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解説記事2015年04月13日 【税理士のための相続法講座】 相続人(1)(2015年4月13日号・№590)

税理士のための相続法講座
第2回
相続人(1)-相続人の確定
 弁護士 間瀬まゆ子

 相続に関わる仕事をする際、相続人の確定は最初に行うべき基本的な作業となりますが、そのような業務に慣れていない税理士の場合、相続人の範囲について判断を誤ってしまうこともあるようです。以下、具体的な事例をご紹介します。
①子のない夫婦からの相談事例
 Aは、子どもがいないので、将来自分の相続が起きたときのことを心配し、旧知の税理士Bに相談した。Bは、Aの配偶者が全ての財産を相続するとアドバイスした。実際には、Aの亡兄の子たちも法定相続人だった。

 被相続人に子どもがいない場合、配偶者と直系尊属が、直系尊属もいなければ配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となります(民法889条1項)。更に、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その子つまり甥姪が代襲相続人となります(民法889条2項・887条2項)。なお、兄弟姉妹については、再代襲はありませんので、甥姪の子が相続人となることはありません。
 兄弟姉妹及びその代襲相続人である甥姪には遺留分がありませんので(民法1028条)、上記のケースで税理士Bが正確に回答し、それを受けてAが全ての財産を配偶者に相続させる旨の遺言を作成していれば、Aの希望どおりとなったのですから、悔やまれるところです。
②養子と離縁できていなかった事例
 Cの相続対策について相談を受けていた税理士Dは、「以前養子がいたが、だいぶ前に離縁した。」というCの話を鵜呑みにしてしまった。しかし、実際には、事実上縁を切っただけで、法律上は養子のままだった。
 離婚と同様、一旦養子とした子を養親から一方的に離縁したいという場合、法律上の制限があります(民法814条)、当事者の思うように離縁できないという例もままあります。上記のケースでも、そういった事情があったのかもしれません。
 いずれにしても、当事者の説明にかかわらず、相続に関する相談を受けた場合には、被相続人となる人の過去の戸籍をたどっていく作業は必須です(少なくとも7歳位のものまで)。養子に限らず、戸籍を見て初めて、当事者も知らなかった相続人が出て来るということも稀にですがありますし、いずれ何らかの手続きをとる際に必要になるからです。
③配偶者の連れ子に相続権がなかった事例
 Eが亡くなった。Eの妻は再婚で、前夫との間に子Fがおり、FもEの戸籍に入っていた。Eの妻から相続税の申告について依頼を受けた税理士Gは、その戸籍を見て、FもEの相続人だと誤解した。

 上記のケースで、EとFが養子縁組していれば、Fは当然にEの法定相続人となります。しかし、FがEの戸籍に入っているからといって、FがEの養子になっているとは限らないのが厄介なところです。実は、EとFの母が再婚した際に、FがEの養子とならずとも、氏の変更の手続きを経た上で、FをEの戸籍に入籍させることが認められており、その場合、Eと親子関係のないFもEの戸籍に入ることができてしまうからです。
 この事例でも、戸籍を細かく見れば、養子か否かの判別ができたはずですが、前提知識がないが故に、看過しやすかったのではないかと思われます。
 以上のようなミスを防ぐためには、法定相続人に関する民法の定めを正確に理解しておくことが必要ですし、また、実際に仕事を受任した際には、過去の戸籍をたどっていくという基本的な作業をまず行うことが大切です。
 次回(594号掲載予定)は、法定相続人に関する民法の知識を確認していきます。

間瀬まゆ子 ませ まゆこ
2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2005年間瀬法律事務所開設。
『税理士のための相続をめぐる民法と税法の理解』ぎょうせい(編著)、『事業承継の法律実務と税務Q&A』青林書院(編著)など、著書・論文多数。

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