カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2019年01月21日 【SCOPE】 時価算定会計基準案が決定、現行実務に一定の配慮も(2019年1月21日号・№771)

市場価格のない株式等は従来どおり取得原価
時価算定会計基準案が決定、現行実務に一定の配慮も

 企業会計基準委員会(ASBJ)は1月11日、「時価の算定に関する会計基準(案)」等を決定した。同会計基準案は公正価値測定に関するガイダンス及び開示を定めるもの。基本的にIFRS第13号「公正価値測定」の内容をすべて取り入れることとしているが、市場価格のない株式等の取扱いなど、従来の実務に配慮した取扱いも設けている。適用は平成32年(2020年)4月1日以後開始する連結会計年度等の期首から適用するが、平成33年(2021年)3月31日以後終了する連結会計年度等の年度末からの適用も容認する(本誌770号24頁参照)。同委員会では、4月5日まで意見募集を行い、6月頃にも正式決定する方針だ。

期末前1か月の市場価格の平均価額は使用できず
 時価算定会計基準案の対象は金融商品のほか、トレーディング目的で保有する棚卸資産等となる。これ以外の金融商品以外の資産及び負債については対象外となっている。また、同会計基準案では、時価について「算定日において市場参加者間で秩序のある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう」と定義。IFRS第13号では「公正価値」という用語が使用されているが、同会計基準案では従来どおり「時価」という用語を用いている。
 なお、時価の定義の変更に伴い、現行の金融商品会計基準におけるその他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができるとの取扱いについては、その平均価額が時価の定義を満たさなくなることから削除する(本誌755号10頁参照)。
 ただし、その他有価証券の減損を行うか否かの判断については、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる取扱いを容認した(本誌760号12頁参照)。なお、この場合であっても、減損損失の算定には期末日の時価を用いることとなる。
レベル1から3の順に使用  資産又は負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示によることとし、時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法、例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチを用いる。評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプット(今号42頁参照)を最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする。時価の算定に用いるインプットは、レベル1からレベル3の順に使用することになる。

ブローカーなど、第三者から入手した相場価格の利用も可能
 時価算定会計基準では、従来の実務等に配慮した取扱いも設けられている。例えば、取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができることとした。ただし、銀行、保険会社、証券会社、ノンバンクなど、総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業においては、第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団又は企業から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合、一定のデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができるとした。
 なお、前述の銀行等以外の企業においては、時価の算定の不確実性が相当程度低いと判断される特定のデリバティブ取引については、第三者から提供された価格を時価とみなすことができるとする取扱いを認めている。
 また、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能だとしても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とすることとしている。
一般企業は第1・第3四半期の注記の省略化  開示についてはのとおり。基本的にIFRS第13号の開示項目との整合性を図っているものの、「レベル1の時価とレベル2の時価との間のすべての振替及びその振替の理由」「レベル3の時価について観察できないインプットを合理的に考え得る代替的な仮定に変更した場合の影響」についてはコスト等を考慮して開示を不要としている。

【表】開示項目
>貸借対照表又は注記のみで時価評価する金融商品
 ・時価レベルごとの残高

>貸借対照表又は注記のみで時価評価するレベル2の時価又はレベル3の時価の金融商品
 ・時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明
 ・時価の算定に用いる評価技法又はその適用の変更及びその理由

>貸借対照表において時価評価するレベル3の時価の金融商品
 ・時価の算定に用いた重要な観察できないインプットに関する定量的情報
 ・時価がレベル3の時価に区分される金融資産及び金融負債の期首残高から期末残高への調整表
 ・純損益に認識した未実現損益
 ・企業の評価プロセスの説明
 ・観察できないインプットの変化に対する感応度の記述的説明

 また、四半期開示については、「時価レベルごとの残高」のうち貸借対照表において時価評価する金融商品について、企業の事業運営にあたって重要な項目であり、かつ、前年度末と比較して著しく変動している場合に開示することが求められる。ただし、金融機関など以外の一般事業会社については第1四半期及び第3四半期での注記を省略できる。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索