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労働基準2024年04月03日 労働条件明示のルール変更について 執筆者:大神令子

今この原稿を書いているのは2024年3月で、これが記事として掲載される頃には4月1日を過ぎてしまっているかもしれませんが、2024年4月から労働条件通知書に記載する必要がある項目が増えますので、それについてお話いたします。

変更点は大きく3つあります。
1. 全ての雇用する従業員に対して「就業場所・業務の変更の範囲」
2. 有期契約従業員に対して「更新上限の有無と内容」
3. 有期契約従業員に対して「無期転換申込機会と無期転換後の労働条件」

1. 就業場所・業務の「変更の範囲」の明示

 この明示は全ての従業員に対して行う必要があります。パート・アルバイトや、契約社員、定年後の再雇用も対象となります。
 とは言っても、対象となるのは以降に雇用契約を行い、労働条件通知書を交付する従業員に対してです。既に雇用している従業員については、わざわざ労働条件通知書を交付しなおす必要はありません。
 しかし、2024年4月1日より前に雇用契約を取り結び労働条件通知書を交付している従業員であっても、契約更新等で再度契約を取り交わす場合には明示が必要となります。「労働条件通知書兼雇用契約書」として、給与額が変わる度に雇用契約書の取り交わし直しをされている場合は記載の必要がありますので御注意ください。
 また、対象ではない既存の従業員であっても、混乱を生じさせないためには、明示した労働条件通知書の交付をしていただいた方が良いかもしれません。

 記載しなければならないことは、「就業場所と業務の変更の範囲」についてです。
 今までは、雇用契約を取り結ぶ時点での就業場所と業務内容についての明示が必要でしたが、今後は、それに加えて通常の勤務を続ける中で就業することが想定される就業の場所と、従事することが想定されている業務についても記載しなければならなくなりました。
 これには一時的な臨時の変更は含みませんが、想定される可能性があれば記載しなければなりません。例えば、テレワークを行う可能性があるのであれば「自宅」などテレワークを行う場所も記載する必要があります。
 具体的には今までの労働条件通知書の「就業の場所」や「従事すべき業務」の項目を「(雇入れ直後)」と「(変更の範囲)」の二つにわけていただき、それぞれを記載していただくことになります。雇入れ直後については基本的には今までと同じとなりますが、変更の範囲については、幅を持たせた書き方も限定的な書き方も可能です。もし就業の場所が1カ所しかなく変更の可能性が無いという場合であれば「(変更の範囲)変更なし」と記載することになります。企業によっては、「(雇入れ直後)」の項目も今までとは書き方が変わってくる場合があると思いますので、詳しい書き方については社会保険労務士等にお問い合わせください。

2. 契約更新上限の書面の明示と更新上限を新設・短縮する場合の説明

 この明示の対象者は有期契約の従業員です。パート・アルバイト・定年後の再雇用の方で契約期間に定めがある方も対象です。そして、契約更新の度に記載する必要があります。
 契約更新の上限については今までは特に記載の必要がありませんでしたが、その上限がある場合には、「契約期間は通算○年を上限とする」「契約の更新回数は○回まで」等と記載する必要があります。
 更新上限を新たに設けようとする場合や更新上限を短縮しようとする場合には、そのような契約書の取り交わしをする前に、その理由を説明しなければなりません。トラブル防止のためにも、書面を交付し面談等により対象従業員本人に説明することが望ましいです。もちろん、その内容を対象従業員に理解していただく必要があります。そのためにも双方で確認するような形が望ましいです。

3. 無期転換の申込機会についての書面の明示と無期転換後の労働条件の書面の明示

 この明示の対象者は、有期契約の従業員でも無期転換申込権が発生する従業員が対象となります。
 「無期転換申込権」は有期労働契約が5年を超えて更新された場合に生じ、有期契約の従業員が企業に対して無期転換の申込みをした場合には無期労働契約が成立し、無期契約としての従業員となるというルールです。これは、有期契約が5年を超えた時に無期転換の申し込みをしなくても、その後有期契約が続く限りは存在する権利です。
 その「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、該当する有期労働契約の契約期間の初日から満了する日までの間に①無期転換の申し込みができることと、②無期転換後の労働条件を書面で明示することが必要になります。②無期転換後の労働条件については、上記の無期転換申込権が生じる契約更新の時の他、無期転換申込権を行使したことによって無期労働契約が成立した時にも明示する必要があります。
 「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングは、有期契約の契約期間によっては5年を超える前になることもありますので、御注意ください。

(2024年3月執筆)

執筆者

大神 令子おおがみ れいこ

社会保険労務士

略歴・経歴

大神令子社会保険労務士事務所代表

2000年(平成12年)12月 社会保険労務士試験 合格
2001年(平成13年) 2月 大阪府社会保険労務士会 登録
2002年(平成14年) 4月 大阪府内社会保険事務所にて 社会保険相談指導員
2006年(平成18年)12月 大神令子社会保険労務士事務所設立

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