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解説記事2015年06月01日 【実務解説】 「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」の改訂(2015年6月1日号・№596)

実務解説
「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」の改訂
 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 土肥智子
 浅野岳紀

Ⅰ はじめに

  (一社)日本経済団体連合会(以下「経団連」という)は、平成19年2月に、会社法施行を契機に旧商法の下での「経団連ひな型」を全面的に刷新した「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(以下「ひな型」という)を公表し、その後も、随時改訂を行っている。
 今般、5月1日から施行された「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(以下「改正省令」という)、企業結合に関する会計基準等の改正等を踏まえ、ひな型の改訂を行った。
 今回の改訂は、法務省民事局参事官室の辰巳郁局付、渡辺邦広局付のご協力の下、森・濱田松本法律事務所の石井裕介先生、公認会計士の阿部光成先生、有限責任監査法人トーマツの布施伸章先生のご助言・ご協力と、わが国を代表する企業実務の専門家である経団連経済法規委員会企画部会及び企業会計委員会企画部会委員の検討に基づき行われた。
 本稿では、ひな型改訂のポイントについて、平成27年会社法施行規則の改正に伴う改訂と会社計算規則の改正に伴う改訂とに分けて紹介する。ひな型全体及び前回改訂版との新旧対照表は、経団連ホームページ(http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/035.html)からダウンロードすることができる。

Ⅱ 会社法施行規則の改正に伴う改訂
 平成26年6月27日公布の「会社法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という)及び、平成27年2月6日公布の改正省令による会社法施行規則の改正(以下「改正会社法施行規則」という)により、監査等委員会設置会社の導入や、責任限定契約の対象の拡大、社外取締役に関する規律の改正等が行われたことに伴い、ひな型の事業報告、附属明細書、株主総会参考書類、監査報告の関連部分につき改訂を行っている。

1.事業報告、附属明細書(事業報告関係)
(1)責任限定契約に関する事項
 責任限定契約に関する事項については、従来、社外役員に関する記載事項として整理されていたが、改正法により社外役員であるか否かにかかわらず、業務執行取締役等を除く取締役および監査役全般が責任限定契約を締結することができることとなった(会社法第427条第1項)。
 そこでひな型(Ⅰ事業報告の第2の4-7)では、責任限定契約に関する事項を会社役員一般に関する事項として整理し、事業報告作成会社が取締役または監査役との間で責任限定契約を締結している場合には、契約の相手方とともに、当該契約の内容の概要を記載することとしている。記載の方法としては、会社役員に関する事項に注記する方法(記載例1参照)や、責任限定契約に関する事項として、別項目を立てて記載する方法(記載例2参照)が考えられる。


(2)社外取締役を置くことが相当でない理由  改正会社法施行規則では、事業報告作成会社が事業年度の末日において、①公開会社である監査役会設置会社(大会社に限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものであること、及び②社外取締役を置いていないことの要件に該当する場合には、当該事業年度にかかる事業報告の「会社役員に関する事項」として「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載することを求めている(会社法施行規則第124条第2項、第119条第2号)。
 ひな型(Ⅰ事業報告の第2の4-18)では、この点の記載について具体的な記載例を設けてはいないが、記載にあたっては、会社法施行規則第124条第3項を踏まえ、当該事業報告作成会社の当該事業年度における事情に応じて記載しなければならず、かつ社外監査役が2名以上あることのみをもって当該理由とすることはできないとしている。
(3)業務の適正を確保するための体制等の整備に関する事項  改正会社法施行規則では、業務の適正を確保するための体制等の整備に関する事項に関し、子会社についての内部統制に関する規定が追加されている(会社法施行規則第98条第1項第5号等)。もっとも、これらの規定に基づく決議および開示の対象となる体制は、子会社における体制そのものではなく、親会社である事業報告作成会社自身における体制である。つまり、事業報告作成会社における企業集団全体の内部統制に関する方針を記載すれば良い。 
 また内部統制に関しては、当該体制の運用状況の概要についても記載することが求められることとなった(会社法施行規則第118条第2号)。
 これらを受けてひな型では、Ⅰ事業報告の第2の6において、記載項目の改訂や新設を行っている。なお運用状況の記載は、改正法の施行日である平成27年5月1日を含む事業年度に係る事業報告については、施行日以後の運用状況に限って記載すれば足りる(改正省令附則第2条第7項)。
(4)特定完全子会社に関する事項  改正法により新設された多重代表訴訟制度(会社法第847条の3)では、親会社の株主が一定の要件を満たす完全子会社(特定完全子会社)の取締役等の責任を追及することができる。特定完全子会社に当たるか否かは、本来、当該子会社において責任の原因となった事実が生じた日における数値に基づき判断される。 
 この判断の参考とするため、改正会社法施行規則では、事業報告において、各事業年度の末日の数値を基準として、事業報告作成会社がその特定完全子会社(各事業年度の末日の数値を基準として要件を満たす完全子会社)を有する場合は、特定完全子会社の名称・住所等を記載することとなっている(会社法施行規則第118条第4号)。
 これを踏まえて、ひな型(Ⅰ事業報告の第2の8)では、特定完全子会社に関する記載例を新設している。
(5)親会社等との取引に関する事項  改正会社法施行規則では、会計監査人設置会社である会社の事業報告及び附属明細書において、その親会社等(親会社又はオーナーである個人)との取引(第三者との間の取引でその会社と親会社等との間の利益が相反するものを含む)のうち、当該事業年度に係る個別注記表において関連当事者取引注記を要するものに関して、当該取引をするにあたりその会社の利益を害さないように留意した事項等について記載することを求めている(会社法施行規則第118条第5号、第128条第3項)。  
 なお、改正法の施行日である平成27年5月1日を含む事業年度における事業報告及び附属明細書については、施行日以降にされた親会社等との取引に限って、取締役の判断およびその理由等を開示すれば足りる。
 この点についてひな型(Ⅰ事業報告の第2の9、Ⅱ附属明細書(事業報告関係)の2)では具体的な記載例を設けていないが、該当するものがある場合には留意が必要である。

2.株主総会参考書類
(1)取締役選任議案に関する記載事項
 改正会社法施行規則により、候補者に関する記載事項が改正されたことから、ひな型についても必要な改訂を行っている。
 例えば、責任限定契約については、契約を締結している場合又は締結する予定がある場合には、その契約の内容の概要を記載することとなっている(会社法施行規則第74条第1項第4号)。さらに、所定の要件を満たす監査役会設置会社が、社外取締役選任議案を株主総会に提出しない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主総会参考書類に記載しなければならないこととされた(会社法施行規則第74条の2第1項)。
 ひな型では、これらを踏まえた文言の修正や記載例の新設などを行っている(Ⅶ株主総会参考書類第1の第3号議案の記載上の注意(5)、(8)、(9))。
 なお、監査等委員会設置会社の場合には、基本的には監査役会設置会社における取締役選任議案と同様であるが、監査等委員である取締役と、それ以外の取締役の選任とを区別して記載しなければならないなどの相違点がある。
(2)会計監査人選任議案に関する記載事項  改正法により、会計監査人の選解任等に関する議案の内容は監査役等(監査役会設置会社では監査役会、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会)が決定することとされた。
 これを受け改正会社法施行規則では、参考書類への記載事項として、監査役等が当該候補者を会計監査人の候補者とした理由の記載を求めている(会社法施行規則第77条第3号)。また、会計監査人も責任限定契約を締結できることを踏まえ、責任限定契約の内容の概要の記載が必要となる(会社法施行規則第77条第5号)。これらを踏まえ、ひな型(Ⅶ株主総会参考書類の第1の第6号議案の記載上の注意(8))では記載事項の改訂を行っている。

3.監査報告
(1)親会社等との取引に関する事項
 改正会社法施行規則により、株式会社とその親会社等との間の取引に係る会社法施行規則第118条第5号所定の事項(その会社の利益を害さないように留意した事項等)が事業報告又は事業報告の附属明細書の内容となっている場合は、当該事項についての意見も監査役会等の監査報告の内容となる(会社法施行規則第130条第2項第2号、第130条の2第1項第2号、第131条第1項第2号、第129条第1項第6号)ことを踏まえ、ひな型(Ⅹ監査報告の1~4の記載上の注意)を改訂している。
(2)監査等委員会設置会社導入に伴う改訂  改正法により、新たな機関設計として監査等委員会設置会社が導入されたことから、ひな型(X監査報告の2)において、下記のように、監査等委員会設置会社の監査報告の記載例等を新設している(記載例3参照)。


Ⅲ 会社計算規則の改正による改訂

1.「企業結合に関する会計基準」と会社計算規則の改正に伴う経団連ひな型の改訂
(1)会計基準と会社計算規則の改正
 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成25年9月に、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)及び関連する適用指針を改正した。(以降、併せて「改正企業結合会計基準等」という。)  
 改正企業結合会計基準等では、①暫定的な会計処理の確定に関する会計処理、②少数株主持分(非支配株主持分)に係る表示方法、③少数株主(非支配株主)との取引の会計処理、④企業結合に係る取得関連費用の会計処理等について、これまでの取扱いを変更した。
 改正企業結合会計基準の適用時期は、平成27年4月1日以降開始する事業年度であり、①は、平成27年4月1日以降開始する事業年度の期首以降実施される企業結合から適用する。また、②を除き、平成26年4月1日以降開始する事業年度からの早期適用が可能であり、その場合には、①は、平成26年4月1日以降開始する事業年度の期首以降実施される企業結合から適用する。
 また、③及び④については、過去の期間の全てに新たな会計方針を適用した場合の適用初年度の期首時点の累積的影響額を、適用初年度の期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減して、当該期首残高から新たな会計方針を適用する取扱いが認められた。
 そして、本年2月6日に、改正省令が公表され、①及び②の会計基準の改正を踏まえた会社計算規則の改正が行われた。改正省令では、連結貸借対照表・連結株主資本等変動計算書の「少数株主持分」の表示を「非支配株主持分」へと変更し(会社計算規則第76条第1項第2号・第96条第2項第2号)、連結損益計算書においては、「当期純利益金額又は当期純損失金額に当期純利益又は当期純損失のうち非支配株主に帰属する額を加減して得た額は、親会社株主に帰属する当期純利益金額又は当期純損失金額として表示」する(会社計算規則第94条第4項)等の改正が行われた。また、前事業年度(前連結会計年度)における企業結合の暫定的な会計処理の確定をした場合には、(連結)株主資本等変動計算書に、「当期首残高」及びこれに対する影響額を記載する(会社計算規則第96条第7項第1号)。
(2)経団連ひな型の改訂
 ① 連結貸借対照表
 会社計算規則第76条第1項(連結貸借対照表に関する非支配株主持分の区分)にしたがって、2015年4月1日以後に開始する連結会計年度から、「少数株主持分」を「非支配株主持分」と表示する。
 ② 連結損益計算書  会社計算規則第94条(当期純損益金額)の規定にしたがって、平成27年4月1日以後に開始する連結会計年度から、次頁の[記載例4]のように記載することが考えられる。「法人税等調整額」以下の記載を、「当期純利益」「非支配株主に帰属する当期純利益」「親会社株主に帰属する当期純利益」と見直している。

 ③ 連結株主資本等変動計算書  会社計算規則第96条第2項及び第8項にしたがい、平成27年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結株主資本等変動計算書から、「少数株主持分」を「非支配株主持分」と表示し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」と表示する。
 次に、遡及適用又は誤謬の訂正を行った場合が考えられる。
 ここで、平成28年4月1日以後に開始する事業年度(連結会計年度)から適用される、会社計算規則第96条第7項(株主資本等変動計算書等における企業結合に係る暫定的な会計処理の確定)の規定を適用すると、前事業年度(連結会計年度)における企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合には、上記の遡及適用・誤謬の訂正を行う場合に準じて、(連結)株主資本等変動計算書に、「当期首残高」及びこれに対する影響額を記載することが考えられる。
 なお、改正企業結合会計基準等における、少数株主との取引の会計処理、企業結合に係る取得関連費用の会計処理など、会計方針の変更による影響額を適用初年度の期首残高に加減することが定められている場合においても、同様の取扱いを行うこととなる。この場合には、(連結)株主資本等変動計算書には、「当期首残高」「会計方針の変更による累積的影響額」「会計方針の変更を反映した当期首残高」といった記載が考えられる。
 この取扱いに関連して、平成24年の「退職給付に関する会計基準(企業会計基準第26号。以降、改正退職給付基準という)」の改正のうち、退職給付債務及び勤務費用の定め(同16項~21項)は、平成26年4月1日以降開始する事業年度から強制適用となるが、過年度の影響額は遡及修正せずに、期首の利益剰余金に加減する(同37項)。この点、経団連ひな形p94「2.引当金の明細」の付属明細書に退職給付引当金の明細を記載する際には、(i)期首残高について、「当期首残高」「会計方針の変更による累積的影響額」「会計方針の変更を反映した当期首残高」といった株主資本等変動計算書の記載に準じた記載を行う方法、(ii)期首残高について、過年度の影響額を加味した数値を記載した上で必要に応じて注記で補う方法の2つが考えられる。
 ④ 連結注記表  会社計算規則第113条「一株当たり情報に関する注記」の規定は、平成27年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結計算書類について適用する。本規定を適用すると、「1株当たり当期純利益」は、一株当たりの親会社株主に帰属する当期純利益金額または当期純損失金額として算定することとなるが、連結注記表上の記載は、継続して「1株当たり当期純利益」を用いることで差し支えないものと考えられる。

2.「退職給付に関する会計基準」に係る規定の強制適用に伴う経団連ひな型の改訂  ASBJによる退職給付基準の改正(平成24年5月)及びそれに伴う会社計算規則の改正(平成25年5月)を受けて、平成25年12月に、経団連ひな型を改訂した。ここで、退職給付見込額の期間帰属方法については、「期間定額基準」と「給付算定式基準」のいずれかの方法を選択適用することとなったが(改正退職給付基準第19項)、当該規定は、平成26年4月1日以降開始する事業年度の期首からの強制適用であり、ひな型には必要最小限の注記を行う観点から、平成25年12月のひな型の改訂では、個別注記表には特段の追加の記載は行わず、連結注記表には、記載上の注意において記載例を示すに留めた。
 しかしながら、当該規定が、平成26年4月1日以降開始する事業年度の期首から強制適用となることから、今回のひな型の改訂で所要の見直しを行った。
 まず、個別注記表では、「2-3.引当金の計上基準」の記載例の記載上の注意において、「退職給付引当金に関する計上基準の記載に際しては、「期間定額基準」と「給付算定式基準」の記載の要否について、各社において適切に判断する」旨を記載した。すなわち、各社が会計方針に重要性があると判断すれば、いずれの会計方針を選択したかを明記することが考えられる。
 連結注記表においては、「2-3-(4).その他連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項」の記載例の③のタイトルを、「退職給付に係る負債の計上基準」から「退職給付に係る会計処理の方法」に変更するとともに、前回記載上の注意で示した記載例を、本文へと移した。例えば、「退職給付債務の算定にあたり、退職給付見込額を当連結会計年度までの期間に帰属させる方法については、給付算定式基準によっております」といった注記を行うことが考えられる。

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