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解説記事2022年02月07日 税務マエストロ 登録申請書の雛型に関する疑問点(2022年2月7日号・№917)

税務マエストロ
登録申請書の雛型に関する疑問点
#269
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 いよいよ来年からインボイス制度がスタートする。おそらくは、300万人(社)を超えるほとんどの課税事業者と、500万人(社)を超える免税事業者のうち、BtoB取引のようにインボイスの発行を余儀なくされる相当な数の事業者が、令和4年から令和5年にかけ、インボイスの登録申請をしていくものと思われる。
 令和3年10月1日からスタートしたインボイスの登録申請であるが、ここにきて、登録申請書(第1−(1)号様式)の記載方法についての質問が筆者の基に数多く寄せられている。そこで、本稿ではこの登録申請書の記載方法に関する疑問点を洗い出し、読者の皆様と共に問題点を検討してみたい。
 個人事業者が令和5年10月1日に登録を受ける場合の申請期限は令和5年3月31日であるが、特定期間中の課税売上高等が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる事業者の申請期限は6月30日まで延長されている(平成28年改正法附則44①)。
 また、これらの期限までに申請することにつき、困難な事情がある場合には、その困難の度合いを問わず、9月30日まで申請期限を延長することができる(平成30年改正令附則15、インボイス通達5−2)。
 令和4年1月1日から令和5年9月30日までの間にインボイスの登録申請をするケースについて、登録申請書の記載要領に沿って、次頁上の表の申請パターン(番号)別に確認する。
 令和3年10月1日から令和5年9月30日までの間に登録申請する場合には、「第1−(1)号様式」を用いることとなるが、この『「適格請求書発行事業者の登録申請書(国内事業者用)及び次葉」の記載要領等』の「3 記載要領」には次頁のような説明がされている。

1 記載要領等−3 記載要領の(1)

 :
(1)「事業者区分」欄は、この申請書を提出する時点において、該当する事業者の区分に応じて□にレ印を付します。
  免税事業者に該当する場合は、次葉「免税事業者の確認」欄を記載してください。
 :

 記載要領の(1)には、「……この申請書を提出する時点において、該当する事業者の区分に応じて□に✓印を付します。」と書かれているので、インボイス制度がスタートする令和5年の納税義務に関わらず、令和4年中に申請する場合には、令和4年の納税義務に従ってをすることになる。
 「記載要領」と「事業者区分」欄には、『「……免税事業者に該当する場合(に)は、次葉「免税事業者の確認」欄を(も)記載してください。』と記載されているが、ここに書いてある「免税事業者」というのは、申請書と記載要領の書きぶりからして、申請書を提出する時点において免税事業者であるケースを指すものと思われる。
 そうすると、令和4年中の申請であれば申請パターン(表)の②と③のケース、令和5年1月1日〜9月30日の申請であれば⑥と⑧のケースがこれに該当することになる。

2 記載要領等−3 記載要領の(2)

 :
(2)次葉「免税事業者の確認」欄は、次のイ又はロいずれかの該当する事業者の区分に応じて□にレ印を付し、次により記載します。
イ 令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受け、附則第44条第4項の規定の適用を受けようとする事業者に該当する場合、次により「事業内容等」欄を記載します。
(イ)「生年月日又は設立年月日」欄は、個人事業者は生年月日を、法人は設立年月日を記載します。
  なお、元号は、該当する箇所に○を付します。
(ロ)「事業年度」欄は、法人の事業年度を記載します(個人事業者は不要です。)。
  なお、設立1期目で事業年度が変則的なものとなる場合などは、通常時の事業年度を記載します。
(ハ)「資本金」欄は、資本金の額又は出資の金額を記載します(個人事業者は不要です。)。
  また、個人事業者は、「個人番号」欄に個人番号を記載します(本人確認書類(※)の提示又は写しの添付が必要です。)。この申請書の控えを保管する場合は、その控えには個人番号を記載しないなど、個人番号の取扱いには十分にご注意ください。

ロ 「消費税課税事業者届出書」又は「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者に該当する場合、「消費税課税事業者届出書」又は「消費税課税事業者選択届出書」の「適用開始課税期間(自)」欄に記載した年月日を「課税期間の初日」欄に記載します。ただし、当該課税期間の初日が令和5年10月1日から令和6年3月31日の場合に限ります。
  この場合、「消費税課税事業者届出書」又は「消費税課税事業者選択届出書」は、この申請書の提出前又は提出と同時に提出してください。
 :

 「イ」は、令和5年10月1日の属する課税期間から登録する免税事業者に関する説明である。なお、(イ)〜(ハ)の解説は必要ないであろうから省略する。
 令和5年3月31日までに登録申請をすることにより、個人事業者であれば、令和5年1月1日〜9月30日までの間は免税事業者として申告不要となり、令和5年10月1日〜12月31日までの間は適格請求書発行事業者としてインボイスの発行ができることとされている(平成28年改正法附則44④)。

 平成28年改正法附則44条4項の経過措置は、下記(ⅰ)〜(ⅲ)に該当することにより、令和5年が課税事業者となる個人事業者は除かれている(同項のかっこ書(下線の箇所))。
(ⅰ)令和3年中の課税売上高が1,000万円を超えたことにより、令和5年が課税事業者となるケース
(ⅱ)「課税事業者選択届出書」を提出したことにより、令和5年が課税事業者となるケース
(ⅲ)令和4年1月1日〜6月30日の課税売上高が1,000万円を超えたことにより、令和5年が課税事業者となるケース

○平成28年改正法附則44条4項
 :
4 新消費税法第57条の2第2項の申請書を提出した事業者(登録開始日が5年施行日の属する課税期間中である事業者に限る。)の当該課税期間(その基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間、消費税法第9条第4項の規定による届出書の提出により、又は同法第9条の2第1項、第10条第2項、第11条第2項から第4項まで、第12条第1項から第4項まで若しくは第6項、第12条の2第1項若しくは第2項、第12条の3第1項若しくは第3項若しくは第12条の4第1項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間及び当該登録開始日の前日までに同法第10条第1項の相続、同法第11条第1項の合併又は同法第12条第5項の吸収分割があったことにより消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)のうち当該登録開始日から当該課税期間の末日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税法第9条第1項本文の規定は、適用しない。
 :

 結果、令和4年中の申請であれば、申請パターン(表)の②と④のケース、令和5年1月1日〜9月30日の申請であれば⑥と⑧のケースが経過措置の適用対象取引に該当することになる。

 ここで気になるのが、「事業者区分」欄との関係である。「事業者区分」欄の※印の説明により「免税事業者の確認」欄の記載が必要となるのは、令和4年中の申請であれば申請パターン(表)の②と③のケース、令和5年1月1日〜9月30日の申請であれば⑥と⑧のケースである。
 では、③と④のケースは、申請書にどのように記載したらよいのであろうか?

(③のケース)
 ③のケースは申請時に免税事業者であるから、申請書の「事業者区分」の欄は免税事業者の□に✓することになる。しかし、令和5年は課税事業者になるので、「免税事業者の確認」欄の上部の□に✓することはできないように思えるのである。
 令和3年が免税事業者で、令和3年10月1日〜12月31日期間中に登録申請するのであれば、申請時には令和3年中の課税売上高はわからない。結果として、令和3年中の課税売上高が1,000万円を超え、令和5年が課税事業者になったとしても、平成28年改正法附則44条4項の規定を適用した結果、同項のかっこ書により経過措置の適用はないこととなるので、「免税事業者の確認」欄の上部の□に✓しても問題はないものと思われる。
 しかし、令和4年中の申請であれば、(令和3年中の課税売上高を集計する前に慌てて申請するのでない限り)基本的に令和3年中の課税売上高は確定しているはずである。そうすると、令和3年中の課税売上高が1,000万円を超え、令和5年は課税事業者になることが確定している場合であっても、「免税事業者の確認」欄の上部の□に✓してよいのであろうか?「課税事業者届出書」を提出し、令和5年1月1日から課税事業者になることが確定している場合であっても、「経過措置の適用申請をした結果、平成28年改正法附則44条4項のかっこ書で除かれて経過措置の適用を受けることができないこととなりました。」ということを、「免税事業者の確認」欄の上部の□に✓をして申請しなければいけないのであろうか?
 もしそうだとしたならば、その旨の解説をもう少し丁寧に「記載要領等」に記述する必要があるのではないか? インボイスの登録は、税理士が関与していない小規模事業者も申請することが想定されている。動画の配信やスマホによる登録申請の案内など、申請に向けて様々な工夫をしていることはわかるのだが、肝心要の申請書の雛型と記載要領がこの為体(ていたらく)ではお話にならない。今から申請書の雛型を変更するのが難しいのであれば、せめて記載要領等をもっともっと充実させるべきである。申請書に書いてある文字を単になぞって記載要領に羅列するのではなく、誰が読んでも理解できる程度に早急に改訂して戴きたい。納税者から苦情が殺到する前に、積極的に改善して戴きたいと考えている。
(④のケース)
 ④のケースは申請時に課税事業者であるから、申請書の「事業者区分」の欄は課税事業者の□に✓することになる。しかし、令和5年は免税事業者になるので、経過措置の適用により、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者になる必要がある。
 この場合、「事業者区分」欄では「課税事業者」にしているにも関わらず、※印は無視して「免税事業者の確認」欄の上部の□に✓してよいのだろうか? あるいは「免税事業者の確認」欄には何も記載せずに、「登録要件の確認」欄の「課税事業者です。」の「はい」の□に✓すればよいのであろうか?
※ 本件について、国税庁ホームページの「インボイス制度特設サイト」のフリーダイヤルに電話して確認したところ、④のケースは登録申請書の提出時に課税事業者なので、「免税事業者の確認」欄には何も記載せずに「登録要件の確認」欄の「はい」にするとのことである(「7 おわりに」を参照)。

 「ロ」は、「課税事業者届出書」又は「課税事業者選択届出書」を提出する事業者に関する説明である。
 末尾に『……「課税事業者届出書」又は「課税事業者選択届出書」はこの申請書の提出前又は提出と同時に提出してください。』と書かれているが、これは法律により定められたものではない。消費税法には、「課税事業者届出書」の提出期限は定められておらず、また、「課税事業者選択届出書」は原則として課税事業者となる課税期間の直前の課税期間の末日までに提出することとされている(消法57①前文、9④)。
 おそらくは、管理の都合上「登録申請書よりも前に提出してください」という課税側のお願いなのだと思われる。
 気になるのは、記載要領等に『……納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者に該当する場合……「適用開始課税期間(自)」欄に記載した年月日を「課税期間の初日」欄に記載します。』と書かれていることである。さらに、この「課税期間の初日」欄には「※令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間のいずれかの日」と書かれているので、次の(ⅰ)〜(ⅲ)のような事業者は、いずれも「適用開始課税期間(自)」欄に記載した年月日が令和5年1月1日になることから、「免税事業者の確認」欄の下部への記載はできないことになる。
(ⅰ)令和3年中の課税売上高が1,000万円を超えたことにより、令和5年が課税事業者となる個人事業者
(ⅱ)令和4年中に「課税事業者選択届出書」を提出したことにより、令和5年が課税事業者となる個人事業者
(ⅲ)令和4年1月1日〜6月30日の課税売上高が1,000万円を超えたことにより、令和5年が課税事業者となる個人事業者
 なお、「課税期間の初日」欄に「※令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間のいずれかの日」と書かれているのは、令和5年9月30日までに申請ができるのは、令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間に登録を受けようとする事業者に限定されていることが理由と思われる(平成28年改正法附則44①)。
 上記(ⅰ)〜(ⅲ)に該当するのは、令和4年中の申請であれば申請パターン(表)の③のケース、令和5年1月1日〜9月30日の申請であれば⑦のケースである。

 ③のケースについては、「免税事業者の確認」欄の上部の□に✓することは無理があるように思える(24頁参照)。かといって、下部の□に✓したとしても、「課税期間の初日」欄には「令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間のいずれかの日」しか書けないのであるから、ここに無理矢理「令和5年1月1日」と書くことは許されない。
(注)⑦のケースについては、申請時に課税事業者であるから「免税事業者の確認」欄の記載は不要となる。
 ちなみに、③のケースも⑦のケースも令和5年3月31日までに登録申請することにより、令和5年10月1日が登録日となる(平成28年改正法附則44③)。この附則の規定に基づいて、③のケースでは「課税期間の初日」欄に「令和5年10月1日」と記載してもよいのだろうか? もしそうだとしたならば、記載要領等の説明を読むだけでは申請書の記入方法がわからないので、平成28年改正法附則も含め、消費税法の条文をしっかりと読み込んだ上で申請書の記載に挑まなければならないということになりそうだ。
※ 本件について、国税庁ホームページの「インボイス制度特設サイト」のフリーダイヤルに電話して確認したところ、③のケースは下部の□に✓して、「課税期間の初日」の欄には「令和5年10月1日」と記載するとのことである(「7 おわりに」を参照)。

3 記載要領等−3 記載要領の(3)

 :
(3)次葉「登録要件の確認」欄は、この登録を受けるに当たり必要な要件を記載しています。該当する□にレ印を付します。
 :

 「登録要件の確認」欄の上部の※印では、『登録申請時に免税事業者であっても「免税事業者の確認」欄のいずれかの事業者に該当する場は「はい」を選択する』となっている。
 ということは、登録申請時に免税事業者で、「免税事業者の確認」欄の上部と下部のいずれの□にも✓しないケースというのがあるということなのであろうか……。
 課税事業者でなければ登録できないのであるから、「課税事業者です。」の欄は必ず「はい」にすると考えたらいけないのであろうか? この欄の「いいえ」にするケースというのはあるのだろうか? 免税事業者が申告納税の覚悟を決めて納税しようとするときに、なぜにこんな複雑怪奇な申請書と格闘しなければいけないのであろうか……?

4 第1−(3)号様式

 インボイス制度がスタートした後の1年間(令和5年10月1日から令和6年9月30日までの間)に登録申請する場合には、「第1−(3)号様式」を用いることとなる。この「第1−(3)号様式」の雛型を「第1−(1)号様式」と比較してみると、概ね次のような違いのあることがわかる。
□事業者区分欄
 新規開業の個人事業者や新設の法人は、登録申請書を課税期間の末日までに提出することにより、その課税期間の初日から登録を受けたものとみなされる(消令70の4、消規26の4)。そこで、事業者区分欄には「□新たに事業を開始した個人事業者又は新たに設立された法人等」の欄が追加されている。

□免税事業者の確認欄
 免税事業者が課税事業者を選択する場合には、課税事業者になろうとする課税期間の前課税期間までに「課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出しなければならない(消法9④)。
 また、基準期間(特定期間)中の課税売上高が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる事業者は、「課税事業者届出書」の提出が義務付けられている(消法57①一)。
 このようなケースにおいて、免税事業者が、課税事業者となる課税期間の初日から「適格請求書発行事業者」になろうとするときは、課税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して1か月前の日までに登録申請書を税務署長に提出する必要がある(消法57の2②。消令70の2)。

 この場合の課税事業者となる課税期間の初日(申請書を提出する日の属する課税期間の翌課税期間の初日)の記載欄が、「第1−(1)号様式」にあった摩訶不思議な「課税期間の初日」の記載欄に代わり掲載されている。
 また、上部と中部の記載欄のいずれにも該当しないケースについて、「□上記以外の免税事業者」という欄が新設されている。この「□上記以外の免税事業者」という欄は、なぜ「第1−(1)号様式」にないのだろう……? 「第1−(1)号様式」にこの欄があれば、前述のような疑問も解決すると思うのであるが……。

5 「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」

 個人事業者については、屋号・事務所等の所在地・外国人の通称・旧氏(旧姓)を「適格請求書発行事業者公表サイト」へ公表する場合には、「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」ではなく、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」を提出する必要がある。
 マンション管理組合などの人格のない社団等が本店所在地等を公表する場合もこの申出書を使用する。
 また、個人事業者と人格のない社団等が公表事項を変更する場合や公表を取りやめる場合にもこの申出書によることとなる(インボイスQ&A問20・22)。
 なお個人事業者は、複数の屋号や事務所等を公表することはできないこととされている。したがって、複数店舗を有するラーメン店やコンビニの経営者は、レシート(簡易インボイス)に「○○マート××店」のような店ごとの表示をしても、公表サイトでは「○○マート」という屋号しか確認できないこととなる(公表サイトに関するよくある質問)。

6 電子申請の留意点

□申請から通知までの期間
 インボイスQ&A問4によると、登録申請書を提出してから登録の通知を受けるまでの期間は、登録件数や審査に要する期間によって異なるので、一律に回答することはできないと前置きした上で、大まかな目安としては、書面で提出された登録申請書については1か月程度、e-Taxで提出された登録申請書については2週間程度の期間が見込まれるとしている。
(注)国税局(所)では、「インボイス登録センター」を設置し、インボイス制度に関する申請書の入力や電話照会等の事務について集約処理を行うこととしている。よって、インボイス制度に関する申請書等を書面により提出する場合は、(登録申請書には「___税務署長」と書かれているものの)提出先は所轄税務署ではなく、インボイス登録センターへ郵送で送付する必要がある。
□通知の方法(インボイスQ&A問3)
 なお、e-Taxにより申請した場合であっても、電子通知を希望しない限り、書面で通知が届くことになるので注意が必要だ。

 e-Taxにより電子申請する場合の申請書には、「税理士署名」の下欄に「本申請に係る通知書等について、電子情報処理組織による通知(e-Tax)を希望します。 □」という一行が追加されているので、ここにしないと電子申請をしても書面で通知が届くことになる。筆者の知り合いの税理士でも、うっかりしてをしないで申請書を送信し、意に反して書面で通知が届いた者がいる。
 国税庁のホームページに掲載されている登録申請書には、この電子申請に関する注意は何も書かれていないので、おそらくは、(ほとんど使われないであろう)書面提出用の申請書を掲載しているということなのであろう。
 申請者が電子通知を希望しているにも関わらず、を忘れたがために書面で通知が届くということは、その時点で84円の切手代を無駄にしていることになる。国税庁は反省し、申請方法のPRをもっと工夫すべきである!
□電子通知のメリット
 電子通知を希望した場合、次のようなメリットがあるので、国税庁のQ&Aでもe-Taxによる申請を推奨しているようである。
① 税務署での処理後、速やかに電子通知が行われるため、書面通知よりも早く登録通知書を受領することができる。
② メッセージボックス内にデータが保管されるため、登録通知書を紛失するおそれがない。
③ メールに登録通知のデータを添付して、取引先に連絡することができる。

7 おわりに

 令和4年になり、インボイスの登録準備もいよいよ本格化してくるものと思われる。個人事業者であれば、まずは令和3年分の所得税の確定申告を終わらせてからインボイスの登録準備を始める事業者が大半ではないだろうか。令和3年分の所得税の確定申告の時点で令和3年分の課税売上高は確定しているのであるから、令和3年中の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、令和4年中に「課税事業者届出書」を提出した上で、インボイスの登録申請書を提出することになる。
 実際に、この申請パターン(表)の③のケースは相当に多いものと思われるのであるが、この時の申請書の書き方がわからないということが、そもそも異常事態ではないかと感じている。
 この件につき、国税庁ホームページの「インボイス制度特設サイト」のフリーダイヤルに確認したところ、暫く待たされた後に『登録申請書(2/2)の「免税事業者の確認」欄は、下部の□に✓して、「課税期間の初日」の欄には「令和5年10月1日」と記載してください。』と指導された。

 『申請書には「納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者」と書いてあります。また、記載要領等には、「……納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者に該当する場合……「適用開始課税期間(自)」欄に記載した年月日を「課税期間の初日」欄に記載します。』と書かれています。令和5年1月1日から課税事業者になるわけですが、これらの文章は完全に無視してよいということですか?』と尋ねたところ、「わかりずらい説明文で申し訳ありません」と陳謝された。
 令和4年中の登録申請で、令和4年が課税事業者で令和5年が免税事業者になるケース(申請パターン(表)の④のケース)についてもフリーダイヤルに確認したところ、相当に待たされた後に『登録申請書の提出時に課税事業者なので、「免税事業者の確認」欄には何も記載せずに「登録要件の確認」欄の「はい」にしてください。』と指導された。
 『そんな書き方で本当に経過措置の適用は受けられるんですか?』と訪ねたところ、『今後税務署から何か発表があるかもしれないのでご注意ください。』と意味深なことを言われた。よって、慌てて令和4年中に申請しないで令和5年の1月1日から3月31日までの間に申請するのが確実なようである。
 インボイスの登録は、税理士が関与していない小規模事業者も申請することが想定されている。国税庁が、動画の配信やスマホによる登録申請の案内など、申請に向けて様々な工夫をされていることは重々承知しているところではあるが、肝心要の申請書の雛型と記載要領がこの為体(ていたらく)ではお話にならない。今から申請書の雛型を変更するのが難しいのであれば、せめて記載要領等をもっともっと充実させるべきである。申請書に書いてある文字を単になぞって記載要領に羅列するのではなく、誰が読んでも理解できる程度に早急に改訂して戴きたい。納税者から苦情が殺到する前に、積極的に改善して戴きたいと考えている次第である。

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