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解説記事2019年04月15日 【ニュース特集】 拡充された事業承継税制、手続き面も簡素化(2019年4月15日号・№783)

ニュース特集
従業員数の確認が簡単に
拡充された事業承継税制、手続き面も簡素化

 平成30年度税制改正で大幅な拡充が行われた法人版の事業承継税制だが、平成31年度税制大綱を踏まえ、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則が改正され、手続き等の簡素化が一部で行われている(平成31年4月1日施行)。例えば、非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度の適用を受ける場合には、切替確認書のみの提出とし、臨時報告書を不要とする。また、一定のやむを得ない事情により、資産保有型会社に該当した場合には、その該当した日から6月以内に該当しなくなったときは、資産保有型会社に該当しないものとみなす弾力的な取扱いを講じている(本誌776号参照)。そのほか、事業承継税制の適用を受ける際に提出する従業員数証明書について、年金事務所が発行する「被保険者縦覧照会回答票」を追加する。
 法人版の事業承継税制については、これまでは年間400件程度の申請であったものが改正後は年間で約6,000件近くの申請が行われた模様。今回の手続き面の簡素化により更に申請しやすい環境が整うことになりそうだ。
相続税の納税猶予の切替時の臨時報告書が不要に
 今回の法人版の事業承継税制の手続き簡素化の内容としては、①非上場株式等の贈与者が死亡した場合の手続きの簡素化、②経営承継期間内に自ら認定の取消申請を行う場合の手続きの簡素化、③特例承継計画提出時における手続きの簡素化、④従業員数証明書の追加、⑤資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合の取扱いの弾力化が挙げられる。
 非上場株式等の贈与者が死亡した場合の手続きの簡素化については、従来、経営承継期間内(5年以内)に非上場株式等の贈与者が死亡した場合、つまり先代経営者が死亡した場合であって、贈与税の納税猶予から相続税の納税猶予の適用に切り替える際には、臨時報告書と切替確認書及びこれに係る添付書類を提出しなければならないとされていた。
 しかし、臨時報告書(経営承継円滑化法施行規則12条12項等)及び切替確認書(同施行規則13条2項等)については、いずれも相続発生時の状態を記載することとしており、内容の多くが重複している。このため、切替確認を受ける場合には、切替確認書及びこれに係る添付書類のみの提出とし、臨時報告書の提出を不要とした。平成31年4月1日以後の報告から適用されている。
自ら取消申請を行う場合は随時報告不要  従来、経営承継期間内(5年以内)に自ら認定の取消申請を行う場合については、取消申請書(同施行規則9条14項)と随時報告書(同施行規則12条5項等)及びこれに係る添付書類を提出することとされていた。
 随時報告とは、認定取消事由に該当したこと又は贈与税若しくは相続税の納税猶予制度の適用を受けている経営承継受贈者若しくは経営承継相続人の死亡等による納税猶予額の免除を受けるにあたり一定の事由に該当しないことを報告するもの。事業継続期間中に、認定取消事由に該当した場合には、当該該当した日の翌日から1か月を経過する日までにその旨を随時報告しなければならないとされている。
 しかし、措置法上も自ら認定の取下げ申請を行う場合には、取下げ申請書のみを提出すればよいとされているため、経営承継円滑化法上も取消申請書のみを提出すればよいこととし、随時報告を不要としている。平成31年4月1日以後の報告から適用されている。

特例承継計画提出時における従業員数証明書は提出不要
 特例承継計画提出時における手続きでは、添付書類として求められていた従業員数証明書の提出を不要とした。従業員数証明書の提出が求められていた理由としては、特例承継計画の提出は中小企業者に限られており、その従業員数の要件を確認するというものであったが、手続きの簡素化の観点から見直しを行うことになったものだ。
 なお、平成31年4月1日以後からの従業員数の確認については特例承継計画に記載されている人数で判断するとしている。
「被保険者縦覧照会回答票」を追加  また、従業員数証明書については、新たに年金事務所が発行する「被保険者縦覧照会回答票」を追加する(本誌780号29頁参照)。
 事業承継税制の適用を受けるには、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けた日における常時使用する従業員の数を明記した書類として従業員数証明書を提出する必要がある。この従業員数証明書には、「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬月額決定通知書」に「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」の写しや、「健康保険・厚生年金保険資格喪失確認通知書」の写しを時系列に揃えてすべて添付することが求められている。このため、納税者にとっては非常に事務負担のかかるものとなっている。
 今回の見直しでは、従業員数の確認に係る負担を軽減する観点から、現行の添付書類に加えて、「被保険者縦覧照会回答票」を追加した。同回答票によれば、①年金事務所で取得可能、②即日発行、③被保険者資格取得日、④短時間労働者の判別可能といったメリットを享受することができ、かなりの事務負担を軽減できるようになる。
 なお、この点については、中小企業経営承継円滑化法施行規則の改正ではなく、事業承継マニュアルに明記して対応している。実際には5月頃から使用することができそうだ。

やむを得ない事情があればすぐには資産保有型会社等には該当せず
 資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合の取扱いの弾力化が行われる(本誌776号8頁参照)。これまでの取扱いでは、1度でも資産保有型会社に該当した場合には、取消事由に該当することとされているため、一定のやむを得ない事情により、一時的に特定資産等の割合が70%以上となるケースであっても納税猶予が取消しとなってしまうという問題点が指摘されていた。
 今回の見直しでは、「事業活動のために必要な資金を調達するための資金の借入れ、その事業の用に供していた資産の譲渡又は当該資産について生じた損害に基因した保険金の取得その他事業活動上生じた偶発的な事由でこれらに類するもの」(措規23条の9⑭)に該当する場合には、その事由発生から6か月間は、資産保有型会社とみなさないという取扱いが講じられた。
 また、資産運用型会社についても同様だ。「一の事業年度のいずれか」でも資産運用型会社に該当した場合には納税猶予の取消事由となっていたが、「特定資産の譲渡その他事業活動上生じた偶発的な事由でこれに類するもの」(措規23条の9⑯)が生じたことにより特定資産の運用収入の割合が75%以上となる場合には、その事由が発生した事業年度から当該事業年度終了の翌日から6か月を経過する日の属する事業年度までの期間については、資産運用型会社とはみなさないこととした(図表1参照)。

事業実態要件は従来の取扱い通り  なお、資産保有型会社及び資産運用型会社の判定の見直しについてはいわゆる事業実態要件(図表2参照)には効果を及ぼさない。具体的には、資産保有型会社又は資産運用型会社に該当したとしても、事業実態要件を満たす場合には、資産保有型会社又は資産管理型会社には該当しないとされているが、この点は従来通りの取扱いとなる。事業実態要件を満たしていれば影響はなさそうだ。

【図表2】事業実態要件
① 会社の事業が贈与の日まで3年以上継続して、商品販売その他の業務を行っていること
② 贈与の時において、常時使用従業員の数が5人以上であること
③ 贈与の時において常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること
※すべての要件を満たす

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