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解説記事2015年07月13日 【実務解説】 四半期報告書作成上の留意点(平成27年6月第1四半期提出用)(2015年7月13日号・№602)

実務解説
四半期報告書作成上の留意点(平成27年6月第1四半期提出用)
 公益財団法人 財務会計基準機構 企画・開示室 高野裕郎

Ⅰ はじめに

 財務会計基準機構では、FASFセミナー「四半期報告書作成上の留意点」を6月8日から23日にかけて全国9か所11回にわたり開催した。 本稿は、主に同セミナーで説明した内容をもとに、平成27年6月第1四半期報告書の作成上の留意点についてまとめたものであり、「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という)等を適用した場合の留意点を中心に解説する。
 なお、文中意見にわたる部分は私見であることをあらかじめお断りしておく。

Ⅱ 企業結合会計基準等の改正に関する留意点
 平成25年9月13日及び平成26年5月16日に企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)から企業結合会計基準及び関連する他の会計基準の改正が公表されており、主に次の項目が改正されている。
① 非支配株主持分の取扱い
(1)支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動
(2)当期純利益の表示等
② 取得関連費用の取扱い
③ 暫定的な会計処理の確定の取扱い
 適用時期については、①非支配株主持分の取扱い及び②取得関連費用の取扱いについては、平成27年4月1日以後開始する年度の期首から原則適用され、③暫定的な会計処理の確定の取扱いは、平成27年4月1日以後開始する年度の期首以後実施される企業結合から原則適用される。
 ただし、①(1)支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動の取扱い、②取得関連費用の取扱い及び③暫定的な会計処理の確定の取扱いについては、すべてを同時に適用する場合に限り、平成27年3月期、つまり前連結会計年度から早期適用することが可能であった。なお、①(2)当期純利益の表示等の取扱いについては、早期適用は不可とされていた。

1 主要な経営指標等の推移  平成26年8月20日に、金融庁から企業内容等の開示に関する内閣府令及び財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(内閣府令第57号)が公表され、主要な経営指標等の推移において、四半期純利益等の表示の変更に伴う改正が行われた。
 記載事例1は主要な経営指標等の推移の記載事例であり、上記の改正に伴う変更を反映している。具体的には、従来の「四半期(当期)純利益」については「親会社株主に帰属する四半期(当期)純利益」に変更している。

 なお、主要な経営指標等の推移においては、遡及適用等の内容を反映している場合には、その旨を注記しなければならないとされている(企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)5-12-2)。企業結合会計基準等の改正における四半期純利益等の表示の変更については組替えを行うとされていることから、記載事例の表の欄外に注記を行っている((注)3)。

2 四半期連結財務諸表(本表)  本表においても、四半期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更に伴い、各様式における科目の名称が改正されている。
 記載事例2は四半期連結財務諸表の本表(抜粋)に関する記載事例である。

 四半期連結貸借対照表においては、従来の「少数株主持分」が「非支配株主持分」に改正されている。
 四半期連結損益計算書においては、従来の「少数株主損益調整前四半期純利益」が「四半期純利益」、従来の「少数株主利益」が「非支配株主に帰属する四半期純利益」、従来の「四半期純利益」が「親会社株主に帰属する四半期純利益」に改正されている。
 また、四半期連結包括利益計算書においては、従来の「少数株主損益調整前四半期純利益」が「四半期純利益」、従来の「少数株主に係る四半期包括利益」が「非支配株主に係る四半期包括利益」に改正されている。
 なお、四半期連結損益及び包括利益計算書についても、四半期連結損益計算書及び四半期連結包括利益計算書と同様の改正が行われている。

3 会計方針の変更に関する注記  企業結合会計基準等の適用にあたっては、非支配株主との取引及び取得関連費用の取扱いについて、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の期首時点の累積的影響額を、適用初年度の期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。ただし、新たな会計方針を適用初年度の期首から将来にわたって適用することができるとされている。
 したがって、企業結合会計基準等を原則適用した場合の会計方針の変更に関する注記である記載事例3においては、過去の期間のすべてに新たな会計方針を適用した場合と、当第1四半期連結会計期間から将来にわたって適用する場合の2通りの記載事例を掲げている。

 上段の記載事例は、過去の期間のすべてに新たな会計方針を適用した場合の記載事例である。
 企業結合会計基準等を原則適用する場合、四半期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更についても、当連結会計年度が企業結合会計基準等の適用初年度であることから、会計方針の変更として記載することが考えられる。したがって、記載事例の第1段落9行目「加えて」以降において、四半期純利益の表示等の変更の内容を記載している。
 下段(点線枠内)の記載事例は、当第1四半期連結会計期間から将来にわたって適用する場合の記載事例である。
 記載事例において「(略)」としている箇所は、上段の記載事例の第1段落を参考に記載することを想定している。
 会計方針の変更による影響額については、将来にわたって適用することになることから、当第1四半期連結累計期間において、従来の会計方針を適用した場合と新たな会計方針を適用した場合の差額を記載している。
 なお、当第1四半期連結累計期間において企業結合や子会社株式の一部売却等が行われていない場合であって、当第1四半期連結会計期間から新たな会計方針を将来にわたって適用する場合も、四半期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更は、会計方針の変更として記載するものと考えられる。

4 追加情報  前第1四半期連結会計期間において企業結合会計基準等を早期適用し、会計方針の変更に関する注記を行っていた場合、当第1四半期連結会計期間においては四半期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更のみ行われることとなるが、当該変更の内容については、追加情報として記載することが考えられる。(記載事例4

 なお、会計基準等の名称については、「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という)第39項等に表示に関する定めがおかれていることを踏まえて、企業結合会計基準ではなく連結会計基準を記載している。

5 株主資本等関係注記  支配の変動を伴わない子会社株式の追加取得・一部売却、子会社の時価発行増資等により、前期末から資本剰余金の重要な変動が生じた場合については、株主資本の金額に前連結会計年度末に比して著しい変動があった場合の注記(四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「四半期連結財規」という)第92条)の対象と考えられるため、主な変動事由を注記するものと考えられる。

6 企業結合等関係注記
(1)取得による企業結合が行われた場合の注記
 取得による企業結合が行われた場合、被取得企業又は取得した事業の取得原価及び対価の種類ごとの内訳の注記が求められている(四半期連結財規第20条第1項第3号)。
 記載事例5は、被取得企業の取得原価及び対価の種類ごとの内訳の記載事例である。

 なお、本記載事例においては、取得に直接要した費用については記載していない。これは、企業結合会計基準等の改正に伴い、取得とされた企業結合における取得関連費用の一部について、改正前は取得原価に含めるとされていたが、改正後は発生した連結会計年度の費用として取り扱われることとなったためである。
(2)暫定的な会計処理が確定した場合の注記  暫定的な会計処理の確定が行われた四半期連結会計期間においては、暫定的な会計処理が確定した旨及び発生したのれんの金額又は負ののれんの発生益の金額に係る見直しの内容及び金額を注記しなければならないとされている(四半期連結財規第20条第3項)。また、暫定的な会計処理の確定に伴い、比較情報において取得原価の当初配分額に重要な見直しが反映されている場合には、当該見直しの内容及び金額の注記をしなければならないとされている(四半期連結財規第20条第4項)。
 ただし、企業結合会計基準等を原則適用した場合、暫定的な会計処理の定めは平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首以後実施される企業結合から適用するとされているため、暫定的な会計処理が確定するのは当連結会計年度の第2四半期連結会計期間以降となる。したがって、当第1四半期連結会計期間においては、四半期連結財規第20条第3項又は第4項に基づく注記が求められるケースとしては、企業結合会計基準等を前連結会計年度において早期適用した場合に限られると考えられるので、留意してほしい。
 記載事例6の上段の記載事例は、前連結会計年度において企業結合に係る暫定的な会計処理を行い、当第1四半期連結会計期間において当該暫定的な会計処理が確定した場合の記載事例である。

 本記載事例においては、当第1四半期連結会計期間において暫定的な会計処理の確定が行われていることから、四半期連結財規第20条第3項に基づいた注記が求められている。
 また、暫定的な会計処理の確定に伴い、前連結会計年度に遡って当該確定が行われたかのように会計処理を行う結果、比較情報である前連結会計年度末において取得原価の当初配分額に重要な見直しが反映されることとなり、四半期連結財規第20条第4項に基づいた注記も求められる。
 したがって、本記載事例においては、同条第3項に基づく注記と同条第4項に基づく注記を記載することとなる。
 下段の記載事例は、前第1四半期連結会計期間において行われた暫定的な会計処理が前連結会計年度末に確定した場合の記載事例である。
 この場合は、比較情報である前第1四半期連結累計期間において、取得原価の当初配分額に重要な見直しを反映することとなるため、四半期連結財規第20条第4項に基づいて当該見直しの内容及び金額を注記することとなる。
(3)共通支配下の取引等の注記  共通支配下の取引等が行われた場合で、子会社株式を追加取得した場合、四半期連結財規第20条第1項第3号及び第4号に準ずる事項の注記が求められている(四半期連結財規第22条第1項第3号)。
 改正前は、四半期連結財規第20条第1項第3号及び第4号に加えて、四半期連結財規第20条第1項第6号に準ずる事項、すなわち、発生したのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間等の注記も求められていたが、改正後は、第6号に準ずる事項の注記は求められていない。
 これは、改正後の連結会計基準においては、子会社株式の追加取得等の会計処理について、支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動による差額は資本剰余金に計上することとなり、のれんが発生しないためである。

7 1株当たり情報の注記  企業結合会計基準等の改正における四半期純利益等の表示の変更に伴い、1株当たり情報の注記における算定上の基礎の箇所において、「親会社株主に帰属する」という文言を追加し、従来「四半期純利益金額」と記載していた箇所を「親会社株主に帰属する四半期純利益金額」に変更している。(記載事例7
 なお、企業結合会計基準等を早期適用した場合で、当第1四半期連結会計期間末までに暫定的な会計処理の確定を行い、当第1四半期連結累計期間の比較情報に暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しが反映されている場合、1株当たり四半期純損益金額及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益金額は、当該見直しが反映された後の金額により算定するものと考えられる。

8 四半期連結キャッシュ・フロー計算書(第2四半期)  企業結合会計基準等の改正に伴い、連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローについては、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載するとされたことから、四半期連結財規様式第五号及び第六号が改正され、「連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出」及び「連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入」の科目が追加されている。(記載事例8
 ただし、これらの科目は、比較情報の組替えを行わないとされているため、比較情報である前第2四半期連結累計期間については「-」で表記している。
 このほか、連結範囲の変動を伴う子会社株式の取得関連費用もしくは連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に関連して生じた費用に係るキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載することとされている。

Ⅲ 実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の改正に関する留意点
 平成27年3月26日にASBJから「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の改正が公表され、主に3つの点が改正されている。
① のれんの償却に関する取扱い
② 少数株主損益の会計処理に関する取扱い
③ 退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理に関する取扱い
 実務対応報告の適用時期については、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用するとされている。ただし、今回の改正により削除された「少数株主損益の会計処理」に関する取扱いを除き、実務対応報告公表後最初に終了する連結会計年度の期首から適用することができるとされている。
 なお、実務対応報告第18号の適用にあたっては、経過的な取扱いが定められており、適用初年度の期首に連結財務諸表において計上されているのれんのうち、在外子会社が平成26年1月に改正されたFASB-ASC Topic 350に基づき償却処理を選択したのれんについては、企業結合ごとに以下のいずれかの方法を適用するとされている。
① 連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間に基づき償却する。
② 在外子会社が採用する償却期間が連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間を下回る場合に、当該償却期間に変更する。この場合、変更後の償却期間に基づき将来にわたり償却する。
 記載事例9は実務対応報告第18号を原則適用した場合の会計方針の変更に関する注記の記載事例であり、②の場合を想定している。

 なお、①の場合、つまり、在外子会社において償却処理を選択したのれんについて、連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間に基づき償却する場合においても、会計方針の変更に該当するものと考えられる。

Ⅳ 非財務情報に関する留意点

1 役員の状況
(1)役員の男女別人数と女性比率の記載
 平成26年10月23日に企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という)が改正され、有価証券報告書において役員の男女別人数を欄外に記載するとともに、役員のうち女性の比率を括弧内に記載することとされた(開示府令第三号様式記載上の注意(36)a)。
 同様に、四半期報告書においては、異動後の役員の男女別人数を記載するとともに、役員のうち女性の比率を括弧内に記載することとされた(開示府令第四号の三様式記載上の注意(17)b)。四半期報告書の役員の状況は、前事業年度の有価証券報告書の提出日後の異動を記載することとされているため、男女別人数及び女性の比率についても、異動後の役員の状況が対象となる。
 記載事例10は、役員の状況における異動後の役員の男女別人数及び役員の女性の比率の記載事例である。

 なお、役員の新任や退任がなく、役員の役職の異動のみ行われた場合は、異動後の役員の男女別人数及び女性の比率の記載は不要と考えられる。
 また、指名委員会等設置会社において、役員の状況を取締役の状況と執行役の状況の二つに区分して記載を行っている場合、役員の男女別人数及び役員のうち女性の比率の記載は、取締役と執行役の人数をまとめて記載することで足りると考えられる。また、取締役と執行役を兼任している役員については、2名としてではなく、1名の役員として数えることが適当と考えられる。
(2)監査等委員会設置会社の場合  会社法の改正に伴い、平成27年4月28日に金融庁から無尽業法施行細則等の一部を改正する内閣府令(内閣府令第37号)が公表され、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社については、監査役を設置する会社に準じて記載することとされた(開示府令第四号の三様式記載上の注意(1)d)。
 したがって、監査等委員会設置会社においては、役員の状況についても監査役を設置する会社の場合に準じて記載するものと考えられる。(記載事例11


2 大株主の状況(第2四半期)  平成27年5月15日に金融庁から金融商品取引業等に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(内閣府令第38号)が公表され、開示府令第四号の三様式記載上の注意(15)dが改正されている。本改正は、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」の施行の日以後、すなわち、平成27年5月29日以後に終了する四半期会計期間に係る四半期報告書に適用するとされている。
 これにより、会社が発行する株券等に係る大量保有報告書等が金融商品取引法第27条の30の7の規定により公衆の縦覧に供された場合、つまり、大量保有報告書等がEDINETにより公衆の縦覧に供された場合についても、大量保有報告書等の写しの送付を受けた場合と同様に、その保有状況が株主名簿の記載内容と相違するときには、実質所有状況を確認して記載することとされ、また、記載内容が大幅に相違しており、その確認ができない場合には、その旨及び大量保有報告書等の記載内容を注記することとされた。
 なお、この改正は、平成26年の金融商品取引法改正で、大量保有報告書等をEDINETにより公衆の縦覧に供した場合には、大量保有報告書等の写しの送付を免除されたことに伴う改正と考えられる。

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