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解説記事2016年01月18日 【未公開裁決事例紹介】 納税義務者への事前通知、取引先への照会には不要(2016年1月18日号・№626)

未公開裁決事例紹介
納税義務者への事前通知、取引先への照会には不要
審判所、実地調査は納税義務者に限定

○納税義務者等の取引先等に対する照会を行うに当たり、請求人に事前通知をしなかったことが国税通則法違反になるか否かで争われた事案。国税不服審判所は、国税通則法の「実地の調査」とは「納税義務者」に対するものに限定されるため、原処分担当者が、納税義務者等の取引先等に照会をするに当たり、請求人に対し事前通知をしなかったことは違法とはならないと判断された事例(平成27年2月12日、棄却)。

事  実
(1)事案の概要
 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)がした所得税の確定申告について、請求人が医療費控除の対象とした金額の一部は当該控除の対象とはならないなどとして所得税の更正処分をしたのに対し、請求人が、当該更正処分の調査手続に違法があるなどとして、当該更正処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯(略)
(3)関係法令の要旨(略)
(4)基礎事実
 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
 イ 本件確定申告書の提出状況等  請求人は、平成25年3月6日、東京都新宿区西新宿六丁目5番1号新宿アイランド地下1階アクアプラザに開設されたパーソナルコンピューターによる申告書作成会場である「パソコンによる確定申告センター」(以下「本件確定申告センター」という。)において、本件確定申告書を提出し、「確定申告書等の受付票兼預かり票(本人控用)」の交付を受けた。
 本件確定申告書は、本件確定申告センターから××に宛てて送付され、原処分庁が平成25年3月8日に収受した。
 ロ 請求人が本件確定申告において医療費控除の額として申告した内容及び原処分庁が本件更正処分の前にした照会等 (イ)請求人は、本件確定申告において、医療費控除の額がある旨申告をしている(別表1(略)の「確定申告」欄の「医療費控除の額」の欄)ところ、当該控除の対象となる医療費として申告したもののうちには、請求人が、××に対し、請求人の母である××(以下「請求人母」という。)に係る小規模多機能型居宅介護サービスの対価として支払った金額が含まれていた。
(ロ)原処分庁の××に所属する××(以下「原処分担当者」という。)は、本件更正処分に先立ち、××に対し、××と請求人母との間の取引金額等について、照会をした。
 ハ 本件更正処分に係る更正通知書の記載状況 (イ)本件更正処分に係る更正通知書(以下「本件更正通知書」という。)の1頁目の上部には、「××」と記載されるとともに、その右横に「××之印」との印影が黒色で印刷されており、また、1頁目及び2頁目の各下部並びに2頁目から3頁目にかけては、上記印刷表示に係る印影とは異なる「××之印」との印影の訂正印及び契印が朱肉を用いて押なつされている。
(ロ)本件更正通知書の1頁目の表の「差引納付すべき税額又は減少(△印)する税額」欄には、「更正前の額」が「××」、「更正後の額」が「××」、「増減(△印)差額」が「××」と記載されており、また、同表の下には、「納付すべき税額は、平成25年9月30日までに日本銀行(本店、支店、代理店及び歳入代理店(郵便局を含む。))又は当税務署へ納付してください。」との文言(以下「本件記載事項」という。)が記載されている。
 ニ 請求人に対する還付の状況  原処分庁は、本件更正処分時において、本件確定申告書に記載された源泉徴収による所得税の還付金の額につき、請求人へ還付をしていなかった。

主  張  当事者の主張は表1・2のとおり。
【表1】争点1 (本件更正処分は、通則法第24条に規定する「調査」を欠く違法な処分であるか否か。)
原処分庁 請 求 人
 次のとおり、本件更正処分に係る調査手続は、通則法第74条の9に違反するものではなく、本件更正処分は、適法な処分である。
 通則法第74条の9第3項第1号は、同条第1項に規定する「納税義務者」について、同法第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》第1項第1号イに掲げる「所得税の納税義務がある者」を含む旨を規定しているが、同号ハに掲げる「所得税の納税義務がある者から金銭を受ける権利があったと認められる者」を含むとは規定していない。そして、通則法第74条の9第1項の規定ぶりからすると、同項に規定する「実地の調査」とは、同条第3項第1号に規定する「納税義務者」に対する質問検査等のみを指すものである。したがって、税務署の当該職員が、通則法第74条の2第1項第1号ハに掲げる「所得税の納税義務がある者から金銭を受ける権利があったと認められる者」に対し、同項の規定に基づく質問検査等を行う場合には、納税義務者に対して同法第74条の9第1項に規定する事前の通知は要しない。
 本件についてみると、通則法第74条の2第1項第1号イに掲げる「所得税の納税義務がある者」とは請求人を指し、同号ハに掲げる「所得税の納税義務がある者から金銭を受ける権利があったと認められる者」とは××を指すと認められるから、原処分担当者が××に対して照会を行うに当たり、請求人に事前に通知をしなかったことは、同法第74条の9に違反するものではなく、本件更正処分は、適法な処分である。
 次のとおり、本件更正処分に係る調査手続は、通則法第74条の9に違反するものであり、本件更正処分は、違法な処分である。
 通則法第74条の9第3項第1号に規定する「納税義務者」には、同法第74条の2第1項第1号ハに掲げる「所得税の納税義務がある者から金銭を受ける権利があったと認められる者」は含まれないが、納税義務者のプライバシーを守るためには、同法第74条の9第1項に規定する事前の通知を要する「実地の調査」には、同条第3項第1号に規定する「納税義務者」に対する質問検査等だけではなく、同法第74条の2第1項第1号ハに掲げる「所得税の納税義務がある者から金銭を受ける権利があったと認められる者」に対する全ての接触が含まれると解すべきである。したがって、税務署の当該職員が、通則法第74条の2第1項第1号ハに掲げる「所得税の納税義務がある者から金銭を受ける権利があったと認められる者」に対し、同項の規定に基づく質問検査等を行う場合には、納税義務者に対して同法第74条の9第1項に規定する事前の通知が義務付けられていると解すべきである。
 本件についてみると、原処分担当者が××に対して照会を行うに当たり、請求人に事前に通知をしなかったことは、通則法第74条の9に違反するものであり、加えて、個人情報の保護に関する法律の立法精神にも反するものであるから、本件更正処分は、違法な処分である。

【表2】争点2 (本件更正処分は、瑕疵のある更正通知書を送達してされた違法な処分であるか否か。)
原処分庁 請 求 人
 次のとおり、本件更正通知書の形式及び記載事項に誤りはない。したがって、本件更正処分は、適法な処分である。
A 本件更正通知書の形式について
 本件更正通知書には、官印の押なつに代えて、官印の印影が印刷されているところ、更正の手続を規定している通則法第24条及び第28条(更正又は決定の手続)は、朱印の押印について何ら規定しておらず、他に朱印の押印がないことをもって更正の有効性を否定する法律上の規定はなく、更正通知書に朱印の押印があるか否かが更正処分の効力の発生に影響を及ぼすものではない。
B 本件記載事項について
 本件更正処分は、請求人の還付金の額に相当する税額を減少させるものであるところ、その減少する部分の税額である××は、通則法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項第2号の規定により、更正通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日までに納付しなければならない。また、納付を求めた還付金の額に相当する税額を減少させる部分の税額について、納税者に実際に還付されていない部分の税額を除く旨を定めた法令の規定もない。したがって、本件更正通知書において、還付金の額に相当する税額を減少させる部分の税額である××について納付を求める旨を記載したことに、誤りはない。
 次のとおり、本件更正通知書の形式及び記載事項には誤りがある。したがって、本件更正処分は、違法な処分である。
A 本件更正通知書の形式について
 本件更正通知書には、①原処分庁の氏名の横に「××」との印影があるものの、印刷されたものであって朱印の押印によるものではない上、②当該印刷に係る印影と、割り印や訂正印の朱印の押印に係る「××之印」の印影は異なっており、一通の更正通知書に異なる印影が用いられている。このように、本件更正通知書は、その形式に誤りがあるから、正式な更正通知書とは認められない。
B 本件記載事項について
 請求人は、本件更正処分時において、本件確定申告書に基づく所得税の還付金の額を受領していなかったのであるから、本件更正通知書には、単に、還付金の額に相当する税額が減額される旨を記載すれば足りる。したがって、本件更正通知書において、還付金の額に相当する税額を減少させる部分の税額である××について納付を求める旨が記載されているのは、明らかな記載誤りである。

争点および判断
(1)争点1(本件更正処分は、通則法第24条に規定する「調査」を欠く違法な処分であるか否か。具体的には、本件更正処分に係る調査手続は、通則法第74条の9に違反するか否か。)について
(イ)法令解釈
 通則法第74条の9第1項は、税務署長は、税務署の当該職員に納税義務者に対し実地の調査において同法第74条の2の規定による質問検査等を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者に対し、その旨及び同項各号に掲げる事項(質問検査等を行う実地の調査を開始する日時(第1号)、当該調査を行う場所(第2号)及び当該調査の目的(第3号)等)を通知(以下「事前通知」という。)するものとする旨規定している。
 そして、通則法第74条の9第3項第1号は、同条第1項に規定する「納税義務者」の意義について規定しているところ、同法第74条の2第1項第1号イに掲げる所得税法の規定による所得税の納税義務がある者等(以下「所得税の納税義務者等」という。)については、これに該当する旨規定しているが、同号ハに掲げる所得税の納税義務者等から金銭の給付を受ける権利があったと認められる者等(以下「納税義務者等の取引先等」という。)については、これに該当するとは規定していない。
 以上からすると、通則法第74条の9第1項の規定の文理上、所得税に関する調査について、税務署長が、税務署の当該職員に、所得税の納税義務者等に対し実地の調査において同法第74条の2の規定による質問検査等を行わせる場合には、当該所得税の納税義務者等に対し事前通知をする必要があるが、納税義務者等の取引先等に対し実地の調査において同条の規定による質問検査等を行わせる場合には、事前通知をする必要がないことは明らかというべきである。
(ロ)認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
 A 請求人母は、平成23年12月1日から平成24年5月14日までの間、××から小規模多機能型居宅介護サービスの提供を受けていたところ、請求人は、平成24年中に、××に対し、当該介護サービスの対価として、別表2(略)の金額(以下「本件対価の額」という。)を支払った。
 B 原処分担当者は、××に対し、平成25年7月30日付及び同年8月15日付の文書を送付し、また、同月22日にはケアマネージャー宛の電話をかけて、××と請求人母との間の取引金額等について照会(以下、これらの照会を併せて「本件照会」という。)をしたが、本件照会をするに当たり、請求人に対し事前通知はしなかった。
(ハ)当てはめ
 ××は、平成24年中に、請求人母に対する小規模多機能型居宅介護サービスの提供の対価として、請求人から金銭の支払を受けた者であるから、所得税の納税義務者等から金銭の給付を受ける権利があったと認められる者であり、通則法第74条の2第1項第1号ハの納税義務者等の取引先等に該当する者である。したがって、××は、通則法第74条の9第1項に規定する「納税義務者」には該当しない。
 そうすると、原処分担当者が、本件照会をするに当たり請求人に対し事前通知をしなかったことが、通則法第74条の9に違反することはない。
 したがって、本件更正処分は、適法な調査手続に基づいて行われたものであるから、通則法第24条に規定する「調査」によりされたものである。
(ニ)請求人の主張について
 請求人は、通則法第74条の9第1項が規定する事前通知を必要とする「実地の調査」には、納税義務者等の取引先等に対する全ての接触が含まれると解すべきであり、原処分担当者が××に対する照会(本件照会)を行うに当たり、請求人に対し事前通知をしなかったことが、同条に違反し、加えて、個人情報の保護に関する法律の立法精神にも反する旨主張する。
 しかしながら、通則法第74条の9第1項が「当該職員に納税義務者に対し実地の調査において…質問、検査又は提示若しくは提出の要求を行わせる場合には…」と規定していることからすると、同項の「実地の調査」とは、同項の「納税義務者」に対するものに限定されることは明らかであり、同項の「実地の調査」には納税義務者等の取引先等に対する全ての接触が含まれ、請求人に対する事前通知を欠く本件照会は同条に違反するとの請求人の主張は、同項の文言に反するものであるから、採用することはできない。
 なお、本件照会は、通則法第74条の2第1項の規定に基づき適法に行われたものと認められ、個人情報の保護に関する法律の立法精神に反するものでもない。
 以上のとおりであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(2)争点2(本件更正処分は、瑕疵のある更正通知書を送達してされた違法な処分であるか否か。具体的には、本件更正通知書の形式及び記載事項に誤りがあるか否か。)について (イ)法令解釈
 A 本件更正通知書の形式について
(A)通則法第24条は、税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。
  そして、通則法第28条第1項は、更正は、税務署長が更正通知書を送達して行う旨規定しているところ、同条第2項前段は、更正通知書には同項各号に掲げる事項を記載しなければならない旨規定している。
(B)ところで、通則法第28条第2項には、更正通知書に税務署長が押印をしなければならない旨は規定されておらず、他にその旨を定めた法令の規定もないから、法は、更正通知書に税務署長が押印をすることを要求しているものではないと解される(このことは、通則法(平成26年法律第69号による改正前のもの。)第84条《決定の手続等》4項が異議決定書には異議審理庁が記名押印をしなければならない旨を、また、同法第101条《異議申立てに関する規定の準用等》第1項が裁決書には国税不服審判所長が記名押印をしなければならない旨を、それぞれ規定していることと対比してみても、明らかである。)。
  そうすると、更正通知書については、租税法規等が規定する必要的記載事項が記載されていること及び更正通知書に表示された更正処分をすることができる適法な権限を有する税務署長の意思に基づき作成されたものであることが認められれば、適法かつ有効なものというべきである。
 B 本件記載事項について
(A)申告納税方式による国税については、納税義務が成立すると、まず第一次的に納税者が申告を行い、その申告により納付すべき税額等が確定し、その申告による税額等に過不足があるときに、第二次的に税務署長が通則法第24条の規定による更正を行って、納付すべき税額等を確定させることになる。
  そして、通則法第28条第2項第3号ロは、更正通知書には、その更正前の還付金の額に相当する税額がその更正により減少するときは、その減少する部分の税額を記載しなければならない旨規定し、同法第35条第2項第2号は、更正通知書に記載された同法第28条第2項第3号ロに掲げる金額に相当する国税の納税者は、その国税を更正通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日までに国に納付しなければならない旨規定しているところ、これらの規定は、その還付金が現実に支払われたものであるかどうかによる区別はしていない。
(B)これらの規定からすれば、還付金に関する租税法規関係については、納税者の申告により国が納税者に対し還付金を還付すべき義務が発生するが、他方、その後に還付金の額に相当する税額を減少させる更正があった場合には、納税者は、その減少する還付金の額に相当する税額について、これを国に納付すべき義務が発生するものといえる。
  そして、納税者の当該納付義務は、現実に還付金を受領していたか否かによってその性質が変わるものではなく、国の納税者に対する還付金を還付すべき義務と共に併存し得るものであって、国が申告による還付金を還付する義務を履行する一方で、納税者が更正により減少する還付金の額に相当する税額を納付する義務を履行することが想定されているものと解される。
(ロ)認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
 A 本件更正通知書には、①通則法第28条第2項及び所得税法第154条《更正又は決定をすべき事項に関する特例》第2項が規定する本件更正処分の前後における請求人の総所得金額(通則法第28条第2項第1号及び第2号)、所得別の内訳(所得税法第154条第2項)、各所得控除の額(通則法第28条第2項第1号及び第2号)、還付金の額に相当する税額(通則法第28条第2項第1号及び第2号)並びに本件更正処分により減少する還付金の額に相当する税額(通則法第28条第2項第3号ロ)、②行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》が規定する本件更正処分の理由及び③行政不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)第57条《審査庁等の教示》第1項が規定する不服申立てに関する教示が記載されている。
 B 本件更正処分については、平成25年8月27日、税務署における決裁手続規程に基づき、決裁手続がとられた。
(ハ)当てはめ
 A 本件更正通知書の形式について
  本件更正通知書には、通則法第28条第2項、所得税法第154条第2項、行政手続法第14条及び行政不服審査法第57条第1項が規定する事項が記載されているから、本件更正通知書には租税法規等が規定する必要的記載事項の全てが記載されていることが認められる。
  また、本件更正通知書には原処分庁の官職及び氏名が記載されているところ、本件更正処分については、事前に所定の決裁手続がとられていることからすると、本件更正通知書は、請求人の納税地を所轄する税務署長として本件更正処分をすることができる適法な権限を有する原処分庁の意思に基づき作成されたものであることが認められる。
  したがって、本件更正通知書の形式に誤りは認められず、本件更正通知書は、適法かつ有効なものと認められる。
 B 本件記載事項について
  本件において、請求人は、本件更正処分により、減少する所得税の還付金の額に相当する税額を国に納付すべき義務を負ったものであり、また、原処分庁は、本件更正処分時において、上記還付金の額を含む本件確定申告書に記載された所得税の還付金の額を請求人に還付していなかったものであるから、本件更正処分時には、国の本件確定申告による所得税の還付金を請求人に還付すべき義務と、請求人の本件更正処分により減少する所得税の還付金の額に相当する税額を国に納付すべき義務は、併存していたものである。
  したがって、本件更正処分により減少する所得税の還付金の額に相当する税額××について納付を求める旨を記載した本件記載事項に、誤りはない。
 C 小括
  以上のとおり、本件更正通知書は、その形式及び記載事項に誤りはなく、また、適法な権限を有する原処分庁の意思に基づき作成されたものであることが認められるから、本件更正処分は、瑕疵のない本件更正通知書を送達してされたものである。
(ニ)請求人の主張について
 A 本件更正通知書の形式について
  請求人は、異なる印影が用いられている本件更正通知書は、その形式に誤りがある旨主張する。
  この点、確かに、本件更正通知書には、印刷表示された印影と押印された印影の二種類の印影があることが認められるが、法は、更正通知書に税務署長が押印をすることを要求しているものではないと解され、税務署長の押印が更正通知書の適法性又は有効性に影響を及ぼすものではない。
  そうすると、請求人の上記主張はその前提を欠くものといわざるを得ず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 B 本件記載事項について
  請求人は、本件更正処分時において本件確定申告書に基づく所得税の還付金の額を受領していなかったのであるから、本件記載事項は、明らかな記載誤りである旨主張する。
  しかしながら、上記(ハ)のBのとおり、本件更正処分時には、国の本件確定申告による所得税の還付金を請求人に還付すべき義務と、請求人の本件更正処分により減少する所得税の還付金の額に相当する税額を国に納付すべき義務は併存していたものであるから、本件記載事項に誤りはなく、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(3)争点3(本件更正処分は、信義則の法理に反する違法な処分であるか否か。)について(略)
(4)請求人のその他の主張について(略)
 4 本件更正処分について
 上記のとおり、①本件更正処分に係る調査手続は適法であり、②本件更正通知書に瑕疵はなく、③本件更正処分について信義則の法理は適用されない。そして、本件対価の額は医療費控除の対象とならず、また、請求人は、本件更正処分により医療費控除の対象とならないとされた本件対価の額以外の金額については争っていない。
 よって、これらのことを前提として、請求人の平成24年分の総所得金額及び納付すべき税額を算定すると、いずれも本件更正処分の額と同額になるから、本件更正処分は適法である。
5 その他(略)

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