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解説記事2016年06月06日 【ニュース特集】 総会決議事項の登記に添付する「株主リスト」に関するQ&A(2016年6月6日号・№645)

ニュース特集
中小企業は株主名簿の整備が急務!
総会決議事項の登記に添付する「株主リスト」に関するQ&A

 商業登記規則等が改正され、役員変更の登記や組織再編による変更の登記など、株主総会の決議を要する事項について登記する場合には、平成28年10月1日より、上位10名等の「株主リスト」の添付を義務付けられることになった。今回の改正は上場企業だけでなく、中小企業にも適用される。中小企業のなかには、株主名簿を整備していないケースもあり、その対応を進めているところも多いが、実務上の課題も少しずつ出てきている。
 本特集では、パブリックコメントに対する法務省の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。

>登記時に上位10名等の「株主リスト」添付を義務付け
Q1
 平成28年10月1日より、株主総会の決議を要する事項について登記する場合には、上位10名等の「株主リスト」の添付が義務付けられるとのことですが、その概要を教えてください。
A
 商業登記規則等の一部を改正する省令(平成28年法務省令第32号)が4月20日に公布され、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合には、平成28年10月1日より、「議決権の数の割合が高い上位10名」又は「議決権の多い順に順次加算した割合が3分の2に達するまでの人数」のうち、いずれか少ない人数の株主リストの添付が義務付けられることになりました。「株主リスト」には、株主の①氏名又は名称、②住所、③当該株主のそれぞれが有する株式の数及び議決権の数、④当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面の添付が求められています(改正商業登記規則61条3項)。
 今回の改正は、株主総会議事録等を偽造して役員になりすますなどの違法行為が散見されていることなどを踏まえたもので、例えば、消費者委員会から登記事項の申請を担保すべきとの指摘もなされています(「詐欺的投資勧誘に関する消費者問題についての建議」2013年8月6日)。

>「株主リスト」の内容は事後的に確認可能
Q2
 書面のみで審査を行う登記所は、株主リストの添付だけで株主総会の成立を確認することができるのでしょうか。
A
 登記官は、「株主リスト」の内容について、発行済株式総数と対比することなどにより審査をすることが可能です。また、株主リストの内容の真実性については、株主の氏名及び住所の記載を求めることにより、事後的に確認することができることになります。

>有報を提出する上場会社も株主リストの提出免除はできず
Q3
 上場会社は、有価証券報告書において「大株主の状況」を記載しています。同様の内容を開示しているため、「株主リスト」の提出は免除されませんか。
A
 登記の真実性を確保することは上場会社であっても同様であること、また、株主の数、主要な株主が保有する株式の数は、上場会社か否かにより画一的に決まるものではないため、上場会社か否かに関係なく「株主リスト」の提出が義務付けられることになります。

>事業報告や有価証券報告書の流用は不可
Q4
 添付する「株主リスト」は、事業報告や有価証券報告書に記載している大株主のリストをそのまま流用することも可能ですか。
A
 事業報告や有価証券報告書の株主のリストと今回の改正の「株主リスト」では内容が異なりますので、そのまま流用することは難しいとされています。
 ただし、有価証券報告書の「主要株主の状況」欄等の記載内容については、「株主リスト」に記載すべき内容と重なっている部分が多くなっています。このため、申請人の負担を考慮し、今後、法務省では、有価証券報告書等を利用した「株主リスト」の記載例等を同省のホームページに掲載する方向で検討をしています。


>同族会社判定の明細書の流用もできず
Q5
 中小企業は、確定申告の際に税務署に提出する「同族会社等の判定に関する明細書」の写しを流用することは可能ですか。
A
 「同族会社等の判定に関する明細書」の記載事項は「株主リスト」の記載事項と一致するわけではないので、そのまま流用することは難しいとされています。
 ただし、株主数が少ない株式会社においては、内容的に重なる部分が大きいので、法務省は今後、「同族会社等の判定に関する明細書」を利用した「株主リスト」の記載例等を同省のホームページに掲載する方向で検討をしています。

>「株主リスト」は基準日の株主を記載
Q6
 「株主リスト」に記載すべき株主はいつの時点の株主になりますか。決算期末の株主ということでよいですか。
A
 「株主リスト」に記載すべき株主は、株主総会で議決権を行使することができる者となります。基準日が決算期末であれば、当該時点の株主をリストに記載することになります。

>「株主リスト」の統一的な書式はなし
Q7
 上位10名の記載方法については、統一的な書式などはあるのでしょうか。
A
 特に統一的な書式はなく、商業登記規則で定められた事項が記載された書面であれば様式は問われません。ただし、法務省では、便宜上、「株主リスト」の記載例を同省のホームページに掲載することを予定しています。

>会社が把握する株主の氏名・住所等の記載でOK
Q8
 「株主リスト」については、会社が作成管理する株主名簿の記載どおりに転記すれば、法令上の要件を満たすことになりますか。
A
 「株主リスト」に記載すべき株主の情報については、対象となる株主総会において、議決権を行使できるものとして会社が認識していた株主について、会社が把握している氏名又は名称及び住所等を記載すればよいこととされています。

>個人株主も住所の番地まで記載
Q9
 「株主リスト」に記載する株主が個人の場合であっても、住所の番地まで記載する必要がありますか。有価証券報告書では、大株主が個人である場合の住所の記載に当たっては、市区町村名までで差し支えないとされています。
A
 今回の「株主リスト」に関しては、個人株主であっても住所の番地までの記載が求められます。これにより、株主の実在性が明らかになるとともに、事後的に株主名簿との整合性を確認することができるとされています。

>上位10名の株主が複数いてもすべての株主を記載
Q10
 保有株式数が同数の株主が複数いるため、上位10名の株主が11名以上になってしまう場合はどのような取扱いになりますか。10名を超える場合であってもすべての株主について記載する必要がありますか。
A
 株主数が11名以上であってもすべての株主を記載する必要があります。法令上、「上位となる株主」であることが規定されているからです。
 また、「多い順に順次加算した割合が3分の2に達するまでの人数」についても同様です。同順位の株主が複数いる場合には、その一部の株主の議決権を合計して3分の2に達したとしても、同順位の株主の全員を記載する必要があります。仮に発行済株式100株の会社で1株保有の株主が100名いる場合には、100名全員の氏名、住所、株式数等を株主リストに記載することになります。

>議決権割合は当該株主の議決権数÷総株主の議決権数
Q11
 「株主リスト」に記載する議決権割合の算定方法はどのようになりますか。
A
 議決権割合については、分母は総株主の議決権の数となり、分子はある株主が有する議決権の数となります(いずれも当該株主総会決議において行使できるものに限ります)。

>平成28年10月1日以降の登記申請から適用
Q12
 平成28年10月1日から施行されますが、経過措置などはありますか。
A
 特に経過措置はありません。施行日前に開催された株主総会に基づき登記を申請する場合であっても、平成28年10月1日以降の登記申請であれば、一律に「株主リスト」を添付することになります。なお、登記は、登記事由が発生したときから、本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内とされています。

>附属書類の閲覧の解釈を明確化
Q13
 附属書類の閲覧請求の規定についてはどのような改正がありましたか。
A
 附属書類の閲覧の申請人に対して、申請人の住所及び閲覧する部分の記載を求めるとともに、利害関係を証する書面の添付を求めることとされています(改正商業登記規則21条)。従来から、附属書類の閲覧は、利害関係を有する者が利害関係のある部分に限って閲覧できるものと解されてきましたが、今回の改正はこの解釈を明確化するものとしています。

>株主リストの閲覧は可能
Q14
 提出が義務付けられる「株主リスト」ですが、閲覧対象外になりますか。
A
 「株主リスト」は、登記申請の附属書類として提出されるものであり、「株主リスト」の閲覧も規則上提出することが必要となる他の附属書類の閲覧と同様、「株主リスト」を閲覧すること自体に利害関係を有する場合に限って閲覧が認められることになります。
 なお、閲覧に当たっての利害関係は、単に株主や債権者に該当するというのみでは足りず、閲覧の目的である“部分”との関係で利害関係を有する必要があるとされています。

>閲覧は総会決議取消しの訴えの提起する場合など
Q15
 「株主リスト」の閲覧は、どのようなケースであれば認められますか。
A
 例えば、株式会社の大株主が、自己に株主総会の招集通知が発せられないまま株主総会が開催されたとして株主総会決議の取消し又は不存在確認の訴えを提起するために、会社が自らを当該総会において議決権を行使できる株主であるとして「株主リスト」を登記所に提出しているか否かを確認するために閲覧を申請するケースなどが考えられます。
 ただ、実際には個別事案ごとに利害関係の有無を登記官が審査することになります。

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