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税務ニュース2006年01月09日 課税庁は「裁判所による法創造機能の発揮」を求める(2006年1月9日号・№145) 「外国税額控除の控除余裕枠を利用した取引は制度の濫用」と判示

課税庁は「裁判所による法創造機能の発揮」を求める
「外国税額控除の控除余裕枠を利用した取引は制度の濫用」と判示


 最高裁判所第二小法廷(今井 功裁判長)は、12月19日、我が国の銀行が外国税額控除の控除余裕枠を利用した取引を行い、法人税法69条の規定に基づいて外国法人税の額を控除した申告をしたことに対して、外国税額控除は適用されないとする課税処分の是非が争われていた事案(りそな事案・三井住友事案)について、いずれの事案についても銀行の処分取消請求を斥ける判決(決定)を言渡した(行った)。

2件の控訴審(大阪高裁)の判断は正反対
 りそな事案・三井住友事案(ペプシコ事案・ロシコ事案)は、その契約等の内容に若干の違いがあるものの、我が国の銀行(旧大和銀行・旧住友銀行)が、法人税法69条の定める外国税額控除制度による外国税額控除の控除余裕枠を利用した取引と意義付けられていたものである。
 「りそな事案」では、控訴審(大阪高裁)は、「本件取引は事業目的のない不自然な取引ではなく、銀行として事業目的のある取引である」・「本件取引が外国税額控除のみを目的とした取引であると断定することはできない。したがって、本件取引は外国税額控除制度の濫用には当たらない」と判示して、課税処分を取り消していた(大阪高裁平15.5.14判決)。
 一方、「三井住友事案」では、控訴審(大阪高裁)は、「外国税額控除の余裕枠を利用させる取引は、法69条の制度の趣旨・目的を著しく逸脱するものというべきであり、法69条の制度を濫用するもの」と判示して、課税処分を容認していた(大阪高裁平14.6.14判決)。
 大阪高裁での2件の控訴審の判断は類似した事案について正反対のものであった。

課税庁の主張①「租税自体を目的とする取引⇒公平課税に反する」
 「りそな事案」については、課税庁側の上告受理申立てに対して、上告審として受理決定され、11月21日に口頭弁論が開かれた。一方、「三井住友事案」については、12月19日、「りそな事案」判決言渡しに併せて、三井住友銀行の上告棄却及び上告審不受理決定が行われている。
 上告審が開かれたりそな事案では、課税庁側は、原審(大阪高裁)判決には、法人税法69条1項の解釈適用の誤りがあると次のように主張した。
 「本件取引の実質は、外国税額控除枠の提供であり、相手方が取得する金員の実質はその対価と見るのが実体に即している。このような実体経済を伴わない、租税それ自体を目的とする取引を通常行われる取引と同列に扱って法69条1項を適用することは著しく不当であり、公平課税の原則に反する。このような外国税額控除制度の利用は、およそ制度の趣旨とはかけはなれたものであって、悪質である。本件について法69条1項を適用して外国税額控除をするのは、同条の趣旨を逸脱し、外国税額控除制度を濫用するものであるから、同条は適用されないというべきである。」

課税庁の主張②「裁判所の『法の創造』による解決」
 さらに課税庁は、「明文の否認規定がなければ、租税回避行為は否認できない。」とする命題に対して、次のように主張して、裁判所が法の創造機能を発揮することによって解決を図ることを求めた。
 「我が国においては、明文の租税回避否認規定がなければ原則として租税回避行為を否認しえないとして、ともすれば、硬直的、形式的に租税法を解釈・適用することに流れやすく、そのため、もともと外国のアレンジャーに狙われやすい面がある。そして、立法による解決を過度に重視する見解からは、課税逃れの防止は新たな立法によって対応すれば足りるとするのであるが、日々法の間隙を衝くようにして新たなスキームが構築される国際的租税回避の分野にあっては、事後的に新たな立法を行うことで租税回避防止を図ることには自ずと限界があるのであり、公平課税の原則上、租税回避行為の問題の解決を立法のみに依存することはできないのである。(中略)本件のような制度の趣意・目的に反する著しい濫用事案においてこそ、裁判所が法の創造機能を発揮して、具体的な解決を図ることは、租税法律主義の原則に背馳せず、また、法による裁判の性格を失うことのない司法に求められる役割と考える次第である。」

最高裁判決「制度の濫用⇒税負担の公平を著しく害するもの」
 課税庁側の主張に対して、りそな側も、「『公平課税の原則』といった課税庁の論理を租税法規の解釈に持ち込み、事案の具体的解決を図ることは、行政権の恣意による課税を行う以外の何物でもない」・「租税法規は侵害規範であり、文理解釈によるべきである」などとの反論を行った。
 最高裁判所第二小法廷は、「これは、我が国の外国税額控除制度をその本来の趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ、(中略)我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものというほかない。そうすると、本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは、外国税額控除制度を濫用するものであり、さらには、税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。」と判示して、りそなの課税処分取消請求を斥けた。
 本件上告審判決における判示は、三井住友事案における大阪高裁の判断を援用したものということができ、直接に「裁判所の法創造機能の発揮」に関わるものではない。しかし、国際的租税回避スキームに対する課税庁の危機感が、本件上告審における課税庁の主張には見られていたことから、課税庁の危機感に最高裁が応えたものとの見方も可能といえよう。租税法解釈における「権利の濫用」は、租税法律主義との整合性に疑問を残すが、国際的租税回避スキームに対する司法の役割という視点からも、本件事案は注目すべきものである。
 

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