解説記事2015年03月02日 【ニュース特集】 BEPS対策の実施に向け多国間協定交渉が始動へ(2015年3月2日号・№584)
7月までに交渉グループが第1回会合
BEPS対策の実施に向け多国間協定交渉が始動へ
OECD(経済協力開発機構)が多国間協定の開発(BEPS行動15)に関して、アドホック交渉グループを設立し、本年7月までに作業を開始することで合意した。BEPS対策の最終的な成果物の期限は本年末だが、その期限を待たず協定策定に向けた作業に入る。同交渉グループでは、2016年12月31日までに多国間協定を署名のために解放することを目指すとしている。多国間協定の策定については、OECD租税センター(CTPA)のパスカル・サンタマン局長も本誌インタビュー(本誌583号4頁参照)で、「BEPS計画の実施を、効率よく進めていくための手段」と期待感を示しており、同交渉グループでの議論が注目されるところだ。
BEPS対策は一斉実施が重要
BEPS行動計画では、行動2(ハイブリッド・ミスマッチの無効化)、行動6(租税条約濫用の防止)、行動7(PE認定の人為的回避の防止)、行動14(相互協議の効果的実施)、場合によっては行動8-10など、租税条約の改正が必要となるものがある。たとえば、行動6では、租税条約の濫用防止のために最低限必用な措置として、租税条約に①LOB(特典制限規定)とPPT(主要目的テスト)の両方、②PPTのみ、③LOBおよび租税条約上または国内法上の導管取引防止規定(限定的PPT)のいずれかを採用することが勧告されている(本誌563号10頁、570号15頁参照)。また、行動7は、OECDモデル租税条約のPE定義を変更するもの。OECDが昨年10月に公表した公開草案では、モデル租税条約5条4項(PE除外規定)の修正案などが示されている。(本誌572号4頁参照)。こうしたBEPS対策として勧告される条約改定を二国間で行い、1本1本の条約に対策を反映させていくとすればコストがかかり、膨大な時間も要することになる。世界には3,000以上の租税条約があり、その数は増え続けているからだ。
各行動の成果物を踏まえスコープ決定 一方、BEPS対策については各国が足並みを揃え、一斉に実施することが重要となる。そこでOECDは、BEPS対策を一括して租税条約に反映させる措置をBEPS行動15(多国間協定の開発)で検討。昨年9月の「BEPS第1次報告書」では、専門家グループの議論の結果、一括して多国間の協定(図参照)を締結することは望ましい上、実現可能との結論を得ていた。さらに、1次報告書は、今後策定予定の各行動の成果物を踏まえ、多国間協定のスコープを決定するとし、多国間協定交渉のための国際会議の招集に向けて早期にマンデートを付与することが勧告されていた。
BEPSの要請に限定し、時間をかけずに
OECDは2月6日、多国間協定の交渉について、新たなマンデートを公表(次頁参照)。2月9日~10日にトルコ・イスタンブールで開催された20か国財務大臣・中央銀行総裁会議で、多国間協定策定のための枠組みを支持する声明が出された(下掲参照)。
OECDが公表したマンデートによれば、OECD・G20BEPSプロジェクト参加国は、同プロジェクトにおいて策定された租税条約上の措置を迅速に実施するためだけに、多国間協定を策定するアドホック交渉グループを設立することで合意している。同交渉グループの目的がBEPSの要請に基づく改正に特化されているのは、迅速なBEPS対策の実施はもとより、他の要素を盛り込みすぎることで交渉に時間をかけてはいけないという理由からだ。
また、アドホック交渉グループには、関心があれば全ての国家が参加することができ、参加する全てのメンバーの地位は対等とされている。
枠組み等の先行議論が効率的
アドホック交渉グループは、本年7月までに作業を開始する。全てのBEPS対策が最終的に取りまとめられるのは本年末の予定であり、それまでは多国間協定に盛り込む内容が固まらないが、先行して参加国の範囲、協定の枠組み等について議論することが効率的との判断がある。また、同交渉グループでは、2016年12月31日までに多国間協定を署名開放するために作業を完了することを目指すとしている。
租税条約は基本的に二国間で締結されるものであり、行動15の多国間協定は画期的な枠組みとされる。ただし、BEPS対策の内容の全てが決着する本年末以後、対策内容について、一部分の留保を認めるかなど、調整が難航する可能性もある。
BEPS対策の実施に向け多国間協定交渉が始動へ
OECD(経済協力開発機構)が多国間協定の開発(BEPS行動15)に関して、アドホック交渉グループを設立し、本年7月までに作業を開始することで合意した。BEPS対策の最終的な成果物の期限は本年末だが、その期限を待たず協定策定に向けた作業に入る。同交渉グループでは、2016年12月31日までに多国間協定を署名のために解放することを目指すとしている。多国間協定の策定については、OECD租税センター(CTPA)のパスカル・サンタマン局長も本誌インタビュー(本誌583号4頁参照)で、「BEPS計画の実施を、効率よく進めていくための手段」と期待感を示しており、同交渉グループでの議論が注目されるところだ。
BEPS対策は一斉実施が重要
BEPS行動計画では、行動2(ハイブリッド・ミスマッチの無効化)、行動6(租税条約濫用の防止)、行動7(PE認定の人為的回避の防止)、行動14(相互協議の効果的実施)、場合によっては行動8-10など、租税条約の改正が必要となるものがある。たとえば、行動6では、租税条約の濫用防止のために最低限必用な措置として、租税条約に①LOB(特典制限規定)とPPT(主要目的テスト)の両方、②PPTのみ、③LOBおよび租税条約上または国内法上の導管取引防止規定(限定的PPT)のいずれかを採用することが勧告されている(本誌563号10頁、570号15頁参照)。また、行動7は、OECDモデル租税条約のPE定義を変更するもの。OECDが昨年10月に公表した公開草案では、モデル租税条約5条4項(PE除外規定)の修正案などが示されている。(本誌572号4頁参照)。こうしたBEPS対策として勧告される条約改定を二国間で行い、1本1本の条約に対策を反映させていくとすればコストがかかり、膨大な時間も要することになる。世界には3,000以上の租税条約があり、その数は増え続けているからだ。
各行動の成果物を踏まえスコープ決定 一方、BEPS対策については各国が足並みを揃え、一斉に実施することが重要となる。そこでOECDは、BEPS対策を一括して租税条約に反映させる措置をBEPS行動15(多国間協定の開発)で検討。昨年9月の「BEPS第1次報告書」では、専門家グループの議論の結果、一括して多国間の協定(図参照)を締結することは望ましい上、実現可能との結論を得ていた。さらに、1次報告書は、今後策定予定の各行動の成果物を踏まえ、多国間協定のスコープを決定するとし、多国間協定交渉のための国際会議の招集に向けて早期にマンデートを付与することが勧告されていた。
BEPSの要請に限定し、時間をかけずに
OECDは2月6日、多国間協定の交渉について、新たなマンデートを公表(次頁参照)。2月9日~10日にトルコ・イスタンブールで開催された20か国財務大臣・中央銀行総裁会議で、多国間協定策定のための枠組みを支持する声明が出された(下掲参照)。
| ○20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(抜粋) (下線は編集部) |
| ・我々は本年末までに、BEPS行動計画による成果物を取りまとめる。 ・我々は、租税条約に関連したBEPS対策の実施を効率化する多国間協定の策定のための枠組みを支持する。 ・要請に基づく情報交換に関し、我々は全ての国・地域にグローバル・フォーラムの基準を完全に順守し、税務行政執行共助条約に加わるよう促す。 ・我々は、合意された期限内に自動的情報交換を開始するために、所要の法制手続の完了に向けて取組む。 ・我々は、途上国の懸念に対処することを確保しつつ、BEPSプロジェクトへの途上国の直接的な関与を歓迎するとともに、彼らの適用のタイミングがその他の国々と異なりうることを認識する。 |
OECDが公表したマンデートによれば、OECD・G20BEPSプロジェクト参加国は、同プロジェクトにおいて策定された租税条約上の措置を迅速に実施するためだけに、多国間協定を策定するアドホック交渉グループを設立することで合意している。同交渉グループの目的がBEPSの要請に基づく改正に特化されているのは、迅速なBEPS対策の実施はもとより、他の要素を盛り込みすぎることで交渉に時間をかけてはいけないという理由からだ。
また、アドホック交渉グループには、関心があれば全ての国家が参加することができ、参加する全てのメンバーの地位は対等とされている。
枠組み等の先行議論が効率的
アドホック交渉グループは、本年7月までに作業を開始する。全てのBEPS対策が最終的に取りまとめられるのは本年末の予定であり、それまでは多国間協定に盛り込む内容が固まらないが、先行して参加国の範囲、協定の枠組み等について議論することが効率的との判断がある。また、同交渉グループでは、2016年12月31日までに多国間協定を署名開放するために作業を完了することを目指すとしている。
租税条約は基本的に二国間で締結されるものであり、行動15の多国間協定は画期的な枠組みとされる。ただし、BEPS対策の内容の全てが決着する本年末以後、対策内容について、一部分の留保を認めるかなど、調整が難航する可能性もある。
| ○BEPS行動15 多国間協定交渉のための枠組み(マンデート)の概要 |
| 前文 BEPS行動計画の行動15は、BEPSプロジェクトにおいて策定された措置を実施し、二国間租税条約を修正するための多国間協定を策定することを求めていることを認識し、 CFAによって承認され、G20のリーダーによって支持された「二国間租税条約を修正するための多国間協定の策定」報告書では、多国間協定は、望ましいうえ実現可能であって、多国間協定の交渉は早急に開催されるべきであると結論づけていることを考慮し、 2014年11月16日にブリスベンで採択されたG20コミュニケでは、国際課税のルールを近代化するBEPS行動計画の著しい進展を歓迎していることに留意し、 OECD/G20BEPSプロジェクトの参加国は、以下の枠組み(マンデート)のもとでアドホックグループ(以下「グループ」という。)を設立することに合意した。参加国は、グループはOECDの公式又は非公式な組織ではなく、したがって、OECD非加盟国がグループに参加することは、OECD非加盟国のOECD活動への参加に関するOECDの手続の前例となるものではなく、またそのように解釈されるものではないことを認める。 A.目的 1.グループは、OECD/G20BEPSプロジェクトにおいて策定された租税条約上の措置を迅速に実施するためだけに、既存の租税条約を修正するための多国間協定を策定するものとする。 B.参加 1.グループへの門戸は、全ての関心がある国家(States)に開かれている。 2.グループの全てのメンバーは、対等の地位をもって参加する。 3.非国家管轄(Non-State Jurisdictions)は、グループからの特定の招待に基づきオブザーバーとしてグループに参加することができる。 4.関係する国際的な又は地域的な政府間組織は、オブザーバーとして参加するためグループから招待され得る。 C.期間 1.グループは、2015年7月までに作業を開始する。 2.グループは、2016年12月31日までにその作業を完了し、かつ、多国間協定を署名のために開放することを目指す。 3.グループの枠組み(マンデート)は、多国間協定を署名のために開放することで終了する。 |
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