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解説記事2017年01月23日 【税制改正解説】 平成29年度税制改正について(2017年1月23日号・№675)

税制改正解説
平成29年度税制改正について
 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 神谷智彦

はじめに

 平成29年度税制改正では、配偶者控除制度の見直しを含む所得課税改革のほか、国際課税や研究開発税制、組織再編税制など、実務に関わりの深い項目について、重要な改正がなされた。以下、主要な改正点について整理したい。
 なお、本記事の内容は、現在公表されている平成29年度与党税制改正大綱や各省庁の税制改正の解説資料等に基づいて作成している。各省庁の資料等の作成・公表に感謝するとともに、今後の法案の作成・審議により、内容に変更が生じうることにご留意いただきたい。また、内容については、すべて筆者個人の見解であり、組織を代表したものではない。

Ⅰ 所得課税 ―配偶者控除制度の見直し―
 所得課税では、長年の懸案となっていた配偶者控除に一定の結論が示された(図表1参照)。具体的には、所得控除額38万円の対象となる配偶者の収入の上限について、103万円から150万円に引上げることとした。この収入の上限への引上げは、配偶者特別控除制度の見直しによって行われる。他方、担税力の調整の必要性や所得再分配機能の回復の観点から、納税者本人に所得制限を設けることとし、控除額が給与収入1,120万円から逓減し、1,220万円で消失することとした。こちらの所得制限については、配偶者控除・配偶者特別控除の双方に適用される。

 あわせて、与党税制改正大綱では、企業の配偶者手当制度等について、「労使の真摯な話し合いの下、就業調整問題を解消する観点からの見直し行うことを強く要請する」とされている。大綱の記述を踏まえて、企業内部でも、労使の合意のもと、配偶者手当の見直しや扶養手当への切り替えなど、様々な方策が検討されることになるだろう。
 今般の配偶者控除制度の見直しは個人所得課税改革の第一弾と位置づけられている。与党税制改正大綱でも、「今後数年かけて、基礎控除をはじめとする人的控除等の見直し等の諸課題に取り組んでいくこととする」と明記されている。今後の所得課税の見直しの方向性として、所得再分配方式の回復を図ることが掲げられており、「所得控除方式」について高所得者ほど税負担の軽減効果が大きいことから、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となる「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」の導入のほか、現行の「所得控除方式」を維持しつつ高所得者について税負担の軽減額が逓減・消失する仕組みの導入が選択肢としてあげられている。また、労働者に近い形態で働く自営業者の割合の増加などを踏まえて、給与所得控除などの所得の種類に応じた控除と基礎控除などの人的控除などのあり方の見直しを行うとしている。

Ⅱ 法人課税

1 研究開発税制の見直し
 研究開発税制については、研究開発費の増加に資するようメリハリをつけた制度にするという観点から、総額型について、控除上限(法人税額の25%)を維持した上で、増加インセンティブを組み込み、控除率の幅を拡大させることとした。控除率については、これまでは8~10%(8%+試験研究費割合×0.28)となっていたところ、前三年の試験研究費の平均(比較試験研究費)に対する今期の試験研究費の増加率を基準に、6~14%の幅で控除率にメリハリをつけることとした。具体的には、試験研究費の増加率が0%であれば、控除率8.5%、増加率が5%であれば、控除率は9%となる。研究開発費の増加を支援する観点から、試験研究費の増加率が5%以上となる場合については、控除率の増加の傾きを大きくしている(図表2参照)。

 一方、増加インセンティブを総額型に組み込んだことにより、研究開発税制の上乗せ措置であった増加型は平成28年度末に廃止となる。高水準型は2年延長されるが、高水準型との選択で試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、総額型の控除税額の上限(法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%を上限とする)を乗じて計算した金額を上乗せすることが可能となる。製薬業界など、試験研究費割合の高い業種については、本制度の恩恵を受けることができるだろう。
 なお、中小企業に対する研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)については、これまで控除率は一律12%、控除税額の上限は法人税額の25%と定められていたところ、大企業向けの総額型と同様に、増加インセンティブを組み込む観点から、増加割合が5%を超える場合、①控除率について、増加割合から5%を控除した割合に0.3%を乗じて計算した額を加算する(控除率の上限は17%)、②控除税額の上限(法人税額の25%)に当期の法人税額の10%を上乗せする(高水準型との選択適用)、③試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合、控除税額の上限である法人税額の25%に当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%を上限とする)を乗じて計算した金額を上乗せする(②との選択適用)としている。
 また、研究開発税制の対象に「AI等の情報解析技術を用いた新たなサービスの開発」を追加することとした。具体的には、対価を得て提供する新たな役務(新サービス)の「開発」を目的として行う以下の業務に関する原材料費、人件費及び経費に限って認めることとした。対象となる業務は、①大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集、②その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエアを用いて行われる分析、③その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計、④その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認にかかる業務とされている。今回対象となるのは、「新しい」サービスの「開発」と言えるものであり、AI等の情報解析技術を用いていても「既存」のサービスの「改良」は対象とならないことに注意が必要である。
 また、特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション税制)については、これまで要件等が厳格で十分に活用されていなかったため、制度を見直し、対象となる費用を拡充した。現行制度では、原材料費、人件費、旅費、経費及び外注費と対象となる費用が限定列挙されていたところ、自己が負担する研究に要した費用に広く適用できることとした。また、これまで支出した費用につき、費用の明細書と領収書等の突合を要しないこととした。

2 組織再編税制  事業再編をさらに促進するため、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフを行う際に、譲渡損益や配当についての課税を繰り延べることとした(図表3参照)。

 具体的には、税制上適格分割となる範囲について、分割型分割・現物分配によりスピンオフを行う場合、対価要件、従業者引継要件、事業継続要件、役員等継続要件など、現行の他の適格類型の同等の適格要件を満たしていれば、税制上適格分割であることを認めることとした。
 また、スクイーズアウト(TOB(株式公開買い付け)等により対象会社株式のマジョリティを取得した後で、少数株主から強制的に株式を取得し、対象会社を100%子会社化する行為)における課税上の取扱いについては、全部取得条項付種類株式や株式併合、株式売渡請求によるスクイーズアウトを組織再編税制の対象とし、要件を満たした場合は課税繰延を行うとともに、2/3以上を保有する場合に少数株主への金銭対価の交付を可能とする見直しを行うこととした。

3 役員報酬制度  役員報酬制度については、平成28年度税制改正で、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするため、リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式:一定期間の譲渡制限が付された現物株式を報酬として付与するもの)について届出が不要となる事前確定届出給与の対象とすること及び利益連動給与の算定の基礎となる利益の状況を示す指標の範囲の拡大・明確化等の見直しがなされたが、28年度に引き続き、平成29年度税制改正においても、さらに役員報酬の柔軟な活用を可能とする方向で見直しがなされた。
 具体的には、リストリクテッド・ストックに関し、これまで損金算入の対象が自社及び直接の完全子会社に限られていたところ、完全子会社以外の子会社の役員への報酬の付与についても損金算入の対象とすることが可能となった。さらに、非居住者である役員についても、損金算入の対象とすることが可能となった。
 また、利益連動給与に関する算定指標について、現在、利益に関する指標(営業利益、当期純利益、ROE等)のみが対象となっているところ、株価等についても対象に加えることとした(業績連動指標)。さらに、単年度の指標だけではなく、複数年度にわたる指標も対象とする。従って、パフォーマンスシェア(中長期の業績目標の達成度合いに応じて、株式を役員に付与する報酬類型)や、在任時に付与する株式報酬信託(株式交付信託)も新たに損金算入の対象となる。
 あわせて、これまで役員給与の損金不算入規制の対象外として損金算入が認められていたストックオプション・利益その他の指標を基礎として算定される退職給与について、役員給与税制上の制度として位置づけることとした。このため、ストックオプション・利益その他の指標を基礎として算定される退職給与については、事前確定届出給与や利益連動給与の要件を満たした場合にのみ、損金算入が認められることとなる。
 今般の改正を踏まえた役員報酬の選択肢は上記の図表4のとおりとなる。企業としては、様々な選択肢の中から、より企業業績の中長期的な向上に資する役員報酬制度を採用することが可能になったと評価できるだろう。


4 株主総会時期の見直し  コーポレートガバナンスの強化などの観点から、企業と投資家の対話の充実を図るため、株主総会の集中を緩和し、上場企業等が株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大することとした。具体的には、会計監査人設置会社において、定款の定めにより決算日から3ヶ月を越えて株主総会期日を設定した場合、その定款の定めを勘案して、決算日から最大6ヶ月まで申告期限の延長を認めることとした。なお、申告期限の延長は、株主総会開催月中までとされるものと考えられる。

5 所得拡大促進税制  所得拡大促進税制については、とりわけ中小企業における賃上げを促進するとともに、大企業においてもより高い賃上げを実現する観点から、制度の見直しがなされた。具体的には、現行制度では、①給与等支給額の総額が平成24年度から一定割合以上増加していること、②給与等支給額の総額が前事業年度以上であること、また、③平均給与等支給額が前事業年度を上回ることが、所得拡大促進税制の適用の要件とされていたが、大企業については、要件③の平均給与等支給額について、「前事業年度を上回る」ではなく、前年度比2%以上の増加が求められることとなった(2%未満の場合は適用できない)。他方、要件をクリアした企業の控除額については拡充され、前年度からの増加額について税額控除率を2%上乗せすることとなった。一方で、中小企業に関しては、要件③について、平均給与等支給額が前事業年度を上回った場合には、引き続き税額控除率10%が維持される一方、前年度比2%以上増加した場合には、控除額が大きく拡充され、前年度からの増加額について税額控除率を12%上乗せ(10%+12%で前年度からの増加額の22%を控除)することとした。

6 投資減税  投資減税については、生産性向上設備投資促進税制が平成28年度末で廃止となるが、新たに地域の中核企業等を対象に、地域未来投資促進税制を創設する。具体的には、企業立地促進法(企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律)の改正を前提に、今後制定する地域未来投資促進法(仮称)を制定し、地域の中堅企業等による地域の強みを活かした先進的な事業に必要な設備投資(地域未来投資)に対する減税措置を実施する。具体的なスキーム・減税措置の内容は以下の図表5のとおりであり、対象となる事業は、先端技術を活かした医療機器や航空機などの成長ものづくり分野や第4次産業革命関連分野などが予定されている。


7 中小企業税制  中小企業税制については、研究開発税制や所得拡大促進税制で触れた項目の他、様々な投資減税が措置された。具体的には、地域の中核企業向けの前述の地域未来投資減税に加え、中小企業投資促進税制を改組して、中小企業経営強化税制を創設することとし、一定の器具備品・建物附属設備を新たに即時償却等や固定資産税の減免措置の対象に加えることとした。また、特に赤字法人を含む商店・飲食店・介護事業者などの中小サービス業の生産性向上を促すため、商業・サービス業・農林水産業活性化税制を延長する他、平成28年度税制改正で創設された機械・装置を対象とした償却資産にかかる固定資産税の軽減措置について、地域・業種を限定したうえで、対象に一定の工具、器具・備品等を追加することとした。これらの投資減税は、とりわけ、地域経済を支えるサービス業にとって、手厚い支援となるだろう。
 事業承継税制に関しては、より活用しやすい制度とすべく、災害により被害を受けた場合や主要取引先の倒産等により売上が減少した場合には、雇用確保要件の免除・緩和等を行う。また、雇用確保要件について、これまで維持すべき従業員数(5年平均で8割)を計算する際に端数を切り上げていたところを、切り捨てることとする。このため、例えば、従業員数が4名から3名に減少した場合でも、雇用確保要件を満たせることとなる。あわせて、事業承継税制について、相続時清算課税制度との併用を認めることとする。さらに、取引相場のない株式の評価方式についても、より実態に即した評価となるよう見直しを行うとしている。
 なお、中小企業向けの租税特別措置については、近年、大企業並みに売上・利益等があるにも関わらず、資本金を低く抑えることで、中小企業向けの租税特別措置を利用している実態があるとの会計検査院からの指摘があったこと等を踏まえ、前三事業年度の所得金額の平均(平均所得金額)が年15億円を超える場合には、中小企業向けの租税特別措置の適用を停止することとした。この対象は、研究開発税制や投資減税などの租税特別措置法上の中小企業向けの措置のみであり、仮に平均所得金額が年15億円を超えた場合でも、欠損金の繰越控除や外形標準課税等については、引き続き中小企業としての扱いとなる。

Ⅲ 国際課税

1 外国子会社合算税制の見直し
 外国子会社合算税制(以下、CFC税制)については、抜本的な見直しがなされることとなった。
 CFC税制については、OECD/G20のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの行動3において、望ましいCFC税制のあり方が検討され、2015年10月に最終報告書が公表されている。その中では、CFC税制の柔軟な制度設計を許容しつつも、外国子会社の経済実態に即して課税をすべきというBEPSプロジェクトの基本的考え方を踏まえた制度設計が示されていた。
 今回のCFC税制の見直しでも、BEPSプロジェクトの基本的考え方を踏まえ、外国子会社の経済実体・所得の内容に即して、実体がない所得を合算課税の対象とする方向で見直しがなされることとなった。具体的には、①実体がない受動的所得は合算対象とする一方、②実体ある事業からの所得については、子会社の税負担率に関わらず合算対象外とする方向で見直しがなされる予定である。
 このため、CFC税制の要件についても、大幅な変更がなされている。まず、CFC税制の一義的な適用基準であった、外国子会社が低税率国に所在するか否かを判定するための基準税率、いわゆる「トリガー税率」(現行は20%未満)は廃止となる。また、対象となる外国関係会社の範囲について、50%超の株式等の保有を通じた連鎖関係がある場合や、残余財産のおおむね全部を請求できる等の特別な契約関係がある場合を対象に加えることとする。
 これまで、CFC税制の適用除外基準とされていた「事業基準」、「実態基準」、「管理支配基準」、「所在地国基準及び非関連者基準」については、CFC税制の発動基準として位置づけ(名称も適用除外基準から「経済活動基準」へと変更)、これらの基準のいずれかを満たさない場合には、「会社単位の合算課税」の対象とする。
 また、経済活動基準を全て満たした場合でも、現行のCFC税制の資産性所得の合算課税と同様に、一定の受動的所得については、部分的に合算の対象となる(一定所得の部分合算課税制度)。「一定所得の部分合算課税制度」の対象となる受動的所得の範囲については、受動的所得の課税を強化する観点から、従来の資産性所得の合算と比べて範囲が拡充されている。例えば、配当については、これまで持分割合が10%未満の子会社からの配当が対象とされていたが、25%未満の場合まで対象が拡充される(化石燃料を採取する外国法人からの配当については、引き続き10%未満)。また、一定所得の部分合算課税制度の対象金額の合計が、2000万円以下(現行1000万円以下)となる場合は、課税は免除される(少額免除基準)。
 これらの経済活動基準による会社単位の合算課税及び一定所得の部分合算課税制度については、事務負担軽減の観点から、適用免除基準が設けられており、会社単位の租税負担割合が20%以上である場合には、合算課税の適用を免除することとされた。この点は、従来のトリガー税率による判定を実質的に残したものだと評価できる。
 また、上記の経済活動基準による会社単位の合算課税、一定所得の部分合算課税制度に加えて、とりわけ租税回避のおそれが強い類型について、新たに「特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税」の対象とする。具体的には、事業所等の固定施設を持たず、かつ、その本店所在地国において事業の管理、支配、運営を自ら行っていない会社(ペーパーカンパニー)や、総資産の額に対する受動的所得の合計額の割合が30%を超える企業で、総資産の額に対する金融資産等の割合が50%を超える会社(事実上のキャッシュボックス)、租税に関する情報の交換に非協力的な国(ブラックリスト国)等にある会社が対象となる。なお、これらの類型についても、会社単位の租税負担割合が30%以上である場合、この合算課税の適用を免除するという適用免除基準が設けられている。
 これらのCFC税制の見直しについて、フローチャートで整理すると次頁の図表6のとおりとなる。

 今回のCFC税制の改正は、外国関係会社において平成30年4月1日以降に開始する事業年度から適用されることとなる。
 また、与党税制改正大綱では、最後に補論として、「今後の国際課税のあり方についての基本的考え方」がまとめられている。その中で、BEPSプロジェクトを踏まえ、移転価格税制について、「所得相応性基準」の導入を含め、必要な見直しを検討するととともに、過大支払利子税制についても見直しを検討するとされている。所得相応性基準は、実際に生じたキャッシュフローが当初の予測から大きくかい離した場合に、事後的に価格を調整できる制度であり、導入されれば移転価格税制の実務に大きな影響を与えるおそれがある。過大支払利子税制についても、BEPSプロジェクトの勧告を踏まえれば、現行制度よりも基準がより厳しくなることが予想されるため、今後の議論を注視する必要がある。
 さらに、租税回避スキームの開発・販売者あるいは利用者に税務当局へのスキーム情報の報告を義務付ける「義務的開示制度」についても、制度導入の可否を検討するとされている。国際課税の分野では、BEPSプロジェクトへの対応が今後とも続く見込みであり、引き続き動向を注視することが求められる。

2 国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し  高度外国人材等の受け入れ促進等の観点から、被相続人及び相続人のいずれも外国人であり、一時的に日本に住所を有する場合に相続が発生したケースでは、国外財産を相続税等の課税対象としないこととした。
 他方、租税回避を抑制するため、相続人等又は被相続人等が10年以内に国内に住所を有する日本人である場合は、国内財産及び国外財産を相続税等の課税対象とすることとした。

3 仮想通貨の消費税非課税化  資金決済法の改正により、仮想通貨が支払の手段として位置づけられたこと等を踏まえ、仮想通貨の取引について消費税を非課税とすることとした。

Ⅳ その他、主要項目

1 災害に関する税制上の措置
 熊本地震による被害等からの復旧及び今後の災害への対応の観点から、住宅ローン減税や財形住宅・年金貯蓄の目的外払出し、災害損失の繰戻しによる法人税額の還付、被災代替資産等の特別償却、被災した建物の建替え等に係る登録免許税の免税、被災自動車に係る自動車重量税の特例等の税制上の措置を講じることとした。
 また、近年災害が頻発していることを踏まえ、被災者や被災事業者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに遅れることなく税制上の対応を手当てする観点から、災害への税制上の対応に係る規定を常設化する。

2 車体課税  自動車取得税及び自動車重量税に係るエコカー減税については、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、対象範囲を平成32年度(2020年度)燃費基準の下で見直し、2年間延長したうえで、段階的に基準を引き上げる(図表7参照)。自動車重量税については、ガソリン車への配慮等の観点から、段階的に税率を引き上げ、2回目の車検時に、免税の対象をさらに絞ることとなる。

 また、自動車税及び軽自動車税におけるグリーン化特例(燃費性能等の優れた自動車の税率を軽減し、一定年数を経過した自動車の税率を重くする特例措置)についても、最新の燃費基準を踏まえて上記の図表8のとおり、基準を改める。

 なお、今後の車体課税の見直しについては、①消費税率10%への引上げの前後における駆け込み需要及び反動減対策の動向、②税制の簡素化や自動車ユーザーの負担の軽減、軽自動車との課税のバランス、③安定的な財源確保の状況、地方財政への影響等を踏まえつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行うこととされている。

3 森林環境税  昨年に引き続き検討課題になっていた森林環境税については、「個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市・地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする森林環境税(仮称)の創設に向けて、地方公共団体の意見も踏まえながら、具体的な仕組み等について総合的に検討し、平成30年度税制改正において結論を得る」とされた。

4 酒  税  酒税については、従来より、酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えていることや、酒類間の税負担に差異があること等が指摘されていた。そのため、今回の税制改正により、ビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)や醸造酒類(清酒・果実酒)について、約10年間かけて段階的に税率差を解消することとした。
 具体的には、次頁の図表9のとおり、ビールの税率を段階的に引き下げる一方、発泡酒、新ジャンルについて税率を段階的に引き上げる。醸造酒類については、清酒の税率を段階的に引き下げる一方、果実酒の税率を段階的に引き上げる。また、チューハイやリキュールなどの低アルコール蒸留酒等について、税率を引き上げる。

 また、ビールの定義については、これまで麦芽比率67%以上とされていたところ、麦芽比率50%以上とし、かつ、副原料として果実や一定の香味料を少量用いている商品もビールの定義に加えることとなった。
 あわせて、訪日外国人をターゲットに、酒類事業者が許可を受けた製造場において販売した酒類については、酒税を免税とする制度を導入する。

5 円滑・適正な納税のための環境整備  国税犯則調査手続について、ICT化の進展を踏まえた電磁的記録の証拠収集手続等の整備や関税法を参考とした調査手続きの整備を行うとともに、規定を現代語化したうえで国税通則法へ編入する。

6 金融・証券税制  家計の安定的な資産形成を支援する観点から、中長期にわたる投資を支援するために、積立NISAを新たに創設する。積立NISAについては、平成30年1月からの導入を見込んでおり、対象商品を投資信託に限定する。現行のNISAとは選択して適用可能となる(図表10参照)。

 また、相続税の物納に充てることができる財産の順位について、上場されている株式、社債及び証券投資信託等の受益証券、投資証券を、国債や不動産等と同じ第一順位とする。相続税の負担が重い富裕層にとっては、十分な株式等の資産があれば、相続税の支払いのために、不動産を手放す必要性が以前よりも少なくなるだろう。

7 タワーマンションにかかる課税の見直し  居住用超高層建築物(高さが60メートルを超える建築物で、複数の階に住居があるもの、いわゆるタワーマンション)については、高層階と低層階で実勢価格に差がある実態があり、これを利用した節税なども謳われていた。この点に対応するため、上層階になるにつれて、固定資産税等・不動産取得税の負担が大きくなるように見直す。この見直しにより、タワーマンション全体の固定資産税等の負担を変えることはない。また、本見直しは、平成30年度から新たに課税されることとなる新築のタワーマンション(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除く)について適用されることとなる。

Ⅴ 平成30年度以降の税制改正の見通し
 本文中で触れたとおり、所得課税、国際課税、森林環境税等については、与党税制改正大綱の記述から平成30年度以降の税制改正でも引き続き検討課題となると見込まれる。
 また、米国では、トランプ政権が、法人税の大幅引下げを含む、大胆な税制改革案を提言している。どこまで実行されるのか未知数な部分も多いが、仮に大幅に法人税等が引下げられることになれば、日本の税制改正の議論等も影響を受けることになるかもしれない。引き続き、内外の税制改正の動向を注視することが重要になると考える。

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