カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2016年12月26日 【第2特集】 公共施設等運営権は無形資産として計上(2016年12月26日号・№672)

第2特集
税務上も運営権設定期間で減価償却
公共施設等運営権は無形資産として計上

 企業会計基準委員会(ASBJ)は12月20日、実務対応報告となる「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の公開草案を決定した。PFI法における公共施設等運営権については、無形資産として計上し、運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却方法によって、その取得原価を各事業年度に配分することになる。適用は実務対応報告の公表日以後とされており、同委員会では、2か月程度意見募集した後、正式決定する方針だ。

公共施設等運営権の取得はリース取引に該当せず
 今回の実務対応報告は、公共施設等運営事業において、運営権者が公共施設等運営権を取得する取引等に関する会計処理及び開示の取扱いを定めたもの。公共施設等運営権とは、国や地方公共団体等の公共施設等の管理者が有する施設所有権のうち、当該公共施設等を運営して利用料金を収受する権利を民間事業者に設定するものであり、平成23年のPFI法改正により創設された(図表1参照)。空港や水道等の分野で取組みが進んでおり、政府の後押しもあり今後増加していく模様だ。民間事業者の参入を促すためにも、会計上の取扱いの明確化が求められていた。

 公開草案によると、運営権者が取得した公共施設等運営権については、契約で定められた公共施設等運営権の対価について、合理的に見積られた支出額の総額を無形固定資産として計上することになる(無形固定資産の区分に、公共施設等運営権などその内容を示す科目をもって表示)。
 また、運営権対価を分割払いで支払う場合、資産及び負債の計上額は、運営権対価の支出額の総額の現在価値による。合理的に見積られた運営権対価の支出額に重要な見積りの変更が生じた場合、当該見積りの変更による差額は、計上した資産及び負債の額に加減することになる。
 なお、公共施設等運営権の取得は、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」に定めるリース取引に該当しない旨が明らかにされている。
運営権設定期間が耐用年数  無形固定資産に計上した公共施設等運営権は、原則として、運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分することになる。税務上についても減価償却資産(無形固定資産)とし、運営権設定期間を耐用年数とすることになる。
 なお、実施契約において、一定の条件の下で運営権設定期間を延長することができる条項、いわゆる延長オプションが定められる場合については、運営権者が当該条項を行使する意思が明らかな場合を除き、延長可能な期間は公共施設等運営権の耐用年数に含めない。
原則は公共施設等運営権単位だが……  公共施設等運営権については、「固定資産の減損に係る会計基準」の対象となる。減損損失の認識の判定及び測定において行われる資産のグルーピングに関しては、原則として、実施契約に定められた公共施設等運営権の単位で行うこととされている。
 ただし、管理会計上の区分、投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単位及び他の単位から生ずるキャッシュ・イン・フローとの相互補完性を考慮し、公共施設等運営事業の対象とする公共施設等ごとに合理的な基準に基づき分割した公共施設等運営権の単位でグルーピングを行うことも容認している。
プロフィットシェアリングは支出時の費用  そのほか、実施契約において、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回ったときに運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項が設けられることがある。いわゆるプロフィットシェアリング条項と呼ばれるものだが、当該条項に基づき各期に算定された支出額については、当該期に費用として処理することになる。

更新投資に関する会計処理は2通り
 更新投資(運営権者が行う公共施設等の維持管理)に係る資産及び負債の計上に関しては、更新投資の実施内容の大半が、管理者等が運営権者に課す義務に基づいており、かつ、運営権者が公共施設等運営権を取得した時に、更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額及び支出時期を合理的に見積もることができる場合には、当該取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上する(ケース1)。これ以外の場合については、更新投資を実施した時に、当該更新投資の支出額を資産として計上することになる(ケース2)(本誌669号13頁参照)。
 また、計上した更新投資に係る資産の額を運営権設定期間中の各事業年度に配分する方法について、前述のケース1の場合は、公共施設等運営権の運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に配分する。ケース2の場合は、更新投資を実施した時より、当該更新投資の経済的耐用年数(当該更新投資の物理的耐用年数が公共施設等運営権の残存する運営権設定期間を上回る場合は、当該残存する運営権設定期間)にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に配分する。
 表示に関して、更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目をもって表示。また、ケース1に基づき計上した更新投資に係る負債は、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものを流動負債の区分に、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものは固定資産の区分にその内容を示す科目をもって表示することになる。

公共施設等運営事業の概要や減価償却方法を注記
 注記事項に関しては、公共施設等運営事業の概要など、図表2に掲げた事項を公共施設等運営事業ごとに注記することになる。なお、運営権者が多数の公共施設等運営事業を実施する場合、集約して注記することもできそうだ。

【図表2】注記事項
(1)運営権者が実施する公共施設等運営事業の概要(公共施設等運営事業の対象となる公共施設等の内容、実施契約に定められた運営権対価の支出方法、運営権設定期間、残存する運営権設定期間、プロフィットシェアリング条項の概要等)
(2)公共施設等運営権の減価償却の方法
(3)更新投資に係る事項
 ①主な更新投資の内容及び投資を予定している時期
 ②運営権者が採用した更新投資に係る資産及び負債の会計処理の方法
 ③更新投資に係る資産の減価償却の方法
 ④更新投資を実施した時に、当該更新投資の支出額を資産として計上する場合は、翌期以降に支出すると見込まれる更新投資のうち、合理的に見積ることが可能なキャッシュ・フローの金額及びその内容

過去の期間すべてに遡及適用  今回の実務対応報告(案)は、公表日以後適用することとされている。公共施設等運営権の運用が既に開始されていることなどがその理由だ。
 なお、実際の運用の開始から間もないことを踏まえ、特に経過的な取扱いは設けず、過去の期間のすべてに遡及適用することとしている。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索