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会社法ニュース2005年02月21日 会社法制の現代化に関する要綱を全文掲載(1) テキストファイルで

会社法制の現代化に関する要綱案

第1部 基本方針
第1 会社法制の現代語化
第2 実質改正
第2部 株式会社関係
第1 総論
第2 設立等関係
第3 機関関係
第4 株式・新株予約権・新株予約権付社債関係
第5 社債関係
第6 計算関係
第7 組織再編行為関係
第8 清算関係
第3部 合同会社・合資会社・合名会社関係
第1 総論
第2 合同会社関係
第3 合資会社関係
第4 合名会社関係
第5 会社類型相互の関係
第4部 その他
第1 商号・登記等
第2 外国会社
第3 その他

第1部 基本方針

第1 会社法制の現代語化
 会社に関して規定する商法第2 編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法特例法」という。)等について、次のような方針による現代語化を行うものとする。
1 片仮名文語体で表記されている商法第2編、有限会社法等の各規定について、平仮名口語体化を図る。
2 用語の整理を行うとともに、解釈等の明確化の観点から必要に応じ規定の整備を行う。
3 商法第2 編、有限会社法、商法特例法等の各規定について、これらを一つの法典(会社法(仮称))としてまとめ、分かりやすく再編成する。

第2 実質改正
 会社法制の現代語化の作業に合わせ、会社に係る諸制度間の規律の不均衡の是正等を行うとともに、最近の社会経済情勢の変化に対応するための各種制度の見直し等、「会社法制の現代化」にふさわしい内容の実質的な改正を行うものとする(第2部から第4 部まで参照)。

第2部 株式会社関係

第1 総論
1 現行の株式会社と有限会社の両会社類型について、これらを統合し、1 つの会社類型(株式会社)として規律するものとする。
2 会社法施行後に設立される株式会社については、「株式会社」の文字を商号中に使用するものとする。
3 現行の有限会社法に基づき設立された有限会社については、会社法施行後も引き続き従前の規律を維持するための所要の経過措置を設けるものとする。
(注)現行の有限会社法に基づき設立された有限会社が会社法に基づく株式会社に移行するための所要の経過措置をも設けるものとする。

第2 設立等関係
1 設立時の定款記載事項
(1)株式会社の設立に際して出資すべき額
① 株式会社の設立時には、定款で「株式会社の設立に際して発行する株式の総数」ではなく、「株式会社の設立に際して出資すべき額又はその下限額」を定めるものとする。
② 株式会社の設立に際して出資すべき額については、下限額の制限を設けないものとする。
(2)株式会社の設立に際して発行する株式に関する事項
① 株式会社の設立に際して発行する株式の種類、数及びその割当てに関する事項については、定款又は発起人全員の同意をもって定めるものとする。
② 定款記載事項である「株式会社が発行する株式の総数」は、引受後設立前に発起人全員の同意又は創立総会の決議によって定めることもできるものとする。
③ 募集設立において、株式を引き受けた者の全部又は一部が払込みを行わず、その者の引受権が失権した場合であっても、発起人が引き受けた株式の全部につき払込み又は給付をし、かつ、(1)①の出資額以上の出資がされているときには、そのまま設立を行うことができるものとする。
(3)設立時の取締役等に関する事項
① 発起設立の場合において、定款で設立時の取締役等を定めていないときは、発起人による出資の履行後、引き受けた株式の議決権の過半数をもって、設立時の取締役等を定めるものとする。
② 募集設立の場合においては、創立総会の決議により設立時の取締役等を選任するものとする。
(4)公告の方法
株式会社が公告をする方法は定款の任意的記載事項とし、その定めがない場合における公告をする方法は官報とするものとする。
2 払込取扱機関
(1)発起設立の場合における設立の登記の際の払込取扱機関への金銭の払込みがあることの証明については、残高証明等の方法によるものとする。
(2)募集設立の場合における払込取扱機関は、商法189 条1 項に規定する証明に相当する証明をし、同条2 項と同様の責任を負うものとする。
3 現物出資・財産引受け
(1)検査役の調査を要しない場合
① 株式会社の設立時に、その価額の総額が「資本金の5 分の1」以上の財産を現物出資の目的とし、又は成立時に譲り受けることを約する場合であっても、当該財産の価額の総額が500 万円を超えないときは、検査役の調査を要しないものとする。
② 検査役の調査を要しない有価証券の範囲を「取引所の相場のある有価証券」から「市場価格のある有価証券」に拡大するものとする。
(注)新株発行の際の現物出資についても、同様とする。
(2)現物出資等に関する関係者の責任等
① 発起設立の場合における株式会社の設立時の取締役及び発起人(現物出資者又は財産の譲渡人を除く。)が財産価格の調査について過失がないことを証明した場合には、てん補責任を負わないものとする。
② 募集設立の場合における株式会社の発起人及び設立時の取締役は、無過失のてん補責任を負うものとする。
4 事後設立
(1)検査役の調査
株式会社の成立後2 年以内に一定規模以上の財産を譲り受ける場合における検査役の調査制度については、廃止するものとする。
(2)事後設立規制の適用範囲
① (1)の場合において、株主総会の決議の要否を画する基準については、営業全部の譲受けにつき株主総会の決議の要否を画する基準(第7・2(1)①参照)に合わせるものとする。
② 新設合併、新設分割又は株式移転により設立された会社については、事後設立規制が課せられないことを明確化するものとする。
5 設立無効の訴え
株主が株式会社の設立の無効の訴えを提起した場合においては、裁判所は、被告の請求により、相当の担保の提供を命ずることができるものとする。

第3 機関関係
1 株式会社の機関設計
株式会社の機関設計の規律の柔軟化を図ることとし、次に掲げる原則の下で、各機関(取締役会、監査役・監査役会、会計参与、会計監査人又は三委員会等(指名委員会、監査委員会、報酬委員会、執行役))を任意に設置することができるものとする。
(1)すべての株式会社には、株主総会のほか、取締役を設置しなければならない。
(注)取締役の権限等に関する規律については、取締役会を設置する場合を除き、次のとおりとするものとする。
① 各取締役が株式会社の業務執行・代表権を有する。
② 複数の取締役を設置する場合には、原則として、業務執行の意思決定は、取締役の過半数をもって決する。
(注)この場合において、全取締役をもって組織する会議体で業務執行の決定をする旨等の定款の定めを設けることができることを明確にするため、現行の有限会社法26 条に相当する規定を設ける等、所要の措置を講ずるものとする。
③ ②の場合において、定款又は株主総会の決議をもって一部の取締役を代表すべき取締役とすること、定款をもって取締役の互選により代表すべき取締役を定めるものとすることを妨げない。
(2)取締役会を設置する場合には、監査役(監査役会を含む。)又は三委員会等のいずれかを設置しなければならない。ただし、大会社以外の株式譲渡制限会社(すべての種類の株式が譲渡制限株式である株式会社)において、会計参与を設置する場合には、この限りでない。
(3)株式譲渡制限会社以外の株式会社には、取締役会を設置しなければならない。
(4)監査役(監査役会を含む。)と三委員会等とをともに設置することはできない。
(5)取締役会を設置しない場合には、監査役会及び三委員会等を設置することができない。
(6)会計監査人を設置するには、監査役(監査役会を含む。)又は三委員会等(大会社であって株式譲渡制限会社でない株式会社にあっては、監査役会又は三委員会等)のいずれかを設置しなければならない。
(7)会計監査人を設置しない場合には、三委員会等を設置することができない。
(8)大会社には、会計監査人を設置しなければならない。
2 株主・株主総会
(1)取締役会を設置しない株式会社における株主総会
取締役会を設置しない株式会社における株主総会に関する規律については、次のとおりとするものとする。
① 商法230条ノ10 の規定は、適用されない。
② 株主総会の招集通知は、会日の一週間前(定款で短縮可能)までに発すれば足りる。
③ 株主総会の招集通知については、書面又は電磁的方法によらないことができる。
④ 株主総会招集通知への会議の目的事項の記載又は記録を要しない。
⑤ 各株主は、単独株主権として総会における議題提案権を有する(議題提案権の行使は制限されない)。
⑥ 株主総会招集通知への計算書類及び監査報告書の添付を要しない。
⑦ 議決権の不統一行使については、事前通知(商法239条ノ4 第1項参照)を要しない。
(2)株主提案権の行使期限
株主提案権の行使期限(商法232条ノ2)について、定款をもって短縮することができるものとする。
(3)招集地
株主総会の招集地に関する制限(商法233 条)は、廃止するものとする。
(4)総会検査役等
① 株式会社からの選任請求
株式会社も総会検査役の選任を請求することができるものとする。
② 裁判所による総会招集命令
総会検査役の調査結果の報告を受けた裁判所は、必要があると認めるときは、総会招集命令(商法237 条ノ2 第3 項)のほか、株式会社に対し、その調査結果の内容を総株主に対して通知するよう命ずることができるものとする。
③ 業務財産調査検査役
業務財産調査検査役に関しても、②と同様の取扱いをするものとする。
(5)書面投票・電子投票
① 書面投票制度と電子投票制度
イ 書面投票制度が義務付けられる株式会社は、招集通知を電磁的方法により受領することを承諾した株主に対しては、原則として、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供すれば足り、議決権行使書面の交付を要しないものとする。
ロ イの場合においても、株主から請求があるときは、議決権行使書面の交付を要するものとする。
ハ 書面投票と電子投票とによる議決権の重複行使がされた場合においていずれの議決権行使を有効なものとして取り扱うかについて、株式会社があらかじめ定めることができること、及び議決権行使を受け付けるべき期間について、株式会社があらかじめ合理的な定めを設けることができることを明確化するものとし、それらの定めについては、議決権行使書面等への記載を要するものとする。
② 書面投票制度の義務付けの範囲
大会社以外の株式会社であっても、議決権を有する株主数が1,000 人以上のものについては、書面投票制度を義務付けるものとする。
3 取締役・取締役会
(1)取締役の資格
① 資格制限
株式譲渡制限会社以外の株式会社は、定款をもっても取締役の資格を株主に限ることはできないものとする。
② 欠格事由
イ 「破産手続開始の決定を受け復権していない者」を、欠格事由から外すものとする。
ロ 商法254条ノ2第3 号の罪に、証券取引法や各種倒産法制に定める罪を加えるものとする。
(2)取締役の員数
取締役会を設置しない株式会社の取締役の員数は、1 人で足りるものとする。
(3)取締役の任期
① 株式会社(委員会等設置会社を除く。)の取締役の任期は原則として選任後2 年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとし、監査役の任期は選任後4 年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとするものとする。ただし、株式譲渡制限会社については、定款で、これらの任期を最長選任後10 年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時まで伸長することができるものとする。
(注1)商法256条3項に相当する規定は、削除するものとする。
(注2)休眠会社の整理に係る商法406条ノ3第1 項の「5年」という期間については、「12 年」に延長するものとする。
② 商法256条2項に相当する規定は、削除するものとする。
(注)会計参与及び監査役の任期についても、同様とする。
③ 委員会等設置会社の取締役の任期は、選任後1 年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとするものとする。
④ 次に掲げる定款変更をした場合には、取締役の任期は、当該定款変更の効力が生じた時に満了したものとみなすものとする。
イ 委員会等設置会社となる旨の定款変更
ロ 委員会等設置会社となる旨の定款を廃止する旨の定款変更
(4)取締役等の選解任
① 取締役等の選任決議の定足数
株式会社の取締役・監査役の選任・解任決議(特別決議によるべきものを除く。)の定足数については、定款をもっても、議決権を行使することができる株主の有する議決権の総数の三分の一未満とすることができないものとする。
② 解任決議の決議要件
株式会社の取締役(累積投票によって選任されたものを除く。)の解任決議の要件は、普通決議とするものとする。
(5)内部統制システムの構築に関する決定・開示
① 内部統制システムの構築の基本方針については、取締役会が設置された株式会社においては取締役会の専決事項とし(商法260 条2 項、商法特例法21 条の7 第3 項各号)、当該決議の概要を営業報告書の記載事項とするものとする。
② 大会社については、内部統制システムの構築の基本方針の決定を義務付けるものとする。
(注)委員会等設置会社に係る商法特例法21 条の7第1 項2 号に規定する法務省令で定める事項について、所要の整備を行うものとする。
(6)取締役会の書面決議
取締役会の決議の目的である事項につき、各取締役が同意をし、かつ、業務監査権限を有する監査役が設置されている場合には各監査役が特に意見を述べることがないときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる旨を定款で定めることができるものとする。
(注1)代表取締役(代表執行役)等による取締役会への定期的な業務執行状況の報告に関する取締役会については、現に開催することを要するものとする等の措置を講ずるものとする。
(注2)監査役会及び委員会等設置会社の各委員会については、書面決議を認めないものとする。
(注3)会計監査人の解任決議(商法特例法18 条の3 第1 項)等、現行法において監査役会の全員一致の決議が要求されている事項については、監査役の全員の同意(書面による同意を含む。)をもって行うことができるものとする。
(7)取締役等に係る登記
① 共同代表取締役等
共同代表取締役、共同代表執行役及び共同支配人の制度は、廃止するものとする。
② 社外取締役等
イ 責任限度額をあらかじめ定める契約を締結した社外取締役及び社外監査役、監査役会設置会社の社外監査役並びに委員会等設置会社及び7(1)①の取締役の選定をした株式会社の社外取締役については、その旨を登記事項とし、その余の株式会社の社外取締役については、その旨を登記事項から削除するものとする。
ロ 社外取締役等に関する事項については、株主総会参考書類及び営業報告書の記載事項とする等の所要の措置を講ずるものとする。
(8)取締役の責任
① 総論
イ 取締役の会社に対する各種の責任について、委員会等設置会社の場合とそれ以外の株式会社の場合との間における規定の調整を図るものとする。
ロ 取締役の責任全般につき、商法266条2 項に相当する規定は、設けないものとする。
② 任務懈怠責任
取締役会を設置しない株式会社の取締役の任務懈怠責任については、次のとおりとする。
イ 取締役会を設置しない株式会社の取締役の任務懈怠責任についても、一部免除制度を設けるものとする。
ロ 一部免除の限度額は、原則として、報酬等の6 年分を限度とする。
ハ 取締役を複数設置した場合において、株式会社を代表すべき取締役を設けたときは、当該取締役以外の取締役の一部免除の限度額は、報酬等の4 年分を限度とする。
ニ 定款である取締役につき株式会社の業務を執行しない旨を定めた場合であって、当該取締役が社外取締役の要件に該当するときは、当該取締役の責任の一部免除の限度額は、報酬等の2 年分を限度とする。
ホ 取締役を複数設置し、かつ、業務監査権限を有する監査役を設置している場合には、定款の定めに基づき、当該取締役以外の取締役の過半数の同意をもって、取締役の責任の一部免除(商法266条12 項等参照)をすることができるものとする。
へ 事前の契約に基づき責任限度額をあらかじめ定める方法(商法266条19項等参照)も認めるものとする。
③ 利益相反取引に係る責任
イ 過失責任化
株式会社(委員会等設置会社を除く。)の取締役についても、過失責任とするものとする。ただし、自己のために株式会社と直接に利益相反取引をした取締役については、無過失責任とするものとする。
(注)取締役に対する金銭の貸付に係る弁済責任(商法266 条1 項3 号)については、委員会等設置会社以外の株式会社においても、委員会等設置会社の場合と同様、他の利益相反取引と区別することなく取り扱うものとする。
ロ 一般の任務懈怠責任との関係
一般の任務懈怠責任に関する規定に加え、取締役会の同意の有無にかかわらず、株式会社と直接に利益相反取引をした取締役、間接取引により利益を受けた取締役、株式会社を代表した取締役並びに取締役会の決議に賛成した取締役について、商法特例法21 条の21 と同様の立証責任を転換した特別の規定を設けるものとする。
ハ 免責決議の要件
免責決議要件に関する緩和規定(商法266 条6 項、商法特例法21 条の21 第2 項)は、廃止するものとする。
ニ 責任の一部免除
責任の一部免除を認めるものとする。ただし、自己のために株式会社と直接に利益相反取引をした取締役については、一部免除を認めないものとする。
ホ 取締役会を設置しない株式会社における利益相反取引
株主総会の承認を要するものとした上、その承認決議は普通決議で足りるものとし、対会社責任については、取締役会を設置した株式会社と同様の取扱いとするものとする。
へ 競業取引
取締役会を設置しない株式会社における取締役の競業取引についても、ホと同様の取扱いとするものとする。
④ 株主の権利行使に関する利益供与に係る責任
イ 過失責任化
過失責任とするものとする。ただし、取締役は、自己の無過失を立証しなければ、その責任を免れることができないものとする。
ロ 供与額の弁済責任を負うべき者の範囲
利益供与をした取締役に加え、取締役会の決議に賛成した取締役についても、供与された額について弁済責任を負うべきものとする。
(9)株主代表訴訟
① 株主代表訴訟を提起することができない場合
株主は、次に掲げる場合には、株主代表訴訟に係る訴えを提起することができないものとする。
イ 当該訴えの提起につき、当該株主が自己若しくは他人の不正な利益を図り、又は会社に損害を加える目的を有する場合
ロ 当該訴訟の追行により、会社の正当な利益が著しく害されること、会社に過大な費用の負担が生ずることその他これに準ずる事情が生ずることが、相当の確実さをもって予測される場合
② 不提訴理由の通知
株式会社が株主から取締役の責任について提訴請求を受けた場合において、提訴期間中(商法267条3 項)に訴えを提起しなかったときは、当該株式会社は、当該株主又は取締役の請求により、遅滞なく、当該株主又は取締役に対し、訴えを提起しなかった理由を、書面(不提訴理由書)をもって通知しなければならないものとする。
(注)提訴請求の対象が取締役以外の者の場合についても、同様とする。
③ 株式交換・株式移転による原告適格の喪失の見直し等
イ 完全子会社となる会社につき係属中の株主代表訴訟の原告が、株式交換・株式移転により完全子会社となる会社の株主たる地位を喪失する場合であっても、当該株式交換・株式移転により完全親会社となる会社の株主となるときは、当該原告は、当該株主代表訴訟の原告適格を喪失しないものとする。
ロ 合併の消滅会社につき係属中の株主代表訴訟の原告が、合併により消滅会社の株主たる地位を喪失する場合であっても、当該合併により存続会社等の株主となるときは、当該原告は、当該株主代表訴訟の原告適格を喪失しないものとする。
4 監査役
(1)監査役の権限
① 監査役は、原則として、業務監査権限及び会計監査権限を有するものとする。
② 株式譲渡制限会社(監査役会を設置する株式会社又は会計監査人を設置する株式会社を除く。)においては、定款で当該株式会社における監査役の権限を会計監査権限に限定することができるものとする。
③ 業務監査権限を有する監査役が設置されていない株式会社(委員会等設置会社を除く。)における株主の権限等について、次のような取扱いをするものとする。
イ 株主は、裁判所の許可を得ることなく、取締役会の議事録を閲覧することができる。
ロ 株主は、取締役が株式会社の目的の範囲内にない行為その他法令若しくは定款に違反する行為を行い又は行うおそれがある場合には、取締役会の招集を請求すること、及び一定の場合(商法259条4項参照)には、自ら取締役会を招集することができる(商法260条ノ3 参照)。
ハ 株主は、自己の請求又は招集により開催された取締役会については、これに出席し、意見を述べることができる。
ニ 定款に基づく取締役の過半数の同意(取締役会を設置する場合には、取締役会の決議)による取締役等の責任の一部免除制度は、適用しない。
ホ 取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合には、株主にこれを報告しなければならない(商法274条ノ2参照)。
へ 株主の取締役の違法行為差止請求権(商法272 条)の行使要件につき、監査役が同請求権を行使する場合の行使要件(商法275条ノ2第1項)と同様の要件に緩和する。
(2)補欠監査役等
補欠監査役・補欠取締役を予選することができること及びその手続等(定款の定めがなくても補欠監査役等の予選をすることができること、予選の効力は選任後最初に到来する定時株主総会の時までとすること等)を明確化するものとする。
(3)二人以上の監査役を設置する場合
監査役会を設置しない株式会社において二人以上の監査役を設置する場合には、現行法上監査役会の同意又は決議を要するものとされている事項については、監査役の過半数の同意を要するものとする。
5 会計参与
次に掲げる規律が適用される「会計参与(仮称)」という会社の機関を新設するものとする。
(1)会計参与の設置
株式会社は、定款で会計参与を設置する旨を定めることができるものとする。
(2)会計参与の資格・選任等
① 資格
会計参与は、公認会計士(監査法人を含む。)又は税理士(税理士法人を含む。)でなければならないものとする。
② 兼任禁止
会計参与は、株式会社又はその子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人又は支配人その他の使用人を兼ねることができないものとする。
(注)会計監査人と会計参与とが併存することは妨げられないものとする。
③ 選任方法等
会計参与は、株主総会で選任し、その任期・報酬等については取締役と同様の規律に従うものとする。
(3)会計参与の職務等
① 計算書類の作成
会計参与は、取締役・執行役と共同して、計算書類を作成するものとする。
② 株主総会における説明義務
会計参与は、株主総会において、計算書類に関して株主が求めた事項について説明しなければならないものとする。
③ 計算書類の保存
会計参与は、株式会社とは別に、計算書類を5 年間保存しなければならないものとする。
④ 計算書類の開示
株主及び株式会社の債権者は、会計参与に対して、計算書類の閲覧等を請求することができるものとする。
⑤ その他
会計参与は、①から④までに掲げるもののほか、計算書類の作成等に必要な権限を有するものとする。
(4)会計参与の責任
会計参与の会社・第三者に対する責任については、社外取締役と同様の規律を適用するものとし(商法266条5項、7 項、12 項、18 項、19 項、266 条ノ3 参照)、株式会社に対する責任については、株主代表訴訟の対象とするものとする。
(5)会計参与の登記
会計参与を設置した旨及び当該会計参与の氏名又は名称を登記事項とするものとする。
6 会計監査人
(1)会計監査人の任意設置の範囲
大会社以外の株式会社は、定款で、会計監査人の設置を定めることができるものとし、みなし大会社の制度は、廃止するものとする。
(2)会計監査人の欠格事由
公認会計士法の規定により当該株式会社に係る監査をすることができない者を会計監査人の欠格事由として規定し、商法特例法4条2項1 号、3 号及び4 号前段は削除するものとする。
(3)会計監査人の報酬
監査役会(監査役の過半数)又は監査委員会に、会計監査人の報酬の決定に関する同意権限を付与するものとする。
(4)会計監査人の株式会社に対する責任
① 会計監査人の株式会社に対する責任の一部免除
会計監査人の株式会社に対する責任について、社外取締役と同様の一部免除制度(商法266 条5項、7 項、12 項、18 項、19 項参照)を導入するものとする。
(注)社外監査役についても、同様の取扱いをするものとする。
② 株主代表訴訟
会計監査人の会社に対する責任について、株主代表訴訟の対象とするものとする。
(5)会計監査人が不適法意見を述べる場合等の措置  
会計監査人が不適法意見を述べる場合又は監査のための必要な調査をすることができなかった旨を述べる場合には、決算公告において、その旨を明示しなければならないものとする。
(6)会計監査人の登記
会計監査人を設置した旨及び当該会計監査人の氏名又は名称を登記事項とするものとする。
7 その他
(1)重要財産委員会制度
① 取締役会との関係
重要財産委員会について、取締役会とは別の機関として構成することはせず、取締役会の決議要件の特則に係る制度(商法第260条2項1号及び2号に掲げる事項についての取締役会の決議については、取締役会があらかじめ選定した3 人以上の取締役のうち議決に加わることができるものの過半数が出席し、その過半数をもって行うことができる旨を定めることができるものとする制度)として構成するものとする。
(注)①の選定に係る取締役による取締役会の決議については、書面決議を認めないものとする。
② 要件
①の取締役の選定をすることができる株式会社は、取締役会を設置した株式会社(委員会等設置会社を除く。)であって、次に掲げる要件に該当するものとする。
イ 取締役のうち1 人以上が社外取締役であること。
ロ 取締役の数が6 人以上であること。
③ 監査役の出席義務
複数の監査役が設置された株式会社における①の選定に係る取締役による取締役会については、監査役会の決議又は監査役の互選により当該取締役会に出席すべき監査役を定めたときは、その定められた監査役以外の監査役は出席義務を負わないものとする。
(2)会社の支配人の競業行為等に対する許諾
支配人の営業行為等に関する「営業主の許諾」については、取締役会を設置した株式会社においては取締役会を、取締役会を設置しない株式会社においては取締役を許諾機関とするものとする。
(3)使用人兼務取締役等
① 委員会等設置会社の使用人兼務取締役
委員会等設置会社においては、取締役が使用人を兼務することはできないものとする。
② 委員会等設置会社における使用人兼務執行役の報酬
委員会等設置会社においては、報酬委員会が、使用人兼務執行役の使用人として受ける給与等についても決定するものとする。

第4 株式・新株予約権・新株予約権付社債関係
1 株式の譲渡制限制度
(1)一部の種類の株式についての譲渡制限
株式会社は、定款である種類の株式の譲渡について承認を要することを定めることができるものとする。
(注1)譲渡制限株式については、株主間の譲渡についても原則として承認を要するものとし、承認機関は株主総会(取締役会を設置する株式会社にあっては、取締役会)とするものとする。
(注2)定款で次に掲げる事項を定めることも妨げないものとする。
① 株主間の譲渡につき承認を要しないこと。
② 特定の属性を有する者に対する譲渡については、承認権限を代表取締役等に委任し、又は承認を要しないこと。
③ 譲渡を承認しない場合において先買権者の指定の請求があったときの先買権者をあらかじめ指定しておくこと。
④ 取締役会を設置する株式会社において、承認機関を株主総会とすること。
(2)種類株式の発行後に譲渡制限の定めをする場合
① 種類株式の発行後に譲渡制限の定めをする場合には、譲渡制限の定めを設ける種類株式に係る種類株主総会及びその種類の株式に転換する転換予約権付株式又は強制転換条項付株式に係る種類株主総会の決議を要するものとする。
(注)決議要件は、その種類の株主の半数以上、かつ、その種類の株主の議決権の3分の2 以上とするものとし、反対した株主には買取請求権を与えるものとする。
② ①の株式を目的とする新株予約権を発行している場合には、当該新株予約権を有する新株予約権者に買取請求権を与える。
(注)行使され得る新株予約権がある場合には譲渡制限の定めを設けることができないものとする規定(商法348条3項)は、削除するものとする。
(3)譲渡制限の定めがある株式を発行する場合
取締役会を設置する株式会社において一部の種類の株式について譲渡制限の定めがある場合における株式の発行は、原則として、取締役会の決議によるものとする。
(注)譲渡制限の定めのある株式の発行は、定款で当該種類株式に対する株主割当てを取締役の決定(取締役会を設置した株式会社にあっては、取締役会の決議)によってすることができる旨を定めている場合における当該種類株式の発行を除き、当該種類株式に係る種類株主総会の決議を要するものとする。
(4)取得者からの承認請求
① 譲渡制限株式の取得者から株式会社に対してその取得の承認を請求する手続は、名義書換請求のために要求される手続と同様のものとし、承認なく株式を取得した者からの名義書換請求については、株式会社はその取得を承認せず名義書換えを拒むことができるものとする。
② 承認を拒否された取得者は、株式会社に対し、買受人の指定を請求することができるものとする。
(5)相続・合併により譲渡制限の定めのある株式を取得した場合
定款で相続及び合併による譲渡制限の定めのある株式の移転についても承認の対象とする旨を定めることができるものとする。
(注)「承認の対象とする」とは、株式が相続人等に当然に移転することを前提とし、株式会社がその移転を承認しないときは、その株式を買い取ることができるものとすることをいう。
2 自己株式の取得
(前注)自己株式については、配当請求権その他の自益権を認めないものとする。
(1)株式の消却
株式の消却については、自己株式の消却という制度のみに整理するものとする。
(注)自己株式以外の株式を消却するには、株式会社が当該株式を取得した上で消却するものとする。
(2)市場取引・公開買付け以外の方法による自己株式の取得手続
市場取引・公開買付け以外の方法による自己株式の有償取得手続については、次のとおりとするものとする。
① 株主総会の普通決議により、有償取得する株式の種類、総数及び総額並びに1 年を超えない範囲内の取得期間(③で定める一回の取得における条件を付するときは、その内容を含む。)を決議し、取締役(取締役会を設置する株式会社にあっては、取締役会。③において同じ。)に対し授権することができる。
② ①の株主総会の決議においては、授権に係る自己株式の取得の際に譲渡人となる株主を定めることができる。
(注)株主は自己を譲渡人となる株主に加えることを請求することができるものとし、①の決議は譲渡人となる株主以外の株主による特別決議によるものとする。
③ ①の決議後、取締役(取締役会を設置する株式会社にあっては、取締役会。)は、取得する株式の種類及び数、一株当たりの取得価格、取得請求期間並びに価額の総額を決定し、株主(②の場合は、譲渡人となる株主)全員に対して通知又は公告をする。
④ 株主は、③の取得請求期間内に、取得を請求する株式の種類及び数を株式会社に通知して株式の取得請求をすることとし、株式会社は、請求した株主の株式を取得する。
(注1)④の請求により取得すべき株式の数の合計が③で定めた総数を超える場合には、株式会社は、株式を按分して取得するものとする。
(注2)現行法において商法210 条の手続によらずに自己株式を取得することができる場合及び次に掲げる場合には、(2)の手続によらずに取得することができるものとする。
① 合併、分割及び営業全部の譲受けの場合において相手方の保有する自己株式を取得する場合(取得する自己株式の種類及び数を開示する場合に限る。)
② 株式譲渡制限会社が相続又は合併により株式を取得した者から取得する場合(譲渡人を除いた株主による株主総会の特別決議により取得を承認する場合に限る。)
③ 市場価格のある株式を市場価格以下で市場取引以外の方法で特定の者から取得する場合(特定の者の氏名、取得する株式の種類及び数につき、譲渡人を除いた株主による株主総会の特別決議を得る場合に限る。)
④ 定款をもって自己株式の有償取得の方法に関して異なる内容を定めた種類株式を当該定款で定める方法で取得する場合
(3)株式の取得に関する定款規定の設定手続等
株式会社の成立後に株主の同意なくその有する株式を取得する旨及びその方法に関する定款の定めを設けるとき又はその定めの変更をするときは、株主全員の同意を要するものとする。
(注)種類株式の場合には、その種類の株主全員の同意を要するものとする。
(4)ある種類の株式の全部の取得
① 二以上の種類の株式を発行する株式会社は、一の種類の株式の全部を株主総会の特別決議によって有償又は無償で取得することができる旨の定款の定めを設けることができるものとする。
② ①の定款の定めを設ける旨の定款の変更に反対した当該種類株主は、株式買取請求権を有するものとする。
③ ①の定款の定めがある種類の株式については、当該株式会社は、株主総会の特別決議によって、その全部を取得することができるものとする。この場合において、取得価格(無償の場合には、無償であること)に不服がある株主は、裁判所に対し、自己の株式に係る取得価格の決定の申立てをすることができるものとする。
3 新株発行等
(1)発行手続
① 株式譲渡制限会社における第三者に対する発行決議において、株式の種類及び数に加えて、株式の発行価額の下限をも定めることとし、現行の有利発行手続(商280 条ノ2 第2 項等)とその手続とを一体化するものとする。
② 新株発行につき、払込期日に代えて払込期間を定め、当該期間内に払込みがされた場合にはその払込みの日から株主となることを認めるものとする。
③ 株式譲渡制限会社における新株の割当者の決定については、申込み後割当て時に、譲渡承認をすべき機関において行うことができるものとする。
(注)自己株式の処分についても、同様の措置を講ずるものとする。
(2)株主割当て
① 新株の引受権を譲渡することができる旨の定め(商法280条ノ2 第1 項6号)及び新株引受権証書(商法280 条ノ2 第1 項7 号等)に関する制度は、新株予約権及び新株予約権証券に関する制度に吸収して整理するものとする。
(注)株主に対して、無償で新株予約権を発行する制度を設けるものとする。
② 株主割当ての場合において、株式会社自身に新株の引受権を与えることを認めず、かつ、一株に満たない部分及び申込期日までに申込みがされなかった部分についての再募集は認めないものとする。
③ 株式譲渡制限会社における株主割当てにつき、定款に定めがあるときは、株主総会の決議を経ずに、取締役(取締役会を設置する株式会社については、取締役会)が新株発行に関する事項を決定することができるものとする。
(注)自己株式の処分についても、同様の措置を講ずるものとする。
(3)自己株式の市場売却
自己株式を新株発行類似の手続を経ずに市場取引により売却することができる旨の定款の定めがあるときは、株式会社は、①又は②に掲げる事由により取得した数を限度として、市場取引により自己株式を売却することができるものとする。
① 買取請求権に応じて取得した場合
② 合併、分割及び営業全部の譲受けにより相手方の有する自己の株式を取得した場合
(注1)市場取引により売却することができる自己株式の数(売却可能株式数)は、次に掲げる場合には、それぞれ次に定める数が減少するものとする。
① 市場取引により売却した場合 売却した自己株式の数
② 市場取引以外の方法で自己株式を処分したことにより保有する自己株式の数が売却可能株式数を下回った場合 売却可能株式数から保有する自己株式の数を控除した数
③市場取引による売却につき定款の定めにおいて条件を定めた場合 当該定款の定めにより売却することができなくなった自己株式の数
(注2)この定款の定めがある株式会社は、営業報告書において、市場取引により売却することができる自己株式の種類及び数並びに前営業年度において市場取引により売却した自己株式の種類及び数を開示するものとする。
(4)株式等の引受人に対する情報の開示
株式(新株予約権、社債、新株予約権付社債を含む。)の引受人に対する株式会社及び発行条項に関する情報の開示について、次のような措置を講ずるものとし、株式申込証の用紙の交付という制度は、廃止するものとする。
① 株主割当ての場合には、引受権を有する株式の内容等に関して株主に通知をすることを要する。
② 株式会社が割当者を定め、当該割当者が発行しようとする株式の総数を引き受ける場合には、法律上特別の開示制度を設けない。
③ 株式会社が割当者を定めずに引受人を募集する場合であって、証券取引法の規定により目論見書等が交付されないときには、株式を引き受けようとする者に対し、株式会社及び発行条項に関する情報を通知することを要する。
(5)新株発行の際の公告・通知
新株発行等に際して、証券取引法に基づく届出書等において会社法の規定により公告等をすべき事項が払込期日の2 週間前までに開示されている場合には、会社法の規定による公告等を不要とするものとする。
(6)現物出資の取扱い
① 金銭債権
株式会社に対する金銭債権のうち履行期が到来しているものを当該債権額以下で出資をする場合には、検査役の調査を要しないものとする。
(注1)債権の存在を証する書面を登記の添付書面とするものとする。
(注2)相殺禁止に関する規定は、金銭等で払い込むべきものと定められている場合における引受人からの相殺を禁止する旨の規定に改めるものとする。
② 関係者の責任等
イ 株式会社の成立後の新株発行の場合における取締役は、財産価格の調査について過失がないことを証明したときは、てん補責任を負わないものとする。
ロ 株式会社の成立後の新株発行において、株式会社との間に利害関係のない者が過失なく現物出資をし、事後的に責任を問われる場合について、当該者に出資の取消権を認めるものとする。
③ 自己株式の処分等に際しての現物出資
自己株式の処分に際して、金銭以外の財産が給付される場合において、新株の発行と同様の取扱いをするものとする。
(注)新株予約権の行使に際しての給付についても、同様とするものとする。
(7)株式会社の成立後に発行する株式に係る払込みの証明
株式会社の成立後の新株発行及び新株予約権の行使による新株発行による変更の登記の際の払込取扱機関への金銭の払込みがあることの証明については、残高証明等の方法によるものとする。
(8)新株発行無効の訴え等
① 株式譲渡制限会社における新株発行無効の訴えの提訴期間を1 年に延長するものとする。
② 新株発行無効の訴えの提訴可能期間中は口頭弁論を開始することができないこととしている規制は、廃止するものとする。
(注)会社法に規定される新株発行無効以外の無効の訴えについても、同様とするものとする。
③ 新株発行の無効の訴えに係る請求の認容判決が確定したときは、株式会社は、現物出資者に対して交付された株式の株主に対して、現物出資の目的たる財産の価額に相当する金銭を支払わなければならないものとする。
④ 新株発行の不存在確認の訴えを明文化し、その判決に対世効を認めるものとする。
(注)自己株式の処分、新株予約権、新株予約権付社債等の発行の無効・不存在確認の訴えについても、規定を設けるものとする。
4 種類株式
(1)議決権制限株式等の発行限度
株式譲渡制限会社以外の株式会社においては、議決権制限株式の発行総数は、発行済み株式総数の2 分の1 を超えてはならないものとする。
(2)強制転換条項付株式
① 定款の定めによる転換
強制転換条項付株式について、定款の定めに従い、公告・通知等の手続を経ずに強制転換することを認めるものとする。この場合において、転換後に転換の効力が生じた旨等を株主に対して公告又は通知しなければならないものとする。
② 転換の条件
強制転換条項付株式の転換の条件については、転換予約権付株式と同様、発行の際の株主総会又は取締役会の決議により定めることができるものとする。
③ 自己株式の移転
株式会社が強制転換条項付株式の転換後に発行すべき株式に相当する自己株式を有するときは、その株式の発行に代えて自己株式の移転をすることができるものとする。
(注)転換予約権付株式についても、同様とする。
(3)商法345条1 項に規定する定款の変更
商法345 条1 項に規定する定款の変更は、①当該種類株式の内容を変更する場合及び②新たな種類株式の定めを置き、又は他の種類株式の内容を変更し、若しくは他の種類株式を発行することができる数を引き上げる場合に限るものとする。
(注)一単元の株式の数の増減によりある種類株主に不利益が及ぶおそれのある場合については、株式の分割・併合の場合と同様の取扱い((4)参照)をするものとする。
(4)商法346条の規定による種類株主総会
ある種類株式につき、あらかじめ定款をもって、商法346 条の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定めることができるものとする。
(注1)発行後に定款の定めを設けるときは、当該種類株主全員の同意を要するものとする。
(注2)この定款の定めがある種類の株主は、商法222条11項に掲げる事項(組織再編行為に際しての対価の割当てに関する事項を除く。)につき格別の定め(定款にその旨の定めがある場合を除く。)がされることにより損害が及ぶべき場合には、株式の買取請求権を行使することができるものとする。
(5)異なる種類の株式の無償交付
ある種類の株主にその有する株式数に応じて異なる種類の株式を無償で交付する制度を設けるものとする。
(注1)株式分割については株主の有する株式の数が分割割合に応じて一律に増加するもの、株式併合については併合割合に応じて一律に減少するものとして整理するものとする。
(注2)株式併合の場合における「会社が発行する株式の総数」については、定款又は株主総会の決議により減少することを定めた場合にのみ減少するものとする。
5 株主
(1)剰余金分配・議決権等に関する別投の定め
① 株式譲渡制限会社においては、剰余金分配、議決権等に関し、定款をもって別段の定めを置くことができるものとする。
② ①の定款の定めをした場合には、①の定めごとにその定めに係る株主をそれぞれ種類株主とみなして、法定種類株主総会の制度を適用するものとする。
③ ①の定款の定めの新設又は変更をする場合の定款変更の決議の要件は特殊決議(総株主の半数以上、かつ総株主の議決権の4分の3 以上)によらなければならないものとする。
(2)少数株主権等
① 少数株主権の行使要件を定める基準
イ 帳簿閲覧請求権、業務財産調査のための検査役選任請求権及び解散請求権は、議決権総数に占める議決権数が一定割合以上の株主又は一定の割合の株式数を有する株主が行使することができるものとする。
(注)株式数を基準とする行使要件の算定に当たっては、自己株式の数を除外するものとする。
ロ 株主総会に関連する少数株主権(株主提案権、総会招集権及び総会検査役選任請求権)は、株主が議決権を行使することができる事項に係る権利についてはその行使を法律で保障し、議決権を行使することができない事項に係る権利についてはその行使をすることができないものとする。
② 解任請求権等
イ 取締役等の解任請求権は、それぞれの解任の決議につき行使することができる議決権総数に占める議決権数が一定の割合以上の株主又は一定の割合の株式数を有する株主が行使することができるものとする。
(注)株式数を基準とする行使要件の算定に当たっては、自己株式の数を除外するものとする。
ロ 定款の定めに基づく取締役の過半数の同意(取締役会を設置した場合にあつては、取締役会の決議)による取締役等の責任の一部免除に対する異議の申出をする権利は、取締役等の責任の一部免除に係る株主総会の決議において議決権を行使することができる種類の株主のみが行使することができるものとする。
(注)解任又は一部免除の対象となっている取締役等は、イ又はロの権利を行使することができないものとし、その行使要件の算定に当たっては、当該取締役等の有する議決権の数を除外するものとする。
③ 行使要件
取締役会を設置しない株式会社においても、少数株主権の要件については、現行の株式会社と同様のものとする。
(注1)定款をもって、少数株主権とされている権利の全部について、その行使要件を引き下げ、又は単独株主権とすることは妨げられないものとする。
(注2)株式譲渡制限会社においては、単独株主権・少数株主権における6 か月の保有期間制限は課さないものとする。
④ 単独株主権
議決権行使書面・代理権を証する書面等の閲覧・謄写請求権等の株主総会に関連する単独株主権は、株主が議決権を行使することができる事項に係る権利についてはその行使を法律で保障し、議決権を行使することができない事項に係る権利についてはその行使をすることができないものとする。
(3)基準日
① 議決権に関する基準日
議決権を行使することができる株主を定めるために基準日を設定した場合であっても、株式会社の判断により、基準日後に株主となった者のうち、議決権を行使することができる株主を定めることを認めるものとする。
② 配当等に関する基準日
基準日における株主は、その有する株式の発行時期にかかわらず、同一に配当その他の財産・株式等の割当てを受けるものとし、新株主の配当起算日に関する規定は、削除するものとする。
(4)株式譲渡制限会社における株主に対する通知・公告
株式譲渡制限会社においては、取締役等の責任の一部免除に関する公告、株主代表訴訟に係る公告、簡易組織再編の公告及び自己株式の取得の公告について、その公告をもって、株主に対する通知を省略することはできないものとする。
(5)株主名簿の閲覧請求権
株主名簿、社債原簿及び新株予約権原簿の閲覧・謄写請求権については、次に掲げる拒絶事由を定めるものとする。
① 株主の権利の確保又は行使のための請求ではないとき。
② 株主が書類の閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て他人に通報するために請求をしたとき。
③ 請求の日の前2 年内においてその会社又は他の会社の書類の閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て他人に通報した者が請求をしたとき。
6 株券
(1)株券は、定款の定めがある場合にのみ発行することができるものとする。
(2)株式譲渡制限会社においては、(1)の定款の定めがある場合であっても、株主からの請求がある時までは株券を発行しないこととすることができるものとする。
7 株式買取請求権
(1)買取請求権の行使の在り方
組織再編行為の場合その他株主に買取請求権が与えられる場合には、次に掲げる株主が行使することができるものとする。
① 株主総会(種類株主総会を含む。)において議決権を行使する機会のある株主にあっては、当該株主総会の開催前に反対の意思を通知し、当該株主総会において反対した株主
② 株主総会において議決権を行使する機会のない株主(単元未満株主を含む。)にあっては、法定期間内に反対の意思を通知した株主
(注)組織再編行為並びに営業譲渡及び営業譲受けの場合には、議決権を行使することができない株主(単元未満株主を含む。)に対しても株式の買取請求権を与えるものとする。
(2)買取価格
買取請求に応じて株式を買い受ける場合の買取価格は、「株式の公正な価格」とするものとする。
(3)株式買取請求の取下げの制限
買取請求後の請求の取下げについては、株式会社の同意を要するものとし、株式会社も裁判所に対する買取価格の決定の請求をすることができることとする。
8 端株・単元株
(1)端株制度は、廃止するものとする。
(注1)端株制度を採用する株式会社に負担がかからないよう経過措置を設けるものとする。
(注2)単元未満株主の有する権利は、原則として、現行法の単元未満株主の有する権利と同一のものとし、株式の分割等により株式等を受ける権利、残余財産分配請求権及び買取請求権以外の株主の権利については、定款で制限することができるものとする。
(2)株式の分割と同時に、一単元の株式の数を設定する場合(増加する場合を含む。)において、分割後に株主が有する株式数を分割後の一単元の株式の数で除して得た数が、分割前に株主が有していた株式数(一単元の株式の数を増加する場合にあっては、株式数を分割前の一単元の株式の数で除して得た数)を下回らないこととなるときは、当該一単元の株式の数の設定(増加を含む。)に係る定款変更は、株主総会の決議によらないで行うことができるものとする。
9 新株予約権
(1)発行手続
新株予約権の発行手続について、新株の発行手続と同様の整理(3 参照)をするものとする。
(2)有償で発行する新株予約権
有償で発行する新株予約権については、その払込期日前であっても、無償で発行する新株予約権と同様に、割当て時から新株予約権としての規制(新株予約権原簿等への記載、合併等による承継)を受けるものとする。
(3)新株予約権の消却
新株予約権の消却についても、その取得及び自己新株予約権の消却として整理するものとし、その取得対価(現行法における消却対価)として、株式を交付することができるものとする。
(注)無記名式の新株予約権付社債券を取得して株式を交付する場合において、株主を把握することができない株式が生じたときは、当該株式については、株主が株主名簿に記載されるまでは招集通知等の送付をすることを要しないこととするはか、株主が所在不明の場合と同様の取扱いをするものとする。
(4)自己新株予約権
自己新株予約権の行使の禁止について、明文化を図るものとする。
(5)一株に満たない端数の処理
新株予約権の行使により一株に満たない端数が生ずる場合において、あらかじめ端数に相当する価額を償還しない旨を定めていないときは、端数に相当する価額を金銭で償還することとする。
(注)商法341 条ノ3 第1 項7 号に係る新株予約権付社債につきその発行価額と行使に際して払い込むべき価額とを同額としなければならないとする規制は、廃止するものとする。
10 子会社等
(1)子会社による親会社株式の取得
① 商法211 条ノ2 第1 項各号に掲げる場合のほか、①子会社が他の株式会社の組織再編行為により親会社株式の割当てを受ける場合、②子会社が行う組織再編行為に際して親会社株式の割当てをするために取得する場合についても、子会社が親会社株式を取得することができるものとする。
② 株式会社が親会社である場合には、子会社(親会社からの一定の支配権が及び得るとみられる法人等)である外国会社による当該親会社の株式の取得は、原則として、禁止されるものとする。
(2)子会社に関する規定
会社法中の「子会社」(社外監査役等の要件、監査役等の兼任禁止の範囲、定款・計算書類等の閲覧・謄写請求権を行使することができる範囲等)には、株式会社・有限会社のみならず、親会社からの一定の支配権が及び得るとみられる外国会社を含む法人等を含めるものとする。
(3)相互保有株式の取扱い
相互保有株式の議決権の制限に関する取扱いについても、制限される会社を株式会社・有限会社に限定せず、外国会社を含む法人等も含めるものとする。

第5 社債関係
1 社債総則
(1)社債の発行
① 取締役会を設置しない株式会社
取締役会を設置しない株式会社においても、社債を発行することができるものとする。
(注)合同会社、合資会社及び合名会社についても、株式会社の社債に係る規定と同様の規定を設けるものとする。
② 取締役会を設置した株式会社
取締役会を設置した株式会社における社債の発行に係る取締役会の決議については、次のような取扱いをすることができるものとする。
イ 償還の金額及び利率の上限、社債の発行価額の下限を定め、具体的な額等の決定を代表取締役に委任すること。
ロ 社債を発行することができる期間を定め、個々の発行時期についての決定を代表取締役に委任すること。
(2)打切発行
社債の発行について、打切発行を原則とするものとする。
(3)既存社債に未払込みがある場合の制限等
商法298 条、299 条、300条及び303 条の規定は、削除するものとする。
2 社債管理会社
(1)「約定権限」の行使
社債管理会社が行うべき「社債ノ管理」に社債管理委託契約等に基づく権限(「約定権限」)の行使を含めるものとし、他の規定についても、約定権限を含める形で整理を行うものとする。
(2)社債管理会社の責任
① 支払の停止等の後の弁済の受領等
支払の停止等の後の弁済の受領等について、商法311条ノ2 第2 項の対象とするものとする。
② 社債管理会社と特別の関係を有する者の行為
発行会社の支払の停止等の前3 か月以後に、社債管理会社との間に支配会社と被支配会社との関係その他の特別の関係を有する者が当該社債管理会社の有する債権を当該社債管理会社から譲り受け、その債権につき当該発行会社から弁済等を受けた場合も、商法311 条ノ2 第2 項の対象とするものとする。
③ 社債管理会社が行う相殺
社債管理会社が、発行会社の支払の停止等の前3 か月以後に、次に掲げる行為をし、かつ、イの行為により負担した債務を受働債権として、又はロの行為により譲り受けた債権を自働債権として相殺したときは、商法311条ノ2 第2 項の対象とするものとする。
イ 当該社債管理会社が発行会社に対し債権を有する場合において
a 契約によって負担する債務を専ら当該債権をもってする相殺に供する目的で発行会社の財産の処分を内容とする契約を発行会社との間で締結する行為。
b 発行会社に対して債務を負担する者から当該債務を引き受ける行為。
ロ 当該社債管理会社が発行会社に対して債務を負担する場合において、発行会社に対する債権を譲り受ける行為。
(3)社債管理会社の辞任
① 社債管理会社は、社債管理委託契約等の定める事由が生じた場合には、辞任をすることができるものとし、辞任をしようとする社債管理会社は、その辞任により当該社債につき社債管理会社が一切いなくなるときは、あらかじめ事務を承継すべき社債管理会社を定めることを要するものとする。
② 発行会社の支払の停止等の前3 か月以後に、社債管理会社が契約により辞任し、弁済等を受けた場合等にも、商法311条ノ2 第2 項の規律に服するものとする。
(4)訴訟行為及び法的倒産処理手続における社債管理会社の権限
訴訟行為及び法的倒産処理手続に属する一切の行為については、社債管理会社が設置される場合において、社債管理委託契約等の定めがあるときは、社債管理会社が社債権者集会の決議なく当該行為を行うことができるものとする。
(5)債権者保護手続における社債管理会社の権限
社債管理会社が設置される場合において、会社法(仮称)上の債権者保護手続が行われるときは、社債管理会社に対しても催告を行うものとし、異議については、社債管理委託契約等に別段の定めがある場合を除き、社債管理会社が社債権者集会の決議なくして申し述べることができるものとする。
(6)社債管理会社の権限が行使された場合の公告等
商法309条ノ2第2項、312条2項及び335条の規定による公告及び通知の制度は、廃止するものとする。
3 社債権者集会
(1)決議事項の許可
社債権者集会において法定決議事項以外の事項を決議する場合における裁判所による許可の制度は、廃止するものとする。
(2)特別決議の成立要件
定足数を廃止し、出席社債権者の元本の総額の3 分の2 以上であって、総社債権者の元本の総額の20 パーセント以上にあたる債権を有する者の同意をもって決議の成立要件とするものとする。
(3)議決権
各社債権者は、残存元本額に応じて議決権を有するものとする。
(4)無記名社債券の供託
無記名社債券の供託の制度(商法320条6 項、7 項、321条2 項、3項)を廃止し、これに代えて、発行会社若しくは社債管理会社又は社債権者集会の招集者に対する無記名社債券の呈示の制度を設けるものとする。
4 社債の譲渡等
(1)権利移転の要件等
社債及び新株予約権付社債について、権利移転の効力要件及び対抗要件等につき株式と同様の取扱いがされるものを創設するものとし、現行の記名社債に係る規定の整備等をするものとする。
(2)譲渡制限
新株予約権付社債について、新株予約権と同様の譲渡制限制度を設けるものとする。
(3)社債券不発行制度
社債券の不発行制度を設けるものとする。
(注)社債券の不発行制度は、①社債の発行ごとに、社債券を不発行とすることを定めることができること、②社債の譲渡・質入れは、意思表示のみでその効力を生ずること、③社債の移転・質入れは、名義書換をしなければ、発行会社その他の第三者に対抗することができないこと、④社債権者・質権者は、発行会社に対し、社債原簿に記載・記録されているその社債権者・質権者についての事項を証明した書面の交付を請求することができることなどを内容とするものとする。
(4)社債に係る名義書換代理人
社債に係る名義書換代理人(商法307 条2 項、206 条2 項)については、定款にこれを置く旨の定めがない場合であっても、業務執行機関の決定により、これを置くことができるものとする。
5 社債の銘柄統合
社債の銘柄統合(発行日等が異なる社債を1 種類の社債として取り扱うこと)を可能とするための所要の規定の整備を行うものとする。

第6 計算関係
1 財源規制を課す剰余金の分配の範囲
株主に対する金銭等の分配(現行の利益の配当、中間配当、資本及び準備金の減少に伴う払戻し)及び自己株式の有償取得を「剰余金の分配」として整理して、統一的に財源規制をかけるものとする。
(注1)次に掲げる場合における自己株式の取得については、財源規制をかけないものとする。
① 合併、分割及び営業全部の譲受けにより、相手方の有する自己の株式を取得する場合
② 合併、分割、株式交換、株式移転、営業譲渡及び営業譲受けの際の反対株主の買取請求に応じて買い受ける場合
③ 単元未満株主の買取請求に応じて買い受ける場合
(注2)株式会社が(注1)②及び③以外の買取請求に応じて自己株式を買い受ける場合において、払い戻す額が剰余金を分配することができる額(以下「分配可能額」という。)を超えるときは、その超過額の弁済責任(過失責任)を、①払戻しをした取締役・執行役、②買取請求を発生させる行為をした取締役・執行役、③これらの行為を行うことに同意した取締役(これらの行為を行うことにつき取締役会の決議をした場合には、当該決議に賛成した取締役)に課すものとする。
(注3)商法291 条は、削除するものとする。
(注4)人的分割については、「物的分割+ 剰余金の分配」という構成とし、分割会社の株主に対して交付される財産が新設会社又は承継会社の株式(一株に満たない端数に相当する金銭を含む。)の場合については、剰余金分配に係る財源規制は課さないものとする。
2 財源規制における分配可能額の算定方法
(1)分配可能額の計算方法
① 分配可能額については、現行法の実質を変更することなく、最終の貸借対照表上の留保利益等から最終の貸借対照表上の自己株式の価額等及び当期に分配した金銭等の価額(現に金銭等の分配又は自己株式の取得をした価額)を控除する方法で算定するよう規定を整理するものとする。
② 最終の決算期に係る貸借対照表から算出される分配可能額に、最終の決算期後その分配を行う時までの分配可能額の増減(金銭の分配、資本金の減少等による分配可能額の増減をいい、期間損益による変動は含まないものとする。)を反映させるものとする。
(2)純資産額による制限
資本金の額にかかわらず、純資産額が300 万円未満の場合には、剰余金があってもこれを株主に分配することができないものとする。
(3)期間損益の反映
期中において決算手続に準じた手続を行うことにより、分配可能額に、その時までの期間損益を反映させる制度を、設けるものとする。
3 剰余金分配に係る取締役等の責任
(1)分配可能額を超えて剰余金の分配をした場合の責任
分配可能額を超えて剰余金の分配をした取締役又は執行役及び分配議案を作成した取締役又は執行役は、分配をした額について弁済責任を負うべきものとする。ただし、自己の無過失を立証すれば、責任を負わないものとする。
(注)分配議案の株主総会への提出に同意した取締役及び取締役会の決議に賛成した取締役についても同様の取扱いをするものとし、これらの者は連帯債務者とするものとする。
(2)責任の減免
① 分配額に係る弁済責任は、一部免除の対象とはならないものとする。
② 分配額に係る弁済責任のうち、分配可能額を超えて分配された部分については、株主全員の同意による免除を認めないものとする。
(3)期末のてん補責任
① 期末のてん補責任を課さない分配
イ 定時総会の決議に基づく株主に対する金銭等の分配(4(3)①の定款の定めがあるときは、貸借対照表等の確定と同時に行う金銭等の分配)については、期末のてん補責任を課さないものとする。
ロ 資本金・準備金の減少の際に併せて剰余金を分配する場合において、分配額が減少額以下のときは、期末のてん補責任を課さないものとする。
② 期末のてん補責任の算定方法
てん補責任が課せられる剰余金の分配の範囲を、決算期から次の決算期までに行われたものとする現行制度を改め、決算の確定時から次の決算の確定時までに行われたものとする。
(注1)いわゆる「欠損」の判定については、最終の決算期後当該決算の確定時までの剰余金分配可能限度額の増減をも反映させるものとする。
(注2)自己株式の取得に係る責任については、取得した額を弁済すべき額とするものとする。
4 剰余金分配手続
(1)原則
株式会社は、いつでも、株主総会の決議によって、剰余金の分配を決定することができるものとする。
(注)取締役会を設置する株式会社については、現行の中間配当に相当する制度も維持するものとする。
(2)決議要件が加重される場合
① 現物配当
株主に対して金銭以外の財産の分配をする場合においては、株主からの請求があれば当該財産に代えてその財産の価額に相当する額の金銭を分配することとする場合を除き、株主総会の特別決議を要するものとする。
② 特定の者からの自己株式の有償取得
市場取引・公開買付け以外の方法により、特定の者から自己株式を有償取得する場合には、株主総会の特別決議を要するものとする。
(3)取締役会の決議による株主に対する剰余金の分配
① 取締役会を設置する株式会社であって、会計監査人を設置し、かつ、取締役の任期をその選任後1 年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時まで、とするもの(委員会等設置会社以外の株式会社にあっては、監査役会を設置したものに限る。)は、定款で剰余金の分配(特別決議を要するものとされる事項を除く。)を取締役会の決議をもって決定することができる旨を定めることができるものとする。
(注)この定款の定めがある株式会社の営業報告書には、剰余金処分の理由その他法務省令に定める事項を記載しなければならないものとする。
② ①の定款の定めがある株式会社においては、定款で①により取締役会の決議をもって決定することができる事項を株主総会の決議によって決定することができない旨を定めることができるものとする。
5 資本の部の計数
(1)資本の部の計数の変動手続
① 原則
株式会社は、いつでも、株主総会の決議によって、資本の部の計数を変動させることができるものとする。
(注1)準備金の資本組入れについても、株主総会の普通決議を要するものとする。
(注2)株主総会の普通決議により利益の準備金への計上を認めるものとする。
(注3)4(3)①の定款の定めがある場合には、資本金及び準備金の増減(債権者保護手続を要しない準備金減少を除く。)以外の計数の変動を取締役会の決議をもって決定することができるものとし、4(3)②の定款の定めがある場合には、当該事項を株主総会の決議によって決定することができないものとする。
② 定時総会における資本金の減少の手続の特例
定時総会における資本金の減少であって、減少後なお分配可能な剰余金が生じないときは、その決議要件は、普通決議で足りるものとする。
(注1)資本金を減少する場合には、資本金の準備金への計上を認めるものとする。
(注2)定時総会における準備金の減少であって、減少後なお分配可能な剰余金が生じないときは、債権者保護手続を要しないものとする。
(2)資本金・準備金の減少額の上限規制
株式会社の成立後に減少することができる資本金・準備金の額については、制限を設けないものとする。
(3)資本金の組入れ額等
① 新株等の発行時における資本金に組み入れるべき額は、「発行価額」ではなく、「払込金額」を基準として算定するものとする。
② 準備金に積み立てるべきものについて、そのすべてを法律において限定列挙することはせず、省令に委任するものとする。
(注)利益準備金と資本準備金とは、単に「準備金」として整理するものとし、現行の利益準備金の積立てに関しては、分配した剰余金の額の10 分の1 に相当する額又は資本金の額を4 で除した額から準備金の額を控除した額のいずれか少ない額を積み立てるべきものとし、積立てに充てる原資は、分配する剰余金の原資の区分によるものとする。
6 その他
(1)定時総会の開催時期
監査役、会計監査人等に貸借対照表等を提出してから一定期間を経過しなければ定時総会を開催することができないとする規制は、廃止するものとする。
(2)取締役会の設置されていない株式会社の貸借対照表等
取締役会の設置されていない株式会社の貸借対照表及び損益計算書については、会計監査人を設置している場合であっても、株主総会の承認を要するものとする。
(3)株主持分変動計算書
株式会社は、貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に加え、株主持分変動計算書を作成し、これらの書類(附属明細書を除く。)を株主に送付しなければならないものとする。
(注1)利益処分又は損失処理に関する議案については、4(1)、5(1)①、6(4)等他の手続に吸収するものとし、会社法上は、特に規定しないものとする。
(注2)現行有限会社法44 条ノ2 第2 項(各社員に会計帳簿の閲覧等請求権を与えた場合における附属明細書の作成免除)に相当する制度は廃止するものとし、附属明細書の記載内容については、記載事項の合理化等所要の措置を講ずるものとする。
(4)役員賞与
委員会等設置会社以外の株式会社におけるいわゆる「役員賞与」その他の取締役等に対して与える財産上の利益については、会計処理の在り方にかかわらず、株主総会の決議により定めるものとする。
(5)決算公告
株式会社は、その規模及び選択した機関設計の在り方にかかわらず、決算公告をしなければならないものとする。
(注1)損益計算書又はその要旨を公告しなければならない株式会社の範囲は、会計監査人を設置することが義務付けられる会社とするものとする。
(注2)有価証券報告書を提出している株式会社であって、EDINET 等において当該報告書が公開されている株式会社については、決算公告を要しないものとする。

第7 組織再編行為関係
1 対価柔軟化
吸収合併、吸収分割又は株式交換の場合において、消滅会社の株主、分割会社若しくはその株主又は完全子会社となる会社の株主(以下「消滅会社の株主等」という。)に対して、存続会社、承継会社又は完全親会社となる会社の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付することができるものとする。
(注)消滅会社の株主等に対して交付する対価の割当てについての理由を記載した書面等のほか、対価の内容を相当とする理由を記載した書面を開示すべき資料とするものとする。
2 簡易組織再編行為
(1)簡易組織再編行為等の要件
① 吸収合併の存続会社が合併の対価として交付する存続会社株式の数の発行済株式総数に対する割合と存続会社株式以外の財産の純資産額に対する割合の合計が20 パーセント以下の場合には、存続会社において株主総会の決議を経ることを要しないものとする。
(注1)吸収分割の承継会社、株式交換の完全親会社となる会社及び営業全部の譲受けの譲受会社についても、①と同様の措置を講ずるものとする。
(注2)株式譲渡制限会社が当該株式譲渡制限会社の株式の発行又は移転を伴う組織再編行為を行う場合には、①又は(注1)の要件に合致するときであっても、当該株式譲渡制限会社につき株主総会の決議を要するものとする。②吸収分割の分割会社が承継会社に承継させる資産の分割会社の総資産に占める割合が20 パーセント以下の場合には、分割会社において株主総会の決議を要しないものとする。
② 吸収分割の分割会社が承継会社に承継させる資産の分割会社の総資産に占める割合が20 パーセント以下の場合には、分割会社において株主総会の決議を要しないものとする。
(注)新設分割の分割会社及び営業の重要な一部を譲渡する株式会社についても、②と同様の措置を講ずるものとする。
(2)簡易組織再編行為の異議要件
簡易組織再編行為に反対する株主による異議の要件は、当該株式会社の特別決議の定足数の総株主の議決権に対する割合を3 で除して得た割合と6分の1 のいずれか小さい割合とするものとする。
3 略式組織再編行為
(1)略式組織再編行為
支配関係のある株式会社間(ある株式会社(支配会社)が他の株式会社(被支配会社)の総株主の議決権の9 割以上を保有している状態にある場合における当該株式会社間)で組織再編行為を行う場合には、被支配会社における株主総会の決議を要しないものとする。
(注)株式譲渡制限会社が当該株式譲渡制限会社の株式の発行又は移転を伴う組織再編行為を行う場合には、(1)の要件に合致するときであっても、当該株式譲渡制限会社につき株主総会の決議を要するものとする。
(2)略式組織再編行為の差止め
(1)により株主総会の決議を要しない被支配会社の株主は、当該略式組織再編行為が法令又は定款に違反し、又は著しく不当な条件で行われることにより、不利益を受けるおそれがある場合には、当該略式組織再編行為の差止めを請求することができるものとする。
4 組織再編行為に伴う新株予約権の承継
(1)新株予約権等の承継
① 合併又は会社分割に際して、消滅会社又は分割会社が発行している新株予約権及び新株予約権付社債を存続会社等が承継する手続を明確化するものとする。
② 株式交換及び株式移転に際して、完全子会社が発行している新株予約権付社債を完全親会社となる会社が承継することを認めるものとする。
(2)新株予約権者の買取請求権
組織再編行為に際して、次に掲げる新株予約権の新株予約権者は、買取請求権を行使することができるものとする。
① 新株予約権の発行条項に承継に関する定めがある新株予約権について、当該定めの内容に沿わない取扱いがされる場合における当該新株予約権
② 新株予約権の発行条項に承継に関する定めがない新株予約権であって、組織再編行為により他の株式会社に承継されることとなる新株予約権
(注)(2)①又は②に該当する新株予約権が付せられた新株予約権付社債権者は、原則として、新株予約権と社債を分離することなく、その有する新株予約権付社債の買取りを請求することができるものとし、発行条項において、新株予約権のみの買取り、又は新株予約権若しくは新株予約権付社債のいずれかの買取りを請求する旨ができる旨が定められているときは、その定めに従い、買取請求権を行使することができるものとする。
5 株式交換・株式移転関係
(1)株式交換の場合の債権者保護手続
① 株式以外の財産を対価とする場合
完全親会社となる会社が当該株式会社の株式(一株に満たない端数に相当する金銭を含む。)以外の財産を完全子会社となる会社の株主に交付する場合には、完全親会社となる会社において、債権者保護手続を要するものとする。
② 新株予約権付社債を承継する場合
株式交換・株式移転に際して新株予約権付社債を承継するときは、当該新株予約権付社債権者(株式交換の場合にあっては、完全親会社となる会社の債権者を含む。)に対する債権者保護手続を要するものとする。
(2)株式交換・株式移転の場合の資本等の増加限度額
株式交換・株式移転に際しての資本等の増加限度額については、完全子会社となる会社の純資産額を基準とするのではなく、完全親会社となる会社が取得する株式の価額を基準として定めるものとする。
(3)株式交換無効の訴え
① (1)①の場合には、異議を申し述べた債権者等も、株式交換無効の訴えを提起することができるものとする。
② 株式交換無効の訴えについては、完全親会社又は完全子会社となる会社の本店の所在地の地方裁判所の管轄に属するものとし、会社分割無効の訴えの場合と同様の措置(商法374 条ノ12 第4 項・5項)を講ずるものとする。
6 組織再編行為に関する会計処理
(1)資本の部の計数の取扱い
組織再編行為に際しての資本の部の計数の取扱いについては、企業結合会計に係る議論も踏まえて、その算定の方法の一部を法務省令に委任するものとする。
(2)組織再編行為の際の剰余金の計上
① 合併又は会社分割の場合において、増加すべきものとされる資本金又は準備金の増加をしないことを認めるものとする。
② 株式交換・株式移転の場合においても、①と同様の取扱いを認めるものとし、この場合には、債権者保護手続を要するものとする。
③ 簡易組織再編行為を行う場合において増加すべきものとされる資本金又は準備金を増加しないこととするときは、株主総会の決議を要しないものとする。
(注)合併・人的分割の際の剰余金の引継ぎに関する制度は廃止するものとし、①又は②の手続により計上すべき剰余金の区分については、企業結合会計に係る議論を踏まえ、法務省令で所要の措置を講ずるものとする。
7 組織再編行為に際して差損が生じる場合
組織再編行為に際して存続会社において差損(対価として交付する自己株式の処分差損を除く。)が生ずる場合には、当該組織再編行為が簡易組織再編行為の要件に該当するときであっても、株主総会の決議を要するものとする。
(注1)「差損が生ずる場合」とは、次に掲げる場合を指すものとする。
① 存続会社等が承継する負債の簿価が資産の簿価を超える場合
② 組織再編行為に際して交付する対価の存続会社における簿価が当該組織再編行為により承継する純資産額を超える場合
(注2)所要の開示手続を設けるものとする。
8 効力の発生
吸収合併又は吸収分割については、登記時ではなく、当該組織再編行為を行う株式会社間で定めた一定の日において、その効力を生ずるものとする。
(注1)吸収合併等の効力の発生は、登記をしなければ、第三者に対して、その善意・悪意を問わず対抗することができないものとする。
(注2)効力発生日を公告することとし、その期日を変更する場合又は中止する場合においては、その旨を公告するものとする。
9 合併等の無効の訴え
吸収合併を無効とする判決等が確定した場合には、合併に際して交付された自己株式も無効とするものとする。

第8 清算関係
1 清算手続への裁判所の関与
清算手続は裁判所の監督に服するものとする規定を削除し、清算人の氏名等の裁判所への届出並びに財産目録及び貸借対照表の裁判所への提出の制度を廃止するものとする。
2 清算中の株式会社の機関
(1)清算中の株式会社の清算人会
清算中の株式会社には、清算人会の設置を義務付けないものとする。
(注)清算人会を設置するには、清算人を3 人以上設置しなければならないものとする。
(2)清算中の株式会社の監査役
① 解散時に大会社であった株式会社又は株式譲渡制限会社でなかった株式会社には、監査役を1 人以上設置することを義務付けるものとする。
② 清算中の株式会社の監査役については、任期の定めがないものとする。
3 清算中の株式会社がすべき公告
(1)債権申出の公告
債権申出の公告については、1 回で足りるものとする。
(2)清算中の株式会社の決算公告
清算中の株式会社の決算公告は、廃止するものとする。
4 清算中の株式会社の債務の弁済
商法125条1項から3項までの規定は、削除するものとする。
5 清算中の株式会社の配当等
(1)残余財産分配の現物交付
金銭以外の財産による残余財産分配が可能であることを明確化するとともに、各株主は、分配を受けることができる残余財産に代えて、その価額に相当する額の金銭の分配を請求することができるものとする。
(2)会社財産の株主に対する払戻し
清算中の株式会社は、残余財産の分配を除き、利益配当、自己株式の取得その他株主に対する金銭等の支払をすることができないものとする。
(注1)清算中の株式会社の株主は、合併以外の場合においては、株式の買取請求権を行使することができないものとする。
(注2)清算中の株式会社が分割会社となる人的分割及び完全子会社となる株式交換・株式移転は、認めないものとする。
6 清算結了登記後の資料の保存者
清算結了後の重要な資料の保存については、原則として、清算結了時の清算人がその義務を負うものとし、利害関係人からの裁判所への資料の保存者の選任請求制度は、清算人がいなくなった場合等のための制度として整理するものとする。


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