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解説記事2019年03月11日 【税理士のための相続法講座】 遺言(19)-遺言の内容(11)(2019年3月11日号・№778)

税理士のための相続法講座
第45回
遺言(19)-遺言の内容(11)
 弁護士 間瀬まゆ子

 引き続き、遺言で定められる内容について採りあげて行きます。今回は、推定相続人の廃除です。
1 推定相続人の廃除とは  ある公証役場では、毎年必ず数名、「配偶者に財産を渡さないための遺言を残したい」と相談に来る人がいるそうです。その趣旨は、一切の財産を渡さないということかと思います。しかし、相続分を零にする遺言を書いたとしても、配偶者が遺留分を主張すれば、一定の財産は持って行かれることになってしまうのはご存知のとおりです。
 このように、遺言で遺留分まで奪うことは一般には困難なのですが、実は民法上、遺言により相続人の資格を奪う制度があります(相続人でなくなるため、遺留分も請求できなくなります。)。それが推定相続人の廃除です(892条・893条)。ただ、後述するとおり、容易に認められるものではなく、使えるのはかなり限定的な場合のみです。
 相続人の資格を奪う制度としては、廃除の他に「相続欠格」もあります(民法891条)。こちらは、例えば相続人の一人が被相続人や他の相続人を殺害し、刑に処せられた場合等に、当然に相続資格をはく奪されるものです(同条1号)。これに対し、「廃除」は、被相続人の意思に基づき、家庭裁判所が推定相続人の相続資格を奪う制度です。
 廃除の対象者は、遺留分を有する推定相続人です。兄弟姉妹やその代襲相続人である甥や姪の場合は、遺留分が無く、遺言によりその者らに財産を渡さないようにすれば足りるため、そもそも廃除の対象とする必要がありません。
2 廃除事由  民法は、廃除の事由として、推定相続人による被相続人への虐待、重大な侮辱、推定相続人にその他の著しい非行があったときの3つを定めています。このうちの「著しい非行」については、犯罪、服役、遺棄、被相続人の財産の浪費・無断処分、不貞行為、素行不良、長期の音信不通、行方不明等がこれにあたると言われます。
 ただ、廃除が争われる場合、親族間の複雑な葛藤を背景としていることが多く、裁判所は、単に上記のような行為があったかのみではなく、背景事情まで詳細に審理して、真に相続資格を奪うことを正当化できる事案かを見極めます。そのため、一見虐待や重大な侮辱に当たり得る行為があったとしても、それだけで廃除が認められるとは限らないのです。
 この点、下級審裁判例では、廃除事由にあたるとされた相続人の行為の原因にまでさかのぼり、その原因について被相続人の側に責任がないか、またそれが一時的なものにすぎないか等の事情を考究する必要があるとされており(名古屋高決昭和46年5月25日家月24巻3号68ページ)、相続人による暴力等があっても、嫁姑関係の不和に基因したものであり、相続人の責任のみを問うことはできないとして廃除を否定した裁判例(東京高決平成8年9月2日家月49巻2号152ページ)等が出ています。
 では、どういう場合に認められるのかというのが気になると思いますが、その点については、裁判所で廃除を肯定してもらえた事例と否定されてしまった事例を幾つか紹介しておきます。

【廃除が認められたケース】
① ギャンブルや遊興費、交通事故等で借金を重ねて、被相続人に2000万円以上を返済させ(相続開始時の被相続人の財産は自宅約930万円と預金約70万円のみ)、ヤミ金業者が被相続人宅に押し掛けて警察を呼ぶような事態を生じさせたり、被相続人から勘当された後も、借金を重ねて破産の決定を受け、それでもなお金の無心を続ける等して、被相続人を約20年間にわたり経済的・精神的に苦しめた(神戸家裁伊丹支決平成20年10月17日家月61巻4号108ページ)。
② 被相続人が末期がんを宣告されて手術後自宅療養中であった際に、自らはビニールシート内に暖房を置いて生活する一方で被相続人には暖房のない中での療養を強いたほか(冬季には最高気温が氷点下を記録するような地域である。)、被相続人の人格を否定するような発言をした(釧路家裁北見支決平成17年1月26日家月58巻1号105ページ)。

【廃除が認められなかったケース】
 妻は、夫である被相続人に対し離婚調停を申立てたほか、高額の茶道具等を購入した上銀行から約3800万円の借入をしてお茶会の費用等を賄うなど多額の支出をし、息子は家出をした後住所を被相続人に知らせず長年にわたって音信を絶っていた(東京高決平成13年11月7日金商1159号28ページ)。
 認められているのは、どちらもかなり極端な事例です。ここまでの事例でないと、裁判所ではなかなか認めてもらえないのです。

3 廃除の方法  推定相続人を廃除する方法は2つあります。1つは、被相続人が生存中に家庭裁判所に審判を申し立てる方法で(民法892条)、もう一つは、被相続人が遺言で廃除の意思を表示する方法(同893条)です。後者の場合、遺言が効力を生じた後に、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立てを行うことになります。
 遺言による廃除については、特に自筆証書遺言で行った場合に、廃除の意思表示にあたるのか否かが問題になることがあります。後述のとおり、筆者は廃除をおすすめしてはいませんが、もし遺言で廃除をするなら、「相続させない」「財産を一切与えない」等の疑義を生じさせる表現は避け、はっきりと「廃除」の言葉を使っておくべきでしょう。
4 廃除の効果  家庭裁判所の審判が確定すると、対象者は相続資格を喪失することになります。遺言で廃除する場合、その効果は相続開始時にさかのぼって生じます。
 相続放棄と異なり、廃除は代襲事由であるため、例えば子が廃除されると、その子(孫)が代襲相続人となります(これに対し、子が放棄した場合、その子(孫)は代襲相続人となりません。)。
5 廃除の遺言の問題点  前記2で述べたとおり、廃除に関して裁判所の判断はかなり慎重です。喧嘩になって暴言を吐かれたことから廃除する旨の遺言を残したという事例を見たことがありますが、その程度では裁判所で認めてもらうことは困難でしょう。
 そして、廃除が認められない場合、単に、該当者の相続権を奪うという初期の目的を達することが叶わないというにとどまらず、その者の怒りを買ってしまい、話し合いによる解決が極めて困難になってしまうことは容易に想像できるところです。
 つまり、「廃除する」と遺言に書いてしまったがゆえに、紛争を更に激化される結果に繋がりかねないのです。
 ですから、相当な虐待行為等のある事案でもなければ、廃除の遺言を残すことには慎重になるべきというのが筆者の意見です。

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