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コラム2015年08月10日 【コラム】 理由の提示不備による取消処分は納税者に不利!?(2015年8月10日号・№606)

コラム
理由の提示不備による取消処分は納税者に不利!?

国税通則法の改正で処分理由を記載
 平成23年度税制改正では国税通則法の改正が行われ、税務署長等が、更正又は決定などの不利益処分や納税者からの申請を拒否する処分を行う場合には、その通知書に処分の理由を記載することになった。平成25年1月1日から適用されているが、最近では、理由の提示不備により国税不服審判所で争われた事案もでてきた。
 すでに本誌では「青色欠損金控除額の加算で理由提示不備」(本誌587号)、「債務控除否認の更正処分で理由提示不備」(本誌588号)と題した2本のニュースをお伝えしているところだ。これら2つの裁決は、前者は一部取消し、後者は全部取消しとなった事案である。
 前者については青色取消に伴う欠損金額控除額の加算について理由の提示がなかった事案。法人税の更正処分に係る理由の提示について争点にはなかったものの、審判所が理由の不備が著しいとして違法と判断したものである。青色欠損金の当期控除額の加算の部分について法人税の更正処分が取り消されている。
 また、後者は更正通知書に記載された債務控除に係る処分の理由が行政手続法14条1項に規定する「不利益処分の理由」として十分な記載であるといえるかどうかが争点の1つとなっていたもの。審判所は、債務控除は認められないとの提示はあるものの、更正処分の理由が不明であるとしてその他の争点について判断するまでもなく、原処分庁の更正処分の全部を取り消している。
原処分庁側は改めて課税処分が可能  2つの事案ともに結果的には納税者側の主張が(一部)認められた格好となっているが、今回の裁決だけで安心することはできない。前者については、理由の提示がなかった青色欠損金の当期控除額の加算部分について法人税の更正処分が取り消されているわけだが、仮に原処分庁側が再度理由を提示した場合には改めて更正処分を行うことができるからだ。青色欠損金の当期控除額の加算部分について原処分庁側の更正処分自体に不備がないとすれば、再び審査請求が行われた場合には納税者側の主張が棄却される可能性が高くなる。
 後者についても理由の提示不備以外の争点の判断を審判所は行っていない。このため、原処分庁側が十分な理由を記載した上で更正処分を行うことが可能。その後、納税者側が審査請求を行えば、改めて審判所が争点の判断を行う運びとなる。
双方にとって好ましくない状況に  これら2つの事案について原処分庁が新たに更正処分を行ったことは確認されていない。しかし、制度上は処分を取り消された納税者にとって酷な状況を招くことになる。一方、課税当局側も非常に悩ましい判断に迫られることになる。納税者側に非があったとしても更正処分を行えば批判される可能性があるからだ。理由の提示不備による取消処分は、納税者及び課税当局の双方にとって好ましくない状況といえよう。今後もより一層慎重な対応が課税当局側に求められる。

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