カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2019年04月29日 【親法人の欠損金繰越控除は所得を上限、現金買収完全子会社も時価評価対象外】 新・連結納税制度の欠損金持込制限と時価評価課税(2019年4月29日号・№785)

親法人の欠損金繰越控除は所得を上限、現金買収完全子会社も時価評価対象外
新・連結納税制度の欠損金持込制限と時価評価課税

 平成13年度税制改正における組織再編税制の導入に続き平成14年度税制改正で導入された連結納税制度だが、その抜本的な見直しを検討している政府税制調査会の「連結納税制度に関する専門家会合」では、新たな連結納税制度と現行組織再編税制の「整合性」について検討が行われている。既報の通り、新・連結納税制度では「個別申告方式」が採用される方向だが、このことを前提に、連結納税制度開始あるいは連結納税グループ加入時の時価評価課税と欠損金の持ち込み制限を、いかにして組織再編税制上の規定と整合性を図るかがテーマとなっている。
 4月18日に開催された第3回会合では、組織再編税制との整合性を図ることにより、相対取引(現金買収)による完全子会社を連結納税グループに加入する際の時価評価課税の対象外とするなど現行制度に比べて納税者有利となる改正が提案される一方、連結親法人の開始前の欠損金を連結親法人の所得の範囲内でのみ繰越控除可能とするという規制強化策も提案されている。後者が実際に導入された場合、連結親法人の欠損金は永久に控除ができなくなる恐れがあるだけに、企業側からかなりの抵抗がありそうだ。

企業側からは「時価評価や欠損金持込制限は不要か大幅な緩和が必要」との声
 本誌777号(4頁~)の特集記事「見えて来た新たな連結納税制度」でお伝えしたとおり、連結納税制度が来年度税制改正で「個別申告方式」へと抜本的に見直される方向となっているが、これに伴い新たに議論となっているのが、連結納税制度開始あるいは連結納税グループ加入時の時価評価課税(以下、適宜「開始・加入時の時価評価課税」という)及び欠損金の持ち込み制限と、組織再編税制上の譲渡損益課税(時価評価課税)/欠損金の持ち込み制限との整合性だ。
 4月18日に開催された政府税制調査会の「連結納税制度に関する専門家会合」第3回会合では、開始・加入時の時価評価課税と欠損金の持ち込み制限を、「個別申告方式」への移行を視野に入れつつ、組織再編税制上の規定と整合性を図る形でいかに見直すべきか、財務省から案が示されている。
 これまで開始・加入時の時価評価課税と欠損金の持ち込み制限を設ける理由は「単体納税と連結納税は全く異なる制度であるため、それまでの課税関係を清算する観点から時価評価や欠損金の切捨てが必要」と説明されてきた。このため、企業や実務家からは「個別申告方式が導入されれば、連結納税制度開始あるいは連結納税グループ加入時の時価評価や欠損金の持ち込み制限も不要ないしは大幅な緩和が必要になる」との声が上がっていたが、結論としては、納税者有利となる改正と逆に納税者が不利となる改正の両方が提案されている。

時価評価課税の有無/欠損金の持ち込みの可否に新たなカテゴリーを追加
 まず、現行制度に比べて納税者有利となる改正が提案されたのが、時価評価課税だ。
 現行連結納税制度上、開始・加入時には、①時価評価課税なし/欠損金持ち込み可能(連結子法人は自己の所得の範囲内)」、②時価評価課税/欠損金の切捨て――の2パターンしかない。すなわち、“セーフかアウトか”の二択であり、その中間は存在しない。一方、組織再編税制には、例えば支配関係会社間の合併を考えると、上記2パターンの他に、「時価評価課税なし(ただし含み損の利用制限あり)/欠損金の一部切捨て」という3つ目のパターンがある(図表1参照)。

 4月18日に開催された専門家会合では、組織再編税制を念頭に、連結納税制度においても3つのカテゴリーを設けることが提案されている(次頁の図表2参照)。


時価評価課税では「含み益」も制限対象に
 次頁の図表2における「丙」には、相対取引(現金買収)により完全子会社化し、連結納税に加入した連結子法人が含まれる。また、現行制度上、長期保有(5年超)されるいわゆる連れ子法人(例えば適格株式交換等により連結子法人となった法人の100%子法人等)も「丙」の範囲に含まれるところ、長期保有の連れ子法人に限らないともされた。一定の要件を満たせば時価評価課税がなくなるという意味では、納税者にとっては有利な改正であり、今回の提案の目玉の一つと言えよう。
 また、個別の連結(子)法人の「共同事業性」の判定にあたり、どの連結法人との間で要件適合性を比較検討すればよいのか疑問が生じるところだが、財務省の資料では、「グループ内のいずれか一の企業との間で判定することとしてはどうか」とされている。すべての連結法人と比べるのは現実的ではないとの判断によるものと考えられる。
 このほか、時価評価課税に関する「含み“損益”の利用制限」という言い回しにも注意したい。組織再編税制の場合、含み「損」が利用制限の対象となるが、連結納税では不当な損益通算をブロックする観点から、「益」も制限対象となる。
 欠損金の一部制限については、支配関係前の加入法人の欠損金、支配関係後~加入までの欠損金のうち資産の実現損からなる部分の金額は切捨てとなり、加入後の欠損金も、一定の場合(構造的に損失が発生する事業を行う法人を利用した恣意的な税負担の調整が行われる場合を想定)、連結グループ全体の所得と相殺することができなくなる方向だ。
 4月18日に開催された専門家会合で示された上記の新・連結納税制度における時価評価課税/欠損金の持ち込みの可否に関する規定の概要では、この他、連結離脱時の取り扱い、投資簿価修正の改正等も含まれており、かなり複雑な規定となることが予想される。

親法人の欠損金の繰越控除制限なら連結納税の導入を躊躇する企業も
 今回提案された改正の最大のポイントの一つは、上記の通り、現金買収による完全子会社や長期保有されていない連れ子法人を時価評価課税の対象外とすることだが、逆に、現行制度に比べて納税者不利となる改正も提案されている。それが、親法人の連結納税開始前の欠損金の繰越控除だ。
 現行連結納税制度上、親法人の開始前の欠損金は、期限内のものであれば制限なく、開始後の連結所得の計算上、繰越控除できるが、個別申告方式への移行に伴い、親法人を特別扱いする必要性は低くなるとの理由により、連結親法人の所得の範囲内でのみ、繰越控除を認めることが提案されている。また、財務省は、多額の欠損金を有する子法人を株式交換等により親法人と逆転させた上で連結納税を開始するケース(図表3)や、多額の欠損金を有する法人を形式的に連結親法人とするグループ体制とした上で連結納税を開始するケース(図表4)も懸念している。

 連結納税を導入してからだいぶ時間が経っている企業においては、開始前の連結親法人の繰越欠損金の控除が終了しており、新たな制限による実害はないとの見方があるが、これから連結納税を導入しようとしている企業にとっては大きな問題となる。この仕組みが採用された場合、連結納税を導入する企業数の伸びにもネガティブな影響を与える可能性がある。
 そもそも親会社は研究開発活動やブランド構築などでコストセンターになりやすく、かつ、事業子会社からの配当は益金不算入となるため、欠損金が生じやすい体質となっている。この親会社の欠損金をグループの所得から繰越控除できず、自らの所得の範囲内のみで控除するとなると、永久に控除ができなくなる恐れがある。持株会社が多い金融業などではデメリットが顕著となりそうだ。親会社の欠損金の制限については、企業側からかなりの抵抗が予想されよう。
 なお、次回の専門家会合では、グループ調整計算のあり方が議論される予定となっている。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索