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解説記事2016年07月11日 【税理士のための相続法講座】 相続財産と債務(4)-相続財産(3)(2016年7月11日号・№650)

税理士のための相続法講座
第17回
相続財産と債務(4)-相続財産(3)
 弁護士 間瀬まゆ子

 前回、前々回に続き、今回のテーマも相続財産です。
4 貸金債権等  貸金債権や損害賠償請求権等の金銭債権については、前々回(本誌642号)の1(2)で述べた預貯金債権に関する考え方が妥当します。すなわち、「金銭その他の可分債権」であるため、「法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」ことになります(最一小判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁)。具体的には、被相続人が1000万円の貸金債権を有していた場合に、相続人が配偶者及び子2人であったとすると、配偶者は500万円、子らは各250万円の貸金債権をそれぞれ承継し、直接債務者に対して請求できることになります。
 ただ、先般、預貯金債権が遺産分割の対象となるかが争われた事件が、最高裁大法廷に回付され、上記判例が変更される可能性が高くなったことは前々回にも述べたとおりですが、この事件の弁論が本年10月19日に開かれることになったそうです。判決の内容如何で上記の説明が今後妥当しなくなる可能性もありますので、結果を注視したいと思います。
5 株式
(1)準共有
 株式については、金銭債権等と異なり、不可分であり、遺産分割がなされるまでは共同相続人が準共有することになると解するのが通説判例です。現代において、金銭的価値を表す権利として債権に近い存在となってきていますが、会社法のもとでも、株式の本質が社員権であるとの考え方に変わりはなく、最近の判例においても、「共同相続された株式は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない」(最三小判平成26年2月25日判時2222号53ページ)とされています。したがって、1000株の株式があり、相続人が子2人という場合に、500株ずつを承継するのではなく、1000株すべてを2人が準共有することになります。
 このように株式を共有する場合、会社法106条本文に基づき、権利行使に先立ち、共有者の一人を権利行使者と定めて会社に通知する必要があります。ただ、同条但書には、会社が権利行使に同意した場合を除く旨が定められており、株主に相続が生じた場合に、上記の通知を欠いたとしても、会社側が権利行使を認めることは可能です。しかしながら、民法の共有に関する規定に反する権利行使まで認めてよいわけではなく、持分が過半数に満たない株主による権利行使が不適法とされた例もありますので(最一小判平成27年2月19日判タ1414号147ページ)、会社側で権利行使を認める際には、事前に慎重な調査を行うことが必須です。
(2)非上場株式の評価  相続に関して紛争が生じた場合に、不動産と同様、非上場株式の評価も問題となる場合があります。
 ただ、経営に関与している相続人とそうでない相続人との間で資料が偏在している問題があり、また、関与する弁護士等の専門家も非上場株式の評価を不得手とするのが一般的であることから、争点となったとしても、税務上の評価でやむなく決着するというケースも多いのではないかと思います。
6 債券と投資信託  社債についても、ペーパーレス化が進んでおり、また、株式と異なって化体しているのが金銭債権そのものであることから、株式以上に可分債権に近いものと考えられますが、会社法の規定等を理由に、株式と同様、社債を有する被相続人につき相続が開始し、相続人が数人いる場合には、共同相続人は当該社債を準共有すると解するのが一般的です。
 この点、国債についても、ゆうちょ銀行及び郵便局会社において、当然分割にはならない取扱いとされており、前掲の最三小判平成26年2月25日も個人向け国債について、法令で定められた単位未満での権利行使が予定されていないことを理由として、相続による当然分割を否定しました。
 一方、投資信託については、MMF・MRFに関して、可分債権であり、相続人が各人の相続分に応じて権利を単独で承継しているとした下級審の裁判例(大阪地判平成18年7月21日金法1792号58ページ)もあり、見解が分かれていました。しかし、前掲の最三小判平成26年2月25日は、投資信託及び投資法人に関する法律に基づく投資信託について、帳簿閲覧請求権のような可分給付を目的とする権利でないものも受益権の内容に含まれることから、相続により当然に相続分に応じて分割されることはないと判示し、当然分割説を否定しました。
 以上のとおり、債券と投資信託のいずれについても、相続により当然分割されることはなく、相続人が準共有することになりますので、その解消のためには遺産分割が必要です。実務上は、遺産分割協議書を添付するか、所定の書式に全員が押印をして、被相続人の取引口座内の資産を相続人の口座に移管することになります(なお、被相続人の口座を相続人がそのまま承継することはできません。)。
7 ゴルフ会員権  ゴルフ会員権は、預託会員制か株主会員制かといった形態、各クラブの会則等により、そもそも相続の対象となるのかが異なります。また、会員契約上の地位が相続の対象となったとしても、会員としての資格は一身専属的なものであり、相続人が承継することはできませんので、遺産分割により会員権を取得した相続人がこれを売却せず、会員資格を得たいという場合は、入会の承認を得る必要があります。その際に、厳しい条件を課されることもありますから、事前に入会の承認を得られるか確認しておくことが重要です(結局名義書換ができず、売却せざるを得なくなるという例もあるようです。)。
 いずれにしても、相続が可能か、可能としてもどのような手続によるべきかはゴルフクラブによって異なりますので、早めに問い合わせて、確認をしながら作業を進めて行くことが求められます。
 なお、ゴルフクラブの会員契約上の地位が相続の対象とならず、被相続人の死亡により契約関係が終了したとしても、預託金返還請求権や滞納年会費支払義務は単純な可分債権・可分債務ですので、法定相続分に従って各相続人が承継することになります。
8 電話加入権と動産  電話加入権や家財道具は、相続税の申告にあたって、僅かでも評価額を出して計上するのが通常かと思いますが、民事上の紛争が生じた場合には、現実的な価値はほとんどないため、問題にされることはまずありません。
 家財道具以外の動産(貴金属や着物等)についても、一定の価値はあるのでしょうが、対象の特定及び評価が困難であること、形見分けに適していると思われる場合が多いことから、故人の遺産ではあるものの、遺産分割の対象には含めずに処理されていることが多いと思われます。

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