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解説記事2015年06月08日 【ニュース特集】 軽減税率導入めぐる与党協議の行方(2015年6月8日号・№597)

ニュース特集
今年秋の取りまとめ見据え、対象品目・経理方法を検討
軽減税率導入めぐる与党協議の行方

今年秋の制度案とりまとめを見据え、消費税の軽減税率制度の導入に向けた与党協議が本格化している。与党税制協議会・消費税軽減税率制度検討委員会(委員長・野田毅自民党税調会長)は5月22日、27日にそれぞれ会合を開催し、「酒類を除く飲食料品」、「生鮮食品」、「精米」を軽減税率の対象とする場合の具体案と課題について議論を行った。27日の第3回目の会合では、特に消費者から強い関心が寄せられる対象品目の線引き、事業者が事務負担の増加などを懸念する区分経理の方式などに関する課題が整理された。本特集では、今年秋に予定されている消費税軽減税率の制度案取りまとめを見据え、与党協議で問題となっている軽減税率導入の課題や議論の行方などを解説する。

対象品目を広くとればインボイス方式の導入が必要
 平成27年度与党税制改正大綱において「消費税の軽減税率制度については、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。平成29年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について、早急に具体的な検討を進める」と明記されたことを受け、与党税制協議会の下に設置された「消費税軽減税率制度検討委員会(委員長・野田毅自民党税調会長)」では、消費税軽減税率の具体的な制度案を作成するための作業が続いている。
 5月22日に開催された第2回目の会合では、与党税協が昨年6月に公表した「消費税の軽減税率に関する検討について」(本誌548号40頁、550号4頁参照)で示された対象品目8案(図表1参照)のうち、代表的な例として、「酒類を除く飲食料品」、「生鮮食品」、「精米」の3案(図表1のうち太線で囲んだ赤色の部分)を対象とする場合のそれぞれの具体案や課題が議論された(本誌596号40頁参照)。

 5月27日の会合(第3回目)では、さらに踏み込んだ検討を行うために、3案(酒類を除く飲食料品、生鮮食品、精米)の比較表が財務省より提示された。
 財務省が作成した「3案の比較表」は、「低所得者への配慮、消費者の痛税感の緩和、消費者の分かりやすさ(納得感)、事業者の事務負担、経済活動への歪み、安定財源の確保、対象品目が拡大されない」という7つの視点から、3案に関する財務省の評価を3段階(「〇」「△」「×」)でまとめたもの(図表2参照)。

 具体的にみていくと、「酒類を除く飲食料品」については、消費者の分かりやすさなど3項目が「〇」と評価される一方で、安定財源の確保や事業者の事務負担の2項目は「×」と評価された(低所得者への配慮など2項目が「△」)。
 また、「生鮮食品」については、財務省が「〇」と評価した項目はなく、安定財源の確保など3項目が「△」、事業者の事務負担など4項目が「×」と評価された。
 さらに、「精米」については、消費者の痛税感の緩和など5項目が「×」と評価される一方で、安定財源の確保のみが「〇」と評価された(事業者の事務負担は「△」)。
酒類を除く飲食料品には財源確保の壁  3案に関する財務省の評価のうち、「〇」項目が最も多かったのは、「酒類を除く飲食料品」を対象とする場合だ。ただ、「酒類を除く飲食料品」には、財務省が「×」と評価した「安定財源の確保」という点に大きなハードルがある。この点、野田会長は、第2回会合後の記者会見で、「税収が大幅に欠落することになれば、他の税率引上げを伴うのか、社会保障の歳出をどうするのかなどいろいろな問題がある」と述べている。
野田会長、3案それぞれに課題あり  第3回目の会合後に記者会見をした野田会長は、「〇が多いから良いとか×があるからダメだということではなく、それぞれ課題がある」と述べたうえで、その課題について、①対象品目設定の悪循環(幅広く設定すると所要財源が大きくなるなど)、②事業者の事務負担の増加(EU型インボイスの導入など)、③政策目的になじまない効果(高所得者にまで恩恵が及ぶなど)の3点を挙げた(図表3参照)。

 ①対象品目設定の悪循環について野田会長は、対象品目を幅広く設定すると線引きの問題が解決する一方で、所要財源が大きくなってしまうと指摘。また、野田会長は、品目を絞ることで財源の問題がクリアできる可能性があるものの、精米まで限定すると消費者の納得が得られるかどうかという問題があると指摘している。
 また、②事業者の事務負担の増加について野田会長は、精米のみを対象とする場合は別として、対象品目を幅広くとればEU型インボイス方式(図表4参照)をやらざるを得ないと指摘している。

 なお、このEU型インボイス方式に関し与党税協の会合で財務省が提示した資料では、川上から川下まですべての事業者において、①事業者の事務負担が重くなる、②システム改修が必要となる、③(免税事業者はインボイスを発行することができないため)免税事業者が取引から排除される恐れがあるなどの懸念があるため、3年程度、経過措置として、区分経理に対応した請求書等保存方式(図表5参照)を適用するとされている。

制度案取りまとめまで残された時間は僅か  軽減税率の対象品目の設定について、野田会長が「袋小路に入った」と表現するように、対象品目の線引きをめぐる結論を見出すことは容易ではない。
 ただ、第3回目の会合後の記者会見で野田会長は、「軽減税率はできないということではない。(課題を)どう乗り越えていくかということが大事ということで議論が終わった」と述べている。
 また、与党協議を受け、6月1日に開催された公明党税制調査会(斉藤鉄夫会長)の総会終了後の記者会見で斉藤会長は、秋までに結論を得るということは変わっていないとの認識のもと、「(軽減税率導入にあたっての課題を乗り越えるため、次の与党協議の会合で)何らかの意見を表明したい」と述べている。
 第4回目の与党協議は6月9日に予定されており、消費税の軽減税率をめぐる与党協議は今後も継続される。今年秋に予定されている消費税軽減税率の導入に関する基本的な考え方の取りまとめを見据え、対象品目の選定などをめぐる調整が加速しそうだ。

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