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解説記事2017年04月10日 【上場制度解説】 「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を踏まえた決算短信等の開示の自由度の向上について(2017年4月10日号・№686)

上場制度解説
「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を踏まえた決算短信等の開示の自由度の向上について
 東京証券取引所 上場部企画グループ/公認会計士 桑原一敬

Ⅰ はじめに

 東京証券取引所(以下「東証」という)では、決算短信・四半期決算短信(以下「決算短信等」という)の見直しを行い、2017年2月10日に有価証券上場規程の改正と改訂版の決算短信等の作成要領を公表した。
 この見直しは、2016年4月18日に公表された「ディスクロージャーワーキング・グループ報告―建設的な対話の促進に向けて―」を踏まえて行ったものである。
 本稿では、決算短信等の見直しの背景・経緯、具体的な見直しの概要等について説明する。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りする。

Ⅱ 見直しの背景・経緯
 『日本再興戦略』改訂2015において、持続的に企業価値を向上させるための企業と投資家の建設的な対話を促進する観点から、企業の情報開示について統合的な開示の在り方を検討することが明記された。
 これを受けて、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(座長 神田秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授)が設置され、2015年11月から計5回の議論を経て、2016年4月18日に、「ディスクロージャーワーキング・グループ報告―建設的な対話の促進に向けて―」が公表された。
 この報告では、会社法、金融商品取引法、上場規則に基づく3つの制度開示の内容について、全体として、より適時に、より効果的かつ効率的な開示が行われるよう、開示に係る自由度を向上させることが提言された。また、決算短信等については、投資者の投資判断に重要な情報を迅速かつ公平に提供するものであるとの目的により即し、より効果的・効率的な開示が行われるよう整理・合理化を行い、具体的には「監査及び四半期レビューが不要であることの明確化」、「速報性に着目した記載内容の削減による合理化」、「要請事項の限定等による自由度の向上」に取り組むことが適当とされた。
 こうした提言を受けて、東証では、決算短信等の開示の自由度を高めるとともに、速報としての役割に特化するための見直しを行った。

Ⅲ 具体的な見直しの概要について
 東証では、「ディスクロージャーワーキング・グループ報告―建設的な対話の促進に向けて―」を踏まえて、2016年10月28日に「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上について」と題する有価証券上場規程の改正に関するパブリック・コメントを開始し、2016年11月27日まで広く意見募集を行った。その結果、海外機関投資家を含む市場関係者等から24件の意見が寄せられた。2017年2月10日には、有価証券上場規程の改正、寄せられた主なコメントの概要及びそれに対する東証の考え方及び改訂版の決算短信等の作成要領を公表した。
 以下、具体的な見直しの概要を説明する。

1 「サマリー情報」の様式の使用強制のとりやめ  これまで、有価証券上場規程第404条において、決算発表に際して所定の「サマリー情報」の様式を使用することを強制していた。これについては、決算短信等の様式の自由度を向上させる観点から、有価証券上場規程の規則改正を行い、所定の「サマリー情報」の様式の使用強制をとりやめることとし、今後は、参考様式として、その使用を要請することとした。
 「サマリー情報」の様式は、2010年の上場規則の改正により、その使用が強制されることとなったが、それまでは、強制ではなく、使用を要請してきたものである。「サマリー情報」の様式は、決算の内容について、その要点の一覧性及び比較可能性を確保する観点から、簡潔に取りまとめた形式として実務に定着してきたものである。こうした経緯も踏まえ、今後も引き続き、東証の定める参考様式に基づいた「サマリー情報」の作成・開示を要請することとした。
《有価証券上場規程》
(改正前)
第404条
 上場会社は、事業年度若しくは四半期累計期間又は連結会計年度若しくは四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合は、当取引所所定の「決算短信(サマリー情報)」又は「四半期決算短信(サマリー情報)」により、直ちにその内容を開示しなければならない。
(改正後)
第404条
 上場会社は、事業年度若しくは四半期累計期間又は連結会計年度若しくは四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合は、直ちにその内容を開示しなければならない。

2 速報性に着目した記載事項の整理  これまで、東証は「サマリー情報」の「添付資料」として、「経営成績・財政状態に関する分析」、「連結財務諸表(主な注記含む)」、「経営方針」、「会計基準の選択に関する基本的な考え方」、などの記載を要請し、これら以外でも投資者の投資判断に有用な情報を追加的に記載するよう要請していた。
 今回の見直しでは、決算短信等において記載を要請する事項を可能な限り減らし、それぞれの会社の状況に応じた開示を可能とするため、決算短信等で記載を要請する事項は、原則として、速報性が求められる情報のみとすることとした。具体的には、決算短信においては「サマリー情報」、「経営成績等の概況」、「連結財務諸表及び主な注記(脚注1)」の三つに、四半期決算短信においては「サマリー情報」、「四半期連結財務諸表及び主な注記(脚注2)」の二つに限定することとした(脚注3)。
 なお、例外として、2014年6月24日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014―未来への挑戦―」における「IFRSの任意適用企業の拡大促進」についての提言を踏まえ、年度末の決算短信においては「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載を引き続き要請することとした。
(1)「連結財務諸表及び主な注記」、「四半期連結財務諸表及び主な注記」の開示時期  「サマリー情報」等との同時開示を要請するが、投資者の投資判断を誤らせるおそれがない場合には、「サマリー情報」等を先行して早期に開示することができるようにし、「連結財務諸表及び主な注記」や「四半期連結財務諸表及び主な注記」は開示の準備が整い次第後から直ちに開示することとした。この場合には、各社の状況に応じて、「サマリー情報」や「経営成績等の概況」の開示と同時に、上場会社の状態を適切に理解するために有用な数値情報など、投資者が必要とする財務情報について、開示することとした。
(2)「経営方針」の記載要請のとりやめ  これまで、「経営方針」は会社の経営方針、経営戦略を把握する上で重要な情報であることに加え、経営成績・財政状態や今後の見通しを分析する上でその背景を理解するために重要な情報であることから、決算短信において記載を要請していた。
 今回の見直しでは、「経営方針」は必ずしも速報性が求められない情報と考えられるため、記載の要請をとりやめることとした。
 なお、「経営方針」は2017年2月14日付の「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、有価証券報告書の記載内容に追加され、2017年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用されることとされた。
(3)「投資判断に有用な情報の追加」の要請のとりやめ  これまで、「投資判断に有用な情報の追加」を積極的に行うよう要請してきており、追加記載することが考えられる情報の具体例を示していたが、今回の見直しではこの要請をとりやめることとした。

3 監査及び四半期レビューが不要であることの明確化  決算短信等については、有価証券上場規程第404条において、「決算の内容が定まった場合」に直ちに開示することを求めており、これまでも監査や四半期レビューの手続きの終了は開示の要件とはしていない。これは、決算短信等には、事業報告等や有価証券報告書などの法定開示に先立って決算情報を迅速に開示する速報としての役割が求められるためである。決算短信等における決算数値の客観性は、監査等により確定した決算数値が法定開示として後から開示されることで、担保されることとなる。
 東証では、決算短信等が速報としての機能を十分に発揮できるよう、監査や四半期レビューの終了を待たずに早期の決算短信等の開示をお願いしており、過半の上場会社は監査等の終了前に決算短信等を開示している。
 その一方で、会社法監査の終了後に決算短信を開示している会社が全上場会社の約4割、四半期レビューの終了後に四半期決算短信を開示している会社が約1割あるなど、監査等の終了後に決算短信等を開示している会社も少なくない。
 決算短信等の意義は法定開示に対する速報にあるということを踏まえて、監査等の終了を待たずに、「決算の内容が定まった」と判断した時点での早期の開示を改めてお願いするとともに、決算短信等の作成要領等において監査や四半期レビューが不要であることを明示することとした。

4 業績予想について多様かつ柔軟な開示が可能であることの明確化  業績予想については、これまでも多様かつ柔軟な開示ができるよう、「サマリー情報」の様式の改訂を進めてきたが、2017年1月27日の「第4回未来投資会議」において、「過度に短期的、投機的取引に陥ることなく、中長期的な企業価値の向上を後押しする観点から、四半期報告を含め、企業情報開示の在り方を見直し、投資家が真に求める情報が効率的・効果的に開示されるように」する方針が示された。この方針を踏まえ、決算短信等の作成要領等において、多様化が進む実際の記載例をできるだけ多く例示することで、多様かつ柔軟な開示が可能であることをより明確にした。
 この点について、米国では、かつて直近四半期業績を予想する慣行があり、これが短期主義を招いたという議論から、現在では通期業績予想への移行が進展している。一方、日本では、かつての半年決算の名残りで、半期業績と通期業績のふたつの予想を開示する会社が今でも主流であるが、通期業績予想のみに移行する会社も増加中である。そこで、そうした会社の例を含めて、業績予想の開示例を例示することで、これまでとは異なる開示への移行を希望する会社を後押しすることとした。

5 実施時期  「サマリー情報」の様式の使用強制のとりやめに関する有価証券上場規程の改正規則及び今回の見直しを反映した「決算短信の作成要領」及び「四半期決算短信の作成要領」は、2017年3月末日以後に終了する連結会計年度の決算に係る決算短信又は四半期連結累計期間の四半期決算に係る四半期決算短信から適用する(参照)。


Ⅳ 最後に
 今回の開示の自由度を高める観点からの決算短信等の様式及び記載事項の見直しにより、各社の状況に応じた開示が可能となり、各社の裁量の余地は広がる。
 決算短信等の様式に関する自由度の向上に関して東証が行ったパブリック・コメントの募集には、国内外の投資者やアナリストから決算短信等における記載事項に関して多くのご意見が寄せられた。(「決算短信等に関する投資者等の意見集」は日本取引所グループウェブサイトhttp://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/に掲載している。)
 今後は、決算短信等における記載内容の検討にあたっては、これらの投資者等のご意見も参考としてご検討いただきたい。
 この見直しが、建設的な対話の促進と中長期的な企業価値の向上、ひいては我が国経済の再生の一助となることを期待している。

脚注
1 セグメント情報、1株当たり情報、重要な後発事象、会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示、継続企業の前提に関する注記
2 四半期連結財務諸表の作成に特有の会計処理の適用、株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記、会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示、継続企業の前提に関する注記
3 該当がある場合に限り、引き続き、「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載を要請

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