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解説記事2017年11月13日 【SCOPE】 競馬予想プログラムで大量購入でも外れ馬券は経費に該当せず(2017年11月13日号・№715)

高裁、恒常的に利益を上げていない点など指摘
競馬予想プログラムで大量購入でも外れ馬券は経費に該当せず

 当たり馬券の払戻金の課税関係が問題となる税務訴訟が相次ぐなか、東京高裁は平成29年9月28日、競馬予想プログラムにより馬券を長期間大量にネットで購入していた納税者による本件競馬所得は一時所得に該当すると判断したうえで、外れ馬券の必要経費性を否定する判決を下した。高裁は、馬券の配戻金を雑所得と判断した最高裁平成27年3月10日判決における別件納税者と本件納税者は一部共通点があるものの、本件納税者の場合は必ずしも競馬予想プログラムが抽出した買い目どおりに無差別かつ網羅的に購入していたわけではないことなどを指摘。競馬予想プログラムを用いた馬券の購入により恒常的に利益を上げていたとはいえないことなどを踏まえれば、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかであるとはいえないから、これによる本件競馬所得は一時所得に該当すると判断している。

1年当たり平均約520万円の収入も、8年分のうち3年分で損失
 競馬の当たり馬券の払戻金の課税関係をめぐっては、最高裁第三小法廷平成27年3月10日判決が馬券の払戻金を「雑所得」と判断するとともに、外れ馬券の購入代金を当たり馬券の払戻金から必要経費として控除できるという判断を示している(本誌586号31頁参照)。本件では、最高裁平成27年3月10日判決の事案と同様、納税者がコンピュータプログラムを開発して馬券を購入してその的中により得た払戻金の所得区分及び外れ馬券の必要経費性が問題となっていた。
 本件納税者は、自ら開発した競馬予想プログラムにより乱数を用いた模擬レースを数万回繰り返して予想買い目を出力するなどして主にネット口座を利用して馬券を購入していた(参照)。1年当たり平均約520万円の収入を得ていたものの、8年分のうちの3年分で損失を計上していた。

 本件競馬所得を一時所得としたうえで外れ馬券は必要経費に該当しないと判断した課税当局に対して本件納税者は、一審裁判のなかで、本件競馬所得は事業所得に該当し、外れ馬券も必要経費に該当する旨を主張していたものの、横浜地裁は本件納税者の主張を斥ける判決を下していた(平成28年11月9日判決)。この判決を不服とした本件納税者は、仮に事業所得に該当しないとしても、本件納税者の規模・態様の馬券購入は、その全体を一連の行為として把握すべきであるから、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として「雑所得」に該当すると主張した。
一体の経済活動の実態を有すると認められず  東京高裁は、競馬所得を一時所得ではなく雑所得と判断した最高裁平成27年3月10日判決の別件納税者との比較において本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得といえるか否かについて検討している。
 高裁は、競馬予想プログラムにより買い目を抽出していたことや長期間にわたり多数回馬券を購入していたことの各点においては共通点があると認定。一方で高裁は、別件納税者はオッズの高い馬券の当たり外れによる影響を排除した網羅的な馬券の購入方法を採用することで長期的に安定した利益を得ようとしていたのに対し、本件納税者はコンピュータを駆使して着順予想の精度を高めることで予想的中率を向上させ、自ら算出した予想的中率と比較して他の馬券購入者が低く評価している出走馬の馬券を購入して高配当を得ようとする射倖性の高い馬券の購入方法を採用していた点などを指摘。また、本件納税者の場合は必ずしも競馬予想プログラムが抽出した買い目どおりに無差別かつ網羅的に馬券を購入していたわけではないうえ、8年間のうち3年は損失を計上するなど、競馬予想プログラムを用いた馬券の購入により恒常的に利益を上げていたとはいえないとした。
 以上の点を踏まえ高裁は、本件納税者による馬券の購入は予想的中率及び期待値算出のために多くの演算処理を行うこと及び馬券の購入が長期間にわたり多数回であることを除けば、買い目の的中に着目した一般の競馬愛好家による馬券の購入と異なるところはなく、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかであるとはいえないから、これによる本件競馬所得は一時所得に該当すると判断。また、外れ馬券の購入代金は一時所得の必要経費には該当しないと結論付けている(なお、敗訴した本件納税者は上告受理申立てを提起している)。

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