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解説記事2018年06月25日 【税務マエストロ】 免税(2)~外国貨物とその関連取引(2018年6月25日号・№744)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
免税(2)~外国貨物とその関連取引
#215 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#216
タックスヘイブン対策税制関連のQ&Aについて③
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説  輸出の許可を受けた貨物や輸入貨物で輸入許可前のものを関税法で外国貨物と定義している(関税法2①三)(図1参照)。

 外国貨物は、通関手続をしないと国内への搬入ができないことから、結果として外国貨物のままでは国内での消費使用もできないこととなる。そこで、外国貨物の譲渡や貸付けについては輸出免税の規定を適用することとしたものである(消法7①二)。
 これに関連して、保税地域内での輸出入貨物の荷役、運送、保管、検数、鑑定などの役務提供についても免税とされている(消令17②四)。
 今月は、外国貨物とこれに関連する取引について、課税区分の取扱いを確認する。

1 外国貨物の譲渡、貸付け  資産の売買をする場合、売買の対象となる資産は必ずしも売り手から買い手に移動するとは限らない。輸入貨物を保税地域内に蔵置したままで、これを国内の事業者に譲渡したような場合には、たとえ国内の事業者に対する譲渡であっても輸出免税の規定が適用されることになる(図2参照)。

 この場合は、実際の通関手続きは貨物の購入者が行うこととなり、通関時に納付することとなる消費税は、貨物の購入者(輸入者)が仕入税額控除の対象とすることになる。

2 船荷証券の取扱い  「船荷証券」とは、船に積んである貨物を売買するときに使う証券であり、「証券」という名称にはなっているものの、非課税となる有価証券からは除くこととされている(消基通6-2-2)。したがって、「船荷証券」の譲渡は貨物の譲渡に該当し、その貨物が課税貨物である限り、課税取引に該当することになる。
 注意したいのは、課税か非課税かをみる前に、まず、その取引が国内取引に該当するかどうかを判定しなければいけないということである。消費税法基本通達5-7-11には「……原則として当該船荷証券の譲渡が行われる時において当該貨物が現実に所在している場所により国内取引に該当するかどうかを判定する……」と記載されているので、原則論は譲渡時における貨物の所在場所で内外判定をすることになる。
 しかし、これを現実問題として考えた場合、とてもではないが貨物の所在場所をひとつひとつ確認することは困難であり、また、これを立証することも難しいであろう。
(1)荷揚地が国内の場合  消費税法基本通達5-7-11の後段では、「……その船荷証券に表示されている「荷揚地」(PORT OF DISCHARGE)が国内である場合の当該船荷証券の譲渡については、その写しの保存を要件として国内取引に該当するものとして取り扱って差し支えない。」と定め、輸入貨物については貨物の到着前の譲渡であってもこれを国内取引に取り込むことを認めている。
 よって、貨物が日本に到着する前に船荷証券を譲渡した場合には、その船荷証券の譲渡は外国貨物の譲渡に該当し、結果として輸出免税の規定を適用することができるのである。
 船荷証券の売上高を輸出免税売上高として処理した場合には、国外売上高として処理した場合に比較して課税売上割合が上昇し、納税者に有利に作用することになる。
 また、現実の貨物の所在場所で判断するという煩わしさからも解放されることになるので、実務上も、貨物が到着する前の船荷証券の譲渡は輸出免税として処理をすることになるものと思われる。

【具体例】
 当社では、内国法人A社の海外工場で生産した貨物を仕入れ、これを内国法人B社に販売することになった。当社では、A社から交付を受けた船荷証券をB社に譲渡したが、貨物はA社の海外工場から直接B社の国内倉庫へ納品することとなっている。

(2)荷揚地が国外の場合  船荷証券の譲渡を輸出免税の対象とすることができるのは、(1)のように、その貨物の荷揚地が国内の場合に限られている。荷揚地が国外とされている船荷証券を譲渡した場合には、その譲渡については輸出免税の適用はなく、国外取引に該当することとなるので注意が必要だ(図3参照)。

【具体例】
 当社では、内国法人A社の海外工場で生産した貨物を仕入れ、これを内国法人B社に販売することになった。当社では、A社から交付を受けた船荷証券をB社に譲渡したが、貨物はA社の海外工場から直接B社の海外支店へ納品することとなっている。

3 三国間貿易  国外の取引先から仕入れた貨物を国外の取引先に譲渡する場合には、貨物の流通経路により課税上の取扱いが異なることとなる。
 次の(1)(2)の取引は、実質的な経済効果は同一であり、また、会計処理も同一になるものと思われるが、貨物の流通経路により消費税における取扱いは異なることとなるので注意が必要だ(消基通5-7-1)。
(1)資産の譲渡が国内取引に該当するか否かの判定は、譲渡時における譲渡資産の所在場所によることとされている(消法4③一)。したがって、国外で調達した商品を保税地域に陸揚げしたが、通関手続をする前に国外の取引先から注文がはいったため、貨物を保税地域から引き取らずにそのまま第三国に納入した場合には、その貨物の譲渡は国内取引に該当し、課税の対象となる。
  また、このような取引については、関税法75条(外国貨物の積みもどし)の規定により内国貨物を輸出する場合の手続規定が準用されるので、消費税法上も輸出免税の規定が適用されることになる(消基通7-2-3)。
  税額計算においては、商品仕入高は国外取引であるから仕入税額控除の対象とはならず、商品売上高を課税売上割合の計算上、分母と分子に計上することになる(図4参照)。

(注)仕入商品を相手先が譲渡する時の貨物の所在場所は国外であるから、仕入商品の売買は国外取引となる。
(2)国外で商品を調達した後、すぐに国外の取引先から注文がはいったため、商品を国内に搬入しないで直接仕入先から販売先へ納品した場合には、譲渡時における資産の所在場所は国外となる。よって、国内取引には該当しないことから輸出免税の適用もなく、商品売上高は課税売上割合の計算には一切関係させないことになる(図5参照)。


4 外国貨物に係る役務提供  保税地域内で行われるの輸出入貨物(外国貨物)の荷役、運送、保管、検数、鑑定などの役務提供についても輸出免税の規定が適用されることとなっている(消令17②四)。
 したがって、貨物の輸出入手続きに伴い、通関業者などに支払うこととなる通関業務料金などの費用は課税仕入れとはならないことに注意する必要がある。なお、通関業者などに支払う輸出入諸経費であっても、保税地域から自社の倉庫までの運賃などは当然に課税仕入れに該当することとなるので、貨物の輸出入に伴い発生する諸経費については、課税区分に注意しなければならない(図6参照)。


 なお、輸出しようとする貨物(輸出許可前の貨物)や輸入の許可を受けた貨物は、関税法においては内国貨物に区分することとなるが、たとえ内国貨物に係るものであっても、指定保税地域内において行われる荷役、運送、保管、検数、鑑定などの役務提供については輸出免税の規定を適用することとしている(消令17②四かっこ書)。

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