解説記事2017年02月20日 【レポート】 相続税法一部改正案に複数の租税回避抑制措置(2017年2月20日号・№679)
レポート
相続税法一部改正案に複数の租税回避抑制措置
高度外国人材受け入れ促進措置も
先般、国会提出された相続税法の一部改正案には、海外への住所移転による相続・贈与税の租税回避抑制措置として、国外財産が課税対象外となる海外居住期間を延長するほか、海外居住の日本国籍を有しない者に一時的な国外への住所移転で贈与した国外財産を課税対象とする規定が盛り込まれている。
また、改正法案には高度外国人材の受入れ促進措置も規定されている。
住所・国籍なしでも国外財産に課税 平成29年度税制改正では相続税の納税義務の範囲見直しとして、既報のとおり(本誌669号5頁参照)、国外財産が課税対象外となる海外居住期間が現行5年から10年に延長される(改正相続税法1の3①二イ・③三)。また、国内に住所がなく日本国籍を有しない者が、過去10年以内に国内に住所があった者から相続等で取得した国外財産を課税対象とする措置も講じられる(同条①二ロ)。この規定は、海外で生まれて日本国籍を取得しなかった子に対して一時的な海外移住で国外財産を贈与するといった租税回避行為を想定したものだ。
外国人の駐在などは住所ないものに 高度外国人材の受入れ促進措置においては、一時居住者・一時居住被相続人・非居住被相続人が定義されている(改正相続税法1の3③)。具体的に、一時居住者・一時居住被相続人は、相続開始の時において出入国管理および難民認定法別表第一の在留資格があるもので、国内に住所がある期間がその相続開始前15年以内で合計10年以下のもの(同項一二)、非居住被相続人は、相続開始の時に国内に住所はないが過去10年以内に住所があった外国人のうち、相続開始前15年以内に国内に住所があった期間の合計が10年以下のものとされている(同項三前段)。被相続人・相続人がここで規定する一時的滞在の場合、国内に住所を有したことがないとみなされ、国内財産のみが課税対象となる(図参照)。
そのほか、改正法案では、国外転出時課税に係る納税猶予を受けている者が死亡した場合の納税義務判定についての調整が行われている(改正相続税法1の3②)。
相続税法一部改正案に複数の租税回避抑制措置
高度外国人材受け入れ促進措置も
先般、国会提出された相続税法の一部改正案には、海外への住所移転による相続・贈与税の租税回避抑制措置として、国外財産が課税対象外となる海外居住期間を延長するほか、海外居住の日本国籍を有しない者に一時的な国外への住所移転で贈与した国外財産を課税対象とする規定が盛り込まれている。
また、改正法案には高度外国人材の受入れ促進措置も規定されている。
住所・国籍なしでも国外財産に課税 平成29年度税制改正では相続税の納税義務の範囲見直しとして、既報のとおり(本誌669号5頁参照)、国外財産が課税対象外となる海外居住期間が現行5年から10年に延長される(改正相続税法1の3①二イ・③三)。また、国内に住所がなく日本国籍を有しない者が、過去10年以内に国内に住所があった者から相続等で取得した国外財産を課税対象とする措置も講じられる(同条①二ロ)。この規定は、海外で生まれて日本国籍を取得しなかった子に対して一時的な海外移住で国外財産を贈与するといった租税回避行為を想定したものだ。
外国人の駐在などは住所ないものに 高度外国人材の受入れ促進措置においては、一時居住者・一時居住被相続人・非居住被相続人が定義されている(改正相続税法1の3③)。具体的に、一時居住者・一時居住被相続人は、相続開始の時において出入国管理および難民認定法別表第一の在留資格があるもので、国内に住所がある期間がその相続開始前15年以内で合計10年以下のもの(同項一二)、非居住被相続人は、相続開始の時に国内に住所はないが過去10年以内に住所があった外国人のうち、相続開始前15年以内に国内に住所があった期間の合計が10年以下のものとされている(同項三前段)。被相続人・相続人がここで規定する一時的滞在の場合、国内に住所を有したことがないとみなされ、国内財産のみが課税対象となる(図参照)。

そのほか、改正法案では、国外転出時課税に係る納税猶予を受けている者が死亡した場合の納税義務判定についての調整が行われている(改正相続税法1の3②)。
○相続税法改正案の新旧対照表(「相続税の納税義務者」部分) (編集部作成) ※ アンダーラインが改正部分である。 |
改 正 前 | 改 正 案 |
(相続税の納税義務者) 第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。 一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの | (相続税の納税義務者) 第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。 一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの イ 一時居住者でない個人 ロ 一時居住者である個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。) |
二 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの イ 日本国籍を有する個人(当該個人又は当該相続若しくは遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が当該相続又は遺贈に係る相続の開始前五年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限る。) ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が当該相続又は遺贈に係る相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していた場合に限る。) | 二 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの イ 日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの (1)当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの (2)当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該相続又は遺贈に係る被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。) ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。) |
三 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(前号に掲げる者を除く。) | 三 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第一号に掲げる者を除く。) |
四 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前三号に掲げる者を除く。) | 四 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第二号に掲げる者を除く。) |
五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。) | |
2 所得税法 (昭和四十年法律第三十三号)第百三十七条の二 (国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)又は第百三十七条の三(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第二号イの規定の適用については、次に定めるところによる。 一 所得税法第百三十七条の二第一項 (同条第二項の規定により適用する場合を含む。次条第二項第一号において同じ。)の規定の適用を受ける個人が死亡した場合には、当該個人の死亡に係る相続税の前項第二号イの規定の適用については、当該個人は、当該個人の死亡に係る相続の開始前五年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。 | 2 所得税法 (昭和四十年法律第三十三号)第百三十七条の二 (国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)又は第百三十七条の三(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、次に定めるところによる。 一 所得税法第百三十七条の二第一項 (同条第二項の規定により適用する場合を含む。次条第二項第一号において同じ。)の規定の適用を受ける個人が死亡した場合には、当該個人の死亡に係る相続税の前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該個人は、当該個人の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。 |
二 所得税法第百三十七条の三第一項 (同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第二項第二号において同じ。)の規定の適用を受ける者から同法第百三十七条の三第一項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下この号において「受贈者」という。)が死亡した場合には、当該受贈者の死亡に係る相続税の前項第二号イの規定の適用については、当該受贈者は、当該受贈者の死亡に係る相続の開始前五年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該受贈者が同条第一項の規定の適用に係る贈与前五年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合には、この限りでない。 | 二 所得税法第百三十七条の三第一項 (同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第二項第二号において同じ。)の規定の適用を受ける者から同法第百三十七条の三第一項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下この号において「受贈者」という。)が死亡した場合には、当該受贈者の死亡に係る相続税の前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該受贈者は、当該受贈者の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該受贈者が同条第一項の規定の適用に係る贈与前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合には、この限りでない。 |
三 所得税法第百三十七条の三第二項 (同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第二項第三号において同じ。)の規定の適用を受ける相続人(包括受遺者を含む。以下この号及び次条第二項第三号において同じ。)が死亡(以下この号において「二次相続」という。)をした場合には、当該二次相続に係る相続税の前項第二号イの規定の適用については、当該相続人は、当該二次相続の開始前五年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該相続人が所得税法第百三十七条の三第二項の規定の適用に係る相続の開始前五年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合には、この限りでない。 | 三 所得税法第百三十七条の三第二項 (同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第二項第三号において同じ。)の規定の適用を受ける相続人(包括受遺者を含む。以下この号及び次条第二項第三号において同じ。)が死亡(以下この号において「二次相続」という。)をした場合には、当該二次相続に係る相続税の前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該相続人は、当該二次相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該相続人が所得税法第百三十七条の三第二項の規定の適用に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合には、この限りでない。 |
3 第一項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)別表第一(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号及び次条第三項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。 二 一時居住被相続人 相続開始の時において在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下のものであるものをいう。 三 非居住被相続人 相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該相続に係る被相続人であつて、当該相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうち当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるもの(当該期間引き続き日本国籍を有していなかつたものに限る。)又は当該相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。 |
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