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解説記事2018年01月08日 【ニュース特集】 中小企業もターゲット簡易な移転価格調査とは(2018年1月8日号・№721)

ニュース特集
金利・役務提供が調査対象
中小企業もターゲット簡易な移転価格調査とは

 海外取引法人への調査体制を強化している税務当局が、調査事例の検討や調査時の質問・確認事項のマニュアル作成を行うなど簡易な移転価格調査(簡易TP)に力を入れているようだ。移転価格事務運営指針により簡易に独立企業間価格が算定される金利事案、本来の業務に付随して行われた役務提供事案への調査は一般調査部門でも行われており、中小企業も留意したいところだ。本特集では、税務当局の資料を基に簡易な移転価格調査について確認する。

独立企業間価格の簡便計算が可能
 国外関連者に対する取引の対価は独立企業間価格(ALP)によらなければならず、通常、独立企業間価格は、独立価格比準法、原価基準法等で算定されることとなる。
 ただし、(1)金利事案、(2)本来の業務に付随して行われる役務提供事案については、移転価格事務運営指針により簡便計算による独立企業間価格の算定が可能とされている。この独立企業間価格が容易に算定され、その方法が確立している事案が、「簡易な移転価格調査(簡易TP)」と称されている。

無利息、低利率による金銭の貸付等が調査対象
 簡易TPの金利事案は、金銭の貸付けを業としていない法人と国外関連者との間における以下の金銭貸借に係る金利取引となる。
(1)無利息または低利率による金銭の貸付け
(2)高利率での金銭の借入れ
 なお、法基通9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の適用がある場合は、移転価格税制上も問題とされない。
独立企業間利率の算定方法は  金利事案における独立企業間価格(利率)の算定では、独立価格比準法と同等の方法または原価基準法と同等の方法のほか、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法として、借手が銀行等から借り入れたとした場合の利率、貸手が銀行等から借り入れたとした場合の利率、貸付金相当額を国債等で運用するとした場合の利率を使用することができる(事務運営指針3-7)。
 金利事案における独立企業間利率算定の検討ステップは、図表1を参照。

調査時の利率決定でスプレッドを加算  金利事案の調査で調達金利に基づく独立企業間利率を決定する際には、スプレッド(利ざや)が加算される。金融機関が一般の事業会社に貸し付けを行う場合、LIBOR(ロンドン市場における銀行間の資金の貸出側レート)、スワップレート(短期金利と交換可能な貸借期間1年以上の固定金利)等の調達金利を基準金利とし、信用リスク等を考慮して算出したスプレッドを加えて貸出利率を決定する方法が採られているためだ(図表2参照)。


金利事案における国外移転所得金額の計算例
 簡易TPの金利事案における独立企業間価格、国外移転所得金額の計算例をみてみよう(図表3参照)。

 この事例は、調査対象法人が200万米ドルを貸付期間5年、利率2.5%で国外関連者に貸し付け、415万7,500円の利息を受け取っているというもの。
 国外関連者の銀行調達金利が不明であることから、調査対象法人の銀行調達金利として米ドルスワップレート(5年)2.7790%に1%をプラスした利率で独立企業間価格を算定。その結果、独立企業間価格は628万4,477円(200万米ドル×3.7790%×83.15円/米ドル)となり、受取利息415万7,500円との差額212万6,977円が国外移転所得金額とされている。

役務提供の対価が無償または低額なケースが対象
 簡易TPの役務提供事案には、法人が国外関連者に対して本来の業務に付随して行った役務提供で無償または低額な対価を受領しているケースが該当する(図表4参照)。本業に付随して行われた役務提供とは、例えば、海外子会社から製品を輸入している法人がその海外子会社の製造設備に対して行う技術指導のような役務提供を主たる業としていない法人または国外関連者が、本来の業務に付随してまたは関連して行った役務提供をいう。
 本来の業務に付随して行われた役務提供に比較対象取引が存在しない場合、総原価の額(直接費+間接費)が独立企業間価格とされるが、役務提供に要した費用が原価または費用の相当部分を占める場合、役務提供を行う際に無形資産を使用する場合等は、総原価の額を独立企業間価格とする取扱いから除外される(事務運営指針3-10)。


役務提供事案における国外移転所得金額の計算例
 本来の業務に付随して行われた役務提供事案における国外移転所得金額の計算例をみてみよう(図表5参照)。

 この事例は、製造業を営む調査対象法人が、国外関連者の新工場立ち上げに伴い製造部のA課長を技術指導のため90日間出張させたというもの。調査対象法人は、A課長の出張費として100万円を国外関連者から収受している。
 なお、調査対象法人はA課長に関して、出張に係る旅費・日当・宿泊費250万円、給与・賞与(年額)1,100万円、社会保険料(年額)360万円、担当部門および補助部門の間接費(1人・1人当たり)7,500円の費用を支出している。
 この事例では、比較対象取引が存在しないことから、役務提供に係る総原価の額で独立企業間価格を算定。その結果、独立企業間価格は677万5,000円となり、国外関連者から収受した100万円との差額577万5,000円が、国外移転所得金額とされている。

Column 企業グループ内役務提供のALP算定で事務運営指針見直し
 直近の移転価格事務運営指針の見直しでは、企業グループ内における役務提供について、企業が役務提供に要した費用にその費用の5%を乗じた金額を加算した金額を対価としている場合、その対価の額を独立企業間価格とする取扱いが示されている。この対価の額を独立企業間価格と取り扱う役務提供については、総原価の額を独立企業間価格とする本来の業務に付随して行われた役務提供には該当しない。

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