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解説記事2016年12月12日 【未公開裁決事例紹介】 ライブチャットの女性への送金が無償譲渡等の処分に(2016年12月12日号・№670)

未公開裁決事例紹介
ライブチャットの女性への送金が無償譲渡等の処分に
滞納者と請求人の人的関係や送金額等から判断

○滞納者から請求人に対する送金が国税徴収法39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するか否かが争われた裁決で、国税不服審判所は、①本件滞納者は、請求人に対し、ライブチャットサイトの運営会社を通さずに他の通信手段による直接のやりとりを求め、請求人は応じたものの、内容や料金について具体的な取決めがなかったこと、②本件滞納者から請求人への送金額や送金日は、滞納者の任意によるものであり、請求人が料金等を請求したことがなかったこと、③本件滞納者は、請求人を独占したいという気持ちなどから、生活費としての送金に加え、不定期に旅行代やプレゼントなどとして送金を繰り返していたことが認められると指摘。本件滞納者と請求人の人的関係や送金額等からして、徴収法39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するとの判断を示した(平成28年3月23日、棄却)。

基礎事実等
(1)事案の概要
 本件は、原処分庁が、納税者××が行った審査請求人(以下「請求人」という。)に対する送金が国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分(以下「無償譲渡等の処分」という。)に該当するとして、請求人に対して第二次納税義務の納付告知処分をしたのに対し、請求人が、当該送金は無償譲渡等の処分に該当しないとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯及び基礎事実  原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が容易に認められる。
イ 請求人は、インターネット上のいわゆるライブチャットサイトを通じ、納税者××(以下「本件滞納者」という。)と知り合った。
  ただし、請求人と本件滞納者は、直接会ったことはない。
ロ 請求人名義の××の普通預金口座には、別表1(略)記載のとおり、本件滞納者から、平成23年4月14日から平成25年6月30日までの間、計86回にわたって合計××の送金がされ、請求人はこれを受領した。
ハ 請求人の平成25年分の収入は、本件滞納者から受け取った別表1(略)記載の順号74から同86までの送金額合計××を含めて××であった。
ニ 原処分庁は、平成26年11月19日、本件滞納者が納付すべき別表2(略)記載の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)について、国税通則法第43条《国税の徴収の所轄庁》第3項の規定に基づき、××から徴収の引継ぎを受けた。

ホ 本件滞納者の平成27年2月18日現在における滞納国税の合計額は、××(本件滞納国税を含む。)であった。
  また、本件滞納者には、同日現在、滞納国税の全額を徴収することができる財産はなかった。
へ 原処分庁は、本件滞納国税を徴収するため、別表1(略)記載の本件滞納者から請求人への送金のうち、本件滞納国税の法定納期限の1年前の日以後に行われた順号79から同86までの計××の送金(以下「本件送金」という。)が、国税徴収法(以下「徴収法」という。)第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するとして、平成27年2月18日付で、請求人に対し、同法第32条《第二次納税義務の通則》第1項の規定に基づき、納付すべき金額の限度額を××などとした納付通知書により告知(以下「本件納付告知処分」という。)した。
ト 請求人は、本件納付告知処分を不服として、平成27年3月25日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月25日付で棄却の異議決定をした。
  なお、当該異議決定に係る異議決定書の謄本は、同月28日に請求人に送達された。
チ 請求人は、異議決定を経た後の本件納付告知処分に不服があるとして、平成27年7月28日に審査請求をした。
(3)関係法令の要旨(略)

争点および主張
 本件送金は、徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するか否か。当事者の主張はのとおり。

【表】当事者の主張
原 処 分 庁 請 求 人
イ 本件滞納者は、ライブチャットサイトの運営会社を通じてチャットを行っていたときとは異なり、送金に当たっては、請求人との間で具体的な報酬額の取決めをすることなく行っていたのであるから、当該送金は、本件滞納者と請求人との間の私的な関係に基づいたものであり、実質的には、本件滞納者から請求人への金銭の贈与であると認められる。
  仮に、本件滞納者から請求人への送金と、本件滞納者と請求人が行ったチャットの間に、一定の対価関係があったとしても、本件滞納者から請求人名義の普通預金口座に、約2年間にわたり合計××もの送金がされており、これは、社会取引通念からして、およそ正常な経済活動に基づく対価としての報酬であるとは認められない。
  したがって、本件送金は、徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当する。
ロ 徴収法上の法律関係は、民事法その他により判断するのであって、課税上の法律関係とはその基礎を異にする。すなわち、一つの社会事象について、課税庁と徴収の所轄庁とが別異に認定することとなっても、それは、それぞれ適用する法令が異なることに基因するものであって、何ら矛盾するものではない。
  そうすると、××が、平成23年及び平成24年中に本件滞納者から請求人に送金された金員を事業収入として課税上認定したことは、原処分庁の上記イの認定を左右するものではない。
イ 請求人は、事業活動として本件滞納者とチャットを行っていたのであり、本件滞納者から受領した金員は、贈与ではなく役務の対価である。
  チャットレディがチャットサイトの運営会社を通さずに、相手方と直接チャットをし、その対価として金員を受領することはよくあることであり、チャットによって受領した金員が、サイトを通じて受領した場合は贈与とされず、サイトを通さずに直接相手方から受領した場合は贈与とされることには、理由がない。
  したがって、本件送金は、徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当しない。







ロ 請求人は、本件滞納者から受領した金員を事業収入として申告したが、当該金員について、税務官庁が、課税面では事業活動に基づき得たものと認識しているのに対し、徴収面では贈与によって得たものと認識して、本件送金に係る部分について第二次納税義務を負わせるのは、矛盾している。

審判所の判断
(1)争点(本件送金は、徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するか否か。)について
イ 本件滞納者は、一度も直接会ったことのない請求人に対し、約2年余りの期間にわたり合計××もの金員を送金したものであるが、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、①本件滞納者は、請求人に対し、ライブチャットサイトの運営会社を通さずに他の通信手段による直接のやりとりを求め、請求人はこれに応じたものの、その内容や料金に関する事項(通信時間、報酬金額、支払日等)について具体的な取決めがなかったこと、②本件滞納者から請求人への送金額や送金日は、本件滞納者の任意によるものであり、請求人が本件滞納者に料金等を請求したことがなかったこと、③本件滞納者は、請求人を独占したいという気持ちなどから、請求人に対し、生活費としての送金に加え、不定期に旅行代やプレゼントなどとして送金を繰り返していたことが認められる。
  以上の事実関係に照らせば、本件滞納者から請求人への送金について、請求人が本件滞納者との間で行ったライブチャット等のやりとりに係る対価たる側面を一部有していたとしても、本件滞納者と請求人の人的関係や送金額等からして、その大半が徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当することは明らかというべきである。
  ところで、請求人は、本件滞納者から受領した金員は本件滞納者とチャットを行ったことによる事業活動としての役務の対価である旨主張するが、当審判所は、請求人に対し、この点についての釈明及び証拠資料の提出を求めたものの、請求人は、審査請求書の提出以後、何らの資料も提出することなくこれに応じなかったところ、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件滞納者と請求人との間のライブチャット等のやりとりは明らかでなく、上記のとおり、本件滞納者と請求人との間でライブチャット等のやりとりに係る報酬等の取決めがなかったことも踏まえると、本件滞納者から請求人への送金が役務の対価を含むものであるとは認めるに足りないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
  したがって、本件滞納者から請求人への送金が、役務の対価を含むものであるとは認めるに足りない本件の事実関係においては、本件送金の全額が、徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当すると認めるのが相当である。
ロ 請求人は、本件滞納者から受領した金員を事業収入として申告しているところ、税務官庁が課税面と徴収面で異なる認識をしているのは矛盾する旨主張する。
  しかしながら、本件送金が徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するのは上記で説示したとおりであるところ、そもそも請求人が本件送金を事業収入として申告したからといって、課税庁が事業収入と判断したものではないから、請求人の主張はその前提を欠いており、また、事業収入として申告したことは、徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するか否かの判断を左右するものではなく、請求人の主張には理由がない。
(2)本件納付告知処分の適法性について  本件滞納者の本件滞納国税は、滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められ、その不足すると認められることが、本件滞納国税の法定納期限の1年前の日以後にされた本件送金という請求人に対する無償譲渡等の処分に基因することは明らかである。
 そして、請求人の収入状況からすると、請求人は、本件送金によって生計を維持していたというべきであり、本件滞納者の特殊関係者に該当するから、本件送金の額である××の限度において、本件滞納国税の第二次納税義務を負う。
 したがって、本件納付告知処分は、徴収法の規定の要件を充足しているから、適法である。
(3)その他  原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする、理由は認められない。よって、主文のとおり裁決する。

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