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解説記事2016年12月05日 【SCOPE】 居住者と非居住者の区分に係る住所認定の6つのポイント(2016年12月5日号・№669)

滞在日数は183日を大きく下回るが……
居住者と非居住者の区分に係る住所認定の6つのポイント

 武富士事件をはじめとして、居住者と非居住者の区分に関しては、しばしば裁判や裁決で争われることが多い。今回紹介する裁決も国内に住所を有しているか否かが争われたもの。審判所は、これまでの最高裁判決を引用しつつ、住所の認定に関する滞在日数等の6つのポイントを示し、客観的諸事情を総合的に勘案して居住者か否か判断するとしている。

滞在日数、生活場所、職業、資産の所在などで総合的に判断
 今回の事案は、会社の代表者である請求人が所得税法2条1項3号に規定する「居住者」に該当するか否かが争われたもの。請求人は、日本での滞在日数は年間183日を大きく下回り(表1参照)、居住者該当性が争われた他の裁判例・裁決例と比較しても居住者には該当しないと主張。また、以前実施された税務調査において請求人が非居住者であったことに争いはなく、請求人の日本の滞在日数は、前回各調査年分より、今回の各年分のほうが減少しているとしていた。

 今回の争点となった「居住者」とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人というとされている(所得税法2条1項3号)。
 しかし、住所についての定義規定はないことから、審判所は最高裁判決を引用し、所得税法における住所とは、民法22条の定める住所の意義のとおり、各人の生活の本拠をいうものと解されるとした(最高裁判所昭和29年10月20日大法廷判決)。そして、各人の生活の本拠とは、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり(最高裁判所昭和35年3月22日第3小法廷判決)、一定の場所がその者の住所であると認定するについては、その者の住所とする意思だけでは足りず、客観的に生活の本拠たる実態を具備していることを必要とするものと解すべきであるとした(最高裁判所昭和32年9月13日第2小法廷判決)。
 その上で各人の住所の認定は、その者の国内外での①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業及び業務の内容・従事状況、④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等の客観的諸事情を総合的に勘案し、この客観的諸事情は年分ごとに判断するものであるとした。
 実際の認定事実としては表2のとおりとなっている。この点、審判所では、職業及び業務の内容・従事状況に関しては日本国でも他の諸外国のいずれの会社にとっても代表者として不可欠の存在であるとしたが、滞在日数に関していえば諸外国と比較して、日本には定期的に帰国して滞在する傾向がより強かったといえると指摘。また、資産の所在も日本国内に最も多く保有し、住民登録も日本居宅の所在地になっていることなど、客観的諸事情を総合的に勘案すると、日本の方が諸外国よりも請求人の生活の本拠たる実態をより一層具備していたというべきであり、請求人の住所は日本にあったと認定している(平成28年3月1日、棄却)。

【表2】各人の住所の認定
認定のポイント 認定事実
滞在日数 ・滞在日数は日本が最も多い。
・日本には各年分を通じて必ず毎月1度は滞在しているのに対し、日本を除く各国にはいずれも全く滞在実績のない月が存在する。
生活場所及び同所での生活状況 ・日本滞在時には日本居宅において妻、長女、次女と共に生活し、クレジットカードを利用して種々の消費活動をしたほか、病気の治療のためほぼ毎月通院している。
職業及び業務の内容・従事状況 ・請求人は代表者として、日本で月に1回開催される経営会議に出席し、営業等の報告を受けて経営判断を示す、取締役会に出席するなどしていたほか、株主総会で議長を務めていた。
・一方、代表者として事業戦略の決定をするとともに、従業員から日常的な業務に関する相談を受けて指示を出すなど、具体的な関与をする立場にあった国もあった。
生計を一にする配偶者その他の親族の居住地 ・妻及び次女は、各年分を通じて日本居宅に居住しており、長女も、平成24年3月分までは日本居宅に居住していた。
・妻らは、請求人名義の銀行預金口座から利用料金が引き落とされるクレジットカードを利用して種々の消費活動をしたほか、請求人名義の銀行預金口座から生活費として現金を引き出していた。
・日本居宅に係る電力料金、ガス料金及び水道料金は、請求人名義の銀行預金口座から支払われていた。
資産の所在 ・日本国内に最も多く資産を保有している。
生活に関わる各種届出状況等 ・日本の健康保険に加入。
・日本居宅の所在地に住民登録がされている。

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