解説記事2017年01月30日 【SCOPE】 税務申告期限の延長で株主総会の7月開催も現実に(2017年1月30日号・№676)
決算日から最大で6か月延長
税務申告期限の延長で株主総会の7月開催も現実に
平成29年度税制改正では、コーポレートガバナンス改革の一環として株主総会期日設定の柔軟化に対応するため、法人税の申告期限の見直しが行われる。例えば、3月期決算会社が7月に株主総会を開催する場合については、株主総会後に法人税の申告を行うことが可能になる。前提として定款により決算日以外で基準日を定めておく必要があるため、どの程度の企業が法人税の申告期限の延長を行うかは未知数ではあるものの、最大の障壁とも言われていた税務上のハードルがなくなったことで株主総会期日を後ろ倒しする環境整備が整ったことになる。中堅の上場企業で検討する動きもあるようだ。
会計監査人設置会社で定款により決算日以降の基準日設定が必要
株主との建設的な対話等を充実させるための方策の1つとして挙げられているのが株主総会期日の後ろ倒しだ。これにより、株主総会期日の分散化も促すことができる。現行、多くの3月期決算会社では、定時株主総会について毎年3月31日を基準日とし、毎年6月に招集する旨を定款で規定しているのが一般的だろう。ただ、会社法上は事業年度の終了後の一定の時期に定時株主総会を開催すればよいとされている(会社法296条1項)。このため、現行の規定でも基準日を別に定款で定めれば、6月末までに定時株主総会を開催しなくても法令違反にはならず、7月以降に株主総会を開催することが可能となっている(会社法124条2項により、議決権行使のための基準日を定める場合、基準日株主が行使することができる権利は、当該基準日から3か月以内に行使するものに限られている)。
経済産業省の「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」が昨年4月にまとめた報告書では、株主総会までの期間を確保するための方法として、議決権行使の基準日を決算日以降の日に定め、その3か月以内に株主総会を開催する考え方が示されている。
このように現行制度においても、定款により基準日を決算日以降の日に定めていれば株主総会を後ろ倒しすることが可能なわけだが、最大の障壁となっていたのが税務申告期限だ。法人税の確定申告については、事業年度終了の日の翌日から2か月以内とされ、上場会社など、会計監査を要する場合には、申告期限を延長することで事業年度の終了の日の翌日から3か月以内とされている。仮に定款変更をして3月期決算会社が7月以降に株主総会を開催するようなケースでは、株主に計算書類の報告をする前に確定申告を行うことになってしまう。
このため、平成29年度税制改正では、確定申告書の提出期限について、決算日から最大で6か月まで申告期限を延長できるようにする(図参照)。3月期決算会社であれば9月末まで申告期限の延長が可能になる。ただし、すべての会社で申告期限の延長ができるわけではない。会計監査人設置会社であり、定款の定めにより事業年度終了の翌日から3か月を超えて株主総会を開催することとした場合とされる。例えば、3月期決算会社が定款変更により、基準日を4月末に設定し、7月に株主総会を開催するようなケースが該当する。なお、申告期限の延長は最大で決算日から最大で6か月までとされるが、実際には株主総会の開催月までとなる模様だ。3月期決算会社が7月に株主総会を開催するケースでは9月末ではなく、7月末が申告期限となる。
株主総会前に有価証券報告書 また、有価証券報告書の提出期限は「事業年度経過後3月以内」とされている。このため、株主総会を後ろ倒しする企業においては、必然的に株主総会前に有価証券報告書を提出することになり、株主は当該情報を十分検討した上で株主総会に臨むことができる。
一部の課題は残されているものの(下記コラム参照)、税務上の障壁がクリアすることで株主総会期日を後ろ倒しする法整備は整いつつある。株主総会の開催時期をいつにするのかどうかはあくまでも企業の任意ではあるものの、株主との対話が叫ばれる中、1つの大きな選択肢ができたといえそうだ。
税務申告期限の延長で株主総会の7月開催も現実に
平成29年度税制改正では、コーポレートガバナンス改革の一環として株主総会期日設定の柔軟化に対応するため、法人税の申告期限の見直しが行われる。例えば、3月期決算会社が7月に株主総会を開催する場合については、株主総会後に法人税の申告を行うことが可能になる。前提として定款により決算日以外で基準日を定めておく必要があるため、どの程度の企業が法人税の申告期限の延長を行うかは未知数ではあるものの、最大の障壁とも言われていた税務上のハードルがなくなったことで株主総会期日を後ろ倒しする環境整備が整ったことになる。中堅の上場企業で検討する動きもあるようだ。
会計監査人設置会社で定款により決算日以降の基準日設定が必要
株主との建設的な対話等を充実させるための方策の1つとして挙げられているのが株主総会期日の後ろ倒しだ。これにより、株主総会期日の分散化も促すことができる。現行、多くの3月期決算会社では、定時株主総会について毎年3月31日を基準日とし、毎年6月に招集する旨を定款で規定しているのが一般的だろう。ただ、会社法上は事業年度の終了後の一定の時期に定時株主総会を開催すればよいとされている(会社法296条1項)。このため、現行の規定でも基準日を別に定款で定めれば、6月末までに定時株主総会を開催しなくても法令違反にはならず、7月以降に株主総会を開催することが可能となっている(会社法124条2項により、議決権行使のための基準日を定める場合、基準日株主が行使することができる権利は、当該基準日から3か月以内に行使するものに限られている)。
経済産業省の「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」が昨年4月にまとめた報告書では、株主総会までの期間を確保するための方法として、議決権行使の基準日を決算日以降の日に定め、その3か月以内に株主総会を開催する考え方が示されている。
このように現行制度においても、定款により基準日を決算日以降の日に定めていれば株主総会を後ろ倒しすることが可能なわけだが、最大の障壁となっていたのが税務申告期限だ。法人税の確定申告については、事業年度終了の日の翌日から2か月以内とされ、上場会社など、会計監査を要する場合には、申告期限を延長することで事業年度の終了の日の翌日から3か月以内とされている。仮に定款変更をして3月期決算会社が7月以降に株主総会を開催するようなケースでは、株主に計算書類の報告をする前に確定申告を行うことになってしまう。
このため、平成29年度税制改正では、確定申告書の提出期限について、決算日から最大で6か月まで申告期限を延長できるようにする(図参照)。3月期決算会社であれば9月末まで申告期限の延長が可能になる。ただし、すべての会社で申告期限の延長ができるわけではない。会計監査人設置会社であり、定款の定めにより事業年度終了の翌日から3か月を超えて株主総会を開催することとした場合とされる。例えば、3月期決算会社が定款変更により、基準日を4月末に設定し、7月に株主総会を開催するようなケースが該当する。なお、申告期限の延長は最大で決算日から最大で6か月までとされるが、実際には株主総会の開催月までとなる模様だ。3月期決算会社が7月に株主総会を開催するケースでは9月末ではなく、7月末が申告期限となる。

株主総会前に有価証券報告書 また、有価証券報告書の提出期限は「事業年度経過後3月以内」とされている。このため、株主総会を後ろ倒しする企業においては、必然的に株主総会前に有価証券報告書を提出することになり、株主は当該情報を十分検討した上で株主総会に臨むことができる。
一部の課題は残されているものの(下記コラム参照)、税務上の障壁がクリアすることで株主総会期日を後ろ倒しする法整備は整いつつある。株主総会の開催時期をいつにするのかどうかはあくまでも企業の任意ではあるものの、株主との対話が叫ばれる中、1つの大きな選択肢ができたといえそうだ。
有価証券報告書と事業報告での「大株主の状況」等の記載時点は今後の課題 |
企業が株主総会期日を後ろ倒ししやすくする上で残された課題は、有価証券報告書と事業報告の「大株主の状況」等の記載時点だ。両者とも記載時点が決算日(事業年度末)とされているため、仮に株主総会を後ろ倒しした場合には決算日と議決権行使基準日がずれることにより、株主の確定を2回行う必要が生じることになるからだ。 昨年4月に金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」が取りまとめた報告書では、株主確定の事務負担を増加させないよう、「決算日」から「議決権行使基準日」とすることが望ましい旨が盛り込まれているが、現時点ではまだ見直しは行われていない。 |
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