは、国税不服審判所が包括旅行と手配旅行を混同していることが原因と考えるので、以下に摘示したい。また、輸出免税取引であるかどうかを検証する前に、誰と誰の間の、どの取引を検証するのかを明確にする必要がある。裁決にかかる請求の対象となる取引は、日本のインバウンド業者と、海外の旅行会社との間で行われたものである。この取引が輸出免税取引にあたるかどうかが争点となるところ、①旅行者はインバウンド業者の取引相手ではない。インバウンド業者の顧客(取引先)は海外の旅行会社であり、海外の旅行会社の顧客こそ、海外在住・訪日した旅行者である。②裁決には、消費税法施行令第17条第2項第7号ロまたはハに、「非居住者に対する飲食または宿泊、バス、タクシー等による旅客の輸送」は輸出免税取引に該当しないとあるが、該当するかしないかに関わらず、日本の旅行社と海外からの旅行客の間には、そもそも取引の事実がないのでこの解釈は意味を為さない。この規定は、日本のホテル等が非居住者と、直接にせよ間接にせよ取引を行った場合に、その取引が輸出免税にあたらないとしたものである。
 なお、川田剛教授の本裁決の事例研究(脚注4)においても、「本件取引において輸出免税に該当するか否かが争われているのは-略-本件取引とは無関係の者である」「国内において実際に役務の提供を行っている者は-略-バス会社、ホテル等である。したがって、消費税法施行令第17条第2項第7号の規定の文言を素直に読む限り、請求人は輸出免税の適用が受けられない同号イ~ハのいずれにも該当しない。その結果、請求人は輸出免税の適用が受けられると解さざるを得ない。」と述べられている。

Ⅲ.包括旅行商品の法的性格と手配旅行との相違
 ここで、包括旅行商品といわゆる個人旅行(手配旅行)の違いを考えなければならない。
 (1)旅行業法の平成16年5月27日の改正により、企画旅行契約が創設された。この企画旅行契約は、募集型企画旅行契約と受注型企画旅行契約に分類される。前者は、平成16年改正以前の旧旅行業法の主催旅行、後者は、同旧法の包括料金特約付き企画手配旅行に相当する(脚注5)。
 旅行者は消費者契約法上の消費者に該当する場合が通常であると考えられ、消費者契約法の立法趣旨からしても、旅行業者と旅行者との間には情報の質および量の格差は大きいので、むしろ旅行者の方をより保護すべきと考えられる。旅行者は、この情報格差により、どこの宿泊業者、運送業者等の業者とまたどのような内容で契約締結すればよいかの判断力が旅行業者よりは劣位する。まして、募集型企画旅行契約においては、旅行業者が宿泊業者、運送業者等の業者を選定し、しかもその料金まで交渉した上で、パックで旅行代金を設定してから、旅行者を募っているものである。これに対し、旅行者は旅行業者から提案された旅行サービス(直接提供する業者をどの業者にするかも含めて)を受領する受動的な立場である。このように旅行業者が自ら設定した以上、大抵の場合、旅行業者にも旅行計画作成上の過失があり、旅行者でなく旅行業者が直接サービス提供する業者の不履行にかかるリスクも負担すべきであると考える。
 したがって、パッケージ旅行の日本旅行部分(インバウンド)を提供する日本の旅行業者の、包括的旅行商品を海外旅行業者に販売する行為は「輸出取引」であり、輸出免税が適用されてしかるべきである。

脚注
1 http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/visitor_trends/data_zantei.html参照。2012年5月の暫定値。2012年8月20日現在。
2 市川税務署長及び芝税務署長、豊島税務署長宛の消費税の税務調査時における「鑑定意見書」。主要部分の主張は同様である。
3 裁決事例集83集1011頁(要旨のみ掲載)、LEX/DB26012477
4 川田剛「外国旅行業者に販売したパッケージ商品と輸出免税のとの関係について」税務事例第44巻1号(2012年1月)
5 堀竹学「企画旅行契約の法的性質」参照。

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