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解説記事2015年12月14日 【未公開裁決事例紹介】 相続紛争に関する和解金の所得区分で課税処分取消し(2015年12月14日号・№622)

未公開裁決事例紹介
相続紛争に関する和解金の所得区分で課税処分取消し
和解金は賃料収入に係る果実返還金に該当せず

○相続財産に関する遺留分減殺請求訴訟等で成立した和解により請求人が実弟から受領した金員について、その金員は相続財産である賃貸マンションの賃料収入の一部であるため不動産所得に該当すると判断した原処分庁の課税処分が取り消された事例(平成27年7月17日裁決・大裁(所・諸)平27第5号)。審判所は、請求人が実弟から受領した金員はマンション賃料収入に係る果実返還金ではなく、請求人と実弟の間に発生した相続紛争の和解金の性質を有するものであるため、不動産所得ではなく一時所得であると判断した。

基礎事実等
(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という)が、請求人の亡母の相続に関し請求人の実弟に対して提起した遺留分減殺請求訴訟及び果実返還請求訴訟において成立した訴訟上の和解に基づき、実弟から金員を受領したところ、原処分庁が、当該金員は相続財産である賃貸マンションの賃料収入の一部であるから不動産所得に該当するとして、所得税の決定処分及び更正処分等並びに請求人に対する還付金の充当処分を行ったのに対し、請求人が、当該金員は不動産所得に該当せず、相続税の対象であるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯(略)
(3)関係法令等の要旨(略)
(4)基礎事実
 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の母である××××(以下「A」という)は、×××所属公証人××××作成の平成8年3月××日付同年第×××号遺言公正証書により、その所有する財産の全部を包括してAの四男である××××(以下「B」という)に相続させる旨の遺言(以下「本件遺言」という)をした。
ロ Aは、××××××、死亡した(以下、Aの死亡により開始した相続を「本件相続」という)。
  Aの相続人は、Aの長男である請求人、Aの二男である××××の代襲相続人2人(以下「本件代襲相続人ら」という)及びAの三男である××××並びにBの計5人である。
  ×××××××ほか所在の賃貸用マンション(以下「本件マンション」という)は、Aの相続財産に含まれる。
ハ 請求人は、平成19年12月××日、Bに対し、遺留分減殺請求の意思表示をした(以下「本件遺留分減殺請求」という)。
  本件相続について、請求人の遺留分は8分の1である。
ニ 請求人及び本件代襲相続人らは、××××××、Bを相手方とする遺留分減殺請求調停を×××××に申し立てた。
  上記調停において、本件代襲相続人らとBとの間では、××××××、Bが本件代襲相続人らに対し遺留分の弁償としてそれぞれ11,000,000円を支払う等の内容の調停が成立したが、請求人とBとの間の調停は不成立となった。
ホ 請求人は、××××××、Bを相手取り、本件遺留分減殺請求に基づき、本件マンションにつき平成19年12月××日遺留分減殺を原因とする持分8分の1の所有権移転登記手続等を求める訴えを×××××に提起した(以下「本件遺留分減殺請求訴訟」という)。
へ 請求人は、××××××、Bを相手取り、民法第1036条の規定による果実返還請求権に基づき、10,000,000円及び遅延損害金の支払を求める訴えを××××××に提起し(以下「本件果実返還請求訴訟」という)、その請求原因として、請求人は、本件遺留分減殺請求により、本件マンションの持分8分の1を取り戻した、本件マンションの××××××(本件相続開始日)から平成24年9月××日までの賃料の合計は337,704,658円であり、その8分の1に相当する金額は42,213,082円であるところ、そのうち10,000,000円の返還を求めるなどと主張した。
  なお、本件遺留分減殺請求訴訟と本件果実返還請求訴訟(以下併せて「本件訴訟」という)とは、併合審理された。
ト 本件訴訟について、××××××、請求人とBとの間で、次のとおり訴訟上の和解が成立した(以下「本件和解」という)。
(イ)請求人とBは、次の事項を相互に確認する。
 a 本件遺言により、BがAの全遺産を相続したこと
 b 請求人が、平成19年12月××日到達の意思表示により、Bに対し本件遺留分減殺請求をしたこと
 c 請求人は、本件遺留分減殺請求により、Bから価額弁償を受けるまでの間、Aの遺産のうち0.050481899682の割合に相当する持分(以下「本件請求人持分」という)を有すること
 d Aの遺産に対する本件請求人持分の価額が、別表2(略)のとおり、××××であること
 e Bが請求人に対し支払を求めることができる債権額(相続財産に含まれるAの請求人に対する貸金債権等)が××××であること
 f Bは、上記dから同eを控除した残額××××××を請求人に支払えば、Aの遺産に対する請求人持分の返還を免れること
(ロ)Bは、請求人に対し、次の金員の支払義務を負うことを認める。
 a 上記(イ)のfの××××
 b 本件マンションの平成19年12月××日から平成25年7月××日までに生じた果実の額(別表3(略)のとおり、売上高たる収受賃料から宣伝広告費、水道光熱費、消耗品費、支払保険料、修繕費、公租公課及び雑費を控除した額)である××××に、本件請求人持分を乗じた××××(以下「本件金員」という)
(ハ)Bは、請求人に対し、平成25年7月××日限り、上記(ロ)の各金員の合計×××××××(以下「本件合計金員」という)を支払う。
(ニ)Bが本件合計金員を遅滞なく支払ったときは、Aの遺産に対する本件請求人持分及びBの請求人に対する債権はいずれも消滅するものとし、請求人及びBはそれらの権利主張をしない。
(ホ)請求人は、その余の請求を放棄する。
(へ)請求人とBは、請求人・B間には、本件に関し、本件和解条項で定めたもののほか何ら債権債務関係が存在しないことを相互に確認する。
(ト)訴訟費用は各自の負担とする。
チ Bは、平成25年7月××日、請求人に対し、本件合計金員を支払った。
リ 原処分庁は、平成26年3月××日付で、請求人に対し、本件金員が請求人の平成20年分、平成22年分、平成23年分及び平成24年分(以下併せて「本件各年分」という)の不動産所得に該当するとして、平成20年分については所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を、平成22年分ないし平成24年分については所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下併せて「本件各更正処分等」という)をした。
ヌ 請求人につき、平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る還付金××××が発生した。
  原処分庁は、平成26年3月××日付で、上記還付金を上記リの平成20年分の所得税の決定処分により納付すべきこととなった税額に充当し(以下「本件充当処分」という)、その旨を請求人に通知した。
ル 請求人は、平成26年5月×日、本件各更正処分等及び本件充当処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月×日付で棄却の異議決定をした。
ヲ 請求人は、平成26年8月×日、異議決定を経た後の本件各更正処分等及び本件充当処分に不服があるとして、審査請求をした。

争点および主張  本件金員は本件各年分の不動産所得に該当するか否か(争点1)。本件充当処分は適法であるか否か(争点2)。当事者の主張は、のとおり。

【表1】本件金員は本件各年分の不動産所得に該当するか否か(争点1)。
原処分庁 請 求 人
 以下のとおり、本件金員は本件各年分の不動産所得に該当する。
イ 請求人は、本件果実返還請求事件において、民法第1036条に基づき本件マンションの賃料収入の支払を求め、本件和解調書には、Bから民法第1036条に基づき請求人に返還すべき額として本件金員が記載されている。
  そして、本件金員は、本件遺留分減殺請求の時からの本件マンションの果実の額に本件請求人持分を乗じて計算されている。
ロ 請求人は、本件遺留分減殺請求事件において、本件マンションの賃料が相続財産でない旨主張している。
ハ 本件和解による価額弁償の結果、Aの遺産に対する請求人の本件請求人持分はBに帰属するものとされたが、これは、本件遺留分減殺請求の時から価額弁償されるまでの間、請求人が本件請求人持分を有していることを否定するものではない。
  したがって、請求人が本件マンションについて本件請求人持分を有している間の賃料債権は、請求人が単独債権として確定的に取得していることから、本件各年分の納税義務の成立の時に、本件マンションの果実に、本件遺留分減殺請求事件において主張した持分8分の1を乗じた部分に相当する所得金額に納税義務を負うこととなるが、原処分庁が本件各年分の所得税の確定申告書又は修正申告書の提出を勧奨した時点において、本件和解が既に成立していたことから、上記の持分8分の1に代えて、本件請求人持分を乗じて不動産所得の金額を計算したことは正当である。
 以下のとおり、本件金員は不動産所得に該当しない。本件金員は、本件遺留分減殺請求に基づき取得したものであるから、相続税の対象となる。
イ 請求人は、裁判所の和解勧告に従って和解金を受け取ったものである。内金請求やBが提出した賃料表は、和解金算出のためのものである。
ロ 相続開始後の賃料は理論的には相続財産には当たらないが、遺産分割協議や遺産分割調停においては、遺産として扱われており、遺留分減殺請求においても同様に扱われるべきである。
ハ 賃料債権は、賃貸人(B)と賃借人との間において成立しているもので、所有者でも賃貸人でもない請求人との間で成立することはなく、判決によって、遺留分減殺請求が認容された場合、所有権若しくは共有持分が認められ、判決が確定したときに初めて遺留分権利者はそれ以後の賃料について債権を取得する。それまでにBが受領した本件マンションの賃料は金銭となっているので、不当利得として請求することになる。

【表2】本件充当処分は適法であるか否か(争点2)。
原処分庁 請 求 人
 本件充当処分自体は、法令に沿って適法に行われている。
 また、課税処分と充当処分とは、それぞれ別個の法律効果の発生を目的とする独立の行為であって、一つの法律効果の発生を目指す一連の手続を構成するものではないので、前者の違法は後者に承継されない。
 したがって、請求人の主張するような課税処分の違法又は不当を理由として本件充当処分の取消しを求めることはできない。
 本件金員が不動産所得と認められない以上、当然の帰結として、本件充当処分も違法である。

審判所の判断
(1)争点1(本件金員は本件各年分の不動産所得に該当するか否か)について
 イ 法令等解釈
(イ)遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺書は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきであり、そのような遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡時に直ちに相続により当該相続人に承継されるものと解される。
(ロ)所得税法第36条第1項は、収入金額の計算について「収入すべき金額」によると規定していることから考えると、同項は、現実の収入がなくても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして当該権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという権利確定主義を採用しているものと解されるところ、所得税基本通達36-13は、一時所得の総収入金額の収入すべき時期は、その支払を受けた日によるものと定めている。これは、一時所得が臨時的・偶発的な所得で、しかも、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものとされているので、一時所得の収入金額は、その支払があって初めて収入のあったことを認識する場合が多いものと考えられることを理由とするものであり、当審判所においても、上記通達の取扱いは相当であると認められる。
 ロ 認定事実  請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件遺留分減殺請求訴訟において、Bは、相続財産の一部を否認するとともに、価額弁償の抗弁を主張した上、これによって生じる請求人の価額弁償請求権に対しては、BがAから相続した請求人に対する貸金債権等(以下「本件反対債権」という)をもって対当額で相殺する旨主張した。
  これに対し、請求人は、相続財産の現時点の評価額や本件反対債権の存在を争った。
  そのため、本件遺留分減殺請求訴訟においては、相続財産の範囲、相続財産の現時点の評価額、本件反対債権の存否等が争点となった。
(ロ)受訴裁判所(以下単に「裁判所」という)は、本件遺留分減殺請求訴訟の平成24年6月××日の弁論準備手続期日において、「遺留分侵害額(基準時=相続時)・価額賠償額(基準時=直近)の整理表」と題する書面(以下「本件整理表」という)を、請求人及びBの双方に提示した。
  本件整理表には、相続財産の範囲、相続財産の相続開始時点の評価額、請求人の遺留分侵害額、相続財産の現時点の評価額に関する双方の主張等が記載されており、これらを前提に、請求人の遺留分侵害額は65,309,059円、遺留分侵害額の相続財産全体に対する割合は0.0504411833と記載され、請求人が主張する相続財産の現時点の評価額を前提とすると、そこから本件反対債権を差し引いた後の価額弁償額は6,968,535円である旨が記載されている。
(ハ)請求人は、本件整理表に対し、平成24年8月×日付準備書面により、本件整理表記載の相続財産に、本件遺留分減殺請求以後の本件マンションの賃料収入の8分の1を追加することなどを求める旨の意見を述べた。
(ニ)上記(4)基礎事実のへのとおり、請求人は、××××××、本件果実返還請求訴訟を提起したが、Bは、本件マンションの賃料収入を得るために支出した必要経費を返還額から差し引くべきである、請求人は本件遺留分減殺請求によっても本件マンションに対して5%の持分しか取得しない、本件反対債権をもって対当額で相殺するなどと主張して、請求人の請求を争った。
(ホ)裁判所は、本件訴訟の平成25年1月××日又は同年3月××日の弁論準備手続期日において、請求人及びBの双方に対し、Bが請求人に××××を支払うとの和解案(以下「本件和解案」という)を、口頭で提示した。
  請求人は、その頃、Bは、同年5月又は6月頃、それぞれ、本件和解案を受諾する旨を裁判所に伝えた。
(へ)その後、裁判所と請求人及びBの間で和解条項の調整が行われた上、上記(4)基礎事実のトのとおり、××××××、本件和解が成立した。
 ハ 判断 (イ)本件合計金員の法的性質について
 上記の(イ)及び(ニ)のとおり、本件訴訟は、相続財産の範囲、相続財産の評価額、ひいては、請求人の遺留分の価額、更に本件反対債権の存否など争点が多岐にわたるとともに、当事者の主張が先鋭に対立しており、審理期間も、裁判所から本件和解案が提示された時点において既に1年半以上に及んでいた。
 そのような中で、裁判所から本件和解案が提示されたものであるが、上記の(イ)ないし(へ)で認定した本件和解の成立に至るまでの経緯に照らすと、本件合計金員(×××××××)は、裁判所から提示され、当事者においても受諾した本件和解案の金額(××××××)にできるだけ近い金額となるように、上記ロの(へ)のとおり、和解条項の調整を行う中で、名目的な積算の内訳を付して算出した金額(なお、そのような積算の内訳を付することについては、請求人又はBのいずれかからそのような要望があったものと考えられる)であることがうかがわれる。
 そうであるとすれば、上記(4)基礎事実のトの(イ)のc(請求人が本件遺留分減殺請求によりBから価額弁償を受けるまでの間本件請求人持分を有すること)、同d(本件請求人持分の価額)、同e(本件反対債権の額)、同f(Bが同dの価額から同eの額を控除した残額の金額を請求人に支払えば本件請求人持分の返還を免れること)及び同(ロ)のb(本件金員の算定方法、金額)等の本件和解の和解条項は、いずれも、Bから請求人に支払われる本件合計金員に積算の内訳を付するために、名目上掲げられたにすぎないものと解するのが相当である。
 そうすると、本件合計金員は、請求人とBとの間に存する本件相続に関する一切の紛争を解決するための、和解金ないし解決金の性質を有するものであると認めるのが相当である。
(ロ)本件マンション及びその質料債権の帰属について
 上記(4)基礎事実のイのとおり、Aは、その所有する財産の全部を包括してBに相続させる旨の本件遺言をしており、その趣旨を遺贈と解すべき特段の事情等はうかがわれないことからすると、上記の(イ)のとおり、本件マンションを含むAの相続財産は、Aが死亡した××××××に、本件相続によりBに承継されたものと認められる。
 なお、その後、請求人は、本件遺留分減殺請求を行っている。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件訴訟は争点が多岐にわたり当事者の主張が先鋭に対立し、本件和解では、請求人とBとの間に存する本件相続に関する一切の紛争を解決するための和解金ないし解決金の性質を有するものとして、Bが請求人に本件合計金員を支払うこととされ、上記(4)基礎事実のトの(ハ)、(ニ)、同チのとおり、Bが本件合計金員を平成25年7月××日の期限に遅滞なく支払ったときは、請求人は本件請求人持分を主張せず、Bは本件反対債権を主張しない旨合意され、実際に上記の期限に本件合計金員が支払われたことに照らせば、結局、本件遺留分減殺請求によって、上記の本件遺言及び本件相続による本件マンションの承継の効力は左右されることはなく、請求人は本件マンションの持分を有したことはなく、民法第1036条所定の果実として本件マンションの賃料債権を取得することもなかったものと見るのが相当である。
(ハ)本件金員の所得区分等について
 a 所得区分について
(a)上記(イ)のとおり、本件合計金員の一部である本件金員は、本件マンションの賃料収入に係る果実返還金ではなく、請求人とBとの間に存する本件相続に関する一切の紛争を解決するための和解金ないし解決金の性質を有するものと認められ、上記(ロ)のとおり、請求人が民法第1036条所定の果実として本件マンションの賃料債権を取得することはなかったことにも照らすと、本件金員を不動産等の貸付けによる所得と見ることはできず、請求人の本件各年分の不動産所得と認めることはできない。
(b)請求人は、本件金員は、本件遺留分減殺請求に基づき取得したものであるから、相続財産に当たり、相続税の対象となる旨主張するが、上記(イ)のとおり、本件金員の法的性質は、請求人とBとの間に存する本件相続に関する一切の紛争を解決するための和解金ないし解決金であって、本件遺留分減殺請求に対する価額弁償金や民法第1036条に基づく果実返還金として支払われたものではないから、これを相続財産と見ることはできない。
(c)なお、本件金員が、Bから請求人に対する贈与ないしみなし贈与に当たるものでもない。
(d)上記(a)のとおり、本件金員は、不動産所得ではなく、もとより利子所得、配当所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得に当たるものでもなく、臨時的・偶発的な所得で、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであるから、これを一時所得と認めるのが相当である。
 b 所得の帰属年分について
  上記の(ロ)のとおり、一時所得の総収入金額の収入すべき時期は、その支払を受けた日によるところ、上記(4)基礎事実のチのとおり、本件金員は、平成25年7月××日にBから請求人に支払われたものであるから、これを平成25年分の一時所得と認めるのが相当である。
(ニ)小括
 以上によれば、本件各更正処分等は、所得区分及び帰属年分を誤っていることから、違法であり、その全部を取り消すべきである。
(2)争点2(本件充当処分は適法であるか否か)について  請求人は、本件金員が不動産所得と認められない以上、当然の帰結として、本件充当処分も違法である旨主張する。
 しかしながら、課税処分は、国税の納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させることを目的とする処分であるのに対し、充当処分は、納税者に納付すべき国税と還付金等が共に存在している場合に、税務署長等が当該還付金等を一方的に当該国税に充当し、還付金等の額の納付があったのと同様の効果を生じさせる処分であるから、両者はそれぞれ別個の効果を目的とする行政処分であって、違法性は承継されず、先行する課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、当該課税処分が充当処分の時点において違法を理由として権限ある機関によって取り消されていた場合でない限り、先行する課税処分の違法を理由として充当処分の取消しを求めることはできないものと解するのが相当である。
 このとおり、課税処分と充当処分との間には、違法性の承継が認められないので、本件各更正処分等と本件充当処分との間には、違法性の承継は認められない。
 そして、当審判所の調査の結果によれば、原処分庁が請求人に対して行った本件各更正処分等に重大かつ明白な瑕疵があるとは認められず、また、本件充当処分がされた当時(平成26年3月××日)、本件各更正処分等が違法を理由として権限ある機関によって取り消されていた事実も認められない。
 したがって、本件充当処分は適法である。
(3)その他  原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。よって、主文のとおり裁決する。

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