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解説記事2018年01月29日 【税制改正解説】 平成30年度税制改正について(2018年1月29日号・№724)

税制改正解説
平成30年度税制改正について
 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 神谷智彦

はじめに

 平成30年度税制改正では、給与所得控除や公的年金等控除、基礎控除の見直しを含む所得課税改革のほか、法人税における賃上げ・生産性向上のための税制(所得拡大促進税制の改組)や、組織再編税制、事業承継税制、申告・納税手続の電子化などについて、重要な改正がなされた。以下、主要な改正点について整理したい。
 なお、本記事の内容は、現在公表されている平成30年度与党税制改正大綱や各省庁の税制改正に関する解説資料等に基づいて作成している。各省庁の資料等の作成・公表に感謝するとともに、今後の法案の策定・審議により、内容に変更が生じうることにご留意いただきたい。また、内容については、すべて筆者個人の見解であり、組織を代表したものではない。

Ⅰ 所得課税 -給与所得控除、公的年金等控除、基礎控除の見直し-
 所得課税では、働き方の多様化に対応する観点から、給与所得控除、公的年金等控除、基礎控除について幅広い範囲で見直しがなされた。見直しの対象は、①給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替、②給与所得控除の見直し、③公的年金等控除の見直し、④基礎控除の見直しの4点である。
 ①給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替については、特定の企業や組織に属さずフリーランスや請負等の業務を行うなど、多様な働き方が増えつつあることを踏まえた対応となっている。すなわち、給与や公的年金等においてそれぞれ所得の種類に応じた控除が認められている一方、フリーランスや請負等の業務による収入については給与所得控除の対象とはなっていない。そのため、特定の収入にのみ適用される給与所得控除や公的年金等控除から、どのような所得にでも適用される基礎控除に、負担調整の比重を移していくことが必要である。このような考え方のもと、図表1のように、給与所得控除・公的年金等控除を10万円引き下げる一方、基礎控除を10万円引き上げることとした。

 ②給与所得控除の見直しについては、控除額が頭打ちとなる給与収入の水準を1,000万円から850万円に引き下げることとした。このため、控除額の上限は現行の220万円から195万円まで引き下げられることとなる。ただし、子育て世帯や介護世帯に配慮する観点から、22歳以下の扶養親族や特別障害者控除の対象となる扶養親族等が同一生計内にいる者については、負担増が生じないよう、控除額の上限は210万円への引き下げに止まることになる(①で述べたとおり、基礎控除額が10万円引き上げられるため、負担増はなし)。
 ③公的年金等控除に関しては、給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく、年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除を受けられるなど、高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている。このため、世代内・世代間の公平性を確保する観点から、公的年金等控除について、公的年金等収入が1,000万円を超える場合、控除額に上限(195.5万円)を設けることとした。また、公的年金等収入以外の所得金額が1,000万円を超える場合には控除額を10万円引き下げ、2,000万円を超える場合には控除額を20万円引き下げることとした。
 ④基礎控除の見直しについては、所得の多寡によらず、一定金額を所得から控除する所得控除方式が採用されているが、高所得者にまで税負担の軽減効果を及ぼす必要性は乏しいのではないかという指摘がなされていた。
 このため、米国・英国など諸外国の制度を参考とし、所得控除方式を維持しつつ高所得者について控除額を逓減・消失させる「逓減・消失型の所得控除方式」を採用し、所得金額2,400万円から控除額を逓減させ、2,500万円超で消失する仕組みを設けることとした。
<所得課税の見直しの背景>  この点、政府税制調査会がまとめた報告書「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告2」(平成29年11月20日公表)では、「人的控除の控除方式のあり方」、「働き方の多様化等を踏まえた個人所得課税のあり方」、「老後の生活に備えるための自助努力を支援する公平な制度のあり方」について見直しを行うべきとされており、今般の所得課税の見直しは、この報告書の方向性に沿ったものだと理解できる。
 なお、大綱において「今後も、所得再分配機能の回復や税負担のあり方の観点から、引き続き見直しを継続していく」とされていることから、引き続き、政府税制調査会の報告書等を踏まえつつ、所得課税見直しの検討が進められる可能性が高いことに留意すべきである。

Ⅱ 法人課税

1 所得拡大促進税制の改組(賃上げ・生産性向上のための税制措置)
 企業が収益を生産性向上のための設備投資や人材育成に振り向け、持続的な経済成長が実現する環境を作り出すという観点から、十分な賃上げや国内設備投資を行った企業について一定割合の税額控除ができる措置を講じることとした。
 具体的には、平成32年度末までの措置として、①平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与に対する割合が3%以上であること、および②国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であることが要件となっており、要件を満たした場合には、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる(法人税額の20%を上限)こととした。また、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額(前期及び前々期の教育訓練費の額の年平均額)に対する増加割合が20%以上であるときは、給与等支給増加額の20%の税額控除ができる(法人税額の20%を上限)こととした。(図表2参照)

 加えて、所得が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資をほとんど行っていない大企業については、一部の租税特別措置を適用しないこととした。
 具体的には、平成32年度末までの措置として、大企業が、「①平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること」、「②国内設備投資額が減価償却費の総額の10%を超えること」、という要件のいずれも満たさない場合で、かつ、「③当期の所得の金額が前期の所得の金額より大きい」場合には、研究開発税制、地域未来投資促進税制、および、次に説明する情報連携投資等の促進に係る税制の税額控除を適用できないこととした。なお、③の所得の金額については、欠損金繰越控除前の金額であり、かつ、受取配当等の益金不算入および外国子会社配当等の益金不算入等の調整は行わない金額とされている。

2 情報連携投資等の促進に係る税制の創設  企業内外におけるデータの連携・高度利活用を促進すべく、「生産性向上の実現のための臨時措置法(仮称)」の制定を前提に、同法の革新的データ活用計画(仮称)の認定を受けたものが、計画に沿ってソフトウェアを新設し、又は増設した場合で、その事業の用に供したときは、その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の3%(賃上げ・生産性向上のための税制における①賃上げ率3%以上の要件を満たした場合は、5%)の税額控除を選択適用できることとした。控除限度額は、当期の法人税額の15%(前項の賃上げ・生産性向上のための税制における3%以上の賃上げの要件を満たした場合は、20%)となる(適用期限:平成32年度末)。(図表3参照)


3 組織再編税制の見直し、海外M&Aの促進
(1)株対価M&A
 組織再編税制について、さらなる促進を図る観点から見直しがなされた。
 この点、新しい経済政策パッケージ(平成29年12月閣議決定)では「企業の事業再編を促進するため、リスクマネーの供給強化や、大胆な事業再編を行う際の株式対価M&Aの促進に必要な措置を講じる」とある。
 この方針も踏まえ、産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた事業者の行った特別事業再編(仮称)により、法人がその有する株式(出資を含む)を譲渡し、その認定を受けた事業者の株式の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることとした。(図表4参照)

 なお、経済産業省の資料によれば、対象となる事業再編は新需要を相当程度開拓するとともに、著しい生産性向上を達成できる取組に限って計画認定の対象とする予定である。(図表5参照)
 加えて、組織再編税制については、完全支配関係の継続要件や従業者従事要件・事業継続要件等について見直しを行うとしている。
(2)海外M&Aに伴う外国子会社等再編円滑化措置(外国子会社合算税制の見直し)  外国子会社合算税制(以下、CFC税制)については、平成29年度税制改正においてBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの動きを踏まえ、実体がない受動的所得は合算対象とする一方、実体のある事業からの所得については、子会社の税負担率に関わらず合算対象外とする方向で抜本的な見直しがなされた。
 もっとも、改正されたCFC税制には、いくつか残された課題が存在している。その一つが、外国関係会社で発生するキャピタル・ゲインに対する課税の取り扱いである。具体的には、外国の多国籍企業グループを買収した場合に、その傘下にペーパーカンパニー等があり、さらにその傘下に事業会社等がぶら下がっていた場合、傘下の事業会社を整理した際に譲渡益等がペーパーカンパニーに生じる場合があるが、その譲渡益はCFC税制により合算課税の対象となる。この点、合算課税の対象となることから、企業が組織再編を行い、ペーパーカンパニーを解消することを躊躇する要因ともなっていた。
 この点、ペーパーカンパニーの解消を促進し、日本企業の海外M&Aを促すべく、平成30年度税制改正大綱で、一定の株式譲渡益の適用対象金額からの控除が認められることとなった。大綱では以下のとおり記述されている。「特定外国関係会社又は対象外国関係会社(注1)(以下①において「特定外国関係会社等」という。)が、外国関係会社に該当することとなった外国法人の統合に関する基本方針及び統合に伴う組織再編の実施方法等を記載した計画書に基づいて、一定の期間内(注2・3)に、その有する対象株式等(注4)を当該特定外国関係会社等に係る内国法人又は他の外国関係会社(特定外国関係会社等に該当するものを除く。)に譲渡した場合において、その譲渡の日から2年以内に当該譲渡をした特定外国関係会社等の解散が見込まれること等の要件を満たすときは、その対象株式等の譲渡による利益の額(注5)を、当該譲渡をした特定外国関係会社等の適用対象金額の計算上控除することとする。」(図表6参照)
 この点、対象となるのは、ペーパーカンパニーの解消を図るという観点から、「特定外国関係会社又は対象外国関係会社」の譲渡益に限られている。なお、直接、ペーパーカンパニーを買収した場合(図表6ではB社を直接買収した場合)、本制度の対象とはならない。また、譲渡後、ペーパーカンパニーを解散等することが要件となっていることに留意が必要である。


4 中小企業税制
(1)事業承継税制の見直し
 中小企業経営者の年齢分布のピークは60歳代半ばとなっており、世代交代が待ったなしの課題となっている。そのため、10年間の特例措置として、事業承継税制の要件を大幅に緩和することとした。
 具体的には、施行日後5年以内に承継計画を作成して贈与・相続による事業承継を行う場合、①経営環境の変化に対応した減免制度を創設、②猶予対象の株式の上限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合を80%から100%へ引き上げ、③雇用確保要件を弾力化、④2名又は3名の後継者に対する贈与・相続にも対象を拡大する等の特例措置を講じる。(図表7参照)

 制度の対象となる「特例認定承継会社」は、都道府県に期間内に「特例承継計画」を提出する必要がある。また、①については、具体的には、直近の事業年度3年間のうち2年以上赤字である場合や売上高が前年より減少している場合、有利子負債の額が6ヶ月分の売上高に相当する額以上である場合、同業種の上場企業の株価が前年の平均より下落している場合などに認められる。(図表8参照)③の雇用確保要件に関しては、雇用確保要件を満たせない場合には、認定経営革新等支援機関の意見とともに、その満たせない理由を記載した書類を都道府県に提出する必要がある。

(2)所得拡大促進税制の拡大  中小企業については所得拡大促進税制を深堀りし、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較給与等支給額に対する割合が1.5%以上であるときは、給与等支給増加額の15%を税額控除できることとなる(控除上限は法人税額の20%)。また、以下の①及び②の要件を満たす場合には、給与等支給増加額の25%を税額控除できる(控除上限は法人税額の20%)。
① 平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較給与等支給額に対する割合が2.5%以上であること
② 以下のいずれかの要件を満たすこと
 ⅰ 前期の額と比べ、教育訓練費の額が10%以上増加していること
 ⅱ 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと
(3)中小企業の投資を後押しする大胆な固定資産税の特例  中小企業における償却資産にかかる固定資産税については、平成28年度税制改正で減額措置が創設され、平成29年度税制改正で対象に一定の工具、器具・備品等が追加されたが、平成30年度税制改正で更なる深堀りがなされた。
 具体的には、市町村の導入促進基本計画(仮称)に適合し、かつ労働生産性を年平均3%以上向上させるものとして認定を受けた中小事業者の先端設備等導入計画(仮称)に記載された一定の機械・装置等であって、生産、販売活動等の用に直接供されるものの固定資産税について、市町村の条例で課税標準をゼロ以上2分の1以下の範囲で定めることができることとした。(図表9参照)


5 国際会計基準への対応  国際会計基準に対応する観点から、法人税における収益の認識等について、所得の金額の計算上益金の額に算入する金額は、引渡しのときまたは役務の提供時における価額とし、引渡し等の日と同一事業年度の益金の額に算入することを法令上明確にすることとした。この際、貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合でも、その可能性がないものとした場合の価額とすることとなる。その上で、以下の措置を講じることとした。
① 返品調整引当金制度を廃止する。なお、経過措置として、平成32年度末までに開始する事業年度については現行の取り扱いを認めるとともに、平成33年度から平成41年度にかけて段階的に縮小していくこととする。
② 長期割賦販売等に該当する資産の販売等についての延払基準は廃止する。なお、経過措置として、平成34年度末までに開始する事業年度については現行の取り扱いを認めるとともに、延払基準をやめた場合の繰延割賦利益額を10年均等で収益計上する等の経過措置を講じる。

6 省エネ・再エネ投資への措置  省エネルギー投資については、平成31年度末までに、「特定事業者等」が「高度省エネルギー増進設備等」の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却ができる。この点、中小企業者等については、取得価額の7%の税額控除との選択が可能であり、控除上限は法人税額の20%となる。対象となる「特定事業者等」は、省エネ法において指定された工場等を設置している者や、改正省エネ法で連携省エネルギー計画(仮称)の認定を受けた工場等を設置している者、改正省エネ法で荷主連携省エネルギー計画(仮称)の認定を受けた荷主に限られる。また、「高度省エネルギー増進設備等」とは、省エネ法において指定された工場等を設置している者に関しては、中長期的計画に記載された機械等のうち、特に効果の高い一定のものをいう。
 再生可能エネルギーについては、平成31年度末までに再生可能エネルギー発電設備等の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合には、その取得価額の20%の特別控除ができることとした。もっとも、対象として、太陽光、風力、原子力にかかる発電設備は除かれる。また、補助金等の交付を受けて取得等をしたものは対象外となる。
 なお、グリーン投資減税については廃止される。

Ⅲ その他、主要項目

1 申告・納税手続の電子化
 申告・納税手続の電子化に関しては、平成30年度税制改正における大きなトピックとなった。この点、政府の動きとしては、まず未来投資戦略2017(2017年6月9日閣議決定)において、規制改革・行政手続簡素化・IT化を一体的に進めることとされたほか、政府の規制改革会議の行政手続部会の取りまとめ(2017年3月29日)において、大法人の電子申告の義務化が実現されることを前提として、大法人の法人税・消費税・法人住民税・法人事業税の申告について、電子申告(e-Tax)の利用率100%を実現、および中小企業の法人税・消費税の申告について、電子申告の利用率85%以上、法人住民税・法人事業税の申告について、電子申告の利用率70%以上という目標が示された。これらを踏まえ、財務省・総務省における「行政手続コスト」削減のための基本計画(2017年6月30日)のなかでも、「電子申告の義務化が実現されることを前提として、大法人の法人税・法人住民税・法人事業税・消費税の申告について、電子申告(e-Tax、eLTAX)の利用率100%とする」という数値目標が設定された。
 これらの動きを受け、政府税制調査会では、「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告2」(平成29年11月20日公表)において、税務手続の電子化を推進する観点から、具体的な施策についてとりまとめを行った。
 とりまとめの項目は多岐にわたる(図表10図表11参照)が、国税の所得税の関係においては、確定申告・年末調整手続の原則電子化やスマートフォンからの電子申告の実現、e-Tax(国税電子申告・納税システム)の認証手続の簡便化を行うとしている。法人税の関係では、法人税等の電子申告利用率100%の実現を目指すとしたうえで、e-Taxシステム自体の機能改善、提出書類の見直し、認証手続(電子署名)の簡便化、およびe-Taxに提出可能なファイル形式の多様化等を検討するとしている。また、地方税の関係では、全地方公共団体に対して、一斉に電子納税を行うことができる共通電子納税システム(共同収納)を構築(図表12参照)するとともに、特別徴収税額通知の電子的送付の拡大を行うとしている。


 これらの動きも踏まえ、平成30年度与党税制改正大綱では、大法人における法人税・消費税のe-Taxによる電子申告の義務化が定められている。あわせて、申告以外の別表、勘定科目内訳書、財務諸表その他の添付書類について、光ディスクによる提出が可能となった。なお、電気通信回線の故障、災害その他の理由によりe-Taxによる申告が困難であると認められるときは書面による申告が可能となる。
 この電子申告の義務化は法人税においては平成32年4月1日以後に開始する事業年度(消費税においては同日以後に開始する課税期間)から実施することとなる。そのため、多くの法人では平成32年度の中間申告から電子申告の義務化が課されることになる。
 他方、電子申告の義務化に伴い、申告の簡素化や運用の見直しを行うこととなった。具体的には、収用証明書等の一部の第三者作成書類について申告書への添付義務ではなく、保存義務に切り替えることとした。また、e-Taxで提出できるデータ形式を柔軟化し、財務諸表・勘定科目内訳明細書についてexcelから容易に作成できるCSV形式での提出を認めることとした。あわせて、e-Taxの送信容量についても拡大する。加えて、国税・地方税における情報の連携を進め、法人税の電子申告により財務諸表が提出された場合には、法人事業税の申告における財務諸表の提出を不要とすること等を検討する。さらに、認証手続を簡素化し、法人税等の申告書における代表者及び経理責任者等の自署押印制度を廃止するとともに、申告書で必要となる電子署名について代表者から委任を受けた役員・社員の電子署名でも提出を可能とする。また、地方税の関係では、給与所得に係る特別徴収税額通知(特別徴収義務者用)について、eLTAX(地方税ポータルシステム)又は光ディスク等に記録する方法により提供する場合にはマイナンバーの記載を行い、書面により送付する場合には、企業の事務管理コスト等を勘案して、当面、マイナンバーの記載を行わないこととする。(図表13参照)


2 森林環境税  平成30年度税制改正大綱において、森林環境税(仮称)が創設することが決定された。具体的な制度設計は以下のとおりである。
<森林環境税の枠組み>
納税義務者等 国内に住所を有する個人に対して課される国税
税 率 年額1,000円
賦課徴収 市町村において、個人住民税と併せて行う
施行期日 平成36年度から課税
 なお、森林環境税は国税であるが、都道府県及び市町村の森林制度等の財源に活用すべく、森林環境税の収入額に相当する額を森林環境譲渡税(仮称)として都道府県及び市町村に譲渡することとなる。分配の基準は、都道府県に10分の1の額、市町村に10分の9の額であり、市町村・都道府県の中でそれぞれ、10分の5の額を私有人工林面積で、10分の2の額を林業就業者数で、10分の3の額を人口で按分して譲渡する。なお、平成31年度から平成35年度までの間における森林環境譲与税は、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金をもって充てることとしている。

3 国際観光旅客税  観光立国実現に向けた税財源として、わが国からの出国に広く薄く負担を求める国際観光旅客税(仮称)を創設する。制度の概要は以下のとおりである。
<国際観光旅客税の枠組み>
納税義務者等 出国の確認を受け、日本から出国する観光客等(航空機等の乗員や外交官、24時間以内に乗り継ぎする者を除く)
税 率 出国1回につき、1,000円
施行期日 平成31年1月7日以後の出国に適用

4 たばこ税  高齢化の進展による社会保障関係費の増加等に対応すべく、財源を確保する観点からたばこ税を引き上げることとした。また、加熱式たばこについて、紙巻たばことの間の税率格差等を解消する観点から、課税方式を見直すことにした。
 たばこ税については、以下のとおり、3段階で税率を引き上げることとなる。
 加熱式たばこについては、新たに課税区分を設け、新しい課税基準を設定する。具体的には、以下のイ及びロの方法によって換算した紙巻たばこの本数の合計とする。
イ 重量による換算方法として、フィルターその他の一定の物品を含まない重量とし、当該重量0.4gを持って紙巻たばこ0.5gに換算する。
ロ 小売定価に基づく換算方法として、紙巻たばこ1本当たりの平均小売価格をもって、加熱式たばこの小売価格を紙巻たばこの0.5本に換算する。
 なお、新しい課税区分には、平成30年10月1日から平成34年10月1日にかけて、現行の課税方式から段階的に移行していくことになる。


5 外国人の出国後の相続税納税義務の見直し  平成29年度税制改正において、高度外国人材等の受け入れ促進等の観点から、被相続人及び相続人のいずれも日本国籍を有しない者であり、国内に居住する被相続人及び相続人等が、出入国管理法別表第1の在留資格に基づき「一時的滞在」をしている場合に相続が発生したケースでは、国外財産について相続税等を課税対象としないこととした。この「一時的滞在」とは国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在となる場合をいう。
 この点、高度外国人材等の受入れと長期間の滞在をさらに促進する観点から、日本に長期間住所を有していた外国人が出国後に行った相続・贈与に対しても免除の措置を設けることとした。具体的には、相続開始の時において国外に住所を有する日本国籍を有しない者等が、国内に住所を有しないこととなった時前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年を超える被相続人から相続により取得する国外財産については相続税を課さないこととする(贈与についても同様)。この場合の被相続人は、当該期間引き続き日本国籍を有していなかった者であって、当該相続および贈与開始のときにおいて国内に住所を有していないものに限って免除の対象となる。

6 金融・証券税制
(1)NISA(少額投資非課税制度)における手続の簡素化
 NISA口座については、投資家がNISA口座の開設を申し込んでも、二重口座でないことの確認が必要であるため、当日には買い付けができず、投資家が買い付け意欲を失うことがあった。
 この点に対処すべく、平成30年度税制改正で税務署での二重口座の確認前にNISA口座を開設できる簡易届出の仕組みを創設することとした。(図表14参照)


Ⅳ 平成31年度以降の税制改正の見通し
 所得課税の関係では、平成30年度与党税制改正大綱で検討事項として、「寡婦控除に関し平成31年度税制改正において検討し、結論を得る」とされた。
 地方法人課税については、平成30年度与党税制改正大綱において「特に偏在度の高い地方法人課税における税源の偏在を是正する新たな措置について、消費税率10%段階において地方法人特別税・譲与税が廃止され法人事業税に復元されること等も踏まえて検討し、平成31年度税制改正において結論を得る」とされている。
 国際課税については、平成29年度与党税制改正大綱で中長期的に取り組むべき事項とされたBEPSプロジェクトの残された課題(所得相応性基準、過大支払利子税制、義務的情報開示)について、今後の検討課題となることが見込まれる。
 自動車関係諸税についても、平成29年度与党税制改正大綱において、「消費税率10%への引上げの前後における駆け込み需要及び反動減対策に万全を期す必要があり、自動車をめぐるグローバルな環境、自動車に係る行政サービス等を踏まえ、簡素化、自動車ユーザーの負担の軽減、グリーン化、登録車と軽自動車との課税のバランスを図る観点から、平成31年度税制改正までに、安定的な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる」とされていることから、平成31年度税制改正において、具体的な検討が進められる見込みである。
 あわせて、周知のとおり、米国で税制改革法案(Tax Cuts and Jobs Act)が成立し、連邦の法人税率を21%まで引き下げるなど、米国の競争力強化に資する大胆な税制改革が実現した。加えて、フランスでも法人税率を33.33%から2020年に28%に引き下げる方針を表明している。これらの世界各国での法人税率の引き下げの動きを受けて、日本でも税率引き下げの議論が活性化するかどうか、十分に注視することが必要である。

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