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解説記事2014年10月27日 【税務マエストロ】 有価証券の譲渡と課税売上割合の計算(2014年10月27日号・№568)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
有価証券の譲渡と課税売上割合の計算
#123 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#124 BEPSプロジェクトの進捗と税制改正への影響①
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 品川克己 税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
  e-mail:ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説  消費税の課税対象となる取引は、次の①から④までのすべての要件を満たす取引となる。(消法4①、2①八)。
①資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること
②国内において行うものであること
③事業者が事業として行うものであること
④対価を得て行うものであること
 ただし、上記①~④の要件を満たす課税対象取引が、そのままストレートに課税されるわけではない。課税対象取引のうち、例えば、土地や株券の売買などの特定の取引については、別途「非課税」という規定を設け、消費税を課さないこととしている。
 また、課税取引のうち、輸出取引については「免税」という規定を設け、消費税を免除する。 この非課税や免税の対象となる取引については、課税対象取引であっても結果的に消費税は課税されないこととなるわけであるが、課税売上割合の計算において、その取扱いが異なっている。

 したがって、課税標準額に計上しない収入であっても、免税売上高、非課税売上高、課税対象外収入(不課税収入)はしっかりと区分しなければならない。今月は、有価証券を譲渡した場合の課税売上割合の計算について確認する。

1 有価証券の範囲と5%基準の関係  株券や受益証券など、金融商品取引法に規定する有価証券の他、貸付金や売掛金などの金銭債権も、消費税法上の有価証券に該当する。課税売上割合の計算上、株券などの市場流通性のある有価証券を譲渡した場合には、譲渡対価の5%だけを非課税売上高に計上する一方で、市場流通性のない有価証券を譲渡した場合には、その譲渡対価の全額を非課税売上高に計上することとされている。
 株券などを譲渡した場合に適用される5%基準が設けられた理由であるが、例えば、資金運用の目的で株式の売買を行っている会社は、株価をにらみながら課税期間中に株券の売買を繰り返すことになる。このような取引は、課税期間中のトータルで何がしかの売却益を得ることを目的として行われるものである。有価証券を売却した場合において、その売却金額を売却の都度非課税売上高にカウントすることになると、このような会社は課税売上割合がどんどん低くなってしまい、仕入税額控除について制限を受けることになってしまう。
 そこで、株券や社債券などのように流通性のある有価証券については、売却金額の5%相当額だけを非課税売上高として認識し、税制上不利になるようなことがないように配慮がなされているのである。
 ただし、合同会社の社員の持分などのように一般に売買されない有価証券については、このような配慮をする必要はない。そこで、合名会社・合資会社・合同会社の社員の持分、協同組合等の組合員又は会員の持分を譲渡した場合には、その売却金額の全額を非課税売上高にカウントすることとされている(消法別表第一の二、消令9①・48⑤)。

2 金銭債権の取扱い(平成26年度改正)  旧法では、貸付金や売掛金などの金銭債権の譲渡は5%基準の対象とはならず、課税売上割合の計算上、譲渡対価の全額を非課税売上高に計上することとされていた。
 しかし、近年においては、住宅ローンの証券化やファンドの設立などにより、金銭債権の売買が活発に行われるようになってきている。金銭債権を譲渡した場合において、譲渡対価の全額を非課税売上高に計上した場合には、課税売上割合が急激に減少し、仕入控除税額の計算で制限を受けることになる。
 そこで、金銭債権の譲渡についても譲渡対価の5%相当額を非課税売上高に計上することにより(図表1参照)、課税売上割合が急激に減少することのないように配慮したものである(改消令48⑤)。

 ただし、売上対価として取得した売掛金の譲渡については、課税売上割合の計算上、いっさい関係させないこととしている(後述3参照)。
 本改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用される(改消令附則(平26年)3)。
<参考>  自動車の売買に伴い発生するリサイクル預託金は金銭債権に該当する。したがって、自動車と共に売却(下取り)するリサイクル預託金は、その売却金額の5%相当額を非課税売上高に計上することになる。
(注)自動車を廃棄する場合に償却するリサイクル預託金は課税仕入れに該当する。

3 売掛金債権の取扱い  売掛金債権を換金のために信販会社に譲渡する場合において、これを有価証券の譲渡として認識すると、売掛金債権を譲渡するたびに非課税売上高が増え、課税売上割合が低くなってしまう。そこで、資産の譲渡対価として取得したもの(売上高の計上に伴い発生した売掛金債権)を譲渡した場合には、売上高の二重計上を防ぐ意味からも、その譲渡対価は課税売上割合の計算ではいっさい関係させないこととしている(消令48②二)。
 例えば、図表2のように100円の売掛金債権を信販会社に譲渡し、クレジット手数料10円を差し引いた残金の90円が入金された場合には、商品売上高に計上するのは入金額の90円ではなく、債権金額の100円となる。債権金額から差し引かれたクレジット手数料10円は債権売却損であり、課税仕入れとはならない。

 また、売掛金債権の信販会社に対する譲渡対価90円は、非課税売上高に計上する必要はない。

4 再ファクタリング  売上対価として取得した売掛金債権を譲渡する事業者は、前述のようにその売掛金債権の譲渡対価は課税売上割合の計算にいっさい関係させないことになる。これに対し、営業の譲り受けなどに伴い、他から購入した売掛金債権を転売した場合には、その転売した売掛金債権は売上高の計上に伴い発生したものではないので、課税売上割合の計算上、その譲渡対価の5%を非課税売上高に計上することになる(図表3参照)。


5 有限会社の社員の持分の譲渡  有限会社は、会社法の施行により「特例有限会社」としてなお存続し、その社員の持分は株式とみなされる(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第2条~第3条)。
 したがって、有限会社の社員の持分を譲渡した場合には、課税売上割合の計算上、その譲渡対価の5%だけを非課税売上高に計上することになる。
(注)旧消費税法基本通達6-2-1(非課税の対象となる有価証券等の範囲)では、有限会社の社員の持分は、旧証券取引法に規定する有価証券に類するものとして列挙されていたが、現在は、会社法の創設に伴い、同通達からは削除されている。有限会社の社員の持分を譲渡した場合、会社法の施行前であれば、合名会社の社員の持分の譲渡などと同じように、その譲渡対価の全額を非課税売上高に計上することとされていた。

6 証券投資信託の解約請求と買取請求  株式投資信託を中途換金するには、「解約請求」と「買取請求」の2つの方法がある。課税売上割合の計算では、「解約請求」と「買取請求」では、以下のように取扱いが異なっている。
(1)解約請求をした場合の取扱い  「解約請求」とは、証券会社などを経由して運用会社(投資信託委託会社)に投資信託の契約解除を請求する方法をいう。「解約請求」の場合には、元本の返還金は課税の対象とはならないので、解約時の収益分配金を非課税売上高に計上する。
(2)買取請求をした場合の取扱い  「買取請求」とは、中途で換金したい投資信託の受益証券を証券会社などの販売会社に買い取ってもらう方法をいう。販売会社は、後で運用会社(投資信託委託会社)に解約請求をする。
 「買取請求」は、クローズド期間(信託契約の解約ができない期間)中に換金する場合に利用することが多いようである。
 「買取請求」は受益証券(有価証券)の譲渡に該当することから、譲渡対価の5%を非課税売上高に計上する。

7 現先取引の取扱い
(1)売現先取引
 国債証券やCD(譲渡性預金)などの現先取引債券等を、あらかじめ約定した期日にあらかじめ約定した価格で買い戻すことを約して譲渡し、かつ、その約定に基づきその現先取引債券等を買い戻す取引を「売現先」という。この売現先取引の実態は、有価証券を担保にした資金の借入れであることから、消費税の計算においても、その現先取引債券等の譲渡対価は課税売上割合の計算に関係させないこととしている(消令48②三)。
 なお、譲渡対価と買戻し対価の差額は事実上の支払利息であり、たとえ支払手数料などの勘定科目で処理したとしても当然に課税仕入れにはならない。
(2)買現先取引(その1)  現先取引債券等を、あらかじめ約定した期日にあらかじめ約定した価格で売り戻すことを約して購入し、かつ、その約定に基づきその現先取引債券等を売り戻す取引を「買現先」という。この買現先取引の実態は、有価証券を担保にした資金の貸付けであることから、消費税の計算においても、その現先取引債券等の譲渡対価は課税売上割合の計算に関係させないこととしている。
 ただし、売現先取引とは異なり、売戻し対価と購入対価の差額が事実上の貸付金利子となるので、課税売上割合の計算上、「売戻し対価-購入対価」を非課税売上高に計上することとされている(消令48③)。
<計算例>  A社が、保有する国債証券を1億円でB社に譲渡したケース(図表4参照)。この譲渡に当たっては、B社との間で2か月後に1億200万円で買い戻すことが約定されていたことから、この約定に従って買い戻しを行っている。

(3)買現先取引(その2)  上記<計算例>において、B社が国債証券(現先取引債券等)を保有している期間中に国債証券の利払い日が到達する場合には、B社が国債証券の保有期間中に収受することとなる利息も勘案したところで売買価格を決定することになる。そうすると、国債の利回りが一昔前のように高金利で推移している場合には、B社における国債証券の購入対価よりも売戻し対価の方が低くなるようなケースも想定される。このような場合には、購入対価と売戻し対価の差額部分は現先取引債券等の保有期間中に収受した利息のマイナスと認識する(消令48③)。したがって、その差額部分は課税売上割合の計算上、分母の金額からマイナスすることになる。売現先取引ではないので、支払利息という認識にはならない。また、支払手数料などの勘定科目で処理したとしても当然に課税仕入れに含めることはできない。
 上記<計算例>において、B社における国債証券の購入対価が1億100万円で、2か月後の売戻し対価が1億円だとした場合には、差額の100万円(1億100万円-1億円)を課税売上割合の計算上、分母からマイナスするということである。

8 国債等の償還差損益の取扱い  割引債が償還された場合の償還差益は、利子に準ずるものとして、課税売上割合の計算上非課税売上高に計上することになる(消基通6-3-1(8))。
 ところで、国債などを発行する場合において、取得日から償還日までの保有期間中の利払いなどを勘案し、額面金額よりも高額な価格で国債などを発行することを「打歩(うちぶ)発行」という。この打歩発行の国債などが満期に償還された場合には、償還差益ではなく、償還差損が発生することになるわけであるが、その償還差損は国債等の保有期間中に収受した利息のマイナスと認識する。したがって、その償還差損は課税売上割合の計算上、分母の金額からマイナスすることになる(消令48⑥)。
(注)非居住者が発行した国債等の取得は非課税資産の輸出取引等に該当し、課税売上割合の計算上、償還差損益を分母と分子に加減算することになる。

記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
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