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解説記事2019年04月29日 【実務解説】 有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用)(2019年4月29日号・№785)

実務解説
有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用)
 公益財団法人 財務会計基準機構 企画・開示室 高野裕郎

Ⅰ はじめに

 財務会計基準機構(FASF)では、FASFセミナー「有価証券報告書作成上の留意点」(以下「本セミナー」という。)を4月1日から16日にかけて全国9か所で11回にわたり開催した。
 本稿は、本セミナーで説明した内容を基に、平成31(2019)年3月期の有価証券報告書(以下「有報」という。)における作成上の留意点についてまとめたものであり、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)の改正に関する留意点及び企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)から改正・公表された企業会計基準等のうち、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」、「収益認識に関する会計基準」等に関する留意点を中心に解説する。
 なお、文中意見にわたる部分は私見であることをあらかじめ申し添えておく。

Ⅱ 開示府令の改正に係る留意点

1 概 要
 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年内閣府令第3号。以下「本改正」という。)が本年1月31日に公布・施行された。本改正は、平成30(2018)年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において適切な制度整備を行うべきであるとの提言がなされたことを踏まえたものである。
 改正対象項目の適用時期を表1に示している。適用時期については、項目ごとに選択することができると考えられる。ただし、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(第三号様式において準用する第二号様式記載上の注意(以下「記載上の注意」という)(30))と財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(記載上の注意(54)c)の規定は、同時に適用しなければならないと考えられる。また、重要事象等(記載上の注意(31)b)と経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(記載上の注意(32))の規定についても同時に適用しなければならないと考えられる。なお、表1において「早期適用可」とされた項目に係る規定を当事業年度に係る有報から適用する場合には、その旨を記載することが考えられる。

 以下では、平成31年3月期の有報から適用となる「主要な経営指標等の推移」及び「コーポレート・ガバナンスの状況等」の各項目の改正点について述べていく。

2 主要な経営指標等の推移(記載事例1)
 「主要な経営指標等の推移」の「提出会社の経営指標等」では、本改正により、「最近5年間の株主総利回り」の推移について、「提出会社が選択する株価指数における最近5年間の総利回り」と比較して記載することとされた(記載上の注意(25)f)。なお、「最近5年間の株主総利回り」とは、(a)「当事業年度の前4事業年度及び当事業年度の各事業年度の末日における株価」及び(b)「当事業年度の4事業年度前から(a)の各事業年度の末日に係る事業年度までの1株当たり配当額の累計額」の合計額を、当事業年度の5事業年度前の事業年度の末日における株価でそれぞれ除した割合である(脚注1)。
 「提出会社が選択する株価指数における最近5年間の総利回り」における株価指数としては、TOPIX、日経225、JPX日経インデックス400、TOPIX業種別指数、同業他社平均等が考えられる。株価指数の選択にあたっては、配当込み株価指数のほか、提出会社が適切であると判断した場合、配当込みでない株価指数を選択することもできるものと考えられる。
 また、改正前の開示府令では「提出会社の状況」の「株価の推移」において記載が求められていた「最高株価」及び「最低株価」について、「主要な経営指標等の推移」における記載内容とされた(記載上の注意(25)g)。
 最高株価及び最低株価については、記載事例1脚注2において示しているように、株式分割があった場合、株式分割等の後の株価を記載するとともに、株式分割等の前の株価を括弧書きで記載することが考えられる。この点については、株式併合の場合も参考になるものと考えられる。

3 コーポレート・ガバナンスの状況等
(1)コーポレート・ガバナンスの概要
 「コーポレート・ガバナンスの概要」(記載上の注意(54))では、改正前の記載上の注意(56)a(a)で記載が求められていた、提出会社の「企業統治の体制の概要及び当該企業統治の体制を採用する理由」及び「企業統治に関するその他の事項」に加えて、「コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方」を記載することとされた。また、「企業統治の体制の概要」については、設置する機関の名称、目的、権限及び構成員の氏名(当該機関の長に該当する者については役職名の記載、提出会社の社外取締役又は社外監査役に該当する者についてはその旨の記載を含む。)を含めて記載することが新たに求められている。
 なお、「コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方」については、コーポレート・ガバナンス報告書におけるコーポレート・ガバナンスに関する「基本的な考え方」と同程度の内容を記載することが考えられる。
(2)役員の状況(記載事例2)
「役員の状況」では、改正前の開示府令における「役員の状況」と、「コーポレート・ガバナンスの状況」で記載されていた「社外取締役及び社外監査役と提出会社との人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係」及び「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」(改正前の記載上の注意(56)a(c))等を記載することとされた。
 記載事例2の①役員一覧については、改正前の開示府令第三号様式において「役名」と「職名」に分かれていたが、改正後の開示府令第三号様式においては「役職名」に変更されている。
(3)監査の状況(記載事例3、4)
 「監査の状況」では、改正前の開示府令における「コーポレート・ガバナンスの状況」で記載されていた「内部監査及び監査役監査の状況」、「会計監査の状況」や、「監査報酬の内容等」等を記載することとされている。
 また、上記に加えて、①監査公認会計士等を選定した理由について、提出会社が監査公認会計士等を選定するに当たって考慮するものとしている方針(会社法施行規則第126条第4号に掲げる事項を含む。)を含めた具体的な記載(記載上の注意(56)d(c))及び②提出会社の監査役及び監査役会が提出会社の監査公認会計士等又は会計監査人の評価を行った場合には、その旨及びその内容の記載(記載上の注意(56)d(e))が新たに求められている。
 このほかに、監査公認会計士等が異動した場合は、「監査の状況」において一定の事項を記載することとされたが(記載上の注意(56)d(d))、当該記載は、従来「経理の状況」において記載することとされていたものである。
 記載事例3は、「監査役監査の状況」、「内部監査の状況」及び「会計監査の状況」に係る記載事例である。記載事例4は、「監査報酬の内容等」に係る記載事例である。
 「監査報酬の内容等」については、記載上の注意(56)d(f)ⅰからⅲの規定に本改正における附則に定められた経過措置を適用した場合、監査公認会計士等と同一のネットワークに属する組織に対する報酬等の記載については、改正前の内容を記載することができるとされている。ただし、この場合は経過措置を適用している旨を記載するものと考えられる。
 また、会計監査人設置会社である場合には、監査役会が会社法第399条第1項の同意をした理由の記載が追加されている(記載上の注意(56)d(f)ⅴ)。なお、当該理由は、会社法施行規則第126条第2号において事業報告の内容とすべき項目とされていることから、事業報告における記載内容を有報で記載することも考えられる。
(4)役員の報酬等(記載事例5)  「役員の報酬等」では、従来「コーポレート・ガバナンスの状況」において求められていた内容に加えて、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、当該プログラムに基づく報酬実績等の記載が求められている。
 業績連動報酬とは、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の提出会社又は当該提出会社の関係会社の業績を示す指標を基礎として算定される報酬等をいう(記載上の注意(57)a第2段落)。役員の報酬等の設計は、企業により様々であると考えられるため、役員の報酬等が上記の業績連動報酬に該当するか否かについては、各企業において、適切に判断する必要があると考えられる。
 記載事例5は、①役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針に係る事項については、3つに区分して記載しているが、これは表2に掲げた順序を採用したものである。しかしながら、記載順序については、記載上の注意や本記載事例の順序にとらわれる必要はなく、各会社の実態をわかりやすく伝える順序にすることが重要であると考えられる。


 なお、業績連動報酬に定性的な評価に基づく報酬も含まれると判断した場合であって、定性的な評価に係る明確な指標がないときは、定性的な評価を行う項目名等を記載することが考えられる。
 また、業績連動報酬に係る指標の目標については、役位別や個人別に異なって設定されている場合には、役位別や個人別に記載することが考えられる。当該指標が複数の指標を組み合わせて設定されている場合には、その目標を記載するほか、目標設定の考え方や達成率等についても併せて記載することが考えられる。当該指標の目標が存在しない場合には、その旨及びその理由を記載する必要があると考えられる。
 ②役員区分ごとの報酬等の総額、報酬等の種類別の総額及び対象となる役員の員数における「報酬等の種類別の総額」については、記載事例において「固定報酬」、「業績連動報酬」、「退職慰労金」を掲げているが、これは開示府令の表現に合わせたものであり、実際の記載にあたっては、例示されている項目にかかわらず、例えば、業績連動報酬を短期の業績連動報酬(賞与)、中長期の業績連動報酬等に区分するなど、企業の実態に合わせてその内容ごとに記載することが考えられる。
(5)株式の保有状況(記載事例6)  「株式の保有状況」では、これまで「コーポレート・ガバナンスの状況」において記載が求められていた事項に加えて、次の項目を新たに開示することとされた。
・提出会社の最近事業年度に係る貸借対照表に計上されている投資有価証券のうち保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方(記載上の注意(58)a)
・保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容(記載上の注意(58)b)
・最近事業年度における株式数がその前事業年度における株式数から増加した銘柄について、株式数が増加した銘柄数、株式数の増加に係る取得価額の合計額及び増加の理由。株式数が減少した銘柄について、その銘柄数及び株式数の減少に係る売却価額の合計額(記載上の注意(58)c(b))
 上記のうち、「個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容」については、コーポレートガバナンス・コード原則1- 4に基づいて開示された事項がある場合には、当該開示内容を有報において記載することも考えられる。
 また、銘柄別の記載については、記載すべき銘柄数について、提出会社の資本金額の100分の1を超えるものの銘柄数の合計が60に満たない場合には、貸借対照表計上額の大きい順の60銘柄を記載するとされた(脚注2)。また、次の項目を新たに開示することとされた。
・提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果(定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨及び保有の合理性を検証した方法)(記載上の注意(58)d(e))
・株式数が増加した理由(最近事業年度における株式数がその前事業年度における株式数より増加した銘柄に限る。)(記載上の注意(58)d(f))
・当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無(記載上の注意(58)d(g))
 なお、銘柄別の記載にあたっては、当事業年度と前事業年度のそれぞれについて記載することが求められている。記載事例6のc.においては、銘柄ごとに、当事業年度及び前事業年度の株式数、貸借対照表計上額、保有目的、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由、当社の株式の保有の有無を記載することを想定している。

 なお、「定量的な保有効果」については、その検証を行った場合は、その時点を記載することが考えられる。また、「当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無」については、提出会社の株主名簿や発行者の有報等により確認できる範囲で記載することが考えられる。

Ⅲ 会計基準等の改正に係る留意点

1 税効果会計基準一部改正
 企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(以下「税効果会計基準一部改正」という。)等は、平成30年2月16日にASBJから公表され、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するとされている。
(1)冒頭記載(記載事例7)  改正された会計基準等に関して、経過措置を適用する場合などで、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財規」という。)等の附則に基づいて注記等に係る所要の記載を行った場合には、経理の状況の冒頭にその旨の記載をすることが望ましいと考えられる。
 このため、税効果会計基準一部改正の経過的な取扱いに従って、一定の注記事項に係る比較情報を記載していない場合、例えば記載事例7のように、一定の注記事項に係る比較情報については、附則により、改正前の連結財規等に基づいて作成する旨を記載することが考えられる。

記載事例7 税効果会計基準一部改正の経過的な取扱いに従って、一定の注記事項に係る比較情報を記載していない場合
1. 連結財務諸表及び財務諸表の作成方法について (1)当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)に基づいて作成している。
 なお、当連結会計年度(○年4月1日から○年3月31日まで)の連結財務諸表に含まれる比較情報のうち、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成30年3月23日内閣府令第7号。以下「改正府令」という。)による改正後の連結財務諸表規則第15条の5第2項第2号及び同条第3項に係るものについては、改正府令附則第3条第2項により、改正前の連結財務諸表規則に基づいて作成している。
(2)当社の財務諸表は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号。以下「財務諸表等規則」という。)に基づいて作成している。
 なお、当事業年度(○年4月1日から○年3月31日まで)の財務諸表に含まれる比較情報のうち、改正府令による改正後の財務諸表等規則第8条の12第2項第2号及び同条第3項に係るものについては、改正府令附則第2条第2項により、改正前の財務諸表等規則に基づいて作成している。

(2)連結貸借対照表の表示  当連結会計年度において税効果会計基準一部改正を適用した場合、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示することとされている。この場合、前連結会計年度の連結財務諸表について、新たな表示方法に従い連結財務諸表の組替えを行うことになる。
(3)表示方法の変更(記載事例8)  記載事例8は、税効果会計基準一部改正を適用した場合の表示方法の変更に関する注記であり、連結貸借対照表における表示の変更及び税効果会計関係注記における注記事項の追加を行っている旨を記載しているが、第3段落ただし書きに記載しているように、本記載事例は、税効果会計基準一部改正第7項に定める経過的な取扱いに従って一定の注記事項に係る比較情報を記載していない場合の記載事例である。

記載事例8 税効果会計基準一部改正を適用し、経過的な取扱いに従って一定の注記事項に係る比較情報を記載していない場合
(「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」の適用に伴う変更)  「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号平成30年2月16日。以下「税効果会計基準一部改正」という。)を当連結会計年度の期首から適用し、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示する方法に変更するとともに、税効果会計関係注記を変更した。
 この結果、前連結会計年度の連結貸借対照表において、「流動資産」の「繰延税金資産」XXX百万円は、「投資その他の資産」の「繰延税金資産」XXX百万円に含めて表示しており、「流動負債」の「繰延税金負債」XXX百万円は、「固定負債」の「繰延税金負債」XXX百万円に含めて表示している。
 また、税効果会計関係注記において、税効果会計基準一部改正第3項から第5項に定める「税効果会計に係る会計基準」注解(注8)(評価性引当額の合計額を除く。)及び同注解(注9)に記載された内容を追加している。ただし、当該内容のうち前連結会計年度に係る内容については、税効果会計基準一部改正第7項に定める経過的な取扱いに従って記載していない。

(4)税効果会計関係注記(記載事例9)  連結財規等の改正により、繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳について、繰越欠損金を記載する場合であって、当該繰越欠損金が重要であるときは、評価性引当額の記載にあたって、繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載するものとされている(「『連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則』の取扱いに関する留意事項について」(以下「連結財規ガイドライン」という。)15の5において準用する「『財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則』の取扱いに関する留意事項について」(以下「財規ガイドライン」という。)8の12-2-1)。また、評価性引当額に重要な変動が生じた場合には、その主な内容を記載することが求められている(連結財規第15条の5第2項第2号)。
 繰越欠損金を記載する場合であって、当該繰越欠損金が重要であるときは、税務上の繰越欠損金に係る次に掲げる事項を記載する。また、繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産を回収することが可能と判断した主な理由を記載することとされている(連結財規第15条の5第3項)。
① 繰越欠損金に納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額
② 繰越欠損金に係る評価性引当額
③ 繰越欠損金に係る繰延税金資産の額
 なお、記載事例9は、経過的な取扱いに従って一定の注記事項に係る比較情報を記載していない場合である。

 また、単体財務諸表における税効果会計関係注記についても、繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳に繰越欠損金を記載する場合であって、当該繰越欠損金が重要であるときは、評価性引当額の記載にあたって、繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載することとされている。
(5)主要な経営指標等の推移(記載事例10)
記載事例10 税効果会計基準一部改正等を適用し、これに伴い前連結会計年度に係る主要な経営指標等を変更している場合
3.「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっている。

 税効果会計基準一部改正を適用し、連結貸借対照表において繰延税金資産と繰延税金負債が相殺された結果、前連結会計年度における総資産額等に変更が生じる場合がある。
 これに伴い、「主要な経営指標等の推移」において、前連結会計年度の総資産額等の金額・数値を変更する場合、表の脚注において、前連結会計年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっている旨を記載することが考えられる。

2 収益認識会計基準等  平成30年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」がASBJから公表された。
 3月決算の会社における収益認識会計基準等の適用時期は、平成33(令和3・2021)年4月1日に開始する連結会計年度及び事業年度の期首からとされている。ただし、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用できるとされている。
(1)冒頭記載(記載事例11)
記載事例11 当連結会計年度において収益認識会計基準等を早期適用する場合
1. 連結財務諸表及び財務諸表の作成方法について (1)当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)に基づいて作成している。
  なお、当連結会計年度(○年4月1日から○年3月31日まで)は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成30年6月8日内閣府令第29号。以下「改正府令」という。)附則第3条ただし書きにより、改正後の連結財務諸表規則に基づいて作成している。
(2)当社の財務諸表は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号。以下「財務諸表等規則」という。)に基づいて作成している。
  なお、当事業年度(○年4月1日から○年3月31日まで)は、改正府令附則第2条ただし書きにより、改正後の財務諸表等規則に基づいて作成している。

 収益認識会計基準等を早期適用した場合、連結財規等の附則に基づいて注記等に係る所要の記載を行うことになるため、「経理の状況」の冒頭にその旨の記載をすることが望ましいと考えられる。
(2)連結貸借対照表・連結損益計算書  連結貸借対照表の表示については、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をもって連結貸借対照表に表示することとされている。なお、契約資産と債権については、連結貸借対照表において区分表示しないことができるとされている。
 連結損益計算書の表示については、実務において現在用いられている売上高、売上収益、営業収益等の科目を継続して用いることができるとされている。
(3)会計方針(記載事例12)
 記載事例12
は、当連結会計年度において収益認識会計基準等を早期適用する場合の重要な収益及び費用の計上基準に係る記載事例である。これは、連結財規第13条第5項第5号において重要な収益及び費用の計上基準を記載することが求められており、加えて、連結財規ガイドライン13-5において準用する財規ガイドライン8の2-7において、収益認識会計基準を適用している場合には、その旨を記載するとされていることを踏まえたものである。

記載事例12 当連結会計年度において収益認識会計基準等を早期適用する場合
重要な収益及び費用の計上基準  当社及び連結子会社は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 平成30年3月30日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 平成30年3月30日)を適用しており、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識している。

(4)会計方針の変更(記載事例13)  収益認識会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する(以下「原則的な取扱い」という。)とされている。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができるとされている。
 記載事例13は、原則的な取扱いに従って遡及適用する場合の記載事例である(脚注3)。記載事例13の第1段落では、各会社で実際に変更された会計方針の内容を点線箇所で具体的に記載することを想定している。

 また、収益認識会計基準第85項において、収益認識会計基準を原則的な取扱いに従って遡及適用する場合の実務上の負担を軽減する取扱いが定められている。記載事例においては同項を適用しているため、第1段落ただし書きにおいて、収益認識会計基準第85項に定める方法を適用している旨を記載している。
 なお、収益認識会計基準第85項では、第85項(1)から(4)に示されている4つの方法の1つ又は複数を適用することができるとされている。記載事例では、参考のため、(1)から(4)の方法のうち、四半期連結財務諸表に係る方法を除く全てを記載しているが、実際の記載にあたっては、各会社が適用した方法にあわせて記載内容を見直すことが考えられる。
 「この結果、」ではじまる段落以降では、影響額について記載している。収益認識会計基準の適用の際には、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費についても変わり得るため、それらの項目への影響額を記載している。記載事例に掲げた項目はあくまで一例であり、例えば、連結貸借対照表に係る表示科目のうち、重要な科目に対する影響額についても記載する点に留意する必要がある。
(5)収益認識関係注記(記載事例14)
 顧客との契約から生じる収益については、連結会社の主要な事業における主な履行義務の内容及び連結会社が当該履行義務に関する収益を認識する通常の時点を注記しなければならないとされた(連結財規第15条の26において準用する「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「財規」という。)第8条の32第1項)。
 なお、連結会社が履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)とは、例えば、商品又は製品の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時をいうとされている。
(6)個別財務諸表における注記
 ① 会計方針の変更(記載事例15)
 国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に収益認識会計基準を適用する場合には、収益認識会計基準の適用初年度において、IFRS第15号又はTopic606のいずれかの経過措置の定めを適用することができるとされている(収益認識会計基準第87項)。
 記載事例15は、当該定めを適用した場合であって、過去の各期間に遡及適用する場合の記載事例である。なお、IFRS第15号における経過措置の定めのうち適用した方法の内容については、点線箇所で記載することを想定している。

 ② 収益認識関係注記  単体財務諸表における収益認識に関する注記については、財規第8条の32第2項において、連結財務諸表において同一の内容が記載される場合には、記載することを要しないとされたが、この場合には、その旨を記載しなければならない点に留意する必要がある。

3 その他  実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」等が平成30年1月12日にASBJから公表されており、当該実務対応報告は、平成30年4月1日以後適用するとされている。また、実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」が平成30年3月14日にASBJから公表されており、当該実務対応報告も、平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用するとされている。両実務対応報告については早期適用の際の記載事例が参考になるものと考えられる(脚注4)。
 また、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」及び改正実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」が平成30年9月14日にASBJから公表された。
 当該実務対応報告は、改正実務対応報告第18号の公表日以後最初に終了する連結会計年度及び四半期連結会計期間において早期適用することができるとされている。なお、改正実務対応報告第18号の適用初年度においては、会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされている。ただし、会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上することができる等の経過措置が定められているので、当該実務対応報告における適用時期等の定めの内容を確認してほしい。

Ⅳ 「令和」に係る留意点
 「元号を改める政令」(平成31年政令第143号)が4月1日に公布され、5月1日から元号を「令和」に改めることとされた。開示府令において元号の使用に関する特段の定めはないことから、有報の記載にあたっては、和暦と西暦のいずれも用いることができるものと考えられる。

脚注
1 具体的な計算方法については、八木原栄二・岡村健史・堀内隼・片岡素香「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正」(本誌No.780(2019年3月25日号))の図表5等が参考になると考えられる。
2 ただし、みなし保有株式が11銘柄以上含まれる場合には、みなし保有株式にあっては貸借対照表計上額の大きい順の10銘柄、特定投資株式にあっては貸借対照表計上額の大きい順の50銘柄。ただし、特定投資株式が50銘柄に満たない場合には、開示すべきみなし保有株式の銘柄数は、60から当該特定投資株式の銘柄数を減じて得た数となる(記載上の注意(58)d)。
3 期首残高から新たな会計方針を適用する場合については、記載事例13及び四半期報告書の記載事例(高野裕郎「四半期報告書 作成上の留意点(平成30年6月第1四半期提出用)」(本誌No.746(2018年7月9日号))を参考とすることが考えられる。
4 高野裕郎「有価証券報告書 作成上の留意点(平成30年3月期)」(本誌No.737(2018年4月30日号)に早期適用の場合の記載事例を掲載している。

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