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解説記事2018年09月17日 【SCOPE】 株主提案権の議案数は「10」に、複数の内容の議案の数え方は?(2018年9月17日号・№755)

提案理由と整合性を欠くか否かがポイント
株主提案権の議案数は「10」に、複数の内容の議案の数え方は?

 法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会(部会長:神田秀樹学習院大学法科大学院教授)が検討している会社法の見直しでは、株主提案権の濫用的な行使を制限するため、株主が提案することができる議案数を「10」までとする方向となっている。また、ここで問題となるのは議案数の数え方だ。例えば、複数の事項をその内容とする定款の変更に関する議案については、当該複数の事項が別個に可決又は否決されたとすれば提案の理由との整合性を欠くことになる場合には1つの議案として数えることになる。

選任する役員等の数は関係なし
 法制審議会の会社法制部会が検討している会社法の見直しでは、株主提案権が大きな論点の1つとなっている。
 一部の会社ではあるが、1人の株主が不当と認められるような目的で膨大な数の議案を提案する等の株主提案権を行使している事例を踏まえ、株主提案権の濫用的な行使を制限する。具体的には、株主が提案することができる議案の数については、「10」までに制限することとしている。今年2月に公表された「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」では、「5」又は「10」までに制限する2つの案が提示されていたものである。
 「10」を超える数の議案については株主提案として適用しないこととなるが、ここで問題となるのは議案の数え方だ。現段階では表1に掲げた方法となる模様。取締役、会計参与、監査役又は会計監査人(役員等)の選任に関する議案については、選任される役員等の数に関係なく、1つの議案と数えることになる。また、複数の事項をその内容とする定款の変更に関する議案については、当該複数の事項が別個に可決又は否決されたとすれば提案の理由との整合性を欠くこととなるおそれがある場合には、1つの議案として数え、それ以外の場合には、1つの事項ごとに1つの議案と数えることになる。

【表1】議案の数え方
① 役員等の選任に関する議案:選任される役員等の数にかかわらず、一の議案と数える。
② 役員等の解任に関する議案:解任される役員等の数にかかわらず、一の議案と数える。
③ 会計監査人を再任しないことに関する議案:再任しないこととされる監査人の数にかかわらず、一の議案と数える。
④ 複数の事項をその内容とする定款の変更に関する議案:当該複数の事項が別個に可決又は否決されたとすれば提案の理由との整合性を欠くこととなるおそれがある場合にはまとめて一の議案と数え、それ以外の場合には一の事項ごとに一の議案と数える。

 例えば、「監査等委員会の設置の提案」及び「監査役及び監査役会の廃止の提案」の2つの議案については、会社法上、監査等委員会設置会社は監査役を置いてはならないこととされている。したがって、監査等委員会の設置を行う旨の提案は監査役及び監査役会の廃止を当然に予定したものということができるため、この2つの議案はまとめて1つの議案としてカウントすることになる(表2参照)。

【表2】株主提案の内容等と議案の数え方の方向性
内容及び理由 議案の数え方の方向性
 事例1 (提案の内容)
(a)監査等委員会の設置とそれに伴う規定の整備を行う旨の提案
(b)監査役及び監査役会の廃止とそれらに伴う規定の整備を行う旨の提案
会社法上、監査等委員会設置会社は監査役を置いてはならないこととされているため(会社法327条4項)、監査等委員会の設置を行う旨の提案は監査役及び監査役会の廃止を当然に予定したものということができ、少なくとも(a)が可決された場合において、(b)が否決されたときは整合性を欠くことになる。したがって、(a)及び(b)はまとめて一の議案として数えることになる。
(提案の理由)
「モニタリング・モデルに移行し、取締役会による監督機能を強化するため」
(提案の内容)
S社の定款の事業目的に
(a)貸金業を追加する旨の提案
(b)不動産管理業を追加する旨の提案
D社を吸収合併するに当たって、S社がD社の権利義務を包括的に承継することとなるため、D社の事業である貸金業及び不動産管理業を一括してS社の定款の事業目的に追加するためにされたものである。D社の事業のうち、いずれか一方の事業のみをS社の定款の事業目的に追加したとしても、他方の事業をS社の定款の事業目的に追加しないこととなれば、D社の事業を一括してS社の定款の事業目的に追加したことにならない。したがって、(a)又は(b)のいずれか一方の提案が可決され、かつ、他方の提案が否決された場合において、整合性を欠くこととなるおそれがあるときに当たるため、(a)及び(b)はまとめて一の議案として数えることになる。
事例2 (提案の理由)
「貸金業及び不動産管理業を行うD社を吸収合併するに当たって、S社がD社の権利義務を包括的に承継することとなることから、D社の事業を一括してS社の定款の事業目的に追加するため」
事例3 (提案の内容)
取締役の員数の枠に余裕がない会社における
(a)取締役の員数の枠を拡大する旨の提案
(b)社外取締役と責任限定契約を締結することができるという定めを設ける旨の提案
現時点で有能な社外取締役を外部から招へいすること自体を目的とする提案ではなく、将来的に有能な社外取締役を外部から招へいすることができるように環境を整備することを目的とする提案である。このような目的との関係においては、(a)により、現任の役員に加え、さらに社外から有能な人材を招へいすることを物理的に可能にすることと、(b)により、社外取締役として期待される役割を十分に発揮することができるように責任を限定することとは、いずれも有用な事項ではあるが、いずれかの事項のみでは可決されたとしても意味がない、又は支障を来すというような性質のものではない。したがって、(a)又は(b)のいずれか一方の提案が可決され、かつ、他方の提案が否決された場合において、整合性を欠くこととなるおそれがあるときに当たるということはできないものと考えられるため、(a)及び(b)は別個の議案として数えるべきこととなる。
(提案の理由)
「現任の役員は維持しつつ、将来的に新たに有能な社外取締役を外部から招へいすることができるように環境を整備するため」
(出典:法制審議会会社法(企業統治等関係)制部会資料23に基づき編集部作成)

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