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解説記事2018年02月19日 【第2特集】 金融庁の考え方から読むフェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン(2018年2月19日号・№727)

第2特集
「重要情報」と「法人関係情報」との関係は?
金融庁の考え方から読むフェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン

 平成30年4月1日からフェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)が導入されるが、昨年12月27日に公布された政令及び内閣府令等(本誌722号12頁参照)に引き続き、金融庁は2月6日、「金融商品取引法第27条の36の規定に関する留意事項について(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン)」を公表した(今号19頁参照)。FDルールでは、上場会社等が公表されていない「重要情報」をその業務に関して証券会社、投資家等に伝達する場合、意図的な伝達の場合は同時に、意図的ではない場合には速やかに当該情報をホームページ等で公表することが求められており、ガイドラインでは、重要情報の管理として3つの方法を掲げ、このうちのいずれかの方法により管理するとしている。具体的には、①諸外国のルールも念頭に、何が有価証券の価額に重要な影響を及ぼし得る情報か独自の基準を設けてIR実務を行っているグローバル企業は、その基準を用いて管理する、②現在のインサイダー取引規制等に沿ってIR実務を行っている企業については、当面、インサイダー取引規制の対象となる情報及び決算情報であって、有価証券の価額に重要な影響を与える情報を管理する、③仮に決算情報のうち何が有価証券の価額に重要な影響を与えるのか判断が難しい企業については、インサイダー取引規制の対象となる情報と、公表前の確定的な決算情報を全てFDルールの対象として管理することが挙げられている。本特集では、ガイドライン案に対して寄せられたコメントに対する金融庁の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。

月次の売上数値は決算情報に該当?
Q
 ガイドライン問2にある「決算情報」について教えてください。例えば、小売業等が開示する「月次」の通知や、決算に関する「上振れ」「下振れ」等を示唆する情報は含まれますか。
A
 「決算情報」とは、「年度又は四半期の決算に係る確定的な財務情報」であって、公表されれば有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性のあるものであれば、決算に関する定量的な情報のみならず、増収見込みである旨などの定性的な情報も、「決算情報」に該当する。しかし、ご質問の「月次」の売上などの数値については、前述した「決算情報」の定義に従えば一般的にはそれ自体では「決算情報」には該当しないものとされる。

取引関係者に重要情報に該当するとの指摘を受けた場合は?
Q
 組織再編など、決算情報以外のインサイダー取引規制の対象となり得る情報に関して、軽微基準に該当し、重要な事実の対象にもならない情報についてはFDルールの対象にならないという理解でよいですか。
A
 3つの管理方法のうち、インサイダー取引規制の対象となる情報及び決算情報であって、有価証券の価額に重要な影響を与える情報を管理する方法など、問2の②及び③の方法により情報を管理している場合には、当面、重要情報として管理しないことが考えられる。ただし、取引関係者から、これらの情報が上場会社等の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性があるものとし、重要情報に該当するのではないかとの指摘を受けたときは、ガイドライン問3にあるように、①上場会社が同意する場合は当該情報を速やかに公表する、②重要情報に該当しないとの結論に至った場合には公表を行わない、③重要情報には該当するが、公表が適切でないと考える場合は、当該情報が公表できるまでの間に限り、取引関係者に守秘義務及び当該上場会社等の有価証券に係る売買等を行わない義務を負ってもらい、公表を行わないとの対応を取ることになる。

事故等による影響が軽微な場合は?
Q
 事故や災害などの事象が発生した場合、取引関係者から発生した事故や災害などによる業績への影響を問われることがあります。その際に「影響が軽微である」旨の回答を行うことはFDルールの対象となりますか。
A
 発生した事故や災害などの事象による業績への影響が公表されても、上場会社等の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性がない場合には、FDルールの対象となる重要情報には該当しない。また、仮にインサイダー取引規制の対象となる情報及び決算情報であって、有価証券の価額に重要な影響を与える情報を管理することとされており、事故等による損害額が軽微基準を超えない場合には、当該事故等による損害に関する情報はインサイダー取引規制におけるバスケット条項に該当しない限り、重要情報には該当しない。

FDルールの「重要情報」と「法人関係情報」は同じ?
Q
 FDルールにおける重要情報と法人関係情報との関係性について教えてください。また、「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則」(日本証券業協会)第8条が定める「重要情報」、「「協会員における法人関係情報の管理態勢の整備に関する規則」に関する考え方」(日本証券業協会)で示されている「現時点では法人関係情報ではないが、将来法人関係情報になる蓋然性が高いと考えられる情報」や「示唆情報等」、「協会員のアナリストによる発行体への取材等及び情報伝達行為に関するガイドライン」(日本証券業協会)が定める「未公表の決算期の業績に関する情報」などとどのような関係にあるのかも教えてください。
A
 法令用語であるFDルールにおける重要情報と、法人関係情報との関係については、上場会社等や金融商品取引業者等によって管理する情報の範囲が異なることなどから、一概にはいえないが、金融商品取引業者等の現行の実務においては、金融商品取引業者等の管理する法人関係情報の範囲に、FDルールにおける重要情報が含まれる例が多いものと想定される。また、その他については下表を参照のこと。
FDルールにおける
重要情報との関係
金融庁が想定する考え方
法人関係情報 金融商品取引業者等の現行実務においては、金融商品取引業者等の管理する法人関係情報の範囲に、FDルールにおける重要情報が含まれる例が多い。
「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則」(日本証券業協会)が定める重要情報 法人関係情報に加え、「未公表の情報であって投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすと考えられるもの」等が含まれるため、金融商品取引業者等において、FDルールにおける重要情報を包含する形で法人関係情報を設定・管理している場合、協会規則の重要情報の範囲に、FDルールにおける重要情報が含まれる例が多い。
「「協会員における法人関係情報の管理態勢の整備に関する規則」に関する考え方」(日本証券業協会)で示されている「現時点では法人関係情報ではないが、将来法人関係情報になる蓋然性が高いと考えられる情報」や「示唆情報等」 金融商品取引業者等において、FDルールにおける重要情報を包含する形で法人関係情報を設定・管理している場合、「現時点では法人関係情報ではないが、将来法人関係情報になる蓋然性が高いと考えられる情報」や「示唆情報等」は重要情報には含まれない例が多い。
「協会員のアナリストによる発行体への取材等及び情報伝達行為に関するガイドライン」(日本証券業協会)が定める「未公表の決算期の業績に関する情報」や「未公表の決算期の業績以外に関する定量的情報のうち業績が容易に把握できることとなるもの」 日本証券業協会の「協会員のアナリストによる発行体への取材等及び情報伝達行為に関するガイドライン」には、①協会規則の重要情報に該当する、若しくはそれを内包する、又は他の情報と組み合わせることにより協会規則の重要情報となり得る情報として、「未公表の決算期の業績に関する情報」が、②他の情報と組み合わせることや簡単な計算を行うこと等により間接的に業績に結び付き、業績が容易に予測できる情報として、「未公表の決算期の業績以外に関する定量的情報のうち業績が容易に把握できることとなるもの」が、それぞれ記載されている。これらの情報については、個別にFDルールにおける重要情報に該当するかを検討する必要がある。

伝達された情報が公表情報と思い込んでしまった場合は?
Q
 伝達された情報が公表情報と思い込んでいる場合など、上場会社等や取引関係者が情報伝達時点では重要情報に該当することに気付かず、事後的に上場会社等から「伝達した情報は重要情報に該当するが公表しない」と説明を受けることも考えられます。その場合、上場会社等からの説明の前に取引してしまっている場合や他の取引関係者に伝達してしまっている場合については、何か対応をする必要がありますか。
A
 金融商品取引業者等においては、金商法令上、適切に法人関係情報を管理することが求められていることは当然だが、伝達された情報が重要事実に該当する場合、当該重要事実の公表前に取引を行った者は、インサイダー取引規制の対象となることも考えられる。

相手先が過去の販売実績を知っている場合は?
Q
 商品の販売実績の販売件数と平均単価のどちらか一方のみの情報を伝達する場合、伝達される情報のみでは当期の売上高や利益の額ないし前期と比較した増減を推定できなければ、FDルールの対象外になりますか。
A
 販売件数と平均単価のどちらか一方のみの情報を伝達する場合で、その情報のみが公表されても、有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性があるとはいえない情報については、FDルールの対象にはならないと考えられる。ただし、当該情報と過去に提供されたその他の情報とを一体として見た場合、上場会社等の業績を容易に推知し得るような場合には、FDルールの対象となる可能性がある。

新たに社内規則等の整備が必要か?
Q
 金融商品取引業者や登録金融機関が、日本証券業協会の「法人関係情報管理規程(社内規程モデル)」を参照し社内規則等を規定している場合、対象となる情報の範囲が重要情報を含んでおり、かつ当該社内規則等が登録金融機関業務以外の業務に従事する者にも適用されるのであれば、新たに社内規則等を整備する必要はありませんか。
A
 金融商品取引業者や登録金融機関において、新たに社内規則等を整備するか否かは、各登録金融機関において定められている個別の社内規則等の内容に応じて判断すべきものだが、ご質問のような社内規則等が整備され、適切な情報管理が行われている場合、基本的には新たな社内規則等の整備は不要であると考えられる。
 なお、FDルールは、金商法令や日本証券業協会の規則に基づいて適切に法人関係情報の管理態勢を整備している金融商品取引業者等に対して、新たな規制を課すものではないとしている。

公表情報の詳細な内訳や補足説明は?
Q
 「為替や市況関連ヘッジの有無、またそのおおよその比率」や「外貨建取引における調達通貨」などについての概略、方針、規律に係る情報は、FDルールの対象になりますか。
A
 質問にある情報については、公表されれば有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性のあるものではない限り、FDルールの対象となる情報には該当しない。

経営に関する仮説や選択肢は?
Q
 中長期的な企業戦略・計画等に関する議論の中で、経営に関するいくつかの仮説や選択肢に言及することがあります。このような仮説などは、確定的な情報ではないため、FDルールの対象外という理解でよいですか。
A
 個別事案ごとに判断されるが、一般的に仮説や選択肢についての情報は、確定的な情報ではないため、FDルールの対象外となる。

上場会社の関連会社への情報伝達は?
Q
 上場会社の親会社への情報伝達は、FDルールの対象外ということですが(ガイドライン問6)、上場会社が他の会社の関連会社である場合、その情報伝達はどうなりますか。
A
 上場会社等が、投資家に対する広報(いわゆるIR)とは関連しない形で、上場会社等の属する企業グループの経営管理のために、自らの株主である他の会社に重要情報を伝達する行為は、通常、FDルールの対象とはならない。

持株会社の子会社の従業員が機関投資家に情報伝達した場合は?
Q
 上場会社である持株会社の主要な事業子会社の管理部門の従業員が、機関投資家に情報を伝達した場合、これはFDルールの対象になりますか。
A
 個別事案ごとに実態に即して判断されるが、上場会社の主要な事業子会社の管理部門の従業員が、当該上場会社の「投資者に対する広報に係る業務」のための説明の一部として当該事業子会社の状況を説明する役割を負っているような場合については、当該従業員によるFDルールの対象となる重要情報の伝達は、当該上場会社の役員等からの指示に基づく伝達としてFDルールの対象となり得る。

証券会社の営業担当者に重要情報を伝達する場合は?
Q
 上場会社等が証券会社の営業担当者に重要情報を伝達する場合、当該営業担当者が社内規則等により「守秘義務」等に係る義務が課されていることを説明し、適切な法人関係情報管理を約束すれば、当該重要情報を公表する必要はありませんか。
A
 上場会社等が証券会社の営業担当者に重要情報を伝達する場合、伝達の際に当該情報が「重要情報」であることを相互確認した上で、当該証券会社の社内規則等により「守秘義務」や「有価証券売買の禁止」に係る義務が課されていることが説明され、適切な法人関係情報管理が相互に合意し、実施されていれば、FDルールに基づく公表は求められない。

株主総会で重要情報を伝達した場合は?
Q
 株主総会で重要情報を伝達してしまったケースは、FDルールの対象外と考えてよいですか。
A
 株主総会において、広報に係る業務として情報が提供される際に、当該情報が①未公表の確定的な情報であって、②公表されれば有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性がある情報である場合には、FDルールの対象になる。

IR・広報担当者以外で対象となるのは?
Q
 上場会社等のIR・広報担当者以外の者が、金商法27条の36第1項の「取引関係者に情報を伝達する職務を行うこととされている者」とは、上場会社等のIR・広報担当者以外にどのような者が該当しますか。
A
 一般的には、上場会社等の役員及びIR・広報部門等の担当者が該当するが、例えば、決算説明会において財務担当者が決算内容の説明をすることとされている場合などには、IR・広報部門等の担当者以外の者が、上場会社等の業務遂行において「取引関係者に情報を伝達する職務を行うこととされている者」に該当する場合もあり得るとされている。

改めて守秘義務の締結は必要?
Q
 上場会社等と取引関係者の間において、守秘義務に関する黙示の合意がある場合や商慣習等により守秘義務を負う場合については、改めて守秘義務を締結する必要はありませんか。
A
 金融機関が、上場会社等との間で黙示の合意や商慣習等により守秘義務を負う場合については、改めて守秘義務契約を締結する必要はない。

法令により売買できない義務を負う場合とは?
Q
 金商法27条の36第1項ただし書にある「法令により」売買をしてはならない義務を負う場合とは、どのような法令を想定していますか。
A
 例えば、金融商品取引業者及び登録金融機関の役員又は従業員における、法人関係情報に基づく、自己の計算において当該法人関係情報に係る有価証券の売買その他の取引等を行うことの禁止(金商業等府令117条1項16号)や、信用格付業者における、信用格付業の業務に関して知り得た情報を信用格付業を遂行するための目的以外に利用しない措置の整備(金商業等府令306条1項12号イ)が挙げられる。

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