解説記事2015年06月29日 【SCOPE】 持合い株式に関する方針、各社の記載状況は?(2015年6月29日号・№600)
取引先との協力関係から保有する企業が多数
持合い株式に関する方針、各社の記載状況は?
東京証券取引所は6月1日よりコーポレートガバナンス・コードの適用を開始した。コードのうち、独立社外取締役とともに注目されていたのが政策保有株式(いわゆる持合い株式)に関する方針だ。開示した多くの企業では取引先等との関係強化を方針とするが、詳細な保有状況を示す企業も見受けられる。今後、多くの企業がコードの適用を行うことになるが参考となり得る事例もある。スコープでは各社の記載内容について紹介する。
政策保有株式の削減計画を開示する企業も
東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コードの策定に伴い上場規則等を改正。6月1日より適用を開始した。上場企業がコードを実施しない場合には、その理由をコーポレート・ガバナンス報告書において説明することになる。平成27年6月以後最初に開催する定時株主総会については経過措置(例えば3月決算法人の場合は平成27年12月末までに提出すればよい)が設けられており様子見の企業が多いが、一部にはすでに適用を開始した企業もある。他社の事例を見極めたいという企業にとっては参考となり得る事例も見られる。なかでも独立社外取締役とともに注目されるのが「政策保有株式保有に関する方針」だ。
コーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する開示とともに、毎年、取締役会で主要な政策保有についてのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性の将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきとされているものである。
保有株式の名称や数などを開示 例えば、豊田自動織機、デンソー、アイシン精機については、事業拡大の観点から協力関係は不可欠との観点から政策保有株式を保有していく方針を示している。NTTデータや亀田製菓等も同様の観点からの方針が示されている。
大東建託については、保有条件が示されている点で注目すべき事例といえよう。具体的には、業務提携などのほか、連結貸借対照表計上額が総資産の5%以下などの条件をすべて満たす範囲で保有する方針を示している。また、三菱商事については、株式取得の際の定量的なリスクや期待収益率等の経済合理性を事前に確認した上で、新規取得の是非を決定するなどと詳細な開示を行っている。
ニッカトーに関しては、長期的な政策保有の方針を示した上、保有する株式の名称、数、金額、取引関係を開示するという独自の記載ぶりとなっている。
そのほか、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは政策保有株式を取引関係の維持・強化を目的とするものとした上で発行体の財務状況、ガバナンス、株価等を総合的に判断する旨を開示する一方、4年間で3,000億円の政策保有株式の削減計画も併せて開示している。
みずほ・新生銀行は原則保有せず 一方、政策保有株式を原則として保有しない方針を示す企業もある。例えば、みずほフィナンシャルグループでは、取引先等の企業価値の維持・向上など、保有意義が認められる場合を除き、保有しないことを基本方針としている。また、新生銀行も保有しないことを原則とし、取引関係の維持など保有する必要があると判断した場合には、関係業務を主管する部門長の合議により承認した上で保有するとしている。マネックスグループについても保有しないことを原則としている。
持合い株式に関する方針、各社の記載状況は?
東京証券取引所は6月1日よりコーポレートガバナンス・コードの適用を開始した。コードのうち、独立社外取締役とともに注目されていたのが政策保有株式(いわゆる持合い株式)に関する方針だ。開示した多くの企業では取引先等との関係強化を方針とするが、詳細な保有状況を示す企業も見受けられる。今後、多くの企業がコードの適用を行うことになるが参考となり得る事例もある。スコープでは各社の記載内容について紹介する。
政策保有株式の削減計画を開示する企業も
東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コードの策定に伴い上場規則等を改正。6月1日より適用を開始した。上場企業がコードを実施しない場合には、その理由をコーポレート・ガバナンス報告書において説明することになる。平成27年6月以後最初に開催する定時株主総会については経過措置(例えば3月決算法人の場合は平成27年12月末までに提出すればよい)が設けられており様子見の企業が多いが、一部にはすでに適用を開始した企業もある。他社の事例を見極めたいという企業にとっては参考となり得る事例も見られる。なかでも独立社外取締役とともに注目されるのが「政策保有株式保有に関する方針」だ。
コーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する開示とともに、毎年、取締役会で主要な政策保有についてのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性の将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきとされているものである。
保有株式の名称や数などを開示 例えば、豊田自動織機、デンソー、アイシン精機については、事業拡大の観点から協力関係は不可欠との観点から政策保有株式を保有していく方針を示している。NTTデータや亀田製菓等も同様の観点からの方針が示されている。
大東建託については、保有条件が示されている点で注目すべき事例といえよう。具体的には、業務提携などのほか、連結貸借対照表計上額が総資産の5%以下などの条件をすべて満たす範囲で保有する方針を示している。また、三菱商事については、株式取得の際の定量的なリスクや期待収益率等の経済合理性を事前に確認した上で、新規取得の是非を決定するなどと詳細な開示を行っている。
ニッカトーに関しては、長期的な政策保有の方針を示した上、保有する株式の名称、数、金額、取引関係を開示するという独自の記載ぶりとなっている。
そのほか、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは政策保有株式を取引関係の維持・強化を目的とするものとした上で発行体の財務状況、ガバナンス、株価等を総合的に判断する旨を開示する一方、4年間で3,000億円の政策保有株式の削減計画も併せて開示している。
みずほ・新生銀行は原則保有せず 一方、政策保有株式を原則として保有しない方針を示す企業もある。例えば、みずほフィナンシャルグループでは、取引先等の企業価値の維持・向上など、保有意義が認められる場合を除き、保有しないことを基本方針としている。また、新生銀行も保有しないことを原則とし、取引関係の維持など保有する必要があると判断した場合には、関係業務を主管する部門長の合議により承認した上で保有するとしている。マネックスグループについても保有しないことを原則としている。
【参考】「原則1-4いわゆる政策保有株式」の各社の記載内容(一部抜粋) |
豊田自動織機 |
事業の拡大、持続的発展のためには、様々な企業との協力関係が不可欠です。 企業価値を向上させるための中長期的な視点に立ち、当社は、事業戦略上の重要性、取引先との事業上の関係などを総合的に勘案し、政策的に必要とする株式については、保有していく方針です。 |
大東建託 |
投資目的以外の目的で保有する株式の保有は、1)業務提携、取引の維持・強化及び株式の安定等の保有目的の合理性、2)その連結貸借対照表計上額が総資産の5%以下などの条件をすべて満たす範囲で行うことを基本的な方針としています。 同株式の買い増しや処分の要否は、当社の成長に必要かどうか、他に有効な資金活用はないか等の観点で、担当取締役による検証を適宜行い、必要に応じ取締役会に諮ることとしています。 |
三菱商事 |
三菱商事は、事業機会の創出や取引・協業関係の構築・維持・強化のための手段の一つとして、他社の株式・持分を取得・保有する場合がありますが、その際は取得・保有する株式・持分ごとに管理担当部局を定め、毎年、投資先企業の経営状況について、各社の業績や経営効率などを定量的に確認するとともに、定性的な経営課題も把握・管理することとしています。 このうち、関係会社を除く上場会社の株式については、社内規則に基づき、下記のとおり、当該株式の取得・保有意義や採算性の観点を踏まえた取得・保有の是非の判断や保有方針の見直しを行うこととしています。 (a)関係会社を除く上場会社の株式を新たに取得する場合、取得の意義・目的を明確にするほか、株式取得の際の定量的なリスクや期待収益率等の経済合理性を事前に確認した上で、新規取得の是非を決定する。 (b)上場株式の保有期間中は、取得目的の達成状況、取得時以降の採算性の変化を定期的に確認し、社内のリスク管理制度の一つである「EXITルール」等の要件に該当する場合は、中長期的視点も踏まえた継続保有の合理性・必要性等を再確認のうえ、売却も含め保有方針を見直すことにより、効率的な資産の入替えを行う。 |
みずほフィナンシャルグループ |
・当社および当社の中核子会社は、政策保有株式について、コーポレートガバナンス・コードを巡る環境の変化や、株価変動リスクが財務状況に大きな影響を与え得ることに鑑み、その保有の意義が認められる場合を除き、保有しないことを基本方針とする。 ・保有の意義が認められる場合とは、取引先の成長性、将来性、もしくは再生等の観点や、現時点あるいは将来の採算性・収益性等の検証結果を踏まえ、取引先および当社グループの企業価値の維持・向上に資すると判断される場合を言う。 ・上記各社は、保有する株式について、個別銘柄毎に、定期的、継続的に保有の意義を検証し、その意義が乏しいと判断される銘柄については、市場への影響やその他考慮すべき事情にも配慮しつつ売却を行う。一方、その意義が認められる銘柄については、これを保有する。 |
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