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解説記事2019年05月20日 【巻頭特集】 2040年がターゲット 今後の税制改革プログラムを展望する(2019年5月20日号・№787)

巻頭特集
特別対談
2040年がターゲット 今後の税制改革プログラムを展望する
 自由民主党税制調査会会長 宮沢洋一
 日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑良晴
 (司会):公認会計士・税理士 緑川正博

 この10年間の税制改正のビックピクチャーとなってきた平成21年度税制改正法の附則第104条(税制の抜本的な改革に係る措置)だが、この税制改革プログラムについては、今般の消費税率の引上げにより、概ねその目的を終えることになった。しかし、政府推計によれば2040年には医療・介護に係る給付が約94兆円にものぼるとされている。法人税以上に企業に対する社会保険料負担が重くのしかかる中、次なる税制改革プログラムの策定が求められている。
 対談では、公認会計士・税理士の緑川正博先生を進行役に、改元の新時代を迎え、新たな税制改革プログラムは検討されるのか、宮沢洋一自民党税制調査会会長にその展望を伺うとともに、昨今の企業税制をリードしてきた小畑良晴経団連経済基盤本部長に企業の現状などについて語っていただいた。 (文責:編集部)

なぜ診療報酬に係る措置が税調で議論されたのか

緑川正博氏
(以下、敬称等は省略)
 本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。今回のテーマ、「今後の税制改革プログラムを展望する」ということにつき、宮沢洋一自民党税制調査会会長、小畑良晴経団連経済基盤本部長をお招きし、対談をさせていただければと思います。まず、消費税についてです。平成31年度税制改正を見て、個々の点は別にして、医療の消費税問題ではなく、診療報酬に関わる措置が税調で議論されたということに違和感があります。平成21年(2009年)度税制改正法附則第104条、それを受けた平成24年(2012年)の社会保障・税一体改革において、消費税を高齢化社会における社会保障の安定財源と位置付けました。この平成21年(2009年)当時の消費税の社会保障財源化ということは、消費税の増税分を社会保障費に充当するということが主眼だったと思います。今回は診療報酬の消費税対応部分を増額するに留め、財源化を議論することなく、そもそもあった医療機関の消費税の非課税問題を、診療報酬の配分問題にすり替えたような感じがしました。この点につきまして、宮沢先生に平成21年度税制改正法附則第104条、10年間のビッグピクチャー(全体像)についてのお話をうかがいたいと思います。この考え方はなくなったのでしょうか。ちょうど10年経過したわけですが。

緑川正博氏

宮沢洋一氏(以下、敬称等は省略)
 平成21年度税制改正の時、私はまだ三回生で税調の幹部でもなく、内閣府の副大臣を与謝野大臣の下でやっており、全部を知っているわけではないのですが、いろいろ情報は入ってきておりました。当時は麻生内閣でしたが、その前から自民党の税調幹部の中には、消費税をどうにかしなければ社会保障といったものが持続可能なものにならない、という意識がありました。平成11年度予算以降、消費税は予算総則上高齢者3経費(基礎年金、老人医療、介護)に充てることと位置付けられていましたので、そういった意味で、消費税を引き上げる図を描こうというのが基本的にあったのだと思います。当時は高齢者3経費と言っていたと思いますが、消費税を引き上げ、関係経費に充てるとともに、低所得者対策も当然講じていきますといったことを書くことがおそらく一番大事な点だったと思います。それに合わせて、その他の税についても、将来構想を書こうという中で、例えば所得税については、高所得者の税率を少し上げるという方向性は出しています。この辺のことは、自民党の原案にはなかったけれども、自公協議の中で出てきた、相続税の課税ベースを拡げるといったものもそういう流れででてきたものかもしれません。自動車諸税等々についても書いてあります。そういった意味では附則というものは付録みたいなものと思われがちですけれども、法律的な効果は本則に書いてあることと全く同じであり、この附則第104条というのは画期的な話だったと思います。

宮沢洋一氏

 それで、医療の話が出てきましたが、先ほど高齢者3経費と言ったのは、基礎年金・老人医療・介護に充てるということで、2012年の社会保障・税一体改革において少子化対策が加わり社会保障4経費と言っていますけれども、先ほど、医療の話が税調で云々というご疑問について申し上げると、それのもっと前から、医療関係団体からは、控除しきれない経費があるとの問題点を指摘されていました。もう少し具体的に言えば、基本的に消費税率3%を導入する時点から、仕入れにかかる消費税は基本的に診療報酬に上乗せするという対応をしてきたわけです。特にはっきりわかっているのは、薬とか医療用の資材といったものはそのまま上乗せすればよいわけですが、診療報酬というのは、消費税を上乗せするにはなかなか複雑すぎる体系となっています。例えば、ひとつの手術をすると何点ですということになるわけですが、その人件費部分はどうなるのか、それを使う機械はどうなるのかという、それぞれ状況が異なる中で、一般的なところで消費税を上乗せしていくことになります。したがって、すべてに消費税が上乗せされているはずで、平均的に言えば、プラマイゼロになっているはずではあります。ただ、消費税率3%に上げるとき、更に5%に上げるときにおいては、かなり財政当局がそれを値切ってしまったので、ぜんぶ上乗せされていないという不満があった。一方で8%の時には、診療する側の状況に応じて全体として消費税は上乗せされているのだけれども、例えば、病院を新増設するとか、大型機械を買うとかといった人には思ったほど乗っていない。それ以外のやらない人には若干多めに乗っていると、こういったことが起こっていたわけであります。それで、医療機関側からすると、税の話だから、本来は、非課税にした判断というのが間違っていたというような意識がある中で、結構、関係者の意見が揺れたり割れたりしていました。例えば、課税転嫁すると仕入にかかった消費税はすべて控除できますから、そういうことまで考えている方もいれば、一方で、それをやってしまうと、既に上乗せされている消費税分8%が診療報酬から消えてしまって、例えば、初診料、再診料、入院料という基本的なところに乗っていますから、これが全部なくなってしまいますと、いままで若干得をしていた声なき多数の人は、みんな増税になってしまうというような問題があって、昨年1年間、いろいろな議論をしてきました。結論的に言えば、もう少し細かく診療報酬の中を細分化して、そういう誤差をなるべく小さくしようということが関係者の合意となりました。したがって、もともと税の話として進んできていたものですから、税調で議論をしてきた結果、最終的には、診療報酬で対応しようということにしたわけです。
緑川:その点に違和感がありまして、結果的に消費税が上がるたびに、今後も消費税対応の診療報酬は上げていく、というような道筋が税調でできてしまったのではないかと思ったのです。
宮沢:いや、今までもそうだったわけで、今回はそれを細かく対応しようとしたということです。
緑川:今までそうなのかもしれませんが、平成21年時に、消費税を、社会保障費としての医療費等の財源にしていこうという中で、過去と同じように診療報酬を上げたことについて財源化の議論とは異なる、と感じたということです。疑問点。
宮沢:おそらく非課税のままで、税で対応するのは不可能なのではないかということです。非課税の人に税を還付するということはあり得ませんから。非課税ではなく、ゼロ税率とか、そういう話も含めて、非課税としないことにした場合には税の対応は考えられると思います。
緑川:財源にするためには、医療法人の消費税の非課税をなくさない限り、税としての本来的な財源手当てはできないということなのでしょうか。
宮沢:逆に言うと、純粋に税のところは、そういう対応しかできないわけですが、診療報酬をどの程度上げるかという時の、社会保障の財源には消費税が入っているわけです。
緑川:消費税非課税である限り、消費税率の引き上げと同時に診療報酬も上がる。この構造を見直さない限り、診療報酬の財源をどうするかという抜本的な議論にならないということでしょうか。

医療・介護の“効率化”が課題

緑川:
法人税の改革が色々進んできて、法人税の税率は、引き下げていくのだろうと思うのですが、その一方で企業の社会保障費負担が上がると、なんのために法人税率を下げたのか意味がなくなってしまうことにもなりかねません。消費税の社会保障財源化ができないと、企業の社会保険料の問題というのは大きいと思います。
宮沢:そうですね。社会保険料の方はまさに基本的には現役世代しか払っていないものなので、そうした意味でいうと税よりは負担感が大きくなるという問題があります。ただ社会保険料の方の話は、例えば、その国保ですとか協会健保ですとか、その財政状況の悪いところに消費税財源からお金をまわすというようなことはやってきていますし、介護等々についても同じような話があるわけですが、一方で、社会保険の方の話はそういうことをやること以上に、社会保険の、特に医療・介護の効率化をどう図っていくかということの方が大事な話なのだろうと思います。
緑川:企業側としてはいかがですか。
小畑良晴氏(以下、敬称等は省略)
 いま宮沢先生がご指摘されたように、その効率化は極めて重大なテーマだと考えています。平成21年度改正のあたりですと、2025年に団塊世代がみんな75歳以上になってしまうということで大変だという話をしていましたけれども、ちょうど10年経って今になると、次は2040年がターゲットだという話になっていると思っています。なぜかと言いますと、団塊ジュニアの方がみんな65歳を超えてしまい、65歳以上人口が一番ピークになると、そこにかかる費用というのがどれだけになるのかということです。年金の方は色々ご努力いただきまして、相当抑制されているというふうに考えておりますけれども、一方、医療・介護につきましては、どんどん右肩上がりにまだまだ上がっていきます。今50兆円くらいですけれども、給付費が2040年になると94兆円を超えると試算されているところですので、それをどうやってまかなっていくのかということがまず第一点です。一方で、就業人口の人数を考えましても、65歳以上の高齢者を支える医療・介護人材として、何人要るのかというのを計算しますと、だいたい全就業人口の5分の1は、医療・福祉分野の仕事をしなければいけないという政府の試算があります。そうなると、サービスを今のような形で提供するということはおよそ無理だということからしても、相当程度、生産性の向上、効率化を図らないことには、お金も持たないし担い手も持たないということになってしまいます。これを両方とも解決するのは宮沢先生がご指摘されたように「効率化」だと考えております。

小畑良晴氏


今年の夏から新プログラムの検討へ

緑川:
平成21年度改正法附則と同様にこれからの10年に向けて、次の税制改革プログラムが当然検討されると思います。小畑さんの説明にもあったように時代も変わったと思うのですが、どのように今後10年のプログラム、新プログラムを考えていくのでしょうか。
宮沢:平成21年度改正法附則については、ちょうど私が税調会長になった年ですから、平成28年度の税制改正で、ある意味ではすべて宿題を解決しました。その間に社会保障と税の一体改革3党合意といったものも含めて、ほぼ宿題を終わらせたのが平成28年度の改正となります。平成28年度改正では、最後に残った低所得者対策としての軽減税率と法人実効税率3割を切るというところまで書きました。平成29年度改正から、平成7年から法改正がなかった所得税の改革に着手しています。非正規という労働が増え、急激な高齢化が進むという、その直前くらいのところでやった改革です。平成29年度改正では配偶者控除・配偶者特別控除の見直し、平成30年度改正では①給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替、②給与所得控除の適正化、③公的年金等控除の適正化、④基礎控除の適正化という見直しを実施し、さらなる方向付けは出しました。しかし、所得税の改革というのは、法人税のようにすぐにできるものではなくて、少しずつその反応を見ながらやっていかないと出来ないものです。したがって、これは宿題として残っています。
緑川:所得税の方向性としては格差是正ですか。でも、その前に財源論。
宮沢:基礎控除を増やして給与所得控除を減らすという方向性は出しておりますので、これを何年かけてどのように実施していくかという話だと思っています。そして、今後の税制改正の大きな図というのは、今年のおそらく夏くらいから、先ほどから話が出ている2040年に向けての年金・医療・介護についての検討を始めていくと思います。医療・介護給付費の一応の推計は出てきています。まだ具体的に分析はしていませんが一人当たりの保険料はとてつもない金額だと思います(笑)。
緑川:怖い数字ですね。分母は減り、分子は増える。
宮沢:誰も一人当たりの保険料を計算してはいないのですが、そういうことも含めて、夏から検討を開始し、順次国会に法案として提出していきたいと考えています。
 先ほど小畑さんがお話ししていましたが、年金の話はかなり片付いていて、これから被保険者をどう広げるとか、繰り下げをどうするとか、在職老齢年金をどうするとか、こういう話をやっていこうと思っていますが、それほど大きな話ではありません。やはり介護と医療について言うと相当な検討をしていかなければなりません。とても今の制度のままでよいという風には考えられないわけです。平成で言えば33年から、令和で言えば3年から、かなり医療費等が伸びていくということは大体分かっていますから、その辺りにどのように間に合う形で、制度改正を検討するかというのが、政治的には重い宿題になっています。その後になるかと思いますが、制度改正の検討と併せて、当然のことながら財源の話をしていかなければいけないわけです。おそらく、第二次社会保障と税の一体改革みたいなイメージで、これを進めていくということが車の両輪になってくると思います。この時点で、今後の消費税について、またその他の税についてどう考えていくかということは、しっかり議論していかなければいけないし、社会保障と足並みを揃えながら結論を出していかなければいけない。そういうことがそう遠くない時にあるのだろうと思います。
緑川:小畑さんはいかがですか。期待するしかないのでしょうか。
小畑:経済界としては、企業の社会保険料負担というのは、法人税をすでに超えていますので、それがどんどん増えていくことはたいへん厳しいというところです。そこをどう重点化、効率化をしながら増加を抑制していくか、これはもう喫緊の課題だと考えておりますので、是非検討をお願いしたいと思います。
緑川:医療、介護の財源について、消費税を中心として平成21年時の改正法附則と同様に対応していくのでしょうか。
宮沢:どういう形になるかはまだ分かりませんが、社会保障と税の一体改革の時のように、政争の具にしないで、野党も含めて議論するというのが最も理想的だろうと思います。政治状況等々を見極めながらやっていく話だと思います。
緑川:所得税・相続税は政治的ですね。

10年限定の事業承継税制で、経営者の平均年齢を40代に

緑川:
宮沢先生に一つ伺いたかったことがあります。中小企業の事業承継税制というものを宮沢先生がお作りになった。将来の源泉所得税を生み出す財源は、中小企業の役割りが大きい。「将来の相続税より毎年の法人税、所得税だろう」と思うわけですが、事業を継続していくということは、財源としても非常に魅力的だろうと思ったのです。中小企業が継続してくれないと、当然に雇用も守れませんけど。
宮沢:それは当然、頭の中にあるわけですが、元々、中小企業が新しい経営者のもとで新しい目で生産性向上にどう努力してもらうかというのが一番大事なわけです。
緑川:なるほど。
宮沢:ですから、「世代交代税制」だと私などは思っています。期限を切らないとやりませんから、10年間という期間に限定したというのも、ともかくこの10年間で、今60代半ばになっている経営者の平均年齢を、40代くらいにしないといけないだろうということで、かなり思い切った税制を制定したわけです。当然のことながらすべてが上手くいくわけではないにしても、ITとかAIの世界にかなり浸っている方が新しい経営者になれば、かなり状況が違ってきて、それがおそらく日本の成長率を押し上げていく。結果的には先ほど緑川先生がお話ししていたような法人税とか所得税の税収増に将来的には繋がっていくという風に考えています。
緑川:経済発展の基本的なベースを上げておかないと無理だと思います。したがって、そういう意味でとらえると今回の事業承継税制というのは素晴らしい位置づけ──思い切ったことだなという気がしています。
宮沢:担当者からすると、相当非常識なことをやらされたと思っているのではないでしょうか(笑)。
緑川:事業承継税制というのは、一般の相続税問題とは違って、継続的に経済活動をしていくことに主眼が置かれるので、一般の相続税──土地等とは全く違った位置づけとして、各方面できちんと実施してほしいと思っています。
宮沢:ぜひそうなってほしいと思います。

法人の所得計算は今まで通りでよいのか

緑川:
中小企業に事業承継税制という素晴らしい制度が導入されたわけですが、企業税制についても様々な検討をしていかなければと思います。様々な諸制度をもう少し簡素化しながら、やりやすい税制にしていかないといけないと思うのですが、小畑さんはどのように思われますか。
小畑:先ほどの事業承継税制も、経団連は商工会議所と一緒に旗を振ってきました。大企業だけですべてが完結しているわけではなく、サプライチェーン全体がないとやってはいけないわけです。サプライチェーンを守るという観点からもやはり世代交代して、それぞれの企業がAIとITを駆使して効率的な経営をやっていくことが必要だということが1つ。それから2つ目は、平成27年度・28年度改正で法人実効税率が30%を切るところまでご尽力頂きたいへんありがたいと思っていますが、今後も果たして国際的競争の中で、法人税率の競争をこのまま続けていけるのかということです。さらにもう1つは、我が国において、法人税率を引き下げるといっても、もはや課税ベースも相当拡大しきっているというところです。ここから先、どのように財源を捻出していくのかということはなかなか難しいなという風に思っています。そういう中で国際的な課税の議論の中では、もはや法人のいわゆる所得というものからだいぶ離れてどれだけ各地で売上を計上しているのかという形で、そこに着目して所得を分けましょうという議論が―デジタルエコノミーを中心に―出てきたりしている中では、必ずしも今のような法人の所得計算というものがいつまでも適切なものであるのかということについては今後検討しなくてはいけないのかなという感じを持っています。
緑川:国際レベルで見直しを行うという部分はかなりでてくるのかもしれません。
宮沢:法人税の減税競争というのはあまりいいことではないと思います。やはりどこかで歯止めをかけないと。アイルランドやアイスランド、シンガポールにしても小さな国だからまだいいかもしれませんが、それなりの大きさのエコノミーを持っている国は、ある程度節度を持って対応するというのも国際的な協調の中でやっていかなくてはいけない話なのだろうと思っています。そして今出ましたデジタルエコノミーの対応というのが今年のG20のかなり大きな題材になるわけです。いわゆる国際課税の大転換をしなくてはいけない。要するにPEがあって課税するというのをどう外形標準的なものにしていくのかという話ですから、それは主要国、G7ではなくてG20の場が一番よいと思いますが、大きな方向性について早く合意してほしいなと思います。おそらくディスクロージャーの義務付けとその課税とが車の両輪になるようなそんな話にならざるを得ないと思います。そういう中で日本の法人税率をさらに下げる。アメリカの動向次第では考えなくてはいけないのかもしれませんが、まさに小畑さんが話されたように、財源をどこから出してくるといったら、試験研究開発税制を切るということになるかもしれない。もともと我々の立場では法人税率を下げられない代わりに導入した税制ですから、法人税率を下げたのだから当然いらないだろうと。
緑川:そういう議論になってしまいますか。どうですか(笑)。
小畑:試験研究費は重要です(笑)。



2040年に向けて制度改正を先に手当て

緑川:
あとは企業活動に配慮した税制改正が続いてきて、企業再編税制もかなり使いやすいものになりました。現在、連結納税制度もかなり簡素化しようという話が出てきましたので、そういうところも含め、企業活動になるべく寄与するような税制改正というのが個別には続いていくのでしょうか。
宮沢:そうだと思います。ただ国際的な比較でいうと、間違いなくGDPに対するベースで日本の場合、軽いのは所得税収と消費税収です。他の主要国と比べると低い割合で、法人税収は高いということは間違いありません。では、その中で所得税収を上げるためには、いわゆる中所得者もしくはその下くらいのところの5%のところをどう小さくするかという話が政治的にできるかどうかということになります。
緑川:2040年代、介護、医療がどれだけになるかということがはっきりしているわけですから、この夏からの検討に期待するしかないですね。
宮沢:逃げられない話です。制度の見直しと財源と、いかに持続可能なものにしていくということをやらないといけません。
緑川:また次の10年と先延ばすわけにはいきませんね。
宮沢:もう少し早くやらないといけませんが、財源の方は後から来ます。制度改正を先に手当てしておかないと。制度改正を早くやらなければどんどんツケがたまるみたいな話ですから。財源論はそれに合うスピードである必要はないかもしれません。中身は相当詰めておかないといけないと思いますけれども。
緑川:あくまで、制度のための税制改正ですものね。
宮沢:だから制度改正は早く直していきたいと思います。
小畑:是非よろしくお願い致します。
緑川:何か疲れましたね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
(了)



附則第104条(概要)

(税制の抜本的な改革に係る措置)
(1)政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
(2)上記(1)の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。(附則第104条関係)
(3)上記(1)の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。
 ① 個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。
 ② 法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベースの拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。
 ③ 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。
 ④ 自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率を含む税率の在り方を総合的に見直し、負担の軽減を検討すること。
 ⑤ 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。
 ⑥ 納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税の適正化を図ること。
 ⑦ 地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。
 ⑧ 低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化を推進すること。

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