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解説記事2015年09月07日 【第2特集】 平成28年度における各省庁の税制改正要望は?(2015年9月7日号・№609)

第2特集
マイナンバーなど、全体的に小幅な改正要望に
平成28年度における各省庁の税制改正要望は?

 各省庁等の平成28年度税制改正要望が出揃った。経済産業省における役員給与税制の見直しや内閣府の企業版ふるさと納税の創設などの注目すべき項目はあるものの、他の省庁等の改正要望は全体的に小粒な印象だ。本特集では、各省庁の主な税制改正要望を紹介する。

取引相場のない株式の評価方法の見直しを

 経済産業省の平成28年度税制改正要望では、来年度に税率引下げ幅の更なる上乗せを図り、法人実効税率を20%台に引き下げることを盛り込んだ。また、すでにお伝えしている役員給与税制やグリーン投資減税の見直し、交際費課税の特例措置の適用期限延長など(本誌608号7頁参照)といった項目以外にも企業が年末の税制改正大綱の取りまとめに向けて動向を注視すべき要望項目がある。
 例えば、平成27年度税制改正大綱の検討事項として明記された固定資産税の償却資産課税の見直しだ。経済産業省は償却資産(設備等)に対する固定資産税は、諸外国でも廃止する方向であり、企業にとっては設備投資コストの上乗せとなり、国内投資の阻害要因の1つであると指摘。新規取得する機械装置等については固定資産税の減免を図るべきとしている。
アジア拠点化税制は廃止へ  中小企業向けの税制改正要望では、平成28年3月末で期限切れとなる中小企業者の少額減価償却資産の特例について平成29年3月末まで2年間延長するよう要望している。また、昨今の株価上昇を受け、業績に大きな変化がない状況であっても中小企業の株式の評価が上がっており、事業承継に影響を及ぼす可能性があることから評価方法の見直しを求めている。
 そのほか、アジア拠点化のためのストックオプション税制に係る特例措置については利用実績が0件であったことから廃止を求めている(図表1参照)。


マイナンバー導入で手続き等の簡素化を
 金融庁における平成28年度税制改正要望で注目されるのはマイナンバー制度導入に伴う見直しだ。例えば、NISA口座については、マイナンバー制度導入後は住民票の写しに加え、マイナンバー(個人番号)の提出も必要になる。このため、煩雑な手続きとならないよう、平成30年以降一律にマイナンバーのみを用いることとし、住民票の写し等の提出を不要とすることを求めている(図表2参照)。また、NISA口座の保有者が定期的に求められる重複口座の確認もマイナンバー制度開始以降は、金融機関に対してマイナンバーの告知を行った場合は次回以降の確認を不要とすることも求めた。

 加えて証券会社が顧客に交付する税務書類(特定口座年間取引報告書、配当の支払通知書等)の写しについては、本人にマイナンバーを知らせる意味はないので、マイナンバーの記載を不要とするほか、証券口座開設手続き等の際にマイナンバーの告知を行った者がその後、同一の金融機関においてマイナンバーの告知を必要とする他の口座開設手続き等を行う際には再度の番号告知及び番号確認の書類の提示を不要とすることを求めた。
 そのほか、引き続き金融商品間の損益通算の範囲についてデリバティブ取引や預貯金等まで拡大するよう求めている。また、事業再生関連では、事業再生ファンドによる債権放棄が行われた場合の特例措置や再生企業の保証人となっている経営者が私財提供を行う場合の特例措置が平成28年3月末で期限切れとなることから、適用期限の3年間延長を求めている。
国外転出時課税で法令上の疑問  また、金融庁は、非居住者への相続に係る国外転出時課税制度に関し、遺産分割協議確定による修正申告及び更正の請求を認めることを要望した。 
 国外転出時課税に係る準確定申告の期限(相続開始を知った日から4月以内)までに有価証券等が未分割である(非居住者が取得するか否かが決まっていない)場合には、非居住者(相続人)の法定相続分で準確定申告を行うことになるが(本誌595号17頁参照)、その後の遺産分割協議の成立により非居住者が有価証券等を取得しないケースも想定される。実務家からは、このような場合に準確定申告をした所得税に関し更正の請求(減額更正)が認められるか否かが法令等により明らかにされていないという疑問の声が挙がっていた。今回の改正要望が実現すれば、この実務家の疑問は解消されることになる。

空家を相続した場合の除去費用などの税額控除を求める
 国土交通省で注目される項目の1つは空家対策だ。平成27年度税制改正では、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく必要な措置の勧告の対象となった特定空家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外する措置が講じられている。今回の税制改正要望では空家の発生を抑制する観点から平成28年4月1日から一定期間内に旧耐震基準の下で建築された居住用家屋を相続し、相続後一定期間内に①耐震リフォーム、又は②除却を行った場合、標準工事費(上限250万円)の10%を所得税額から控除する制度の創設を求めている。
 また、平成26年度税制改正で対象範囲の拡大が行われた免税対象物品だが、地方の免税店数の増加や旅行消費額4兆円を目指す旨が明記された「日本再興戦略」改訂2015を受け、免税対象となる一般物品の最低購入金額を現行の「10,000円超」から「5,000円以上」に引き下げることを要望している。
居住用財産の買換え特例の期限延長も  そのほか、適用期限が平成27年12月末までとされている居住用財産の買換え等に係る特例措置を2年間延長することを求めている。具体的には、①居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、②居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、③居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例である。

雇用促進税制は適用要件を見直して期限延長へ
 厚生労働省では雇用促進税制の2年間の適用期限の延長を求めている。ただし、適用要件の見直しを行った上との条件付きだ。現行制度では、①適用年度中に雇用保険一般被保険者の数を5人(中小企業は2人)以上かつ10%以上増加させること、②適用年度及びその前事業年度中に事業主都合による離職者がいないこと、③適用年度における「支払給与額」がその前事業年度における支払給与額よりも一定額以上増加すること、④風俗営業等を営む事業主でないことといった要件を満たす必要があるが、雇用の質の向上を図ることができるよう多少厳しくなる方向だ。
ハイブリッド型年金の掛金の損金算入を  また、「日本再興戦略」改訂2015においてハイブリッド型年金制度(今号42頁参照)の導入を検討する旨が明記されたことを受け、税制上の措置を講じることを求めている。厚生労働省によるとハイブリッド型年金制度は政令改正で実現することが可能としている(図表3参照)。その上で、現行の確定給付年金制度では負債を超える掛金の拠出は認められていないため、仮にハイブリッド型年金制度が導入された場合には同制度の掛金を損金算入できることが必要としている。

 そのほかでは、従業員が受けたキャリアコンサルティング(労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと)に要した費用を特定支出控除の対象とする要望が盛り込まれた。
 なお、交際費課税に関しては、①飲食のために支出する費用の額(社内接待費を除く)の50%以上、②中小法人に係る交際費は800万円まで全額損金算入(中小法人は①又は②の選択適用)する制度の両方の適用期限を2年間延長することを求めている。
サービス付き高齢者向け住宅には要件を付加  社会保障関連では、子育て支援の観点からベビーシッター等の費用について税額控除することを求めている。また、サービス付き高齢者向け住宅に係る割増償却(5年間割増償却14%(耐用年数35年以上20%))の適用期限を平成30年3月31日まで2年間延長することを要望している。ただし、医療・介護施設の併設を要件として現行要件に付加することとしている。
企業版ふるさと納税なども  そのほか、文部科学省ではゴルフ場利用税の廃止や学校法人への個人寄附に係る所得控除上限額の引上げ(40%から50%)などを求めている。また、内閣府では地方創生応援税制、いわゆる企業版ふるさと納税の創設などを要望している。

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