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解説記事2013年04月22日 【解説】 経済団体連絡会「一般社団・財団法人法施行規則による一般社団法人の各種書類のひな型」について(上)(2013年4月22日号・№496)

解説
経済団体連絡会「一般社団・財団法人法施行規則による一般社団法人の各種書類のひな型」について(上)
 西村あさひ法律事務所 弁護士 山本憲光
            弁護士 大野憲太郎
 有限責任あずさ監査法人 公認会計士 佐久間清光

Ⅰ.はじめに

1.本ひな型の作成経緯・趣旨等
 平成20年12月1日に一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、「法人法」という)が施行されて以来、まもなく5年が経過しようとしている。その間、一般社団法人の運営実務も積み重ねられているが、このような各種書類の中にはその具体的な記載内容が必ずしも明らかではないものもあることから、実務上参考とすべき指針を求める声も多く聞かれるところであった。
 この点、株式会社が株主総会に向けて作成すべき各種書類については、一般社団法人日本経済団体連合会が公表している「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(脚注1)(以下、「経団連ひな型」という)がある。経団連ひな型は、会社法、会社法施行規則及び会社計算規則が規定する最低限の要請を明らかにするために作成されたとされている。
 本ひな型(脚注2)は、いわば、経団連ひな型の一般社団法人版として作成されたものである。
 本ひな型の作成主体である経済団体連絡会は、わが国の主要な業界ごとに組織されている約60の経済団体などから構成されており、これら経済団体が抱える諸課題の解決や会員相互の情報共有などの活動を行っている。構成団体の組織形態としては、一般社団法人も多く存在しているところ、各種書類の作成実務を担当する方々の指針となるよう、法人法その他の法令が要求する最低限の要請を明らかにするために作成された。弁護士又は公認会計士である本稿の筆者らが関係法令の規定及び関係する会計基準に基づき案文を作成し、経済団体連絡会において一般社団法人の実務を実際に担当する実務家が検討を重ね、さらに法務省民事局参事官室をはじめ関係各方面の協力を仰ぎ、照会等を行った結果を踏まえて、公表に至ったものである。なお、本稿の筆者らによって、本ひな型に基づき、一般社団法人が法令により作成を義務づけられている各種書類の内容、作成手続等につき、Q&A形式で解説をしたものとして、『Q&A一般社団法人の各種書類作成実務-経済団体連絡会ひな型準拠』(経団連出版、2013年)があるので、あわせて参照されたい。
 法人法及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則(以下、「法人法施行規則」という)は、会社法、会社法施行規則及び会社計算規則と異なり、各書類の記載事項を詳細に定めてはいない。そのため、記載事項についても、各一般社団法人の自由裁量に任されている部分も多い反面、実際には何を記載すればよいのか判断しかねる部分も多いように思われる。本ひな型は、法人法その他の法令が規定する最低限の要請を明らかにするとともに、各一般社団法人の関係者の方々が各書類を作成する際に参考にできるよう、各書類のモデルを提示するものである。
 本ひな型は、一般社団法人が作成すべき各種書類の記載事項について最低限の要請である法定された記載事項の内容を明らかにするとともに、それを超える部分について、一般社団法人が創意・工夫で対応し得ることを示すものである。
 各種書類の記載にあたっては、法定された記載事項が最低限の要請にすぎないことを念頭に置きつつ、一般社団法人の社員の理解と判断に資するため、コスト・ベネフィット、法人の機密等を考慮しながらも、当該法人の実態に照らし、法人の概況又は法人の損益の状態を正しく、かつ簡潔明瞭に示すよう創意・工夫に努めることが求められる。

2.会社法との異同  一般社団法人が定時社員総会に向けて作成しなければならない書類は、株式会社が定時株主総会に向けて作成しなければならない書類と以下のような対照関係にある。
法人法 会社法
計算書類 同 左 
計算書類の附属明細書 同 左 
事業報告 同 左 
事業報告の附属明細書 同 左 
社員総会招集通知 株主総会招集通知
監査報告 同 左 
会計監査報告 同 左 
社員総会参考書類 株主総会参考書類 
議決権行使書面 同 左
 これは、法人法を制定する際、一般社団法人及び一般財団法人の適正かつ自律的な運営を確保するため、準則主義を採用する会社法制、具体的には株式会社の組織、運営及び管理に関する規律に準じた規律を設けることが相当であるとされたことから、法人法には会社法に類似した規定が多数設けられているためである。そのため、法人法の解釈に際しては、事実上母法のようなものになっている会社法の解釈が参考になるものと考えられている(脚注3)。本ひな型においても、会社法の解釈を参考にしている部分が多くある。
 但し、一般社団法人及び一般財団法人は、公益認定を受けて活動する選択肢がある等、その活動領域は広範であり、簡素で自由度の高いものとすべきとの要請もあったことから、法人法施行規則は、会社法施行規則等の他の法人法制に関する法令よりも相当簡素な規律となっており、適正な運営確保のために最小限必要となる基本的な規定となっている(脚注4)。そのため、本ひな型でとりあげる各書類の記載事項についても、会社法施行規則のような詳細な規定は設けられておらず、各法人の自由に任されている部分も多くなっている。

Ⅱ.本ひな型の対象
 本ひな型の対象は、一般社団法人(移行法人を含む)である。一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人について、本ひな型を参考にすることは可能であるが、それぞれ法令上、必要な事項を付加して活用する必要がある。

1.一般社団法人の分類  公益認定を受けていない一般社団法人は、その設立の形態や一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下、「整備法」という)に基づく特則の適用の有無から以下の5つに整理することができる。
① 法人法が施行された平成20年12月1日以降に法人法に基づき設立された一般社団法人
② 整備法第38条の規定による改正前の民法第34条に基づき設立された社団法人又は整備法第39条の規定による改正前の民法施行法第19条第2項の認可を受けた法人であって、整備法の施行の際現に存するもののうち、移行の登記をしていないもの(特例社団法人)
③ 移行の認可を受けて移行の登記をした元特例社団法人(うち、その作成した公益目的支出計画の実施が完了していない一般社団法人を「移行法人」という)
④ 旧中間法人法の規定による有限責任中間法人であって、整備法の施行の際現に存するもの(旧有限責任中間法人)
⑤ 移行の認可を受けて移行の登記をした元特例無限責任中間法人
 本ひな型は、これらのうち、②特例社団法人を除く他の全ての一般社団法人を対象としている。なお、②特例社団法人については、法人法施行以前からの所管官庁の指導監督が継続していることもあり(整備法第95条)、整備法の経過規定(整備法第59条)により各種書類の作成等に関する法人法上の規定が適用されない。
 また、②特例社団法人に関しては、平成25年11月30日までに、公益社団法人への移行の認定又は一般社団法人への移行の認可を受けなければ、同日に解散したものとみなされることになる(整備法第46条第1項)。
 一般社団法人の機関構成は以下の5種類であるが、本ひな型は、これらのいずれの機関構成にも対応できるように作成されている。
① 社員総会+理事
② 社員総会+理事+監事
③ 社員総会+理事+監事+会計監査人
④ 社員総会+理事+理事会+監事
⑤ 社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

2.移行法人  一般社団法人のうち整備法第123条第1項に定めのある移行法人(公益目的支出計画の実施が完了していない一般社団法人。以下、「移行法人」という)については、公益目的支出計画実施報告書を作成し、定時社員総会に報告することが必要となる。公益目的支出計画実施報告書については「定期提出書類の手引き 移行法人編」(脚注5)に従い、作成する必要がある。

3.公益社団法人が参照する場合の注意点  公益社団法人は、主に以下の点について、一般社団法人と異なるルールが適用されるので、本ひな型を参照される際には注意が必要である。
① 収益事業等に関する会計を公益目的事業に関する会計から区分し、各収益事業ごとの特別の会計として経理する必要がある(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下、「公益認定法」という)第19条)。
② 事業計画書、収支計算書、資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類、財産目録、役員等名簿、理事等に対する報酬等の支給基準を記載した書類、キャッシュ・フロー計算書(脚注6)、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類を作成し、備え置く必要がある(公益認定法第21条第1項第2項、公益認定法施行規則第27条、第28条)。

4.一般財団法人・公益財団法人が利用する場合の注意点  一般財団法人・公益財団法人は、一般社団法人と異なり、社員・社員総会は存在せず、評議員・評議員会が設置する(法人法第170条第1項)。一般財団法人・公益財団法人が、本ひな型を参照する際には、「社員」、「社員総会」をそれぞれ「評議員」、「評議員会」に置き換える必要があるが、以下の点については、評議員・評議員会には適用がないので注意が必要である。
① 評議員会では、評議員が代理人により議決権を行使することが認められていない。
② 評議員会では、書面投票・電子投票が認められていない。
 なお、公益財団法人に関しては、上記3での注意点もあわせて注意が必要となる。

Ⅲ.事業報告及びその附属明細書
 事業報告とは、事業年度中における当該一般社団法人の事業の経過及び成果を社員に対して説明するための報告書である。また、事業報告の附属明細書とは、事業報告の内容を補足する重要な事項を記載した書類である(法人法施行規則第34条第3項)。
 一般社団法人は、各事業年度に係る事業報告及びその附属明細書を作成する必要がある(法人法第123条第2項)。必ずしも紙媒体で作成する必要はなく、電磁的記録をもって作成することも認められている(法人法第123条第3項)。

1.事業報告  事業報告の構成は、一般社団法人の業種・業態によっても異なるが、表1の記載例が考えられる。事業報告の記載順序について、表1の記載例は、法人法施行規則第34条第2項の順序によっているが、項目の立て方、順序に制約はない。
 法人法施行規則において明示的に定められている記載事項は、法人の状況に関する重要な事項(法人法施行規則第34条第2項第1号)及び業務の適正を確保するための体制の整備についての決定又は決議の内容の概要(法人法施行規則第34条第2条第2号)のみである。会社法施行規則上は、公開会社の事業報告の内容に株式会社の会社役員に関する事項等も含めなければならないとされているが(会社法施行規則第119条第2号参照)、法人法施行規則上では、特段記載事項として定められておらず、これらを記載する必要はない。
【表1】事業報告の記載例
[記載例]
1 .法人の状況に関する重要な事項
 ・・・・・
2 .業務の適正を確保するための体制の整備についての決議の内容の概要
 ・・・・・

2.附属明細書  法人法では、事業報告の附属明細書と計算書類の附属明細書は、別々のものとして規定されている(法人法第124条第2項、法人法施行規則第33条、第34条第3項参照)。実務上は、別々の書類として作成するのではなく、合冊して作成する方法もあり得るが、法人法では、事業報告と計算書類とでその附属明細書を含め、監査主体が異なり得ることが想定されている点(即ち、原則としていずれについても監事の監査が必要であるが、会計監査人設置一般社団法人の場合には、計算書類及びその附属明細書に関し、監事の監査に加え、さらに会計監査人の監査も必要となる。法人法第124条第1項、第2項)に留意する必要がある。
 法人法においては、事業報告の附属明細書の内容は「事業報告の内容を補足する重要な事項」とされているのみで(法人法施行規則第34条第3項)、会社法施行規則第128条のように具体的には定められていない。事業報告に記載した内容と同一の内容をあえて重複して記載する必要はない。

Ⅳ.計算書類及びその附属明細書
 計算書類とは、貸借対照表及び損益計算書を指す(法人法第123条第2項)。また、計算書類の附属明細書とは、計算書類の内容を補足するための書類である(法人法施行規則第34条第3項)。
 一般社団法人は、各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書を作成する必要がある(法人法第123条第2項、法人法施行規則第26条、第29条第1項)。必ずしも紙媒体で作成する必要はなく、電磁的記録をもって作成することも認められている(法人法第123条第3項)。

1.会計基準  内閣府が公表している「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)(脚注7)」(以下、「FAQ」という)Ⅵ-4-②の1は、一般社団法人が適用する会計基準について、特に義務づけられている会計基準はなく、一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計の慣行によることが求められるとしている(法人法施行規則第21条)。具体的に何がここにいう「一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計の慣行」に該当するかについては、上記FAQは直接的に言及しているわけではないが、同FAQに「平成16年改正基準や企業会計の基準を適用することも可能」とされていることも勘案すると、現実的には、主に「公益法人会計」と「企業会計」の2種類が考えられる。
 一般社団法人は、法人の実情に応じて、「公益法人会計」と「企業会計」のいずれの会計を採用することもできる。選択にあたっては、一般社団法人が移行法人又は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第7条の申請をする一般社団法人(以下、「申請法人」という)であるかどうかによって、一般的には以下について考慮する必要がある。
(1)一般社団法人が移行法人又は申請法人である場合  移行法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律施行規則(以下、「整備法施行規則」という)第42条第1項により、当該法人について一般社団法人への移行を認可した行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)に提出する貸借対照表において実施事業資産を区分して明らかにしなければならないこととされているとともに、同条第2項により、行政庁に提出する損益計算書において実施事業等に係る額を明らかにしなければならないこととされている。この点、公益法人会計基準及び「公益法人会計基準」の運用指針(いずれも平成20年4月11日内閣府公益認定等委員会制定、平成21年10月改正。以下、後者につき「運用指針」という)の様式(ひな型)においては、貸借対照表に加えて、実施事業資産を区分して明らかにすることができる貸借対照表内訳表を作成するとともに、正味財産増減計算書に加えて実施事業等に係る額を明らかにすることができる正味財産増減計算書内訳表を作成するよう定められている。したがって、移行法人については公益法人会計を採用し、公益法人会計基準及び運用指針の様式(ひな型)に準拠して計算書類及びその附属明細書を作成することが有用であると考えられる。
 なお、公益法人会計を採用した移行法人が作成する貸借対照表については、貸借対照表内訳表を作成せず、貸借対照表に実施事業資産を注記する方法も考えられる(FAQⅩ-4-②の3)。この場合、例えば貸借対照表の欄外に、「注記」欄を設け、当年度の実施事業に係る資産とその金額を表示することが考えられる。実施事業以外に係る資産をその他会計、法人会計に区分する必要はない。実施事業に係る資産の状況については、実施事業資産が該当する資産及び負債につき、公益法人会計基準に基づく貸借対照表の内訳表の勘定科目に従って、実施事業に係る資産に対応する金額を記述し、又はこれを表形式で表示すればよい。この際、該当のない勘定科目については省略することができる。
 また、申請法人についても、連続性の観点から、公益認定を得る前後において同一の会計基準を採用することが有用であり、円滑な公益認定につながるものと考えられるので、同様に、公益法人会計基準及び運用指針の様式(ひな型)に準拠して計算書類及びその附属明細書を作成することが有用であると考えられる。
(2)一般社団法人が移行法人又は申請法人のいずれでもない場合  新規に設立された一般社団法人(以下、「新規設立法人」という)又は整備法第124条に基づき認可行政庁により公益目的支出計画の実施が完了したことの確認を受けた一般社団法人(以下、「移行完了法人」という)は、その作成する計算書類につき、整備法施行規則第42条第1項の規定による実施事業資産の区分や同条第2項の規定による実施事業等に係る額の区分は必要とされない。また、公益法人会計により要請される指定正味財産と一般正味財産の区分(公益法人会計基準第3の2参照)についても必要性がないと考えられる。
 そこで、このような新規設立法人又は移行完了法人については、公益法人会計基準に準じた計算書類及び附属明細書を作成することのほかに、企業会計を採用して計算書類及びその附属明細書を作成することが考えられる。
 公益法人会計基準に基づく記載例等については、公益法人会計基準及び運用指針を参照できることから、本ひな型では、これらの記載例を省略している(運用指針2.「公益法人会計基準における公益法人について」②及び④参照)。本ひな型の計算書類及びその附属明細書の記載例は、企業会計を採用した場合のものである。
 理事会の承認を受けた計算書類についての会計監査人の会計監査報告が無限定適正意見であること等の一定の要件(法人法施行規則第48条)を満たす場合は、計算書類について定時社員総会での承認は不要となり、定時社員総会に提出した計算書類の内容を理事が報告すれば足りる。公益法人会計を採用する場合、その報告書類は、貸借対照表及び損益計算書(正味財産増減計算書)となるが、法人の実情に応じて、内訳表(貸借対照表内訳表及び正味財産増減計算書内訳表)を加えることも考えられる。

2.計算書類
(1)貸借対照表
 貸借対照表とは、一定の時点における法人の財政状態を明らかにする書類である。法人法及び法人法施行規則は、一般社団法人の貸借対照表の表示方法として以下の3点が定められているのみである。これら以外については、特段規定がないので、一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計慣行を斟酌したうえで、各法人が貸借対照表を作成するものと解される(表2参照)。

・「資産の部」、「負債の部」及び「純資産の部(脚注8)」の三つに区分して表示すること(法人法施行規則第30条第1項)
・各部はそれぞれ適当な項目に細分することができること(法人法施行規則第30条第2項)
・基金の総額及び代替基金は純資産の部に計上しなければならず、基金の返還に係る債務の額は負債の部に計上できないこと(法人法施行規則第31条)
(2)損益計算書  損益計算書とは、1会計期間の法人の経営成果・財産の増減結果を明らかにする書類である。法人法及び法人法施行規則は、一般社団法人の損益計算書の表示方法として、収益若しくは費用又は利益若しくは損失について、適当な部又は項目に区分して表示すること(法人法施行規則第32条)を定める。この点以外については、特段規定がないので、一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計慣行を斟酌したうえで、各法人が貸借対照表を作成するものと解される(表3参照)。

 株式会社の損益計算書では売上高・売上原価・販売費及び一般管理費の区分に従って表示されているのに対して、本ひな型の損益計算書では経常収益・経常費用及び経常外収益・経常外費用の区分をしたうえで、その経常収益・経常費用の内訳として事業収益・財務収益及び事業費用・管理費用・財務費用という区分で表示されている。このような経常損益・経常外損益という区分は公益法人会計基準を参考に、また事業収益・財務収益及び事業費用・管理費用・財務費用という区分は独立行政法人会計基準を参考にしたものといえる。これは、一般社団法人は、一般的に、売上高・売上原価・販売費及び一般管理費という区分になじまないためであると考えられる。したがって、一般社団法人であっても、その事業の性質にかんがみて、売上高・売上原価等の区分に従って損益計算書を表示した方が適切と考えられる場合には、本ひな型によるのではなく、株式会社の損益計算書と同様、売上高等の区分により作成すべきと考えられる。
(3)計算書類の注記表  法人法及び法人法施行規則には、計算書類の注記表に関する規定はない。一方、一般社団法人の会計は、その行う事業に応じて、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従う必要があり(法人法第119条)、一般社団法人が準拠し得る一般に公正妥当と認められる会計の慣行としては、主に企業会計の基準又は公益法人会計基準が考えられるところ、いずれの会計基準に準拠した場合も、計算書類の注記表を作成することも、脚注方式等の方法を用いることも可能である。したがって、注記表は必ず作成しなければならないものではない。本ひな型には、注記表を作成する場合の記載例を挙げている(表4参照)。
【表4】計算書類の注記表の記載例
1 .継続企業の前提に関する注記
 ・・・・・・
2 .重要な会計方針に係る事項に関する注記

 ① 計算書類及びその附属明細書の作成基準
  一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成している。
 ② 資産の評価基準及び評価方法
  (1)有価証券の評価基準及び評価方法
    ・・・・・・
  (2)棚卸資産の評価基準及び評価方法
    ・・・・・・
 ③ 固定資産の減価償却の方法
  (1)有形固定資産(リース資産を除く)
    ・・・・・・
  (2)無形固定資産
    ・・・・・・
  (3)リース資産
    ・・・・・・
 ④ 引当金の計上基準
  (1)貸倒引当金
    ・・・・・・
  (2)賞与引当金
    ・・・・・・
  (3)退職給付引当金
    ・・・・・・
  (4)役員退職慰労引当金
    ・・・・・・
 ⑤ 収益及び費用の計上基準
   ・・・・・・
 ⑥ その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項
   ・・・・・・
3 .会計方針の変更に関する注記
  ・・・・・・
4 .表示方法の変更に関する注記
  ・・・・・・
5 .会計上の見積りの変更に関する注記
  ・・・・・・
6 .誤謬の訂正に関する注記
  ・・・・・・
7 .貸借対照表に関する注記
 ① 担保に供している資産及び担保に係る債務
   ・・・・・・
 ② 資産から直接控除した引当金
   ・・・・・・
 ③ 資産に係る減価償却累計額
   ・・・・・・
 ④ 資産に係る減損損失累計額
   ・・・・・・
 ⑤ 保証債務
   ・・・・・・
 ⑥ 関係会社に対する金銭債権及び金銭債務
   ・・・・・・
 ⑦ 理事及び監事に対する金銭債権及び金銭債務
   ・・・・・・
 ⑧ 基金及び代替基金
 基金は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第131 条に規定する基金であり、代替基金
は同法第144 条第1 項の規定により計上された代替基金である。
   基金及び代替基金の増減額及びその残高

8 .損益計算書に関する注記
  関係会社との取引高
  ・・・・・・
9 .税効果会計に関する注記
  ・・・・・・
10.リースにより使用する固定資産に関する注記
  ・・・・・・
11.金融商品に関する注記
  ・・・・・・
12.賃貸等不動産に関する注記
  ・・・・・・
13.関連当事者との取引に関する注記
  ・・・・・・
14.重要な後発事象に関する注記
  ・・・・・・
その他の注記
  ・・・・・・

3.附属明細書
 計算書類の附属明細書には、①重要な固定資産の明細、及び②引当金の明細を表示するほか、貸借対照表及び損益計算書の内容を補足する重要な事項を表示しなければならない(法人法施行規則第33条)。上記記載項目は最低限度のものであるので、法人は、その他の情報について社員等にとって有用であると判断した場合には、項目を適宜追加して記載することが望ましい。
(1)重要な固定資産の明細  企業会計の基準を採用した場合、会社計算規則等に準じて記述することになる。具体的には、有形固定資産と無形固定資産に分けて表示することが考えられる(表5参照)。

(2)引当金の明細  引当金については、その計上の要否及び計上すべき額は一義的に明確ではなく、その処理によって、計算書類が当該法人の財産及び損益の状況を正しく示すことによって、計算書類が当該法人の財産及び損益の状況を正しく示すことになるか否かに大きな影響を与えることから、記載が求められているものと考えられる(脚注9)(表6参照)。

(3)その他の重要な事項  上記のほか、計算書類及びその注記の内容を補足する重要な事項があれば記載する必要がある。なお、各法人の行う事業に応じて重要な事項は異なるものと考えられる。

Ⅴ.決算公告

1.公告方法
 法人法第128条及び法人法施行規則第49条から第51条の定めにより、一般社団法人は、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
 公告方法には、①官報に掲載する方法、②時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、③当該法人のウェブサイト等における電子公告、④当該法人の主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法、の4つがある
(法人法第331条第1項、法人法施行規則第88条第1項)。定款で公告方法を③の方法と定める場合には、事故その他やむを得ない事由によって当該方法による公告をすることができない場合の公告方法として①又は②の方法のいずれかを定めることができる(法人法第331条第2項)。
 このうち、①又は②による場合は、費用負担の軽減を考慮し、貸借対照表の要旨(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書の要旨)を公告することで足りる(法人法第128条第2項)。③による場合は、要旨による公告はできない。
 なお、①又は②の公告方法をとる一般社団法人は、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)の内容である情報を、定時社員総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により公開することができ、その場合には貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)の公告を要しない(法人法第128条第3項、法人法施行規則第51条)。但し、当該インターネットのウェブサイトのURLを登記しなければならない(法人法第301条第2項第15号、法人法施行規則第87条第1項第1号)。

2.公告すべき事項  公告する貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)は、企業会計の基準に基づいて作成されたものにあっては、表2及び表3に記載したものがひな型となる。
 公益法人会計基準に基づいて作成されたものにあっては、当該年度の各科目の合計が適正に表示されていれば、貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書(正味財産増減計算書))を公告することで足り、貸借対照表内訳表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表内訳表及び正味財産増減計算書内訳表)については、必ずしも公告する必要はない(脚注10)。もっとも、貸借対照表を公告する際に、当該公告する貸借対照表の内容に、貸借対照表内訳表の内容となっている情報を付加することは可能である。なお、貸借対照表に実施事業資産等の区分を加筆して公告する場合は、結果的に貸借対照表内訳表と同じ内容を公告することになるが、あくまで貸借対照表に参考情報を付加して公告しているものであるから、表題は「貸借対照表」とするのが望ましいと考えられる。
 法人法施行規則第50条により、貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨に係る事項の金額は、百万円単位又は十億円単位をもって表示する。但し、当該法人の財産又は損益の状態を的確に判断することができなくなるおそれがある場合には、より適切な単位を用いる。

脚注

1 一般社団法人日本経済団体連合会のホームページ《http://www.keidanren.or.jp/policy/hinagata.html》で一般に公開されている。また、経団連ひな型を参考に作成された書籍として、石井裕介=小畑良晴=阿部光成編『新しい事業報告・計算書類〔第4版〕』(商事法務、2012年)がある。
2 《http://www.keidanren.or.jp/policy/hinagata2.html》で一般に公開されている。
3 澁谷亮「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の概要及び実務上の諸問題」江原健志編『一般社団・財団法人法の法人登記実務』(テイハン、2009年)11頁。
4 石井博之「「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行令」及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則」の概要」江原健志編『一般社団・財団法人法の法人登記実務』(テイハン、2009年)129頁。
5 国(内閣府)及び都道府県公式の総合情報サイトである「公益法人information」《https://www.koeki-info.go.jp/》に掲載。
6 会計監査人を設置しなければならない場合に限る。
7 国(内閣府)及び都道府県公式の総合情報サイトである「公益法人information」《https://www.koeki-info.go.jp/》に掲載。
8 「純資産の部」については、「正味財産の部」等、純資産を示す適当な名称に変更することが可能である。
9 会社計算規則第117条第2号の前身である株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則第47条第1項第6号に関する文献として、稲葉威雄『改正商法関係法務省令の解説〔別冊商事法務59号〕』(商事法務、1982年)37頁参照。
10 移行法人においても、公告する貸借対照表は、当該法人について一般社団法人への移行を認可した行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)に提出する貸借対照表及び損益計算書と異なり、実施事業資産を区分して明らかにすることが必ずしも求められていない(整備法第127条第3項、整備法施行規則第42条第1項、法人法第129条第1項参照)。

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