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解説記事2016年01月11日 【ニュース特集】 裁決事例から見る処分理由の記載内容(2016年1月11日号・№625)

ニュース特集
具体的な理由はどこまで必要か!?
裁決事例から見る処分理由の記載内容

 平成23年度税制改正により、国税通則法の改正が行われ、税務署長等が、更正又は決定などの不利益処分や納税者からの申請を拒否する処分を行う場合には、その通知書に処分の理由を記載することになった。平成25年1月1日からすでに適用されているが、通知書に記載された処分の理由に不備があるか否かで争われる事例も多い。本特集では、国税不服審判所から容認された処分理由の記載内容について、3つの裁決事例をもとに実例を紹介する。

処分の理由は原因となる事実関係の内容等を総合して記載
 国税通則法の改正により、税務署長等が不利益処分等を行う際には、その通知書に処分の理由を記載することが必要になっている。行政手続法14条1項において、不利益処分をする場合には、同時にその理由を名宛人に示さなければならない旨が規定されているからだ。
 この点、審判所が裁決事例で示した法令解釈によれば、「名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨」であると説明されている。
 ただし、具体的に何を記載すればよいかは定かではない。審判所は、「当該規定に基づきどの程度の理由を提示すべきかは、かかる趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準が存する場合にはその存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべき」としている。
納税者は具体的理由の記載がないと主張  裁決事例を見る限り、処分理由の記載内容が争点となるケースでは、請求人(納税者)側が具体的な理由などの記載がされていないといった点を主張することが多いようだ。

裁決事例1~いかなる事実関係でいかなる法規を適用したか
 例えば、拡売費が立替金の弁済として支払われたものか、あるいは仕入割戻しとして収益に該当するかが争点となった裁決事例(関裁(法・諸)平26第34号)では、請求人は「各通知書には本件拡売費が仕入割戻しである旨の具体的な理由が記載されていないから、各通知書の記載内容から拡売費が仕入割戻しに該当する理由を了知できない」と主張。
 一方、原処分庁は、各通知書(表1参照)には、本件拡売費が請求人に対する売掛金と相殺することによって支払われる拡売費であることなどが記載されていることから、請求人は本件拡売費が仕入割戻しに該当すると判断されたと了知できるとして争われていた。

【表1】消費税等各更正処分に係る通知書に記載された処分の理由の要旨(仕入割戻しに係る部分)
 貴社の消費税及び地方消費税の申告書について、調査の結果、課税標準又は税額等の計算に誤りが認められますから、次のとおり、申告書に記載された課税標準又は税額等を更正しました。
2 控除対象仕入税額
(5)貴社は、×××(旧×××以下「×××」といいます。)から、×××が有する貴社に対する売掛金と相殺することによって支払われる拡売費又は在庫切れ対策(以下「拡売費等」といいます。)について記載した「相殺確認書」を受領し、当該「相殺確認書」記載の拡売費等のうち、次表の「立替金相殺額」について貴社から×××に対する立替金と相殺する処理をしています。
  しかしながら、当該拡売費等は、×××から貴社に対する仕入割戻しとして支払われるものであるため、消費税法第32条第1項第1号《仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定により、当課税期間の課税仕入れ等の税額の合計額から、次表の当課税期間における仕入割戻し金額に係る消費税額の合計額を控除します。
(表省略)

具体的に了知できる程度の理由が必要  審判所は、消費税等が課せられる根拠となる具体的な事実関係を知ることができなければ、処分の適否を争う的確な手掛かりを得られないことになると指摘。通知書には、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたのかを具体的に了知できる程度の理由が記載されなくてはならないとした。
 本件でいえば、通知書には、請求人の消費税等の調査の結果、課税標準又は税額等の計算に誤りがあると認められるため、課税標準又は税額等を更正した旨が記載された上で、「控除対象仕入税額」を掲げ、請求人が、①×××から各相殺確認書を受領し、拡売費について×××に対する立替金と相殺する処理をしていたこと、及び、②拡売費は×××から請求人に対する仕入割戻しとして支払われるものであるため、消費税法32条1項1号の規定により、当課税期間の課税仕入れ等の税額の合計額から当課税期間における仕入割戻し金額に係る消費税額の合計額を控除した旨が記載されていることからすれば、請求人は、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して消費税等各更正処分がされたのかを具体的に了知できるとした。

裁決事例2~処分の原因となった事実及び根拠法令を示す
 次に紹介する裁決事例も請求人が具体的な理由の記載がないことを不服として争われたものだ(関裁(諸)平26第33号)。
 請求人は通知書(表2参照)に記載された理由は法律の文言を記載しているだけにすぎないと主張。①請求人が行政指導と誤認せざるを得ない文章である本件文書に基づいて行われた本件面接が、面接終了の時点に至り、調査であることを必要とするに至った具体的な理由、②合法的に質問検査権が行使されたことを証する説明、③本件期限後申告書が、請求人が贈与税の決定があるべきことを予知して提出された申告書であるとされる理由、④本件面接により新たに収集した資料等が、決定処分に必要な課税要件事実を証するための資料を満たしていることの説明について記載がないとしていた。
処分原因の事実及び根拠法令あり  この点、審判所は、通知書(表2参照)に記載された理由については、本件賦課決定処分の原因となった事実及び根拠法令を具体的に示していることから、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がなされたのかを、記載自体から了知し得るものであると認められると判断。請求人が記載を要すると主張する理由等の記載がなくても、行政庁の恣意的判断の抑止及び不服申立ての便宜という理由の提示の目的は十分に達せられているとした。

【表2】賦課決定通知書の要旨
1 この通知により納付すべき又は減少する加算税の額
 納付すべき無申告加算税×××
2 加算税の計算
 ① 加算税の基礎となる税額×××
 ② ①のうち通則法第66条第2項の規定による加算税の基礎となる税額
 ③ ①に対する加算税の割合100分の15
 ④ ②に対する加算税の割合100分の5
 ⑤ 加算税の額(①×③と②×④の合計額)×××
3 この通知に係る処分の理由
 あなたが平成25年10月31日に提出した平成24年分の贈与税の期限後申告書により納付すべきこととなる贈与税額×××に、通則法第66条の規定に基づき計算した無申告加算税×××を賦課決定します。
 なお、あなたが提出した当該期限後申告書は、調査の結果に基づくものであるため、決定を予知してされたものでない期限後申告には該当せず、また、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとは認められません。

裁決事例3~請求人の主張が認められない理由までは必要なし
 最後に紹介する裁決事例は、払戻金に関する所得が請求人らにいずれに帰属するかが争点となったもの(大裁(所)平26第47号)。
 請求人らは、原処分庁がいかなる理由や根拠に基づいて本件払戻金に関する所得が請求人らに帰属すると判断したか、請求人らの主張はなぜ認められないのかという点が示されなければ、争点に関する原処分庁の検討内容が分からず、不服申立てを行うに当たって不便が生じるなどと主張した。
 審判所は、本件通知書には、払戻金を特定の上、払戻請求権の譲受け及び権利行使の主体が請求人らであるから、払戻金が請求人らに帰属することについての具体的な記載をしていることからすれば、通知書に記載された程度の理由であっても、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足すると判断している。

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