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解説記事2018年06月04日 【新会計基準解説】 改正「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」について(2018年6月4日号・№741)

新会計基準解説
改正「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」について
 企業会計基準委員会 専門研究員 橋本浩史

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、2018年4月9日に開催した第382回企業会計基準委員会において、改正「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下「2018年4月改正修正国際基準」という。)の公表を承認し、2018年4月11日に公表した。
 本稿では、2018年4月改正修正国際基準の公表の経緯、概要等を紹介する。なお、本稿における意見に関わる部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りする。

Ⅱ 公表の経緯
 ASBJは、企業会計審議会が公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013年6月)の記載に基づき、2013年7月に「IFRSのエンドースメントに関する作業部会」(以下「作業部会」という。)を設置し、2012年12月31日までに国際会計基準審議会(IASB)により公表された会計基準及び解釈指針(以下、会計基準及び解釈指針を合わせて「会計基準等」という。)に関するエンドースメント手続(エンドースメント手続の概要については、「IV.エンドースメント手続の概要」を参照)を実施し、2015年6月30日に「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下「修正国際基準」という。)を公表した。
 今回の2018年4月改正修正国際基準に係るエンドースメント手続は、2017年6月30日までにIASBにより公表された会計基準等のうち、2014年7月に改正が公表されたIFRS第9号「金融商品」(以下「IFRS第9号(2014年)」という。)における改正点及びその他2018年1月1日以後に発効する会計基準等(ただし、IFRS第16号「リース」(以下「IFRS第16号」という。)及びIFRS第17号「保険契約」(以下「IFRS第17号」という。)を除く。)を対象として、2017年4月から着手し、2017年10月に修正国際基準の改正の公開草案を公表した。その後、2018年1月4日までのコメント募集期間に寄せられた意見に基づいて作業部会及び企業会計基準委員会にて再審議を行い、2018年4月改正修正国際基準を公表するに至った。2018年4月改正修正国際基準では、修正国際基準を構成する以下について改正を行っている。
(1)「修正国際基準の適用」
(2)企業会計基準委員会による修正会計基準第1号「のれんの会計処理」(以下「修正会計基準第1号」という。)
(3)企業会計基準委員会による修正会計基準第2号「その他の包括利益の会計処理」(以下「修正会計基準第2号」という。)

Ⅲ エンドースメント手続の対象
 今回のエンドースメント手続の具体的な対象とした会計基準は次のとおりである。
(1)IFRS第9号(2014年)における改正点
(2)2017年6月30日までにIASBにより公表された会計基準等のうち、上記(1)、IFRS第16号及びIFRS第17号を除く、2018年1月1日以後に発効する会計基準等(以下「その他の会計基準等」という。)、すなわち、
 ① 「投資者とその関連会社又は共同支配企業の間の資産の売却又は拠出」(IFRS第10号及びIAS第28号の修正)(2014年9月公表)及び「IFRS第10号及びIAS第28号の修正の発効日」(2015年12月公表)
 ② 「株式に基づく報酬取引の分類及び測定」(IFRS第2号の修正)(2016年6月公表)
 ③ 「IFRS第9号『金融商品』のIFRS第4号『保険契約』との適用」(IFRS第4号の修正)(2016年9月公表)
 ④ 「IFRS基準の年次改善 2014-2016年サイクル」によるIFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」及びIAS第28号「関連会社又は共同支配企業に対する投資」の修正(2016年12月公表)
 ⑤ IFRIC解釈指針第22号「外貨建取引と前払・前受対価」(2016年12月公表)
 ⑥ 「投資不動産の振替」(IAS第40号の修正)(2016年12月公表)
 ⑦ IFRIC解釈指針第23号「法人所得税務処理に関する不確実性」(2017年6月公表)

Ⅳ エンドースメント手続の概要
 エンドースメント手続はIASBにより公表された会計基準等について、我が国で受け入れ可能か否かを判断したうえで、必要に応じて、一部の会計基準等について「削除又は修正」し、金融庁において指定する仕組みである。
 今回のエンドースメント手続を実施するにあたっては、これまでと同様に、IASBにより公表された会計基準等をエンドースメントする際の判断基準として、公益及び投資者保護の観点から、次の点を勘案している。
・会計基準に係る基本的な考え方
・実務上の困難さ(作成コストが便益に見合わない等)
・周辺制度との関連(各種業規制などに関連して適用が困難又は多大なコストを要することがないか。)
 また、これまでと同様に、「削除又は修正」を必要最小限とすること、すなわち、可能な限り受け入れることとしたうえで、十分な検討を尽くし、我が国における会計基準に係る基本的な考え方及び実務上の困難さの観点からなお受け入れ難いとの結論に達したもののみを「削除又は修正」することとしている。なお、当該方針により手続を行っている理由は、次のとおりである。
・IFRSは所定のデュー・プロセスを経て開発及び公表されたものであり、また、ASBJ及び我が国の市場関係者も関与して開発されていること
・多くの「削除又は修正」が行われた場合、市場関係者に修正国際基準がIFRSから派生したものとして受け止められない可能性があること
・各国又は地域におけるエンドースメント手続の状況をみると、IASBにより公表された会計基準等について、「削除又は修正」を行っている国又は地域は限られており、「削除又は修正」を行っている場合においても、必要最小限にとどめていること
・IASBにより公表された会計基準等との比較可能性に配慮すること
・少数の項目に絞ることによって、我が国の考え方をより強く表明することができると考えられること

Ⅴ エンドースメント手続における検討―IFRS第9号(2014年)における改正点に係る検討

(IFRS第9号(2014年)における改正点に係る検討の対象及び検討の概要)
 IFRS第9号(2014年)は、これまでにエンドースメント手続が行われているIFRS第9号を次の点で改正しており、これらが今回の検討対象となっている。
(1)分類及び測定に関する限定的修正
(2)減損
 ASBJは、この改正点の検討にあたり、次の周辺状況等を確認している。
(1)欧州連合(EU)におけるエンドースメントの状況(欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)による欧州委員会(EC)へのエンドースメント・アドバイス等)
(2)減損の要求事項に関連するバーゼル銀行監督委員会が公表した次の取扱い
 ① 「信用リスクと予想信用損失会計に関するガイダンス」(2015年12月公表)
 ② ディスカッション・ペーパー「自己資本規制上の引当金の取扱い」(2016年10月公表)
 ③ 最終規則文書「自己資本規制上の引当金の取扱い-当面の措置及び経過措置」(2017年3月公表)
(3)欧州銀行監督機構(EBA)が公表したIFRS第9号(2014年)の欧州の銀行における影響度の調査
(4)IFRS第9号(2014年)の開発時に我が国から行った意見発信のフォローアップ
 そのうえで、「削除又は修正」の要否について、後述の検討を行った結果、IFRS第9号(2014年)における改正点について、「削除又は修正」を行わないこととしている。

(「削除又は修正」の検討:分類及び測定に関する限定的修正)  分類及び測定に関する限定的修正においては、負債性金融商品を保有する事業モデルの目的を反映し、企業が回収と売却を目的とする場合、その他の包括利益を通じた公正価値(FVOCI)で測定する区分が新たに設けられている。また、それ以外に、金融資産について償却原価又はFVOCIによる測定が適格となる「元本及び元本残高に対する利息の支払のみ」(SPPI)の要件の明確化が行われている。
 このうち、負債性金融商品のFVOCIで測定する区分については、金融商品の多様な運用の実態を考慮した表示につながり、財務諸表の有用性を向上させる改正と考えられたことに加え、当該項目は認識を中止する際に過去にその他の包括利益に認識した利得又は損失の累積額を純損益にリサイクリング処理することとされており、純損益の総合的な業績指標としての有用性に影響を及ぼさないと考えられた。このため、当該改正について、前述したエンドースメントする際の判断基準に照らして特段の問題はないものとして「削除又は修正」は行わないこととしている。
 また、改正点のSPPI要件の明確化は、当該要件の考え方を大きく変更するものではないと考えられたため、IFRS第9号(2014年)公表前のIFRS第9号についてエンドースメント手続が既に行われていることを踏まえて、当該改正点に関しても前述したエンドースメントする際の判断基準に照らして「削除又は修正」は行わないこととしている。

(「削除又は修正」の検討:減損)  減損に係る改正については、主にエンドースメントする際の判断基準である会計基準に係る基本的な考え方及び実務上の困難さの観点から、当該要求事項に係る「削除又は修正」の要否の検討を次のとおり行っている。
会計基準に係る基本的な考え方  減損に係る改正は、予想信用損失モデルとして、個々の条項が相互に関連する1つのモデルを新たに導入したものであることから、当該モデルの目的と特徴の両面から、全体として評価を行っている。
 まず、予想信用損失モデルは、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」の発生損失モデルにおける信用損失の認識の遅れという金融危機時に生じた問題に対応して開発されており、将来の経済状況の予測を反映することでより早期に見込まれる減損の認識を行うことを目的としていると考え、当該目的に関しては、IFRS第9号は将来予測的な情報の全面的な反映を求めているが、これは、信用損失を適時・適切に認識し測定するために、関連性のある情報を広範に反映する趣旨であるとして、当該目的について特段の論点はないものとしている。
 また、予想信用損失モデルには、金融商品の当初認識以降の信用リスクの著しい増大の有無により認識する予想信用損失を全期間分とするか否かを区分するアプローチ(いわゆる「相対的なアプローチ」)を採用しているという特徴がある。
 当該アプローチは、日本基準における債務者の評価時点の財政状態及び経営成績等に応じて債権を区分する方法(いわゆる「絶対的なアプローチ」)とは異なるアプローチであり、当該アプローチを採用する場合、同一債務者に対する債権について、債務者のキャッシュ・フローの源泉が同じでも組成時期によって引当水準が異なる可能性がある。この点については、組成時期の違いによる信用リスクの違いが金利等の条件に反映されていることを踏まえると、予想信用損失を全期間について測定するか否かを、当初認識以降の信用リスクの変動に基づき判断することにも一定の合理性があるものとして、「削除又は修正」は行わないこととしている。
実務上の困難さ  前述のとおり、予想信用損失モデルは、過去の事象、現在の状況及び将来の経済状況の予測についての、報告日において過大なコストや労力を掛けずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報を当該予想信用損失の見積りに反映することを要求しており、当該見積りに将来予測的な情報を反映することとしている。また、相対的なアプローチでは、全期間の予想信用損失を測定する金融商品と12か月の予想信用損失を測定するものに区分するにあたり、当初認識以降の信用リスクの著しい増大を判定することを要求している。
 ASBJは、これらの2点について、IFRS第9号(2014年)の開発時に我が国から行った意見発信などにおいて、実務上の困難さの観点で懸念を表明していることを周辺状況の確認等の作業において確かめている。このため、ASBJは当該2点に関して、金融機関における実務も踏まえて検討を行った。
 検討にあたり、ASBJでは、我が国の一部の銀行を対象に対応の可能性を調査したが、実務における対応が継続して検討されている状況であり、現時点で実務上の困難さの評価を行うことは容易でない側面があった。しかしながら、いずれの課題に対しても欧州その他の地域では深刻な懸念は聞かれておらず、また、IASBにおける議論でも基準の見直しにつながる検討は行われていない。その中で、エンドースメント手続においては、実務上の困難さの観点からなお受け入れ難いとするほどの我が国特有の事情も見出されないことから、「削除又は修正」は行わないこととしている。

Ⅵ エンドースメント手続における検討―その他の会計基準等に係る検討
 「Ⅲ.エンドースメント手続の対象」の(2)で示すその他の会計基準等については、既にエンドースメントされた会計基準等や対応する日本基準での取扱いとの比較を行い、エンドースメント手続の判断基準に照らして、「削除又は修正」の要否を検討している。
 その結果、その他の会計基準等は、主に、当面の経過措置を定めるものや要求事項の明確化を行うものであり、「削除又は修正」は行わないこととしている。

Ⅶ 修正国際基準の改正及び適用時期
 2018年4月改正修正国際基準では、今回のエンドースメント手続の検討結果を反映するように「修正国際基準の適用」の「別紙1 当委員会が採択したIASBにより公表された会計基準等」及び「別紙2 企業会計基準委員会による修正会計基準」を改正している。
 また、「Ⅴ.エンドースメント手続における検討―IFRS第9号(2014年)における改正点に係る検討」及び「Ⅵ.エンドースメント手続における検討―その他の会計基準等に係る検討」のとおり、今回のエンドースメント手続において「削除又は修正」を行っていないが、修正会計基準第1号及び修正会計基準第2号について、主にIFRS第9号(2014年)における改正点を反映するように文言を修正している。
 適用時期に関しては、これまでと同様に、企業が修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成する場合、改正後の「修正国際基準の適用」を公表日以後開始する連結会計年度から適用することとしている。

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