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解説記事2016年04月04日 【未公開裁決事例紹介】 公共施設の負担必要なし、広大地通達の適用認めず(2016年4月4日号・№637)

未公開裁決事例紹介
公共施設の負担必要なし、広大地通達の適用認めず
道路等の設置なく戸建住宅用地として開発可

○相続により請求人が取得した本件土地が広大地通達(評価通達24-4)に定める広大地に該当するか否かが争われた事例(平成27年11月25日・金裁(諸)平27第4号)。
  道路を設置することで経済的に最も合理的な分譲ができると主張した請求人に対し審判所は、仮に道路設置により戸建住宅用地としての価値が上がったとしても、そのことが直ちに公共公益的施設用地の負担が必要か否かの判断に影響を与えるものではないと指摘。審判所は、本件土地は道路等の公共公益的施設用地の負担を要することなく戸建住宅の敷地として開発することが可能であるため、広大地通達に定める広大地に該当しないと判断している。

基礎事実等
(1)事案の概要
 本件は、審査請求人××、同××、同××及び同××(以下、これら4名を併せて「請求人ら」という。)が、相続財産である土地の一部について、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達をいい、以下「評価通達」という。)24-4《広大地の評価》に定める広大地に該当するとして相続税の申告をしたのに対し、原処分庁が、当該土地は広大地に当たらないとして相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったことから、請求人らが当該各処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯(略)
(3)関係法令等の要旨
イ 相続税法第22条《評価の原則》は、相続等により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
ロ 評価通達24-4(以下「広大地通達」という。)は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地(5,000㎡以下の地積のもの)で都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(評価通達22-2《大規模工場用地》に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものを除く。以下「広大地」という。)で路線価地域に所在するものの価額は、原則として、その広大地の面する路線の路線価に、評価通達15《奥行価格補正》から20-5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
(算式)
広大地補正率=0.6-0.05× 広大地の地積
1,000㎡
(注)「公共公益的施設用地」とは、都市計画法第4条第14項に規定する道路、公園等の公共施設の用に供される土地及び都市計画法施行令第27条に掲げる教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地(その他これらに準ずる施設で、開発行為の許可を受けるために必要とされる施設の用に供される土地を含む。)をいうものとする。
ハ 評価通達40-2《広大な市街地農地等の評価》は、市街地周辺農地が宅地であるとした場合において、広大地通達に定める広大地に該当するときは、その市街地周辺農地の価額は、広大地通達の定めに準じて評価する旨定めている。
(4)基礎事実
 イ 相続の状況
(イ)請求人らは、××(以下「本件相続開始日」という。)に死亡した××の相続(以下「本件相続」という。)に係る共同相続人である。
(ロ)請求人××は、本件相続により××、××、××、××、××、××、××、××、××及び××の10筆からなる地積2,282.63㎡の一団の土地(以下「本件土地」という。)を取得した。
 ロ 本件土地の状況  本件土地の本件相続開始日における状況は、次のとおりである。
(イ)本件土地は、JR××駅から南へ約1km直進した付近に位置した都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する用途地域(以下「用途地域」という。)の第一種住居地域で、建築基準法第53条《容積率》に規定する容積率(以下「容積率」という。)が200%、同法第54条《建ぺい率》に規定する建ぺい率(以下「建ぺい率」という。)が60%と定められた地域に所在している。
(ロ)本件土地は、北側の間口距離が38.06m、奥行距離の平均が59.97mで道路面より平均0.7m低いほぼ四角形の不整形な形状の土地であり、その四方が幅員約6mないし約8mの公道に面している。
(ハ)本件土地は、自用の一団の田として一体利用されており、評価通達36-3《市街地周辺農地の範囲》に定める市街地周辺農地に該当する。
(ニ)評価通達に基づき××国税局長が定めた平成23年分財産評価基準によれば、本件土地は、評価通達13《路線価方式》に定める路線価方式により評価することとされた地域で、評価通達14-2《地区》に定める普通住宅地区に所在し、同年分の本件土地に面する各路線に付された路線価は、それぞれ北側が40,000円、東側が38,000円、南側が36,000円及び西側が35,000円である。
  なお、本件土地は、本件相続開始日後の××に、図1(編注・今号25頁参照)のとおり、道路の設置を伴う開発及び分譲が行われている。
 ハ 請求人らの申告状況  請求人らは、別表1(編注・略)記載の本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の期限内申告及び各修正申告において、本件土地の価額を広大地通達の定めにより評価して申告した。

争点および主張  本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当するか否か。
 具体的には、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるか。当事者の主張は、のとおり。

【表】本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当するか否か
原処分庁 請 求 人
 本件土地は、次の理由により、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められないことから、広大地に該当しない。
(1)本件の場合、広大地通達でいう「その地域」は、本件土地が所在する××、××及び××のうち用途地域・建ぺい率・容積率をいずれも同じくする地域(以下「原処分庁主張地域」という。)が相当であり、原処分庁主張地域は、多くの戸建住宅用地として利用され、また、戸建住宅用地としての開発が進行している。
(2)そして、原処分庁主張地域において開発された戸建住宅用地の全区画数は66区画であるところ、①これらの区画の1区画当たりの平均地積は256.69㎡であること、②200㎡以上300㎡未満の地積の区画は43区画で全区画数の65.2%を占めていることから、原処分庁主張地域の標準的な宅地の地積は、200㎡以上300㎡未満であると認められる。
(3)上記(1)及び(2)を踏まえ、本件土地を原処分庁主張地域の「標準的な宅地の地積」に準じ、戸建住宅分譲用地として都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合、公道との接続状況及び地積等からすると、広大地通達の趣旨を鑑み、原処分庁主張地域を設定し、原処分庁主張地域の標準的使用に基づく宅地の平均的な地積などをしんしゃくして作成した開発想定図(図2(編注・今号25頁参照))のように分割を行えば、道路等の公共公益的施設用地の負担を必要としなくとも標準的な地積の宅地に分割することが可能であり、そのような土地についてまで、広大地通達を適用することを想定しているとは認められない。
 本件土地は、次の理由により、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められることから、広大地に該当する。
(1)本件の場合、広大地通達でいう「その地域の標準的な宅地の地積」は、相続開始時の経済情勢に影響を受けた標準的な地積の変化、標準的使用の変化、相続開始時の需要の傾向も勘案すべきであり、近年の販売面積の主流からすれば、本件土地の分譲完了直前図(図1)のように60坪(約198㎡)ないし70坪(約231㎡)程度であると認められる。
(2)そして、本件土地は、上記(1)を踏まえ判断すると、請求人らの開発想定図(図3((編注・今号25頁参照))又は分譲完了直前図(図1)のように公共公益的施設用地である道路を設けることによって、①全ての画地に利用度のメリットが付加され、②面積もバラエティに富み、③少々の不整形も道路による利用度でカバーされ、④道路により画地の向きも補正されることから、宅地としての財産価値が高まり、また、道路の設置による販売面積の不効率を完売による資金効率が上回るため、民間業者では当たり前の経済的に最も合理的な分譲ができるものとなっている。したがって、経済的合理性の判断は、分譲が販売である以上、購入者側のニーズや予算すなわち需要という経済的合理性に応えた上でのものでなければならない。
(3)一方、原処分庁は、開発してから10年を経過した周辺の分譲地の1区画当たりの平均地積である70坪台、80坪台を中心に間口が狭く奥行きが深い等不整形地がある開発想定図(図2)を作成し、それを基に公共公益的施設用地の負担は不要であると判断しているが、本件土地がある地域の標準的な所得からすれば、坪17万円ならば60坪台の区画がもっと必要となり、また、高所得者を狙うのであれば画地の価値を高めるような工夫が必要であるところ、原処分庁の開発想定図(図2)により分譲した場合、売れ残る画地が発生し、物理的合理性を追求するあまり経済的合理性を失い収益を悪化させる可能性が高く、広大地通達にある経済的に最も合理的な分譲とはいえない。


審判所の判断
(1)法令解釈等
 イ 評価通達の合理性について
 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているが、全ての財産の時価(客観的交換価値を示す価額)は、必ずしも一義的に確定できるものではないから、課税の実務上は、財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、原則として、評価通達に定められた画一的な評価方法によって、当該財産の評価をすることとされている。このように、相続財産の評価に当たり、あらかじめ定められた評価方式によって画一的に評価することは、税負担の公平、効率的な租税行政の実現等の観点からみて合理的であって、当審判所も、著しく不適当と認められる特段の事情がない限り、評価通達によって相続財産の評価をするのが相当であると解する。
 ロ 広大地通達について  広大地通達は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものについて、減額の補正を行う旨定めている。
 このような減額の補正を行うこととした趣旨は、①評価の対象となる宅地(以下「評価対象地」という。)の地積が、評価対象地の価額の形成に関して直接影響を与える特性を持つ評価対象地の属する地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、②評価の時点において、評価対象地を当該地域において経済的に最も合理的な開発行為を行うこととした場合に、道路、公園等の公共公益的施設用地の負担が必要な宅地については、当該開発行為により宅地の区画形質の変更をした際に公共公益的施設用地として潰れ地が生じ、評価通達15ないし評価通達20-5による減額の補正をしただけでは十分といえない場合があることから、このような宅地の価額の評価に当たっては、潰れ地が生じることを評価対象地の価額に影響を及ぼすべき客観的事情として、価値が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うとしたものと考えられる。
(イ)広大地通達における「その地域」について
 広大地通達でいう「その地域」とは、不動産鑑定評価基準における近隣地域と同様、①河川や山などの自然的状況、②行政区域、③都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、④道路、鉄道及び公園など、土地の利用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況等を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
(ロ)広大地通達における「標準的な宅地の地積」について
 広大地通達における「標準的な宅地の地積」は、評価対象地の付近で状況の類似する地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地の地積、評価対象地の付近の標準的使用(その地域で一般的な宅地の使用方法)に基づく宅地の平均的な地積などを総合勘案して判断するのが相当である。
(ハ)広大地通達における「公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」について
 広大地通達における「公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」とは、標準的使用が戸建住宅の敷地である場合は、「その地域」における「標準的な宅地の地積」に基づき、経済的に最も合理的に戸建住宅の分譲を行った場合にその開発区域内に道路等の開設が必要なものであると解するのが相当である。
(2) 認定事実
 イ 本件土地の周辺の状況
(イ)本件土地の所在する地域は、上記基礎事実等の(4)のロの(イ)のとおり、用途地域が第一種住居地域で、容積率が200%、建ぺい率が60%であり、これと同様と認められる本件土地の周辺の行政区域は、本件土地の所在する××と隣接又は連続する××、××、××及び××の地域である。
(ロ)上記(イ)の行政区域において、土地の利用状況の連続性及び地域の一体性を分断するような河川や山などの自然的状況は認められない。
(ハ)本件土地の北側約170mには主要地方道××が通り、また、南側約150mには一般県道××が通っており、当該各通り沿いの用途地域は近隣商業地域であり、主として店舗が立ち並んでいる。
(ニ)本件土地の東側約320mには一般県道××が通っており、当該通り沿いの用途地域は準工業地域であり、主として店舗が立ち並んでいる。
(ホ)本件土地の西側は市道に面しており、当該市道の西側の用途地域は第一種中高層住居専用地域である。
(へ)以上から、本件土地の所在する地域と用途地域等が同様と認められる周辺地域は、××、××、××及び××のうち、主要地方道××、一般県道××、一般県道××及び本件土地の西側に面する市道に囲まれた用途地域が第一種住居地域に定められた地域であり、当該周辺地域には主として戸建住宅が立ち並んでいる。
 ロ 本件土地の所在する地域及びその周辺地域における開発の状況  本件土地の所在する地域及びその周辺地域において、本件相続開始日前おおむね10年以内に当たる平成13年以降に行われた戸建住宅用地としての開発は次の(イ)ないし(ニ)の4事例が認められ、これらの各開発事例の全区画総数は61区画であり、その1区画当たりの地積は約166㎡ないし約380㎡で、平均の地積は約259㎡である。また、地積が220㎡以上300㎡未満である区画数は37区画と全区画数の60.7%を占めている。なお、本件土地の所在する地域及びその周辺地域において、地価公示の標準地及び都道府県地価調査の基準地は認められない。
(イ)開発事例1
 ××××にされた開発後の各区画の土地の登記等によれば、全14区画の宅地として開発され、各区画の合計地積は約3,078㎡、1区画当たりの平均地積は約220㎡であり、開発に当たって道路を設置している。なお、上記開発前の土地の道路との接続状況については、東側は公道と面していなかった。
(ロ)開発事例2
 ××××にされた開発後の各区画の土地の登記等によれば、全24区画の宅地として開発され、各区画の合計地積は約6,420㎡、1区画当たりの平均地積は約268㎡であり、開発に当たって道路を設置している。
(ハ)開発事例3
 ××××にされた開発後の各区画の土地の登記等によれば、全15区画の宅地として開発され、各区画の合計地積は約4,166㎡が、1区画当たりの平均地積は約278㎡であり、開発に当たって道路を設置している。
(ニ)開発事例4
 ××××にされた開発後の各区画の土地の登記等によれば、全8区画の宅地として開発され、各区画の合計地積は約2,127㎡、1区画当たりの平均地積は約266㎡であり、開発に当たって道路を設置している。
 なお、上記開発前の土地の道路との接続状況については、東側の一部(おおむね2分の1)を除いて四方が公道と面していたが、そのうち南側に面する道路の幅員は約2mであり、建築基準法第42条《道路の定義》第1項第1号及び同法第43条《敷地等と道路との関係》第1項の規定により、土地を建築物の敷地として利用するために必要な幅員(原則として4m以上)を満たしていない。
(3)当てはめ
 イ 広大地通達に定める「その地域」について
(イ)上記(2)のイの(へ)のとおり、本件土地の所在する地域と用途地域等が同一である周辺地域は、××と隣接又は連続する××、××、××及び××に跨る第一種住居地域であり、当該地域には主として戸建住宅が立ち並んでいる。
(ロ)一方、上記(2)のイの(ハ)ないし(ホ)のとおり、本件土地の北側の主要地方道××、同南側の一般県××及び同東側の一般県××の各通り沿いは、用途地域が近隣商業地域又は準工業地域で、いずれも主として店舗が立ち並んでおり、また、本件土地の西側に面する市道の西側は第一種中高層住居専用地域であり、いずれも本件土地が所在する地域とは明らかに用途地域や利用状況が異なる地域であることから、本件土地の所在する地域の土地の利用状況の連続性及び地域の一体性はこれらの各道路沿い又は道路により分断されていると認められる。
(ハ)上記(イ)及び(ロ)を総合勘案すると、本件土地の広大地通達に定める「その地域」、すなわち利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域は、××、××、××、××及び××の地域のうち、上記各通り沿い及び本件土地の西側市道で囲まれた部分の地域(図4(編注・略)の点線で囲まれた部分であり、以下「本件地域」という。)とするのが相当である。
 ロ 広大地通達に定める「その地域における標準的な宅地の地積」について  上記(2)のロのとおり、平成13年以降に本件地域において戸建住宅用地として開発された全61区画の平均の地積は約259㎡であること及びその1区画当たりの地積が220㎡以上300㎡未満であるものが全区画の60.7%を占めていることからすると、本件地域における標準的な宅地の地積は、220㎡以上300㎡未満であると認めるのが相当である。そうすると、本件土地は、上記の標準的な宅地の地積に比して著しく広大な土地であると認められる。
 ハ 広大地通達に定める「公共公益的施設用地」の負担について (イ)本件地域の状況は、上記イのとおりであり、また、本件土地は、上記ロのとおり、本件地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な土地であると認められるから、本件土地は、戸建住宅用地として開発するのが相当であると認められるところ、本件土地の戸建住宅用地としての開発は、本件地域の標準的な宅地の地積である220㎡以上300㎡未満を基準に行うことが合理的であると認められる。
(ロ)そして、原処分庁の開発想定図(図2)は、本件地域における標準的な宅地の地積である約220㎡ないし約280㎡に、本件土地がその四方を幅員約6mないし約8mの公道に面している接道状況を踏まえたものであるところ、同図の各区画には、間口距離、奥行距離及びその形状も特段不合理とする点は認められない。そうすると、原処分庁の開発想定図(図2)は、経済的に合理的な開発想定図と認められ、本件土地は、戸建住宅用地として開発した場合、道路等の公共公益的施設用地の負担を要することなく開発することが可能な土地であると認められる。
(ハ)また、本件地域における戸建住宅用地としての開発形態については、上記(2)のロの(イ)ないし(ニ)のとおり、開発事例1ないし同4のいずれも道路の設置を伴う開発であるところ、次のとおり、いずれも本件土地の開発と類似する開発事例、すなわち、本件土地の評価に当たり比較すべき開発事例とは認められない。
 A 開発事例1ないし同3について
  開発事例1ないし同3は、本件土地より著しく地積が大きく、さらに、同1は、東側は公道と面していなかったことから、道路との接続状況が明らかに異なる。
 B 開発事例4について
  開発事例4は、本件土地と地積の類似性は認められるものの、東側の一部(おおむね2分の1)を除いて四方が公道と面しているが、そのうち南側に面する道路の幅員は約2mであり、建築基準法第42条第1項第1号及び同法第43条第1項の規定により、土地を建築物の敷地として利用するために必要な幅員(原則として4m以上)を満たしていないことから、道路との接続状況が明らかに異なる。
(ニ)以上から、本件土地は、その形状、道路との接続状況及び本件地域における経済的に最も合理的と認められる戸建住宅用地としての開発などの形態からみて、開発行為を行うとした場合に道路等の公共公益的施設用地の負担が生じないと認めるのが相当である。
 ニ まとめ  以上のとおり、本件土地は、本件地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であると認められるものの、戸建住宅の敷地として都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に道路等の公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められないから、広大地通達に定める広大地に該当しない。
(4)請求人らの主張について イ 請求人らは、開発行為における経済的合理性の判断について、分譲が販売である以上、購入者側のニーズや予算すなわち需要に応えた上でのものでなければならず、請求人らの開発想定図(図3)又は分譲完了直前図(図1)のように道路を設けることによって、宅地としての付加価値が高まり、経済的に最も合理的な分譲ができるものとなっている旨主張する。
  しかしながら、本件土地は、開発行為を行うとした場合に道路を設置する必要は認められないことは上記(3)のハで述べたとおりであり、仮に、道路を設置することによって戸建住宅用地としての価値が上がったとしても、そのことが直ちに公共公益的施設用地の負担が必要か否かの判断に影響を与えるものではない。なお、上記基礎事実等(4)のロのとおり、本件土地は、本件相続開始日から約1年5か月を経過した××に実際に道路が設置された開発が行われているが、当審判所の調査によっても、当該開発時点における本件土地の開発に影響を及ぼす諸状況等が、本件相続開始日時点と同じであるとまでは認められず、また、公共公益的施設用地の負担が必要か否かは、土地の形状、道路との接続状況及び土地の所在する地域における経済的に最も合理的と認められる戸建住宅用地としての開発の形態等を総合的に勘案し、判定するものであるから、本件土地の本件相続開始日後の開発形態のみにより、本件土地について本件相続開始日において開発行為を行うとした場合に道路の設置を伴う開発が経済的に最も合理的と認められる開発であるか否かを判断することは相当でない。
  したがって、請求人らの主張には理由がない。
ロ また、請求人らは、近年の販売面積の主流からすれば、1区画当たりの平均地積は本件土地の分譲完了直前図(図1)のように、60坪(約198㎡)ないし70坪(約231㎡)程度であるにもかかわらず、原処分庁は開発してから10年を経過した周辺の分譲地の1区画当たりの平均地積である70坪台、80坪台を中心に間口が狭く奥行きが深い等不整形地がある開発想定図(図2)を作成し、それを基に公共公益的施設用地の負担は不要であると判断していることから、広大地通達にある経済的に最も合理的な分譲とはいえない旨主張する。
  しかしながら、上記(3)のロのとおり、本件地域における本件相続開始日前10年以内に当たる平成13年以降に行われた戸建住宅用地としての開発事例から、本件地域における標準的な宅地の地積は220㎡以上300㎡未満であると認められるところ、原処分庁の開発想定図(図2)の1区画当たりの地積はその範囲内であり、本件相続開始日に最も近い時期である平成20年に開発された開発事例4においても、1区画当たりの平均地積は約266㎡であることから、原処分庁の開発想定図(図2)に特段不合理とする点は認められない。また、本件土地は、不整形な形状ではあるもののその四方が幅員約6mないし約8mの公道に面しており、原処分庁の開発想定図(図2)のように開発すれば、全ての区画が四方の公道に面することとなり、道路等の公共公益的施設用地の負担を要することなく開発することが可能であると認められる。
  したがって、請求人らの主張には理由がない。

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