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コラム2013年09月23日 【SCOPE】 粉飾決算をめぐり取締役に賠償命じる判決相次ぐ(2013年9月23日号・№516)

虚偽記載の発覚で株価急落、株主が訴訟を提起
粉飾決算をめぐり取締役に賠償命じる判決相次ぐ

 コンプライアンスの重要性が叫ばれる今日においても、粉飾決算が原因で上場廃止に追い込まれる企業が後を絶たない。最近ではインデックス社の事例が記憶に新しいところだ。この粉飾決算をめぐり、シニアコミュニケーション社とニイウスコー社の事例で、粉飾に関わった取締役に対して損害賠償を命じる判決が言い渡された。ニイウスコー社の事例では、株式の取得価格(約1.5億円)のすべてが投資家の損失として認定された点が注目される。

取得価格のすべてが株主の損失、取締役に約1.5億円の賠償命じる
 シニア社では、取締役らを中心に、上場前から架空売上計上等の粉飾決算が行われており、この粉飾は上場後においても引き続き行われていた。その後、金融当局の任意調査により粉飾の疑いが指摘されたため、シニア社は平成22年4月13日付けで「調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表。同年6月4日、調査委員会の調査の結果、シニア社が粉飾決算を前提とした虚偽内容を記載した有価証券報告書等を継続して提出していたことが判明したとの事実を公表した。
 シニア社の原告株主は、虚偽記載がなければシニア社の株式を購入することもなかったと指摘し、取得価格のすべて(約1,600万円)が損失に当たるとして、取締役らに対して損害賠償を請求していた。
粉飾公表後の下落分のみを損失と認定  裁判所は、虚偽記載がなければ、原告株主が市場でシニア社株式を取得することはなかったと認定し、虚偽記載と株式の取得との間には因果関係があると判断。また、虚偽記載により株主に生じた損失額については、最高裁平成23年9月13日判決(下参照)を踏まえ、取得価格と口頭弁論終結時の市場価格との差額を基礎とし虚偽記載に起因しない株価下落分を控除して算定すべきとした。
最高裁平成23年9月13日第三小法廷判決の要旨(西武鉄道事件)
 当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は、当該投資者が、当該虚偽記載の公表後、……当該株式を保有し続けているときはその取得価額と事実審の口頭弁論終結時の当該株式の市場価額(上場が廃止された場合にはその非上場株式としての評価額)との差額を基礎とし、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を当該差額から控除して、これを算定すべきものと解される。
 本件については、外部調査委員会設置(4月13日)の発表直後に株価が急落しているが、この時点において具体的な内容や影響等が不明であることなどを踏まえると、虚偽記載と因果関係のある下落は、虚偽記載の事実が明らかとなった調査委員会の報告書公表日(6月4日)以降の株価下落分であると判断した(図1参照)。具体的には、6月4日の終値1万1,320円と口頭弁論終結時の株価(シニア社破産のため0円)の差額部分に保有株式数を乗じた約224万円を損害額と認定し、シニア社の取締役らに対して、損害賠償を命じた(平成25年2月22日判決・東京地裁民事第16部)。
ニイウスコー社の事例は株主側が完勝  ニイウスコー社のケースでは、取締役らを中心に、平成19年6月期までの3年間にわたり、提出された有価証券報告書等について虚偽記載が行われていたが、この粉飾の事実は平成20年4月30日に公表された「過年度の決算短信等の一部訂正について」および「民事再生手続き開始の申立てについて」により明らかとなった。
 ニイウスコー社の原告株主も、シニア社の原告株主と同様に、取得価格のすべて(約1.5億円)が損失に当たるとして、当時の取締役らに対して損害賠償を請求していた。
 裁判所は、金商法24条の4等において準用する22条1項の「虚偽記載により生じた損失」について、有価証券報告書等に虚偽記載があった場合の投資者の財産状態と虚偽記載がなかった場合のその投資者の財産状態との差であると判示している。この点、シニア社の事例では見られなかった判示内容だ。
 また、虚偽記載がなかった場合のその投資者の財産状態が、株式を購入することはなかったと認められる場合にあたるか、虚偽記載がなかったとしてもなお株式の取得をしていた場合にあたるかは、社会通念に従って事案ごとに判断すべきであるとした。
 この点、本件については、虚偽記載がなければ、大幅な債務超過の状態にあることなどが明らかになったニイウスコー株式を原告株主は購入しなかったと推認できると判断している。
 さらに、虚偽記載により原告株主に生じた損失額については、最高裁平成23年9月13日判決を踏まえ、本件では、経済情勢などの虚偽記載とは無関係の要因による市場価額の下落として損害額から控除すべきものが存在することを認める証拠はないとして、原告株主の取得価格の全額(約1億5,000万円)を損失と認定し、取締役らに対して損害賠償を命じた(平成25年7月9日判決・東京地裁民事第48部)(図2参照)。

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