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解説記事2013年02月25日 【税制改正解説】 平成25年度税制改正解説(2013年2月25日号・№488)

税制改正解説
平成25年度税制改正解説
 一般社団法人 日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部泰久

Ⅰ はじめに-平成25年度税制の決定プロセス

 1月24日、自民・公明の新政権は、異例の年明けの税制改正で平成25年度税制改正大綱(以下「大綱」)を決定した。本稿では、大綱の概要を紹介しながら、その背景にある政治的意図、今後の課題などを考察していくが、税制改正の中身に入る前に、まず、政権交代により、税制改正の決め方がどのように変わったのかを見ておきたい。
 民主党政権は、当初は与党内に税制を審議する場を置かず、政府税制調査会を決定の場とした。2年目には民主党税制調査会が復活したが、これは与党の意見をまとめて政府税制調査会に伝えるための組織と説明されていた。しかし、政府税制調査会は各省の代弁者の集まりでしかなく、相互に矛盾・対立する税制改正要望を整理し、税制改正を決定することは難航した。
 自公政権は、与党内で税制改正を決めることとして、政府税制調査会は実質的に廃止された。最初に復活したのは自民党税制調査会の「インナー」であり、総選挙結果判明の直後、12月19日に開催されている。なお、当初のメンバー7人のうち、伊吹文明氏が衆議院議長に、石原伸晃、林芳正の両氏が入閣していることは、インナーの顔触れの重要さを示唆している。この場で、平成25年度税制改正のスケジュールと、公明党との与党税制協議会の設置、一体改革関連は民主党を含めた3党で協議することを確認している。さらに新政権発足前の12月21日には正副顧問幹事会を開き自民党税制調査会は実質的に動き出した。その後、12月27日に、抜けた3氏を除く4人でインナーを開催し、税制改正の具体的な検討項目と手順を確認し、財務省・総務省に準備を指示している。
 年明けの1月7日の自民党税制調査会総会では、正副顧問幹事会の幹部人事、検討項目、与党としての大綱を1月末までに取りまとめることを決定した。以降、正副顧問幹事会、国会議員であれば参加自由の小委員会、インナーや与党協議を含めれば、12日、13日以外の全ての日に何らかの会合を設定し、24日の大綱決定に持ち込んでいる。
 自民党税制調査会は完全に復活し、中でもインナーの位置付けは、旧来以上に高まっている。もともとインナーは、正副顧問幹事会、小委員会の前に議論を整理する場であったが、今や実質的な決定機関となっている。インナーの役割の高まりは、短期決戦での大綱とりまとめ、与党税制協議会、さらには、民主党を含めた3党協議会によって決すべき事項がある中で、速やかに自民党としての意見集約を必要としたことが理由として挙げられる。
 それでは、なぜ短期間での大綱とりまとめを必要としたのか。1月24日の大綱とりまとめは、1月末までの平成25年度政府予算案の決定からの逆算である。また、緊急経済対策関連を重要な内容とする平成25年度税制改正法案を年度内に成立させることは、参議院選挙前までに景気回復を図るためにも不可欠である。そのためには、自公で衆議院の3分の2を超える議席を有し再議決が可能であるとしても、2月中できるだけ早期に法案を提出し、迅速に衆議院を通過させ、参議院に送らなくてはならない。
 逆に、短期間で取りまとめができたのには、25年度税制改正でやるべきことが予め決まっており、自民党内での重大な対決案件は車体課税ぐらいでしかなかったことも大きい。
 前の自公連立政権でも、与党としての税制改正の決定は、双方の税制調査会の代表者からなる与党税制協議会で決しており、今回、自民党税制調査会の審議と並行して、頻繁に与党税制協議会が開催されたことは当然でもある。しかし、与党税制協議会の性格を大きく変えたのは、一体改革の積み残し課題については民主党を含む3党協議の前の与党内調整の場となったからである。
 民主党政権下、2010年参議院選挙後のねじれ国会での一体改革関連法案成立のため、消費税率引上げを政策として掲げる自民党、公明党との協力が不可欠となった。「社会保障・税一体改革大綱(2012年2月17日閣議決定)」以降、2012年6月の3党合意を経て、同年8月の税制抜本改革法成立に至る過程は、3党協議がメインの場となった。その中で、積み残された所得税最高税率引上げ、相続税・贈与税見直し、消費税率引き上げに伴う住宅対策、車体課税等の課題は、引き続き3党間で協議して成案を得ることとされていたが、自公が衆議院で絶対多数を得たことでその扱いが注目されていた。しかし、野田会長は3党合意の結果を誠実に尊重することを言明し、3党協議はそれなりに有効に機能して、所得税最高税率引上げ、相続税・贈与税見直し等は、旧民主党政府案に近い形で決着をみた。これは、参議院で民主党の協力を得て円滑に税制改正法案を処理したいとの意向もあるが、自公間での意見の相違がある項目を3党協議に持ち込むことで、公明党をけん制する結果にもなっている。

Ⅱ 緊急経済対策
 25年度税制改正の第1の姿は、緊急経済対策の一環としての税制措置である。安倍内閣は1月11日、事業規模20兆円超にのぼる「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定した。この対策による実質GDP押し上げ効果は概ね2%程度、雇用創出効果は60万人程度と見込まれており、25年度税制改正はその一翼を担うべく、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」を税制から補強するための「民間投資や雇用を喚起し持続的成長を可能とする成長戦略に基づく政策税制措置を大胆に講ずる」こととなった。これは、政策税制を不公平税制として縮小しようとしていた民主党政権からの180度の転換である。

1.民間投資促進  経済対策として民間設備投資を刺激する税制措置は常套手段でもあるが、今回の目玉とされている「生産等設備投資促進税制」は、今までの政策税制の常識の範囲を越えるものである。具体的には、生産等設備の国内総投資額が減価償却費を越え、かつ、前年度比10%超の増加である場合に、業種・機器限定をせずに国内で取得する機械・装置(工場建屋等は含まれない)について30%の特別償却または3%の税額控除を認めるものであり、減収額も1,050億円(平年度)を見込んでいる。平成10年以降、国内の設備投資額は毎年の減価償却費以下の水準に落ち込み生産設備の老朽化が懸念される中で、国内でのものづくりを維持するために、2年間の時限措置ではあるが精いっぱいの優遇措置である。
 研究開発税制についても、総額型の税額控除限度額が、法人税額の20%から30%に戻された。平成23年度税制改正において法人税率引下げのための課税ベース拡大策の一環として、税額控除限度額が法人税額の30%から20%に縮減されたが、復興特別法人税が課されたため、わが国経済の先導役となるような企業に法人税率引下げ前より増税となる企業が続出し、経団連でもその復元を平成25年度税制改正の最重要課題として取り組んできた。復興特別法人税が終了するまでの2年間の措置であるが、わが国の研究開発基盤を維持するためにも重要な改正である。
 このほか、環境関連投資促進税制も、ほぼ経済産業省要望通りの形で実現している。

2.雇用・労働分配対策、人材育成  緊急経済対策で、民間設備投資とならんで重要視されていたのが、雇用・労働分配拡大であり、今回のもうひとつの目玉が「所得拡大促進税制」の創設である。3年間の時限措置として、基準年度(平成24年度)と比較して、給与等支給額(賞与等を含む)を5%以上増加させ、前事業年度を下回らず、かつ、平均給与等支給額が前事業年度を下回らない場合に、基準年度からの増加額の10%の税額控除(控除限度額は法人税額の10%、中小企業等は20%)ができる。増加人件費税額控除ともいうべき異例の制度である。減収額も1,050億円(平年度)を見込んでいる。また、雇用促進税制も、雇用者増加1人当たりの税額控除を20万円から40万円に引上げ、前者との選択適用とされる。
 税制措置のみで雇用の増加や、労働分配率を高めることには限界があるが、緊急経済対策さらにはアベノミックスと言われる新内閣の経済政策全体が奏功して、日本経済が拡大局面に入ることになれば、雇用拡大や賃金引上げに向けて一定の効果を持つことになるものと期待したい。
 なお、与党大綱では、併せて人材育成策と銘打ち、子・孫への教育資金として1,500万円までの一括贈与を非課税とする制度が創設されるが、経済対策というよりは相続税増税の影響緩和策である。

3.中小企業・農林水産業対策  従来のいずれの経済対策でも中小企業が重視されてきたが、今回も、前述の生産等設備投資促進税制の適用対象とならない、商業・サービス業・農林水産業を営む資本金3,000万円以下の中小企業が経営改善として店舗改修等を行う場合に、設備投資額の30%特別償却・7%税額控除ができる制度を創設する。
 また、中小法人の交際費課税の損金算入特例が、上限額600万円までの交際費支出額の90%から、上限額800万円までの交際費支出額の全額に拡大される。

Ⅲ 一体改革の残された課題
 25年度税制改正の第2の姿は、税制抜本改革としての一体改革の積み残し課題の実現である。
 昨年6月15日の「社会保障・税一体改革」に関する民主・自民・公明の3党協議の結果、政府提出の税制抜本改革法案から所得税の最高税率引上げ、資産課税の見直しの規定が削除され、これらについては「平成24年度中に必要な法制上の措置を講ずる(附則第20条、第21条)」とされ、平成25年度改正の課題とされていた。また、消費税率引上げに伴う低所得者対策、住宅取得への影響緩和、車体課税の見直しなどについても「速やかに必要な措置を講じなければならない」ものとされていた。

1.所得税の最高税率引上げ  昨年の3党協議では、所得税の最高税率引上げをめぐり課税所得5,000万円超について45%とする政府・民主党案に対し、公明党は3,000万円超45%さらに5,000万円超50%の2段階の引上げを主張して合意に至らなかった。自民党は具体的な主張をしておらず、むしろ消極的であったとされる。
 今回、まず自民・公明の与党間で最高税率を45%に引上げることを合意し、適用所得は3,000万円超から5,000万円超の間で民主党に決定を委ねるという奇策に出た。結果、その中間点の4,000万円超となったが、この最高税率が適用される所得階層は事業所得者等を含め全体で5万人程度、増収見込み額も590億円(平年度ベース)であることから、消費税率引上げの傍ら高額所得者にはさらなる負担を求めるという象徴的な意味でしかないと言われている。しかし、24年度税制改正では給与所得控除の上限設定・役員等の減額がなされており、今回の最高税率引上げを加えて該当者にとっては、かなりの負担増となる。

2.資産課税の見直し  相続税については、昨年の3党合意では「バブル後の地価の大幅下落等に対応して基礎控除の水準を引下げる等としている旧政府案を踏まえつつ検討を進める」とされており、抜本改革法においても「格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点(附則第21条)」からの見直しが明記されていた。
 総選挙公約では、民主党は所得再分配機能などを高める方向で相続税の改正を行うことを、公明党も基礎控除の引下げや最高税率の引上げを明記していた。一方、自民党は24年度中に必要な法制上の措置を講じるとするのみで具体的な主張をしておらず、課税強化には消極的とも見られていた。ところが、実際の3党協議では、自民党も基礎控除引下げ、税率構造の見直し等には異論を示さず、死亡保険金の非課税措置の対象範囲縮小が見送られていることを除き、旧政府案通りに3党で合意された。贈与税も、税率構造の見直し、相続時精算課税制度の対象者を孫までに拡大するなど、旧政府案通りに決着している。
 ただし、自民党税制調査会では、基礎控除の大幅引下げにより大都市部では小規模自営業者の相続までが課税対象になるとの批判が高まり、小規模宅地等についての課税価格計算特例のうち、居住用宅地の適用対象面積を240㎡から330㎡に拡大した上で、自営業者の店舗等の特定事業用宅地(400㎡まで)と合算し、最大730㎡までを80%減とすることとされ、公明、民主両党も追認している。
 このほか、25年度税制改正では事業承継税制の見直しがなされているが、3党協議でのテーマとされていなかったので後述する。

3.消費税率引上げに伴う低所得者対策=複数税率  今回の与党協議、3党協議の中で最も重要なテーマが、消費税率引上げに伴う低所得者対策としての軽減税率の扱いであった。昨年の3党協議では、民主党が給付付き税額控除の導入を主張、公明党は軽減税率の早期導入を主張し、抜本改革法では、法第7条一号イに、「給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。」としつつ、同号ロに「低所得者に配慮する観点から、複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する。」として両論併記の形になっている。
 総選挙公約では、公明党は8%の段階から軽減税率導入を明記し、自民党も食料品等に対する複数税率の導入を検討し、関係者の理解を得た上で実施としていた。しかし、与党税制協議会では、自民党は来年4月1日の8%引上げ時点での軽減税率導入は不可能と主張し、公明党は米、味噌、醤油、水、新聞に限って8%引上げ時点から軽減税率を導入し、10%引上げ段階でさらに対象を拡大することを提案し、取りまとめができなかった。なお、公明党が実現可能性を無視してあえて8%段階からの導入に固執したのには軽減税率を5%に止めるとの意向があったためとされる。
 結局、「消費税率の10%引き上げ時に、軽減税率制度を導入することをめざす」とし、本年末の平成26年度税制改正決定時までに「関係者の理解を得た上で、結論を得る」として、与党税制協議会に軽減税率制度調査委員会を設置することで合意し、その旨を与党税制改正大綱に明記した。公明党は、これを10%引上げ時の軽減税率導入を担保するものとしているが、自民党はあくまでも「めざす」ものでしかないとしている。また「関係者の理解」とは、日本商工会議所をはじめとする中小企業団体の理解を得ることが前提との趣旨であり、そのために具体的検討課題に、「インボイス制度など区分経理のための制度の整備」、「中小事業者等の事務負担増加、免税事業者が課税選択を余儀なくされる問題への理解」が明記されている。ここでインボイス導入に限定せずに「区分経理のための制度」とされていることは注視すべきであり、インボイスなしでの軽減税率導入が示唆されたものと考える。

4.住宅取得対策  住宅取得対策について昨年の3党合意では、「平成25年度以降の税制改正及び予算編成の過程で総合的に検討を行い、消費税率の8%への引上げ時及び10%への引上げ時にそれぞれ十分な対策を実施する」とされており、必ずしも平成25年度改正ですべての対策を用意することとはされていなかった。
 しかし、「消費税率の引上げの前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きいことを踏まえ(抜本改革法第7条一号チ)」、税制措置については今回で処理することとされ、住宅取得税制(住宅ローン減税)について平成29年末まで延長し、26年4月以降は大幅に拡充することとされた。また、自己資金による住宅取得特例、住宅リフォームについても同様に26年4月以降分の拡充がなされている。
 一方、中堅以下の所得層では住宅ローン減税で所得税・個人住民税から控除し切れない部分が生じる問題については、個人住民税の控除限度額引上げのみを決定し、いわゆる財政措置の具体的な内容は示されず「別途、良質な住宅ストックの形成を促す住宅政策の観点から適切な給付措置を講じ」、税制措置とあわせて「消費税負担額をかなりの程度緩和する」ことが与党大綱に明記されて終わった。

5.自動車課税の見直し  車体課税は、今回の税制改正で最後まで錯綜し、結論を実質的に先送りして終わった。
 昨年の3党合意では、自動車取得税、自動車重量税については「抜本的見直しを行うこととし、消費税率8%への引上げ時までに結論を得る」こととされていたが、抜本改革法では「国及び地方を通じた関連税制の在り方の見直しを行い、安定的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減及びグリーン化の観点から、見直しを行う(第7条一号カ)」となっており、単純な廃止は想定されていなかった。
 総選挙公約では、自民党は取得税及び重量税について廃止を含め負担軽減の方向で検討し8%への引上げ時までに結論を得るとし、公明党も自動車税制は簡素化、特に取得税は廃止を目指すとしていた。民主党はもともと取得税、重量税について負担の軽減、簡素化の主張である。今回の与党協議では、公明党は取得税の廃止及び重量税のいわゆる当分の間税率(道路財源時代の暫定税率)分の縮減を主張し、3党協議では、民主党から両税の廃止が求められた。
 しかし、自民党税制調査会の中では、2,000億円を超える自動車取得税収、さらには3,000億円弱の自動車重量税の地方譲与分の代替財源の確保がない限り両税の廃止・縮減はできないとする多くの地方自治体の声に押され、さらには道路財源化復活の主張まで現れて、調整がつかない状態となった。最終段階には、野田毅会長と自動車議連会長をも務める額賀福志郎小委員長との間で、大綱案取りまとめ直前の深夜まで調整が行われたが、時間切れとなり、車体課税の扱いは平成26年度改正に先送りされた。
 与党大綱では、取得税については「安定的な財源を確保して、地方財政への影響に対する適切な補てん措置を講じることを前提に」2段階で引き下げ、消費税率10%の時点で廃止するが、「必要な財源は別途措置する」こととなった。また同時に都道府県税である自動車税について、「安定的な財源確保の観点から、地域の自主性、自立性を高めつつ、環境性能に合せた課税を実施することとし、他に確保した安定的な財源と合わせて、地方財政へは影響を及ぼさない」とされている。これは、他の財源が見出せなければ、取得税の代替財源を自動車税の増税により補てんできるように、自動車税の税率等を各都道府県の判断により引上げることを可能とすることを示唆しているものと思われる。
 重量税についても、平成26年度改正に先送りされたが、「その税収について、道路の維持管理・更新等のための財源として位置付け、自動車ユーザーに還元されるものであることを明らかにする方向で見直しを行う」ことが明記された。この個所は、自民党内で税制調査会がとりまとめた大綱案を形式的に審査するはずの場であった政策審議会で問題となり、かつてのような道路特定財源化を意味しないとの理解で案文通りとされたが、平成26年度改正に大きな火種を残すこととなった。

Ⅳ その他の改正項目
 平成25年度税制改正のその他の項目として重要であるのは、事業承継税制の見直し、金融証券税制、納税環境整備とされる利子税等の見直しである。

1.事業承継税制の見直し  事業承継税制は平成21年度税制改正で創設されたが、要件が厳しすぎるため平成23年度末までの活用実績は507件にとどまり、日本商工会議所はじめ中小企業団体から見直しが求められていた。また、税制抜本改革法でも「その活用を促進するための方策や課税の一層の適正化を図る措置について検討を行い(第7条四号イ)」相続税の見直しとあわせての改正が規定されていた。
 今回の見直しでは、最大の障害とされてきた雇用確保要件の緩和、先代経営者の役員退任要件の緩和、事前確認制度の廃止のほか、利子税の負担軽減、後継者を親族以外にも拡大するなど、合理的な要望事項はほぼ認められている。これは、相続税増税の影響緩和とともに、消費税率引上げに対する中小企業の抵抗を和らげる意図もあろう。

2.金融証券税制  金融証券税制は、平成25年末の上場株式の譲渡益・配当に係る軽減税率の廃止と合わせて、損益通算の範囲拡大および少額上場株式等に係る譲渡益・配当非課税制度(日本版ISA制度)の導入が決められていた。しかし、後者については自公政権時代の平成21年度税制改正では一人100万円×5年間とされていた非課税枠が、政権交代後の平成22年度税制改正で一人100万円×3年間に縮減されたため、自民党内では元に戻すことは当然とされていたが、結局、一人100万円×10年間と大幅に拡大された。ただし、非課税期間は最長10年間から5年間に短縮されている。
 国民の資産形成支援、成長資金の拡大を目的とする措置として、与党税制改正大綱では、緊急経済対策税制と並んで示されているが、上場株式の譲渡益・配当に係る軽減税率廃止による株式市場への悪影響を緩和し、株式市場を活性化させるための措置と理解したい。

3.納税環境整備  低金利の常態化の中で、延滞税の本則14.6%、利子税及び還付加算金の7.3%は平成11年度改正以来見直しがなされていなかったが、漸く今回の改正で利子部分については国内銀行の貸出約定平均金利(前々年10月から前年9月までの間の平均)プラス1%の水準に引下げられることとなった。なお、延滞税の本則14.6%は利子分と早期納付を促すための部分が各7.3%であるとの理論構成により、現状では7.3%プラス利子部分2%=9.3%となる。

4.その他の改正  このほか、震災復興支援税制について既存の措置の拡充がなされる。また法人税では、連結納税制度における投資簿価修正の規定の整備、債務免除益があった場合における所得計算について民事再生等を会社更生の場合に合せる、企業組織再編成税制における特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度の制限対象の見直し等の、重要な改正がなされる。いずれも重要であるが極めて技術的な改正であるため、機会を改めて詳述することとしたい。

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