解説記事2018年01月15日 【第2特集】 Q&Aで読み解くFDルールのポイント(2018年1月15日号・№722)
第2特集
スピンオフも「やむを得ない理由」に該当
Q&Aで読み解くFDルールのポイント
平成30年4月1日から施行されるフェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)を規定する政令及び内閣府令等が平成29年12月27日に公布された。同ルールでは、上場会社等が公表されていない「重要情報」をその業務に関して証券会社、投資家等に伝達する場合、①意図的な伝達な場合は同時に、②意図的ではない場合には速やかに当該情報をホームページ等で公表することが求められる。本特集では、政令及び内閣府令案等に対して寄せられたコメントに対する金融庁の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。
FDルールに関する情報提供等は財務局で
Q
FDルールの対象となる「重要情報」に該当する可能性に疑義があり、当局に連絡する場合、どこに連絡・相談することになりますか。
A 金融庁が公表しているフェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン(案)(本誌716号35頁参照)では、重要情報の管理として、①諸外国のルールも念頭に、何が有価証券の価額に重要な影響を及ぼし得る情報か独自の基準を設けてIR実務を行っているグローバル企業は、その基準を用いて管理する、②現在のインサイダー取引規制等に沿ってIR実務を行っている企業については、当面、インサイダー取引規制の対象となる情報及び決算情報であって、有価証券の価額に重要な影響を与える情報を管理する、③仮に決算情報のうち何が有価証券の価額に重要な影響を与えるのか判断が難しい企業については、インサイダー取引規制の対象となる情報と、公表前の確定的な決算情報を全てFDルールの対象として管理する3つの方法が挙げられている。
しかし、フェア・ディスクロージャー・ルールに関する情報提供や質問がある場合には、上場会社等が有価証券報告書を提出している財務局等において受け付けている。
防戦買いは対象外
Q
FDルールの対象とはならない「投資者を保護するための法令上の手続に従い行う行為」とは具体的にはどのような場合をいうのでしょうか。
A 「投資者を保護するための法令上の手続に従い行う行為」(金融商品取引法第二章の六の規定による重要情報の公表に関する内閣府令(重要情報公表府令)3条3号)としては、公開買付けに対抗するための上場会社等の取締役会が決定した要請に基づき行われる、いわゆる防戦買いが想定されている。
電子CPの現先取引に基づく取得行為も対象外
Q
上場有価証券等に含まれる上場会社等が発行する短期社債(電子CP)の現先取引に基づく取得行為はFDルールの対象外となりますか。
A 電子CPの現先取引に基づく取得行為は重要情報公表府令3条1号の行為に該当すると考えられている。
定款や業務内容等で判断
Q
上場有価証券等に係る売買等を行う「蓋然性の高い者」として重要情報公表府令7条3号に規定する「有価証券に対する投資を行うことを主たる目的とする法人その他の団体」について教えてください。例えば、一般の事業会社がM&A等を行った結果、買収した会社の株式が総資産に占める割合の過半数となった場合も該当しますか。
A 重要情報公表府令7条3号に該当するかどうかは、当該法人その他の団体等の定款等において有価証券に対する投資が主たる目的として掲げられているかどうかのみならず、当該法人その他の団体の業務内容も踏まえて判断される。このため、本質的に投資以外の事業を行う会社であり、有価証券への純投資を目的としない会社であれば、同号には該当しないことになる。
融資相談の際に行う登録金融機関業務
Q
銀行ですが、上場会社等から外国企業買収に係る融資の相談を受ける場合があり、当該上場会社等に対して通貨の金利上昇リスクや為替変動リスクをヘッジする目的で金融商品取引業等(登録金融機関業務)に該当する店頭デリバティブ取引を提案することがあります。
このような提案は、重要情報公表府令5条の「金融商品取引業等において利用」することには該当しないとの理解でよいですか。
A 上場会社等から、重要情報の伝達を伴う融資の相談を受けた際に、金利や為替に関する店頭デリバティブ取引を提案することは、重要情報公表府令5条の「金融商品取引業等において利用」することにはならないものとされている。
広報に関連しない業務であれば取引関係者に該当せず
Q
生命保険会社の営業担当者が、保険募集や融資営業の過程において顧客である上場会社等の重要情報の伝達を受ける場合は、FDルールの対象となる取引関係者(重要情報公表府令7条)に該当しませんか。
A 生命保険会社の営業担当者が顧客である上場会社等の投資家に対する広報とは関連しない形で、保険募集や融資営業の過程において重要情報の伝達を受ける場合には、重要情報公表府令7条の取引関係者には該当しない。
IRの会合後の個別質問も該当
Q
IR目的の会合後に個別質問した場合も、重要情報公表府令7条4号の「会合」に該当しますか。
A 上場会社等の運営、業務又は財産に関する情報を特定の投資者等に提供することを目的とした会合とは、上場会社等が企業内容を理解してもらうことを通じて投資を促すIR目的の会合であることから、当該会合に出席している間だけでなく、会合後に個別に質問した事項も重要情報公表府令7条4号の会合に含まれる。
組織再編などが「やむを得ない理由」に
Q
子会社株式の現物分配による子会社のスピンオフは重要情報公表府令9条の「やむを得ない理由」に該当しますか。
A 上場会社等が、守秘義務を負って上場会社等から重要情報の伝達を受けた取引関係者が、守秘義務に違反して当該重要情報を他の取引関係者に漏らしたことを知った場合であっても、「やむを得ない理由」により当該重要情報を公表することができない場合にはFDルールの対象外となっている。ご質問にある①子会社株式の現物分配による子会社のスピンオフを含め、②非上場会社の買収、③民事再生、④会社更生の申立てといった組織再編などや、上場会社等の親会社及び子会社並びに外国会社及び投資法人等が行う組織再編等に係るものである場合も「やむを得ない理由」に該当することとされる。この点は、内閣府令案から見直されたものとなっている。なお、包括条項は設けられていない。
外国会社による証券の発行は「やむを得ない理由」に
Q
「やむを得ない理由」に外国会社による証券の発行に係る行為は「やむを得ない理由」に該当しますか。
A 外国会社については、日本の金融商品取引所にその発行する証券又は証書を上場している外国会社であって、指定外国金融商品取引所に当該証券又は証書を上場していない者が「上場会社等」に該当する(金融商品取引法施行令14条の16第3号)。したがって、当該外国会社の発行する証券又は証書に係る募集等の行為は、「これに類する行為」(重要情報公表府令9条2号)に該当することになり、当該行為の遂行に重大な支障が生ずるおそれがあれば「やむを得ない理由」となる。
ウェブサイトのトップページでなくてもOK
Q
重要情報の公表方法としては、EDINETやTDnetを利用する方法のほか、上場会社等のウェブサイトに掲載する方法も認められていますが、重要情報公表府令10条5号にある「重要情報が集約されている場合」や「容易に重要情報を閲覧することができるようにされているとき」とは具体的にはどのようなケースが想定されていますか。
A ご質問の「重要情報が集約されている場合」とは、投資家が重要情報を閲覧しやすいよう、上場会社等のウェブサイト上で見やすく、まとめて提供されている状態をいい、例えば、「IR情報」のカテゴリーの中に全ての重要情報が掲載されていれば、原則として「重要情報が集約されている場合」に該当することになる。
また、「容易に重要情報を閲覧することができるようにされているとき」とは、例えば、当該重要情報を閲覧するために会員登録を行う必要がないことなどが想定されている。特に自社のウェブサイトのトップページへの掲載が必須というわけではない。
不測の事態で閲覧できなくなっても過去への遡及はなし
Q
重要情報公表府令10条5号では、ウェブサイトに掲載したときから少なくとも1年以上投資者が無償でかつ容易に重要情報を閲覧することができることが要件とされていますが、仮に1年間継続して掲載できなかった場合はどのようになりますか。
A この場合の「少なくとも1年以上」とは、ウェブサイトに掲載した時点で上場会社等において当該重要情報を1年以上継続して掲載する態勢がとられていればよいとされ、その後に不測の事態等により当該重要情報が閲覧できない期間が生じたとしても、遡って公表が行われていなかったことにはならない。
なお、ウェブサイトへの公表の方法は文章のみに限らず、映像や音声による方法も認められる。例えば、①取引関係者への伝達と同時にウェブサイトでその動画を流すようなウェブキャストによる方法については、「予めウェブキャストによる公表が行われる日時等が投資家に周知されており、投資家が容易に視聴できる措置が取られている場合」、②取引関係者との会合後に当該会合についての映像・音声をウェブサイトに掲載する方法については、「少なくとも1年以上、当該映像・音声をウェブサイトに掲載している場合」が該当する。
スピンオフも「やむを得ない理由」に該当
Q&Aで読み解くFDルールのポイント
平成30年4月1日から施行されるフェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)を規定する政令及び内閣府令等が平成29年12月27日に公布された。同ルールでは、上場会社等が公表されていない「重要情報」をその業務に関して証券会社、投資家等に伝達する場合、①意図的な伝達な場合は同時に、②意図的ではない場合には速やかに当該情報をホームページ等で公表することが求められる。本特集では、政令及び内閣府令案等に対して寄せられたコメントに対する金融庁の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。
FDルールに関する情報提供等は財務局で
Q
FDルールの対象となる「重要情報」に該当する可能性に疑義があり、当局に連絡する場合、どこに連絡・相談することになりますか。
A 金融庁が公表しているフェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン(案)(本誌716号35頁参照)では、重要情報の管理として、①諸外国のルールも念頭に、何が有価証券の価額に重要な影響を及ぼし得る情報か独自の基準を設けてIR実務を行っているグローバル企業は、その基準を用いて管理する、②現在のインサイダー取引規制等に沿ってIR実務を行っている企業については、当面、インサイダー取引規制の対象となる情報及び決算情報であって、有価証券の価額に重要な影響を与える情報を管理する、③仮に決算情報のうち何が有価証券の価額に重要な影響を与えるのか判断が難しい企業については、インサイダー取引規制の対象となる情報と、公表前の確定的な決算情報を全てFDルールの対象として管理する3つの方法が挙げられている。
しかし、フェア・ディスクロージャー・ルールに関する情報提供や質問がある場合には、上場会社等が有価証券報告書を提出している財務局等において受け付けている。
防戦買いは対象外
Q
FDルールの対象とはならない「投資者を保護するための法令上の手続に従い行う行為」とは具体的にはどのような場合をいうのでしょうか。
A 「投資者を保護するための法令上の手続に従い行う行為」(金融商品取引法第二章の六の規定による重要情報の公表に関する内閣府令(重要情報公表府令)3条3号)としては、公開買付けに対抗するための上場会社等の取締役会が決定した要請に基づき行われる、いわゆる防戦買いが想定されている。
電子CPの現先取引に基づく取得行為も対象外
Q
上場有価証券等に含まれる上場会社等が発行する短期社債(電子CP)の現先取引に基づく取得行為はFDルールの対象外となりますか。
A 電子CPの現先取引に基づく取得行為は重要情報公表府令3条1号の行為に該当すると考えられている。
定款や業務内容等で判断
Q
上場有価証券等に係る売買等を行う「蓋然性の高い者」として重要情報公表府令7条3号に規定する「有価証券に対する投資を行うことを主たる目的とする法人その他の団体」について教えてください。例えば、一般の事業会社がM&A等を行った結果、買収した会社の株式が総資産に占める割合の過半数となった場合も該当しますか。
A 重要情報公表府令7条3号に該当するかどうかは、当該法人その他の団体等の定款等において有価証券に対する投資が主たる目的として掲げられているかどうかのみならず、当該法人その他の団体の業務内容も踏まえて判断される。このため、本質的に投資以外の事業を行う会社であり、有価証券への純投資を目的としない会社であれば、同号には該当しないことになる。
融資相談の際に行う登録金融機関業務
Q
銀行ですが、上場会社等から外国企業買収に係る融資の相談を受ける場合があり、当該上場会社等に対して通貨の金利上昇リスクや為替変動リスクをヘッジする目的で金融商品取引業等(登録金融機関業務)に該当する店頭デリバティブ取引を提案することがあります。
このような提案は、重要情報公表府令5条の「金融商品取引業等において利用」することには該当しないとの理解でよいですか。
A 上場会社等から、重要情報の伝達を伴う融資の相談を受けた際に、金利や為替に関する店頭デリバティブ取引を提案することは、重要情報公表府令5条の「金融商品取引業等において利用」することにはならないものとされている。
広報に関連しない業務であれば取引関係者に該当せず
Q
生命保険会社の営業担当者が、保険募集や融資営業の過程において顧客である上場会社等の重要情報の伝達を受ける場合は、FDルールの対象となる取引関係者(重要情報公表府令7条)に該当しませんか。
A 生命保険会社の営業担当者が顧客である上場会社等の投資家に対する広報とは関連しない形で、保険募集や融資営業の過程において重要情報の伝達を受ける場合には、重要情報公表府令7条の取引関係者には該当しない。
IRの会合後の個別質問も該当
Q
IR目的の会合後に個別質問した場合も、重要情報公表府令7条4号の「会合」に該当しますか。
A 上場会社等の運営、業務又は財産に関する情報を特定の投資者等に提供することを目的とした会合とは、上場会社等が企業内容を理解してもらうことを通じて投資を促すIR目的の会合であることから、当該会合に出席している間だけでなく、会合後に個別に質問した事項も重要情報公表府令7条4号の会合に含まれる。
組織再編などが「やむを得ない理由」に
Q
子会社株式の現物分配による子会社のスピンオフは重要情報公表府令9条の「やむを得ない理由」に該当しますか。
A 上場会社等が、守秘義務を負って上場会社等から重要情報の伝達を受けた取引関係者が、守秘義務に違反して当該重要情報を他の取引関係者に漏らしたことを知った場合であっても、「やむを得ない理由」により当該重要情報を公表することができない場合にはFDルールの対象外となっている。ご質問にある①子会社株式の現物分配による子会社のスピンオフを含め、②非上場会社の買収、③民事再生、④会社更生の申立てといった組織再編などや、上場会社等の親会社及び子会社並びに外国会社及び投資法人等が行う組織再編等に係るものである場合も「やむを得ない理由」に該当することとされる。この点は、内閣府令案から見直されたものとなっている。なお、包括条項は設けられていない。
外国会社による証券の発行は「やむを得ない理由」に
Q
「やむを得ない理由」に外国会社による証券の発行に係る行為は「やむを得ない理由」に該当しますか。
A 外国会社については、日本の金融商品取引所にその発行する証券又は証書を上場している外国会社であって、指定外国金融商品取引所に当該証券又は証書を上場していない者が「上場会社等」に該当する(金融商品取引法施行令14条の16第3号)。したがって、当該外国会社の発行する証券又は証書に係る募集等の行為は、「これに類する行為」(重要情報公表府令9条2号)に該当することになり、当該行為の遂行に重大な支障が生ずるおそれがあれば「やむを得ない理由」となる。
ウェブサイトのトップページでなくてもOK
Q
重要情報の公表方法としては、EDINETやTDnetを利用する方法のほか、上場会社等のウェブサイトに掲載する方法も認められていますが、重要情報公表府令10条5号にある「重要情報が集約されている場合」や「容易に重要情報を閲覧することができるようにされているとき」とは具体的にはどのようなケースが想定されていますか。
A ご質問の「重要情報が集約されている場合」とは、投資家が重要情報を閲覧しやすいよう、上場会社等のウェブサイト上で見やすく、まとめて提供されている状態をいい、例えば、「IR情報」のカテゴリーの中に全ての重要情報が掲載されていれば、原則として「重要情報が集約されている場合」に該当することになる。
また、「容易に重要情報を閲覧することができるようにされているとき」とは、例えば、当該重要情報を閲覧するために会員登録を行う必要がないことなどが想定されている。特に自社のウェブサイトのトップページへの掲載が必須というわけではない。
不測の事態で閲覧できなくなっても過去への遡及はなし
Q
重要情報公表府令10条5号では、ウェブサイトに掲載したときから少なくとも1年以上投資者が無償でかつ容易に重要情報を閲覧することができることが要件とされていますが、仮に1年間継続して掲載できなかった場合はどのようになりますか。
A この場合の「少なくとも1年以上」とは、ウェブサイトに掲載した時点で上場会社等において当該重要情報を1年以上継続して掲載する態勢がとられていればよいとされ、その後に不測の事態等により当該重要情報が閲覧できない期間が生じたとしても、遡って公表が行われていなかったことにはならない。
なお、ウェブサイトへの公表の方法は文章のみに限らず、映像や音声による方法も認められる。例えば、①取引関係者への伝達と同時にウェブサイトでその動画を流すようなウェブキャストによる方法については、「予めウェブキャストによる公表が行われる日時等が投資家に周知されており、投資家が容易に視聴できる措置が取られている場合」、②取引関係者との会合後に当該会合についての映像・音声をウェブサイトに掲載する方法については、「少なくとも1年以上、当該映像・音声をウェブサイトに掲載している場合」が該当する。
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