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解説記事2016年04月04日 【SCOPE】 粉飾決算の教唆は不法行為、元親会社らにも損害賠償命じる(2016年4月4日号・№637)

虚偽記載で上場廃止、株主が損害賠償を請求
粉飾決算の教唆は不法行為、元親会社らにも損害賠償命じる

 近年、上場企業による粉飾決算が後を絶たないなか、粉飾決算により上場廃止となったインネクスト社の株主(法人)が同社の代表取締役らに対し株価下落分の損害賠償を請求していた事件で判決が下された(東京地裁平成27年8月28日判決・東京高裁平成28年1月21日判決)。裁判所は、インネクスト社の代表取締役らのうち、粉飾に関与していた代表取締役らの賠償責任を認定。また、裁判所は、インネクスト社の元親会社(石山ゲートウェイ)の代表取締役が粉飾を教唆した点を不法行為と認定したうえで、粉飾を教唆したことなどを理由に石山ゲートウェイおよびその代表取締役に対しても損害賠償を命じる判決を下した。

元親会社の代取による「赤字は許さない」旨の発言を受け、粉飾に着手
 今回の裁判事案は、札幌証券取引所(アンビシャス)に上場していたインネクスト社(以下「イン社」)が第4期から第8期にかけて行っていた粉飾決算をめぐり、第4期に行われた粉飾の事実を知らずに、第5期中にイン社株式を取得した本件法人がイン社の代表取締役ら、粉飾に関する取引に関わったとされる取引先会社およびその代表取締役、イン社の元親会社であり、イン社粉飾当時はイン社を持分法適用関連会社としていた石山ゲートウェイ(以下「GW社」)およびその代表取締役に対して、粉飾決算による株価下落分の損害賠償を請求した事件だ。
GW社の代取、イン社の経営に強い影響力  事実関係をみると、イン社は、GW社により設立された子会社の1つ。GW社の代表取締役は、イン社の株式を保有するなど、イン社の経営に強い影響力を及ぼしていた。
 第4期中に上場したイン社は、主要取引先の需要低下により、上場後最初の決算となる第4期が赤字となることが予想される事態となった。この事態を受け、イン社の代表取締役CEOは、GW社の代表取締役に対し、イン社の第4期決算が赤字になる見通しであると説明した。これに対しGW社の代表取締役は、イン社の代表取締役CEOに対し、「上場直後の小さな企業が赤字に転落したら企業は信用を失って存続できないから赤字はだめだ、赤字は許さない」などと発言。この発言を受け、イン社の代表取締役らは、第5期分の売上を第4期決算で先行計上するなどという粉飾決算を行ったほか(粉飾の規模は参照)、第6期から8期にかけても循環取引を利用した粉飾決算を行っていた。

【表】インネクスト社の第4期の売上等(訂正前・訂正後)
訂正前(粉飾決算によるもの)  訂正後
売上高 8億3,206万9,000円 売上高 5億2,746万9,000円
売上総利益 2億6,184万1,000円 売上総利益 1億3,870万1,000円
営業利益 5,901万5,000円 営業損失 -6,412万5,000円
経常利益 3,906万7,000円 経常損失 -8,407万3,000円

 ところが、この粉飾決算は証券取引等監視委員会の立入り調査により発覚。イン社は、第4期から第8期にかけて粉飾決算を行っていた事実を公表した。
 この粉飾決算公表後、本件法人は、約5,000万円(単価1万6,600円)で取得したイン社株式を約230万円(単価70円~1,860円)で売却。その後、本件法人は、イン社が第4期決算書類に虚偽記載(粉飾)をしたことによる株価下落により損害を被ったと主張して、イン社の代表取締役らに加え、元親会社であるGW社およびその代表取締役らを相手に約4,770万円の損害賠償を請求する訴訟を提起した。

粉飾非関与の代表取締役の賠償責任は認めず
 裁判所は、まず、粉飾に関わったイン社の代表取締役CEOおよび財務担当取締役らの賠償責任を認める一方で、粉飾に関わっていない代表取締役CTO(最高技術責任者)の賠償責任を否定する判断を示した。また、裁判所は、イン社による粉飾の意図を認識していなかったことなどを理由に、粉飾に関する取引に関わったとされる取引先会社およびその代表取締役の賠償責任も否定した。
 次に、裁判所は、GW社の代表取締役がイン社の代表取締役らに粉飾を教唆した点を不法行為と認定するとともに、代表取締役が職務として行った粉飾についてGW社は会社法350条(下囲み参照)に基づく賠償責任を負うと認定したうえで、GW社およびその代表取締役の賠償責任も認める判断を示した。

会社法350条  株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

 ただ、具体的な損害額に関し裁判所は、本件法人がイン社株式を第4期の決算報告書などを参考に第5期中に取得しているため、イン社が第4期から8期にかけて粉飾を行っていた事実を公表した後の株価下落分のうち、本件法人が被った損害は第4期の粉飾に関する株価下落分に限られる旨を指摘。裁判所は、第4期の虚偽記載(粉飾)公表による損害額を株価下落分の15%相当額(約450万円)と認定したうえで、イン社の代表取締役CEOら、GW社およびその代表取締役に対し損害賠償を命じた。
控訴審も、元親会社の賠償責任を認める  なお、一審判決で損害賠償を命じられた一審被告らのうち、イン社の代表取締役CEOおよびGW社のみが一審判決を不服として控訴を提起していたものの、イン社の代表取締役CEOと本件法人との間で和解が成立したため、控訴審ではGW社が賠償責任を負うか否かに関する判決が下されている。東京高裁は、GW社の代表取締役がイン社の代表取締役に対し粉飾を教唆したことなどを理由として会社法350条に基づくGW社の賠償責任を認めた一審判決の判断を支持したうえで、GW社の控訴を斥けている。

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