コラム2012年10月22日 【税実務Q&A】 譲渡損益調整資産と適格合併等(2012年10月22日号・№472)

税実務Q&A
No.140 法人税>利益の額又は損失の額
譲渡損益調整資産と適格合併等
 公認会計士緑川事務所 税理士 莟 秀明

 内国法人であるA社は、平成22年12月に土地(譲渡損益調整資産)を100%子会社B社に譲渡し、いわゆるグループ法人税制により、その譲渡益を繰延べています。
 次の場合、A社が繰延べた譲渡益の取扱いはどうなりますか。
(1)A社とB社が適格合併し、A社が解散する場合(A社とB社に完全支配関係あり)
(2)B社がC社と適格合併し、B社が解散する場合(B社とC社に完全支配関係なし)
(3)A社が解散し残余財産が確定した場合(A社と株主X社に完全支配関係あり)

 いわゆるグループ法人税制により、譲渡損益調整資産に係る譲渡損益を繰延べた場合において、譲渡法人が譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなったときは、譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、譲渡法人の益金の額又は損金の額に算入します(法法61の13③)。
 これは、100%グループ内での再譲渡があった場合も同様ですが、譲渡法人が適格合併により解散した場合や、譲受法人が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により譲渡損益調整資産を移転したときは、当初の課税の繰延べを継続する取扱いがあります(法法61の13⑤⑥)。
 なお、この取扱いは、再編当事会社の間に完全支配関係がある場合に限られ、適格組織再編成であっても完全支配関係がない場合には、原則どおり、当初の譲渡法人で譲渡損益が実現するため留意が必要です。
(1)A社とB社が適格合併する場合  A社とB社との合併が適格合併に該当し、両社間に完全支配関係があるときは、A社の譲渡損益調整勘定が合併法人B社に引継がれ、B社を譲渡法人とみなして、譲渡益の繰延べが継続します(法法61の13⑤)。
 質問の場合、譲受法人と譲渡法人とみなされる法人が同一(B社)となり、B社が譲渡等するまで譲渡益が繰延べられます。
 質問とは反対に、譲受法人B社が適格合併により解散する場合には、譲渡法人A社を譲受法人とみなします(法法61の13⑥)。
(2)B社とC社が適格合併する場合  B社とC社との間には完全支配関係がないため、適格合併であっても、原則どおり、A社において繰延べた譲渡益が実現します。
(3)A社が解散する場合  譲渡法人A社が解散する場合は、合併による解散と異なり、A社とA社の株主X社の間に完全支配関係があったとしても、A社において繰延べた譲渡益が実現します(法法61の13③)。
 これは、「適格合併と異なり株主が1とは限らないため、株主が2以上ある場合に通知義務の履行や譲渡利益額及び譲渡損失額の計上について困難化・複雑化する懸念があるため(平成22年度税制改正の解説200頁)」と説明されています。

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